白内障は加齢でかかることが多い病気ですが、若くしてかかる場合もあります。
特に、水晶体の中身を包んでいる袋のことを囊(のう)と言いますが、ここが濁る「前囊下(ぜんのうか)白内障」「後囊下(こうのうか)白内障」は、加齢以外の原因でかかりやすい白内障であるため、若くして診断されることがあります。

前囊下白内障とは、囊の前方が濁る白内障の一種で、30代前半から40代という若年性白内障に多くみられます。
後囊下白内障は、リウマチなどの膠原病(こうげんびょう)やぜんそくで、副腎皮質ステロイドホルモンを長期間服用している方などに多く発症します。

今回は、前囊下内障と後囊下白内障について詳しくご紹介します。

【水晶体の構造】

前囊下白内障の2つの特徴

晶体の前側が白く、ヒトデ型に濁る

水晶体は囊(のう)と呼ばれる袋に包まれており、これを水晶体囊と呼びます。
水晶体囊の前方は前囊といい、後方は後囊といいます。このうち前嚢が白く濁るものを前囊下白内障といいます。

前囊下白内障は濁りが中心である瞳孔に集まる傾向があり、ヒトデのような形の混濁になります。

【前囊下白内障の目】

30代〜40代の若年層に多い

前囊下白内障は30代から40代という比較的若い世代でかかることが多い白内障です。

発症の原因としては、アトピー性皮膚炎を患っている方に多くみられます。また虹彩炎やぶどう膜炎などの影響で、前囊の細胞が変性してしまうことで生じるとも考えられています。

前囊下白内障の代表的な3つの症状

明るい所に出ると、真っ白になって見えにくくなる

水晶体の前側の中央部に濁りが生じるため、明るい所に出て瞳孔が縮むと(狭まると)、濁りが強い部分しか光が当たらなくなるため、視界が真っ白になって見えにくくなくなってしまいます。

よく見られる症状としては、“明るい場所に出ると真っ白になり、見えなくなる”、“昼間に映画館から外に出たり、朝起きてカーテンを開けたりすると窓の外がまぶしくて見えなくなる”ということがあります。

反対に、濁りがまだ局所に留まっている初期では、瞳孔が開く暗所では物が見えやすいという現象が起こります。
また文字を読むときに白くぼやけるなどの症状もあります。

実際の光を通常以上にまぶしく見える様子

【実際の光を通常以上にまぶしく見える様子】

片目だけに症状が出ることも

前囊下白内障は、片目だけに症状が出ることも多いのが特徴です。あるいは両目とも発症していても、片方だけ症状が重いといったことが起こりやすい傾向があります。

急速に症状が悪化する

白内障は徐々に症状が進行するタイプが多いのですが、前囊下白内障と後嚢下白内障は、発症すると急激に症状が進むことが多いのです。特に前囊下白内障は数ヶ月で症状が進行しきった成熟白内障になってしまうこともあります。

アトピー性皮膚炎を患っている方や、ステロイドを内服している方は、見えにくさを感じることがあったらすぐに眼科を受診しましょう。

後囊下白内障の2つの特徴

ごく初期から症状が現れ、進行が早い

水晶体を包んでいる囊(のう)という袋の、後ろの部分が濁るものを後囊下白内障といいます。

中心部から、すりガラス状の濁りが発生します。前囊下白内障と同じく、瞳孔から入った光の通り道にあたる中心部が濁るため、ごく初期から症状が現れます。また、視力低下のスピードが早いというのも大きな特徴です。

【後囊下白内障の目】

長期間、ステロイドを服用している人に多い

後囊下白内障は、リウマチなどの全身疾患やぜんそくなどで、長期間、副腎皮質ステロイドホルモンを服用している方に多いという特徴があります。

また、糖尿病やアトピー性皮膚炎の方にも多くみられます。
白内障というと、どうしても高齢者の病気と思われがちですが、アトピー性の白内障では、10代後半〜20代でも発症することがあるので注意が必要です。

アトピー性の白内障については、こちらのコラムでもご紹介しております

アトピー性皮膚炎が原因で発症するアトピー性白内障とは

後囊下白内障の代表的な2つの症状

すりガラスを通したように視界がかすんで見える

後囊下白内障は、ごく初期のうちから症状が現れます。もっとも多いのは、すりガラスを通したように視界がかすんで見える症状で、同時にまぶしさを感じることも多くなっています。
視界がかすむ様子

急速な視力の低下が起きる

発症すると急速に視力低下が起きるのが大きな特徴です。原因疾患である糖尿病やアトピー性皮膚炎は、網膜に病気を併発させる特徴があります。
やはり症状が現れたらすぐに眼科を受診する必要があります。

後囊下白内障のその他の原因

糖尿病が原因の場合は進行の早さと併発する眼病にも注意

後囊下白内障は、糖尿病の方に多く見られます。糖尿病があると、同年代の人に比べて白内障の進行が早くなります。それは、ソルビトールと呼ばれる糖が水晶体の中に蓄積していき、浸透圧が変化することで水晶体の細胞が変性しやすくなるためです。

また、糖尿病は数多くの病気を併発しますが、特に糖尿病性網膜症という眼底の疾患にかかりやすくなります。失明に至るリスクのある重篤な眼病です。
目の合併症から糖尿病が発見されることもあります。目は全身の窓とも言われます。糖尿病の方は、内科の医師とも相談をしつつ、血糖の管理をしっかり行っていただき、平行して目の合併症を管理していきましょう。

定期的に水晶体の検査と眼底検査を受けましょう。

微量の放射線を長期間浴びると、後囊下白内障に

あまり知られていませんが、微量の放射線を長期間にわたって浴び続けると、後囊下白内障を発症しやすくなります。微量の放射線により発症した後囊下白内障は、少しずつゆっくりと進行していきます。

これは、がんに対する放射線治療を受けた方に見られる原因です。
治療は、通常の白内障と同じように行われます。手術によって完治するので心配ありません。

前囊下白内障と後囊下白内障の治療で注意したい2つのポイント

進行が早いため早期に手術をすることが必要

加齢性の白内障は、何年という長い年月をかけて症状が進行します。しかし、アトピー性皮膚炎などの人が発症しやすい前囊下白内障と後囊下白内障は、数週間で急激に視力が低下するケースもあるため、診断された場合は早期に手術をする必要があります。

それほど進行が早くない場合もあり、その時は症状の進行を遅らせる点眼薬を差しながら経過観察するのもひとつの選択肢です。しかし点眼薬では治すことはできませんので、あくまで根治をするには手術が必要になります。

前囊下白内障、後囊下白内障とも、治療は濁った水晶体を取り除き、かわりに人工の眼内レンズを挿入する白内障手術を行います。

白内障手術のプロセス

眼内レンズの種類は、保険が適用される単焦点や、自費診療ですが遠くも近くも焦点が合う多焦点があります、またどちらにも乱視も矯正できるトーリック眼内レンズがあります。目だけではなく、お一人お一人の仕事や年齢、ライフスタイルなどに合わせて選択します。

まとめ

  • 30〜40代の若い人に発症することが多い
  • 明るい場所に出ると、視界が真っ白になって見えにくくなる症状が代表的
  • 前囊下白内障は片目だけ発症することも多い
  • 症状の進行が急激で、早期に視力低下が起こる
  • アトピー性皮膚炎や糖尿病の方に多く発症している

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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