世界的にみると失明率ナンバーワンである白内障も、日本国内だけでみてみるとその失明率はたったの3%程度しかありません。しかも、その約3%という数字のほとんどが“白内障を放置してしまったことにより、他の眼病を併発してしまったことによるもの”なのです。

日本の現代医学において、白内障というのは手術を受けることによって治すことが可能な病気です

ちゃんと眼科を受診して、白内障に関する正しい処置を受けていれば、決して怖い眼病なんかではありません。

ちなみに余談ですが、世界での失明率第2位の緑内障が、日本では失明率第1位の眼病になっています。

緑内障については、こちらのコラムでもご紹介しております。

日本での失明率1位の眼病・緑内障についての基礎知識

ところで、「白内障は国民的眼病です」と言われたりしますが、なぜそのように言われるのでしょうか?

それは、年齢を重ねるごとに発症するリスクがどんどん増えていくからなのです。実は白内障の発症率というのは、80歳以上ではほぼ100%にのぼります。つまり、老化によって誰もがかかる可能性のある眼病であるということなのです。

白内障の発症率は極めて高いが、心配ご無用

白内障は、早ければ40代で発症します。
60代では約70%の人に白内障の症状がみられ、70代になるとその発症率は約90%にまで跳ね上がります。この発症率のパーセンテージは症状が軽い方も含めているものですが、そのリスクの高さは一目瞭然でしょう。つまり、加齢によって誰もがかかり得る可能性の高い眼病ということなのです。

さらに、日本においては今後どんどん高齢化が進むことはわかりきっている事実ですから、これはまさしく国民的眼病と言ってもよいのではないでしょうか。

さて、世界規模でみてみると白内障の失明率はナンバーワンであると先にお伝えしましたが、それはやはりこの発症率の高さにあると言えます。そして、もうお気づきの方もいらっしゃる事と思いますが、発展途上国において失明率がより高まるというのが現状です。医療の技術やレベルの差はもちろんのこと、眼科がなかったり、あっても高額なため治療を受けられなかったり、しかも正しい治療を受けることができない国や地域が多いので、当然のことながら失明のリスクは跳ね上がります。

国内での失明率の低さは、日本医療のしっかりとした制度、最新の医療設備、優れた医療技術、高いレベルの医学教育のおかげと言っても過言ではありません。白内障は誰しもがかかりうる眼病である一方で、日本では失明に至らずに治療できる眼病でもあるのです。

医師と患者

先天性白内障はすみやかに処置が必要

白内障は、簡単に言えば水晶体が濁り、視力が衰える眼病です。生まれつき濁りのある先天性と、加齢などにより濁ってしまう後天性の2種類に大きく分けられます。

先天性白内障の原因には、染色体異常(せんしょくたいいじょう)子宮内感染(しきゅうないかんせん)などがあり、発症すると生後早期に水晶体(すいしょうたい)が白く濁っていきます。

生まれつき水晶体が濁っていることもありますし、成長とともに濁ってくるケースもあります。人の視力というのは幼児期に形成されるものですので、もしも赤ちゃんの瞳が白いような気がするという時には、すぐに医師の診察を受けることを強くおすすめします。

赤ちゃんの瞳が白くなるのは白内障だけではありませんが、いずれにせよ早期診断が大切です。というのも、視力は外界の像が網膜に届いて発達していきますので、白内障により外界の見え方が不十分になると視力の発達が妨げられてしまうのです。これを弱視といいます。

ですから、大人の白内障は急ぎませんが、先天性白内障は弱視を防ぐために早めに外科処置を行う必要があるのです。見え方に問題がないなら経過観察で済むのですが、割合としては少ないとはいえ、手術が必要になることもあるからです。濁りが強いせいで見え方に大きな影響があると、視覚の発達に悪影響を及ぼしかねないので、手遅れにならないうちに外科処置を施すわけです。

誰もがかかりうる後天性白内障

後天性白内障は、加齢のほかにも、目に強い衝撃を受けることによって発症することがあります。

外傷性白内障

これを外傷性白内障というのですが、これを引き起こすリスクが高いものといえば、たとえばボクシングやキャッチボールなどによる事故、ケンカなどによる目への強い衝撃です。これの厄介なところは、衝撃を受けてすぐに発症するのではなく、何年か後に発症することがあるという点でしょう。外傷性白内障は、潜伏期間があることも少なくないのです。

併発性白内障

また外傷性以外にも、病気や薬の副作用などにより併発性白内障(へいはつせいはくないしょう)を発症することもあります。一般的によく知られているのは糖尿病による白内障の併発でしょう。

ほかにアトピー性皮膚炎の患者さんの約30%が併発性白内障を患っているというデータもあり、慢性腎不全(まんせいじんふぜん)で透析(とうせき)を続けている方も、白内障になるリスクが高まることが知られています。

