白内障の症状を自覚して、眼科を受診したいと思っている方のなかには、どんな検査をするか不安に思ってしまう方もいるのではないでしょうか。
白内障の検査では、まずは本当に白内障なのかを診断するための検査と、白内障以外の病気が眼底に潜んでいないかを調べる検査を行います。そして、白内障であることが分かり手術をすることが決まったら、適切な眼内レンズを選択するための検査を行います。

あなたの目にある近視や乱視などの問題点を洗い出し、より快適な術後の見え方を実現するために必要な検査なのです。白内障をきっかけとして、ここで一度あなたの目の問題に光を当てましょう。

白内障手術にいたる基本的な検査の流れ

「目がかすむ」「光をまぶしく感じる」など、白内障の症状を自覚して眼科に来られた場合、以下のような順番で検査を行います。

問診

「かすみ」「まぶしさ」「ものが何重にも見える」など、どういった自覚症状をお持ちになっているかを、詳しくお聞きします。また、前立腺肥大のお薬を内服しているかどうかなど白内障の治療に影響する投薬内容も聞き出します。

屈折検査・視力検査


近視か遠視か?乱視はどの程度あるか?乱視のタイプは?など見え方の個性と問題点を検査します。
そして、それに基づいて裸眼視力と矯正視力を調べます。ここで、最も重要な視点は矯正視力が正常か低下しているかです。もし矯正視力が低下しているとしたら、白内障をはじめ眼底疾患などを疑い詳しく調べる必要があります。
矯正視力がでない原因を明らかにして患者さんに伝えるのが我々眼科医の使命です。

眼圧検査


眼圧検査は緑内障のスクリーニングの不可欠です。緑内障は40歳を越えると20人に1人が罹患します。70歳を超えると10人に1人です。
白内障は高齢の方に多いため眼圧検査は重要です。また、遠視の白内障の人は目の中の房水の出口である隅角が狭くなって眼圧が上がっている場合もあります。

細隙灯(さいげきとう)検査

細隙灯顕微鏡を使えば、白内障の有無、濁っている部位と濁りの程度がひと目でわかります。また、白内障手術を難しくするリスクを見つけることができます。
例えば、チン小帯が弱い可能性のある落屑症候群や浅前房、チン小帯が切れて水晶体が揺れている状態、進みすぎて硬くなった核白内障などです。ただし、細隙灯検査でもわからないリスクもあります。
前立腺肥大のお薬を内服されている人に多い虹彩がふにゃふにゃに弱くなるIFIS(術中虹彩緊張低下症候群)は細隙灯検査ではわかりません。
しかし、多くの場合、散瞳剤によっても瞳が6mm以下にしか開かない目は、なんらかのリスクを持っていると考えて間違いありません。

白内障以外の眼病の有無

矯正視力が低下している原因を明らかにすることが眼科医の使命です。眼圧や眼底の検査を行い、白内障以外に「緑内障」や眼底の黄斑の病気がでていないかどうか調べます。緑内障も視野障害が中心に及べば視力低下の原因になります。
黄斑の病気はさまざまですが、視力低下や歪みをきたします。病気としては「黄斑前膜」、「加齢黄斑変性」が最も多く、他に「黄斑円孔」、「錐体ジストロフィー」、「糖尿病黄斑浮腫」、「網膜静脈閉塞症」などが、日常的でポピュラーな病気となります。

このような黄斑疾患がある場合、矯正視力低下の原因の50%が白内障で残り50%が黄斑疾患だったりします。白内障の手術により白内障が原因となっていた分だけの障害はなくなりますので、見やすくなります。黄斑疾患も、手術やVEGF阻害剤注射など治る時代ですので積極的に治しましょう。
特に、黄斑前膜や黄斑円孔の手術は、白内障手術と同時手術になりますので、原因が2つとも一挙に治療できます。

