白内障というと、「お年寄りの病気」というイメージが強いかもしれません。確かに白内障患者の9割は、65歳以上です(厚生労働省平成26年患者調査)。40代、50代の中高年世代を加えると、患者のほとんどを占めるのは事実です。
しかし、その他の年代が白内障にならないかというと、決してそうではありません。数は多くありませんが、0歳の赤ちゃんや20~30代の若い世代でも白内障は起こりえます。

そこで今回は年代別に、その世代で起きやすい白内障の種類を整理しておきます。
たとえば、赤ちゃんのときに高度の白内障があると、視力がうまく育たない恐れがあります。また糖尿病やアトピー体質の方、強い近視のある方は、若い世代でも急に白内障が進むことがあります。若いということはライフスタイルも活動的で、仕事もこなし、老眼もありません。この高齢者には無い特徴を理解して治療戦略を立てることが重要です。意外と身近な白内障の理解を深めるきっかけになればと思います。

[0歳~幼児期]生まれながらの「先天白内障」や後から症状が出てくる「発達白内障」

先天白内障/発達白内障とは

0歳で、生まれたときにすでに白内障があるものを「先天白内障」といいます。また、生まれたときには症状がないものの、成長とともに白内障の症状が出てくるものを「発達白内障」といいます。
原因はさまざまですが、両眼で起こるものの多くは遺伝が関係しているといわれます。また妊娠中に母親が風疹やトキソプラズマ、サイトメガロウイルスなどに感染することで起こる先天性風疹症候群や、染色体異常が白内障を引き起こすことも知られています。

この時期に高度の白内障があると、視力の発達に必要な視覚情報が遮断され、重度の弱視につながる可能性があります。約1万人に3人というくらいのまれな病気ではありますが、次のような症状、条件にあてはまるときは、眼科を受診することをおすすめします。
・瞳孔が白く濁って見える
・眼振(目が細かく揺れる)がある
・斜視がある
・両親や兄弟姉妹に先天白内障がある

先天白内障/発達白内障の治療

高度の先天白内障の場合、診断後できるだけ早期に手術を行い、濁った水晶体を取り除きます。術後は特殊なメガネやコンタクトレンズを装用し、視力を育てる訓練を行います。生後1~2 歳以降に進んだ白内障の場合は、眼内レンズを使用できる場合もあります。この場合、成長とともに眼内レンズの度数が合わなくなってきますので、メガネやコンタクトレンズで矯正する必要があります。
単に白内障手術をするだけではなく、視覚刺激に対する感受性の高い乳幼児期、特に0~2歳で、弱視治療に力を入れ、できるだけ良い視力を獲得することが重要です。また先天白内障の子どもは、その後も後発白内障、緑内障、網膜剥離などを起こしやすいため、長期にわたって経過観察を続けて獲得した視力を守り続ける必要があります。

[20~30代]アトピー性皮膚炎の方の「アトピー性白内障」、ステロイド薬による「薬剤性白内障」に注意

アトピー性白内障とは

眼科医の間では、アトピー性皮膚炎の方は若年でも白内障を発症しやすいことが知られおり、これを「アトピー性白内障」といいます。
アトピー性皮膚炎があるとなぜ白内障が早く進むのか、詳しいメカニズムはわかっていません。ただ皮膚炎にかかっている期間が長いほど、また顔の皮膚症状が重いほど、白内障を合併する率が高いことから、かゆみで目をこすったり叩いたりすることが刺激になるとも考えられています。
アトピー性白内障では、水晶体の前部中央にヒトデのような形に濁りが広がる(前嚢下白内障)、水晶体の後部中央に皿状に濁りが出る(後嚢下白内障)など、特徴的な症状が起こります。

前嚢下白内障

後嚢下白内障

水晶体の中央部分から濁るため、比較的早い時期に見えづらさを自覚するようになります。さらに白内障が進行すると水晶体全体が白く濁る成熟白内障に至ることもあります。

成熟白内障

アトピー性白内障の治療は、例に漏れず白内障手術ですが、いくつか注意点があります。
まず、もともと水晶体を支える無数の線維(チン小帯)が弱かったり、目を叩くことでチン小帯が切れていたりすることがあり、手術が難しいことを想定する必要があります(こちらの記事もお読みください→「手術が難しいハイリスク白内障をご存知ですか?」)。そのような場合、手術がうまくいっても術後の水晶体のふくろが収縮が強く眼内レンズが偏位してしまうことがあり、拡張子リングを挿入して補強しておいた方が良い場合があります。

次に、アトピー性白内障の目は鋸状縁断裂という網膜の裂け目が生じていて網膜剥離を合併している可能性があることです。網膜剥離の治療に精通した施設での治療が望まれます。

眼瞼皮膚炎が強いときに手術を行うと、荒れた皮膚に増える雑菌により術後感染のリスクが高くなります。感染のリスクを減らすためにも、前もって皮膚科の治療をしっかり行うべきです。

このように術後も、網膜剥離や感染症を早期に発見するためにも定期的な経過観察が必要です。

薬剤性白内障(ステロイド白内障)とは

若い世代でもう1つ、気をつけてほしいのが「薬剤性白内障」です。
よく知られているのが、ステロイド薬を長期に使い続けた場合に起こる「ステロイド白内障」です。白内障を起こしやすいといわれているのは、全身疾患の治療に使われるステロイドの内服薬や、喘息の治療に使われる吸入薬です。
薬剤性白内障では、水晶体の後部中央に皿状に濁りが出る後嚢下白内障が発症することが知られています。

ステロイド薬の長期使用の副作用としては、他にも、眼圧が上昇することで緑内障になる「ステロイド緑内障」にも要注意です。全身疾患などの治療でステロイド薬を長く使う場合は、定期的に眼科で副作用が出ていないか、確認してもらうと安心です。