先天性白内障に加え、後天性白内障の外傷性白内障と併発性白内障――これらの白内障の原因は加齢によるものではありませんので、若年層でも発症するリスクは十分に考えられます。

白内障は老化現象のひとつのように考えず、若くても症状に心当たりがあったら眼科への受診を検討しましょう。

加齢性白内障

そして最後に、最もポピュラーな加齢性白内障についてご説明いたします。
水晶体は水とたんぱく質で構成されているのですが、その水晶体に含まれるたんぱく質が年齢を重ねるごとに“あるべき姿を保てなくなって”しまいます。

というのも、水晶体のたんぱく質は生産され続けるのみで、消化も排出もされない特徴があり、そのせいで水晶体はだんだんと大きく、密度の高い固い物質になってしまうのです。そして光の透過を邪魔するくらい大きな塊のようなものになってしまいます。通常は光の透過の邪魔にならないくらいの大きさしかない小さなたんぱく質が変異して、通常のよりも少し大きくなることが、加齢による白内障の原因です。

白内障は視界がかすんだように見えたり、光が異常にまぶしく感じたりするのが特徴です。昼間の日差しや夜間対向車のヘッドライトが異常にまぶしく感じては、運転に支障をきたしますし、運転者でなく徒歩だとしても、目がくらんだようになってしまうので危険です。そのような症状があるなら、できるだけ早めの治療を施すべきと言えます。

強い光による視界のかすみ

白内障の症状については、こちらのコラムでもご紹介しております。

白内障の症状について 初期の方はこんな自覚症状にご注意を!

白内障は10分ほどの手術で治療できます

白内障は、“手術をすれば誰でも治る”眼病です。その内容は、濁った水晶体を人工の眼内レンズに置き換えるだけ。程度によっては日帰りでの手術も可能ですし、手術に要する時間も10分~と、とても短くて済みます。

白内障手術のプロセス

白内障手術のプロセス

医療レベルが発達し、単焦点レンズの手術が保険適用内となり、少額の自己負担で手術を受けられる画期的な制度により、日本国内での白内障による失明率はたったの3%程度にすぎません。

しかし、放置することでどうしても失明のリスクは高くなってきてしまいます。放置して白内障が進んだために、日本の失明率第1位である緑内障を併発することもありますし、ハイリスク白内障というべき手術のリスクが高い白内障になってしまうこともあるのです。そのため、できるだけ早い段階での手術をおすすめします。

白内障手術に使用する人工の眼内レンズには、大きく分けると多焦点(たしょうてん)眼内レンズ単焦点(たんしょうてん)眼内レンズがあります。

眼内レンズ

眼内レンズ

このうち、保険が適用されるのが単焦点眼内レンズの方です。一点にのみ焦点が合うものなので、手術後も老眼鏡などの眼鏡は手放せませんが、それでも手術前と比べると、日常生活を送る上ではだいぶ生活しやすくなります。

快適な見え方を実現するためには、ライフスタイルに合わせて焦点の合う距離を決めることが重要です。

一方、多焦点眼内レンズは遠いところにも近いところにもピントが合う、いわゆる老眼から解放された健康な視力を作り出す正視に近い見え方を叶えるレンズです。実は、水晶体の病気は3つあり、「濁って白内障」、「硬くなって老眼」、「大きくなって閉塞隅角緑内障」になります。

白内障の手術で白内障は治り、初期であれば閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかくりょくないしょう)も治ります。そして、多焦点レンズを選べば老眼が改善するのです。

人生のリスタートを切るためだと考えてみる

それまでコンタクトレンズや眼鏡が手放せなかったという人は、白内障手術により視力の回復(あくまで人工的なものにはなりますが)も見込めるというわけですね。

ずっと近視で悩んでいた方でも、視力の矯正に不可欠な眼鏡やコンタクトレンズを手放すことができるのです。また、白内障手術をしておけば、緑内障にかかるリスクを減らすこともできます。

白内障はお年寄りがなる病気――世間一般ではそういう認識があるため、白内障になって気分が落ち込む方も多いようですが、白内障は誰でもいずれかかる可能性がある非常にポピュラーな眼病です。

しかも、加齢性白内障は40代からその症状が出始める方もいます。白内障は、正しい知識と処置があれば、必要以上に落ち込む病気でも、恐れる病気でもありません。むしろ、病気をきっかけに手術をすれば、それまで悩まされていた強度の近視や乱視など視力に関する問題が一気に解決する場合がありますので、文字通り「世界が変わる」体験に喜びの声をあげる方もいらっしゃいます。

白内障の手術は人生のリスタートを切るためのキッカケのひとつ、そんな風に考えることもできるのではないでしょうか。

「白内障」まとめ

  • 白内障は、誰でもかかる可能性のある病気です
  • 白内障は大きく分けて先天性と後天性の2種類があります
  • 白内障は手術で治せる病気です