白内障とは、目の中のレンズの働きをする透明な水晶体が濁ってしまう病気です。症状としては光をまぶしく感じることや目のかすみが挙げられ、加齢によってほとんどの人がかかってしまいます。
しかし、どうして加齢とともに角膜は濁りにくいのに、水晶体は濁ってしまうのか、不思議に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか? もしくは、濁りを消して元に戻すことはできないのだろうかと。

残念ながら、水晶体は一度濁ってしまうと、その濁りだけを取り除き、元の透明な組織に戻すことはできません。そのため、白内障の治療は濁った水晶体の中身を取り除き、眼内レンズに入れ替える、というものになります。

今回は白内障になる原因について、仕組みなどを詳しくご説明していきましょう。ご自分やご家族の方で、そろそろ気になっている方は、ぜひ参考にしてください。

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白内障の原因となる“水晶体が濁る”のはなぜ起きる?

水晶体
「なぜ水晶体が濁ってしまうのか?」その理由は、水晶体を構成しているたんぱく質が加齢や紫外線の影響、ストレスによる酸化などによって変性してしまうためだと考えられています。
水晶体は、目の中でレンズの役割を担う組織で、光を通し屈折させる役割を持っているため、透明な凸レンズのかたちをしています。中心から順に、水晶体核、水晶体皮質、上皮細胞によって成り立ち、水晶体嚢という袋に包まれています。

水晶体の透明さを保つ“クリスタリン”の配列

水晶体の中身となる核や皮質を構成しているのは、“クリスタリン”という無色透明のたんぱく質と水分です。クリスタリンが規則正しい配列で並ぶことにより、水晶体の透明性が保たれ、柔軟性を維持して、レンズとしての役割を果たすのです。
水晶体の中には神経や血管がなく、水晶体嚢と呼ばれるうすい膜状のふくろに包まれています。ふくろの前方部分の前嚢の裏側には水晶体上皮細胞が一列に並んでおり、この細胞が水晶体の中身を形成する線維細胞を、生涯の間産生し続けます。

この結果、水晶体嚢の中には線維細胞が木の年輪のように層状に規則正しく配列しており、皮質と呼ばれる組織が形作られています。
この線維細胞は血管が無い水晶体では逃げ場が無く、年齢とともに次々と形成され重層化していき中央に集積され圧縮され硬くなっていきます。これが核で、50才頃から形成されるようになります。
凝集、不溶化、相互作用変化がおこり、これらが水晶体混濁の一因となると考えられています。

このようにクリスタリン蛋白は体の他の組織と違って新しく交換や補充をすることができません。このため、新しい線維細胞を作り続けるしかないのです。
しかし、水晶体の中央に集積した古い線維細胞のクリスタリンは、異常凝集し、不溶化するなどの構造変化を起こし透明性を保てなくなっていくのです。

たんぱく質の変性とは、どのようなもの?

では、なぜたんぱく質は変性により透明から白く濁るのでしょうか?

例えば、フライパンの上で生卵を割って目玉焼きを作るとします。熱を加えることで透明だった白身が白くなるのは、誰もがご存知だと思います。これは、白身の部分が“熱”というストレスを受けたことにより変性した結果です。
原因となるストレスはさまざまなものが考えられるため一概には言えませんが、クリスタリンも何らかのストレスがかかることにより、白く変性してしまうのです。

【卵の白身は、熱によって白く変性する。白内障になった水晶体にも似た現象が起きている】

水晶体を濁らせる6つの原因

前述した通り、水晶体を濁らせる主な原因はさまざまなストレスによるたんぱく質の変性ですが、そのストレスをもたらす原因は、大きく次の6つに分けることができます。
もし該当する原因に心当たりのある方は、白内障にかかりやすいことに注意してください。

白内障の画像

【白内障の目】

紫外線や酸化ストレス(加齢性白内障)