最適の眼内レンズを選ぶための検査

白内障手術で入れる眼内レンズによって術後の見え方はがらっと異なります。術後重要なのは、裸眼視力なのです。朝起きたとき、お風呂上がりに、あるいはメガネを失ったときに、どれだけ安全に行動できるかです。
高齢の方にとって、足元が見えることは、特に階段ののぼりおりでは重要です。それは、眼内レンズの度数選択で、どこにピントを合わせるかにかかっています。大きな乱視が残るとピントが合ったところでもはっきり見えないので言語道断です。遠くも近くもはっきり見えるようになりたい場合は多焦点眼内レンズを選びます。

このように眼内レンズのプラニングは重要ですが、どれを選んだとしても、正確に実現していくためには、角膜曲率半径(角膜のカーブの強さ)、眼軸長検査(目の前後の長さ)、乱視の程度と方向の検査など術前の検査にかかっているのです。

その他全身の検査

血液検査や心電図検査などです。どうしても高齢の方が多いですので、おおまかな身体の状態を知っておくことは必要です。これが終わると、いよいよ手術を開始します。

 

以上が、白内障検査の基本的な流れです。
では、続いて「細隙灯検査」以降について、それぞれ詳しく解説していきましょう。

細隙灯検査で白内障を診断する

【細隙灯検査の様子】

細隙灯顕微鏡は、コンタクトレンズの定期健診などでも使われるポピュラーな検査機器です。この医療機器を使って、角膜や結膜、前房水、虹彩、水晶体などさまざまな部位を詳しく観察することができます。

また白内障検査の他、眼圧測定による緑内障の診断や、特殊なコンタクトレンズを使った眼底の検査なども可能です。医師は両眼で見るので立体的に観察できる強みがあります。スリット光を斜めから入れて組織の断面を観察できます。
前述のコンタクトレンズ定期健診などにも活躍し、眼科には欠かせない強い味方となる医療機器と言えるでしょう。
検査の際は、あご台に顎をのせていただき、目に特殊な細い光を当てて、拡大鏡を通して角膜の状態や水晶体の状態を確認していきます。

白内障の検査では主に以下の2点を調べます。

水晶体のどこが濁っているのかを調べる

白内障は水晶体が濁る疾患ですが、濁っている箇所がどこかによって白内障の種類もかわってきます。
水晶体の中心部である核が濁る「核白内障」、核を取り巻く皮質部分から濁る「皮質白内障」、水晶体を包むふくろの前側が濁る「前嚢下白内障」、同じく後ろ側が濁る「後嚢下白内障」の4種類があります。
どこに濁りがあるかを調べることで、種類を判別できるのです。

忍者のような「核白内障」

【核白内障の目】

【皮質白内障の目】

【前嚢下白内障の目】

【後嚢下白内障の目】

濁りのグレードを調べる

水晶体がどの程度濁っているかを確認することは、白内障の進行と手術の難易度を判断するのに必要な情報です。核白内障のグレードは1~5まであり、グレード3まで進んでしまうと手術が必要とされます。

【左からグレード1~5の核白内障。だんだん核が茶色く濁っていくのがわかる】

白内障かどうかは、細隙灯顕微鏡を使って目を見ればすぐにわかります。そしてこの細隙灯検査で白内障だと判断された場合には、さらに詳しく診察していきます。

白内障のほかに病気がないかを調べる4つの検査

続いて、白内障の他に眼病がないかも検査します。くりかえしになりますが、視力障害の原因をすべて明らかにするのが眼科医の使命です。白内障があるからと言って、それが視力障害のすべての原因とは限りません。
例えば、眼底の黄斑に眼病があると、白内障手術を行って視力は0.2から0.6に改善したが、1.0に届かない、というようなことが起こります。黄斑の病気も平行して治療して可能な限り高い視力を回復するのが我々の仕事です。

眼圧検査

眼球を外から押し、押し返す圧力を測って眼球の内圧を測定する検査です。空気を角膜に当てる眼圧計と細隙灯に付いているプローブを角膜表面に当てるアプラネーション眼圧計など何種類かの方法を使い分けます。
眼圧が高いと、「緑内障」が疑われます。