[30~50代]糖尿病のある方の「糖尿病性白内障」、強い近視の方の「核白内障」

糖尿病性白内障とは

30代から、40~50代の中高年にさし掛かってくる頃に多くなるのが、「糖尿病性白内障」です。糖尿病と白内障には深いかかわりがあります。糖尿病のある方はそうでない方に比べて5倍白内障になりやすく、進行も糖尿病のない方に比べて10年早いともいわれます。特に糖尿病のある女性は、男性とくらべても白内障になりやすい傾向があります。
白内障の発症が早まる原因は詳しくわかっていませんが、水晶体を構成するたんぱく質が高血糖により糖化することや、ソルビトール(糖)の蓄積が深くかかわっていると考えられています。血糖値のコントロールが悪い場合、白内障の症状が急激に進むこともあるので注意が必要です。

糖尿病性白内障の治療はやはり、白内障手術ですが、糖尿病性網膜症が悪化して汎網膜レーザー光凝固療術が必要になったときに、白内障がレーザー光の透過を妨げ十分に光凝固できない場合は、早めに白内障手術が必要になることがあります。
手術は、術後の眼底検査を隅々まで行えるように、前嚢切開を大きめにしておく工夫が望まれます。最近は、散瞳が悪かったり、前嚢切開が小さく収縮した目でも網膜を広範囲に撮影できるOptos社製超広角走査型レーザー検眼鏡が使えるので安心です。
また糖尿病の方は易感染性があるため、術後の感染症に注意して術後診察をしっかり受ける必要があります。眼科医の指示に従って定期検診を受けましょう。

強度の近視と白内障

働き盛りのこの世代では、強度の近視がある方も注意が必要です。強い近視がある方では、水晶体の中心部分の核という部分が濁る「核白内障」が、近視のない方に比べて20年早く進むといわれています。どんどん近視が進みますのでメガネがすぐ合わなくなる方はご注意ください。

核白内障

また強度近視は、通常24mmほどの眼軸長(眼球の前後の長さ)が27mm以上に伸びた状態のため、網膜や視神経などがひっぱられて弱くなり、網膜剥離などの眼底疾患や緑内障などさまざまな目の病気を起こしやすくなります。強度近視の方の白内障手術は、近視も治してメガネ無しで遠くが見えて手元だけメガネ、あるいは遠くはメガネで手元はメガネ無しにすることもできるため、その恩恵は大きいものです。
ただし、白内障手術だけではなく緑内障の有無、黄斑疾患の有無など、強度近視眼に起こりやすい病気を正確に診断し、経過を診ていくことが重要です。

[50~90代]加齢が原因で起こる「加齢性白内障」は80代でほぼ100%が発症

加齢性白内障とは

50代以上でもっとも多いのは「加齢性白内障」です。もともと透明であった水晶体のたんぱく質が加齢(老化)によって変質することで起こります。
初期の白内障(水晶体混濁)を含めると白内障は50代で4~5割、60代で7~8割、70代で8~9割、80代ではほぼ100%の人に生じています。進行した白内障の有病率は50代で1割、60代で2~3割、70代で5~6割、80代以上で7~8割となっています。
加齢性白内障の場合、水晶体の表面に近い部分にある皮質と呼ばれる部分の端の方から濁り始めることが多く、初期の頃にはほとんど自覚症状がありません。年齢が高くなるにつれて次第に濁りの範囲が広くなり、中央に近づきます。また水晶体の中心部の核と呼ばれる部分の濁りが強まってくると、ものがかすんで見える、視力が低下した、光を眩しく感じる、ものが2~3重に見えるといった典型的な症状が現れるようになります。
加齢性白内障の多くはゆっくり進行しますので、気がついていない方が多いのです。進行の速さや見えづらさの自覚には、個人差が大きいのです。

皮質白内障

若くして白内障になった場合に考えるべき問題点

若くして白内障になると、下記のような高齢者には無い特徴を理解して治療戦略を立てる必要があります。
1.片眼のみの白内障の場合が多い
2.老眼がまだ始まっていないか、初期である
3.運転、仕事、子育て、スポーツなど活動的なライフスタイル

保険適用がある単焦点眼内レンズで手術をすると、一気に老眼になります。老眼は遠くや近くに焦点を合わせる調節機能が衰える症状のことです。急になる老眼は、若い方が普通にしているいろいろな距離を同時に見る活動的な行為において不便です。老眼が治る多焦点眼内レンズにするかどうか考え時です。この選択は、反対側の目の屈折の状態を考慮する必要があります。反対側の目が近視か、近視ならどの程度かによって、眼内レンズの選び方が異なります。多焦点眼内レンズの経験が多い施設で、幅広い選択肢の中から選択できることが重要でしょう。

板谷院長のひとことアドバイス

白内障は高齢者の病気と思われがちですが、比較的若い年齢でなる白内障もあります。若い方が白内障になると高齢の方よりも生活や仕事への影響が大きいのです。若い方の白内障の手術戦略は、高齢者の方には無い条件を考慮して立てる必要があることを知っていただければと思います。

まとめ

  • 生まれながらの「先天白内障」や乳幼児期の「発達白内障」では、視力を育てるためにできるだけ早く治療をすることが重要です。
  • アトピー性皮膚炎のある人やステロイド薬を長期で使用している人は、20~30代の若い世代でも「アトピー性白内障」や「薬剤性(ステロイド)白内障」が起こりやすいです。
  • 糖尿病のある方は30~50代などで「糖尿病性白内障」になりやすく、進行が速いこともあるので注意が必要です。
  • 加齢が原因の「加齢性白内障」は、高齢になるとほぼすべての方が発症。ゆっくり進行することが多いため、気がついていない方が多いです。

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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