最も一般的なのが、加齢によるたんぱく質の変性です。これによって起こる白内障を「加齢性白内障」と呼びます。長年にわたって紫外線を受け続けたストレスや酸化ストレスなどにより、整然と並んでいるたんぱく質(クリスタリン)が変性してしまいます。
眼底に紫外線が届かないことはご存じでしたか?これは水晶体が紫外線を吸収してしまうからです。言い換えると、水晶体は眼底を紫外線から守るために自己犠牲を行っているのです。
前述した通りクリスタリンは酸化したり古くなったりしても排出も交換もされないため、年齢を重ねるとともに変性した細胞が溜まっていき症状が進行してしまうのです。

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紫外線は目に毒!?紫外線がもたらす目の障害

加齢性白内障の場合、核が黄色から褐色へと濁っていく「核白内障」や、核のまわりを取り巻く皮質部分が白く濁っていく「皮質白内障」が多いです。核白内障は近視化したり、色がくすんで見えたりしますが、進行が緩やかなため症状に気づきにくいことも特徴です。
皮質白内障は、光をまぶしく感じる、ものがダブって見えるなどの症状があり気がつきやすいのです。

遺伝や母胎感染(先天白内障)

遺伝的な要因のほか、母親が妊娠中に風疹を患ったことなどが原因で発症する可能性があるのが「先天白内障」です。生まれつき水晶体が濁っているケースもありますし、成長とともに水晶体が濁って白内障を発症する「発達白内障」というケースもあります。
赤ちゃんの瞳が白っぽく濁って見える場合はすぐに医師に相談しましょう。視力というのは幼児期に形成されるもの。白内障が視力の発達に影響し「弱視」になる恐れもあるため、早期発見・早期治療が重要です。

物理的障害(外傷性白内障)

外部から目に加えられた強い衝撃が目にとっての大きなストレスとなって発症するのが「外傷性白内障」です。
例えば、格闘技やケンカで受けた拳が目を直撃した、サッカーや野球などの球技をしていた際にボールが目に当たった、などにより発症することがあります。外傷性白内障は、すぐに白内障の症状が出てこない場合もあります。ケガをして何年も経ってから、白内障を自覚することもありますので、気を付けなければなりません。

チン小帯

外傷により水晶体のふくろや水晶体を支えている線維(チン小帯といいます)がダメージを負っていて白内障手術が難しくなるハイリスク白内障の1つです。

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チン小帯が弱いと白内障手術が困難に~ハイリスク白内障②~

アトピーや他の眼病による影響(併発性白内障)

アトピー性皮膚炎や他の病気・眼病が原因となって発症するのが、「併発性白内障」です。中でも、「アトピー性白内障」は、アトピー性皮膚炎にかかっている人の約30%が併発しているとも言われています。
原因ははっきり解明されていませんが、痒みを抑えようと目のまわりを叩いて刺激することが、目にストレスを与え、それが水晶体を濁らせる要因の一つとなっていると考えられています。また、アトピー性皮膚炎の治療に用いるステロイドも原因になっています。

その他、緑内障や網膜剝離、ぶどう膜炎(眼内炎)などの眼病によって白内障が引き起こされる場合もあります。代表的なものはぶどう膜炎(眼内炎)による併発性白内障で、この場合、著しい視力の低下を伴います。

前嚢と後嚢

アトピー性白内障もぶどう膜炎(眼内炎)による併発性白内障も、水晶体のふくろ部分が濁る「前嚢下白内障」「後嚢下白内障」であることが多く、「前嚢下白内障」はふくろの前側が、「後嚢下白内障」は袋の後ろ側が濁ります。
「前嚢下白内障」と「後嚢下白内障」は、発症後急速に視力が低下すること、若い人でもかかることなどが特徴です。

高い血糖によるダメージ(糖尿病性白内障)

併発性白内障の一種に、糖尿病によって引き起こされるものも挙げられます。併発性白内障の中でもアトピー性白内障と並んで多い白内障です。濁りの原因としては、水晶体の中で高濃度になったぶどう糖がソルビトールという物質の生成を促し、それが水晶体を濁らせるストレスとなっているのではないかと考えられています。
こちらは、水晶体のふくろ部分が濁る「後嚢下白内障」である場合が多く、進行が速く、若い人もかかる可能性があるため、注意が必要です。