【細隙灯に付いているアプラネーション眼圧計で眼圧を測定するシーン】

緑内障については、こちらのコラムでもご紹介しております

日本での失明率1位の眼病・緑内障についての基礎知識

眼底OCT検査

OCT(光干渉断層計)は光を用いた断層検査です。光はCT、超音波よりはるかに細かい分解能を持つ長所があり、現在臨床で用いられているOCTは深さ分解能3~8 μmです。
網膜自体の厚みが200μmくらいの薄い組織ですが、このOCTなら網膜の10層がすべて見えますし、小さな病変もよく見え、視力に重要な黄斑部の視細胞の健康状態もわかります。OCTが登場して眼科臨床は劇的に高度化したのです。

グレード4や5の強い白内障があると、きれいなOCT画像を得ることはできませんが、グレード3程度までなら十分なクオリティーの画像が得られ、黄斑疾患の有無がひと目でわかります。
OCTで黄斑が健康なら、白内障手術後に視力はよく回復します。きれいなOCT画像が撮れない程度に白内障が強いなら、それ自体が白内障手術適応を示していると考えても良いと思います。

【OCTにより撮影された、正常な黄斑と黄斑前膜。網膜のむくみ、皺、薄い黄斑前膜まで詳細に観察できる。】

網膜電図検査(ERG)

眼底の網膜に光を当てると、光は電気信号に変換されます。この電気信号の波形から網膜が正常に働いているかを確認する検査です。
白内障の濁りが強すぎて、細隙灯顕微鏡やOCTだけでは眼底の状態がわからない場合があります。こうした場合に、網膜に病気が無いかどうか、機能があるかどうかを知るために網膜電図検査が使われることもあります。

超音波眼底画像検査

網膜電図検査(ERG)と同じく、白内障の濁りが強く、細隙灯顕微鏡だけでは眼底の状態がわからない場合に使われます。光の欠点は組織を通過する力が弱いことです。このため強い白内障があると細隙灯でもOCTでも眼底の詳細がわかりません。
一方、超音波は濁った組織も通過できるため、どれほど強い白内障があっても眼底の状態を捉えることができます。ただし、分解能は光にはるか及ばず、ラフな画像しか得られません。網膜剥離の有無や硝子体出血の有無などを判断することができます。

細隙灯検査によって水晶体の濁りは確認できますが、濁りが強い場合や、目で見て詳しい診察することが難しい場合などは、上記のような検査を行い、緑内障や眼底疾患などがないかを入念に調べていきます。
例えば、黄斑前膜や黄斑円孔などの黄斑疾患は、硝子体手術で治しますが、50歳以上の患者さんの場合は、硝子体手術と白内障手術の同時手術を行います。これらの疾患を術前に把握できないと2回手術が必要になってしまいます。

眼圧が高く視野障害が軽度な場合、線維柱帯切開術という手術で眼圧を下げることができます。線維柱帯切開術は白内障手術と同時に行うと3 mmHgほどさらに低く眼圧を下げることができます。この場合も白内障手術前の緑内障の診断が決め手になります。

白内障手術を適切に行うための準備となる4つの検査

続いて、手術前の準備となる検査です。こちらも大きく分けて4つに分かれます。特に、最初の眼軸長検査と角膜曲率半径測定は、最適な眼内レンズを選択するために必要な検査です。

眼軸長検査

眼内レンズの度数を決める必須な検査の1つです。眼の奥行き(眼軸長=角膜頂点から網膜中心までの長さ)を調べる検査です。
眼軸長は像を映し出すスクリーンが角膜頂点からみて、どの位置にあるかを意味します。スクリーンが角膜に近いと遠視、遠いと近視なのです。そのスクリーンの位置を知り、ちょうどスクリーンにピントを結ぶ眼内レンズのパワーを決めるわけです。
検査自体は眼軸長測定器を使い、短時間で痛みもありません。

角膜曲率半径測定

眼内レンズの度数を決めるもう一つの必須な検査の1つです。覗き込むと絵が見える「オートレフケラトメーター」と呼ばれる角膜曲率半径測定器を使用して、角膜のカーブを測定します。
目の光を曲げる働きの3分の2は角膜、残りが水晶体です。角膜曲率半径を測定して、角膜の光を曲げる力を知るのです。そうすると残りの3分の1の役割を眼内レンズに果たさせれば網膜にピントが合うのです。

さらには、角膜の乱視を調べることもできます。角膜乱視はドーム状の角膜がある方向にひずんで生まれます。そのひずみをしらべることができます。乱視矯正用のトーリック眼内レンズを選ぶときに必要になります。

前眼部OCT検査

角膜や前房などがある目の前部分(前眼部)を三次元撮影する検査です。痛みなどもなく短時間で検査が可能です。いろいろなことがわかります。

角膜形状

角膜は人によりさまざまなゆがみを持っています。そのすべてを測定できます。単純な歪みとしては正乱視があります。乱視を矯正できるトーリック眼内レンズを選ぶときに測定値を用いて乱視の軸と度数を決めます。オートレフケラとメーターは角膜前面しか測りませんが、前眼部OCTは角膜後面も測りますのでより正確です。

前房深度・隅角検査

角膜と水晶体の間にある「前房」という空間が浅いか深いかを調べることができます。これを「前房深度」といいます。この前房深度によって、手術の難易度が変わってくるのです。
前房が極端に狭いと、白内障手術の際に行う前嚢切開や水晶体乳化吸引のステップがスムーズに行えない可能性があります。これは「ハイリスク白内障」と呼ばれ、難易度の高い手術になります。

また、前房深度が浅い人は隅角も狭くなる「狭隅角」になっていますので、「閉塞隅角緑内障」が発症する可能性も高くなります。
実は、狭隅角も白内障や老眼と同様に水晶体の老化が原因で起こります。水晶体が年齢とともに大きくなるために虹彩を後ろから押して狭隅角になるのです。治療として白内障手術を行うと隅角は開大し狭隅角は解消します。

【前眼部OCTによる隅角検査。左は隅角が狭くなっている画像。
右は同じ目で白内障手術により隅角が広くなっている画像。
前眼部OCTにより、隅角の広さがはっきりわかるようになり閉塞隅角緑内障の診断がわかりやすく患者さんにもお見せできるようになりました】

角膜内皮細胞検査

角膜内皮細胞の数を調べる検査です。白内障手術の際にはどうしても角膜内皮細胞が減少します。平均5%程度、ハイリスク白内障の手術ではもっと減るリスクがあります。

過去に手術歴があって、角膜内皮細胞の数がもともと少ない方などの場合、手術後に大きく減少し、500個/mm2を下回ると水疱性角膜症などを発症して視力低下が起きる可能性があります。
角膜内皮細胞は一度減ってしまうと増えることはありませんので、手術をする際には、事前にこうした検査が必要となるのです。水疱性角膜症の治療は角膜内皮移植です。

その他、身体の状態についても把握していく

目の検査以外にも、全身の身体の状態についても検査をします。ただしこれは「白内障手術だから」ではなく、一般的にどんな手術でも健康状態や感染症の有無を確認するために行うものとなります。採血による血液検査や心電図検査などを行います。

全身の検査は基本的に健康状態の確認のためですが、これまでに解説してきた目に関するさまざまな検査は、他の眼病のリスクがないか、術後に視力改善がどの程度期待できるかを予測するために重要な検査です。

目の状態をくまなく知ることで、「緑内障」や「黄斑変性」といった他の眼病の予防や早期発見にもつながります。また、検査でこまかく患者さんお一人おひとりの目の特徴を調べることで、適切な眼内レンズを選択できますし、手術のリスクをあらかじめ知り術前準備を行うことが可能になります。
検査は最適な白内障手術を行う準備であるとともに、目の健康を守ることにも役に立つことがお分かりいただけたのではないでしょうか。

まとめ

  • 最適で安全な白内障手術を行うために必要な術前検査を行います
  • 眼軸長と角膜曲率を正しく検査することで、狙った度数のレンズを選ぶことができる
  • 視力障害の原因が白内障だけとは限らないので、眼底も詳しく調べ緑内障や黄斑疾患の有無を把握することが大切である

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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