ステロイド(薬剤性白内障)

ステロイド剤を長期間使用することが原因で起こるのが、「薬剤性白内障」です。
先述したアトピー性皮膚炎をはじめとした皮膚科の薬、他には痔の薬など、ステロイドを含んだ薬は私たちの身近なところにたくさんあります。適度に使用する程度なら問題ありませんが、長期にわたって使用するなら眼科での検査が必須になるでしょう。

アトピー性皮膚炎ではステロイドが治療に使われるため、「アトピー性白内障」と原因が判別しにくいことも特徴です。ステロイドは眼圧を上昇させステロイド緑内障になる人もいますので、眼科でみてもらいながら使うことが大切です。

アトピー性皮膚炎、ぶどう膜炎(眼内炎)、糖尿病などによる「併発性白内障」と同じく、「後嚢下白内障」である場合が多く、進行が早く、若年層でもかかる可能性があるという点を覚えておきましょう。

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白内障手術で得られるのは“第二の人生”

白内障を引き起こす原因はこのようにたくさんあります。外傷や他の病気による併発、薬剤による発症などは、健康や事故に気を付けて過ごすことで避けることができるかもしれません。
しかし、繰り返しになりますが主な要因は加齢による水晶体の濁りであるため、誰でも遅かれ早かれ白内障にはかかってしまうということは覚えておいた方がよいでしょう。

原因は何であれご心配しないでください。白内障は手術によって確実に治療できる病気です。どんな原因の白内障の場合でも、濁った水晶体を除去し人工の透明な眼内レンズを挿入して治すことができます。
場合によっては、症状の進行を抑えるための点眼治療を行うこともありますが、それはあくまでも病気の進行を抑えるだけ。白内障を治す方法は、濁った水晶体を取り除いて眼内レンズを挿入する――この、たったひとつの方法しかありません。

眼内レンズ

また、白内障手術は、悩みの近視や乱視も治すことができますし、入れるレンズを多焦点レンズにすれば、老視までも改善します。他にも、白内障手術のための検査をしていく段階で、それまでは気づいていなかった別の眼病や病気を発見できる場合もあります。
つまり、白内障は治せる病気であり、クリアな見え方を取り戻すだけではなく、近視、乱視、老視から解放されるというプラスアルファの効果も期待できるのです。

ですので、白内障が不安だという方も多いかもしれませんが、「白内障になったらしい!どうしよう?」ではなく、「今後はどのような生活を送ろうかな?」「昔みたいに見えるようになるなんて、気持ちまで若返るな~!」というように、“アンチエイジングが叶う絶好のチャンス”として捉えていった方が良いのではないかと思います。

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視力低下だけではない!白内障の意外な初期症状

板谷院長のひとことアドバイス

白内障は高齢の方の病気というイメージがありますが、原因は加齢だけではなく、さまざまな年齢で起こりえます。白内障手術は短時間の手術です。代わりとなる眼内レンズも良いものがでそろいました。ご心配なさらず積極的に手術に取り組み、より良い見え方を手に入れてください。

まとめ

  • 水晶体を構成する“クリスタリン”というたんぱく質が変性することで、水晶体が濁るのが白内障の仕組みです。
  • 水晶体上皮細胞が線維細胞を生涯作り続け、加齢とともに古くなった線維細胞は次々と中心に集積され圧縮され硬い核が形成され核白内障になります。
  • 白内障の原因は大きく分けて、「加齢」「遺伝や母胎感染」「物理的障害」「アトピーや他の眼病の影響」「特殊な糖によるダメージ」「薬剤」などが挙げられます。
  • 水晶体を濁らせ、白内障の症状を引き起こす原因は多々ありますが、白内障を治す方法はたったひとつ(水晶体を除去し、眼内レンズを挿入する)しかありません。
  • 誰でも加齢とともに白内障にかかりますが、よほどのハイリスクでない限り確実に治せます。

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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