白内障手術は通常、同じ時期に両目に行います。白内障の大半を占める加齢性白内障では、両目で同じように症状が進行していくケースが多いためです。しかし白内障は、加齢以外の原因で起こることもあり、その場合は片目だけに発症することもあります。また、たとえ加齢性の白内障であっても、時には「片目だけ」の手術が必要になるケースもあります。

今回は「片目だけ」に白内障手術を行うケースについて解説します。

 

「片目だけ」白内障手術が
必要になるケースとは

「片目だけ」に白内障手術を行うのは次に示すようなケースです。それぞれ、年齢や目の状態、ライフスタイルなどによって治療方針を決定する際に考慮しなければならないポイントがあります。

加齢性白内障で左右差がある場合

加齢性の白内障でも、左右の目の症状の進み方が異なる場合があります。このとき特に気をつけなければならないのは、強い近視のある方や糖尿病などの基礎疾患のある方です。こうした方たちでは、急激に白内障の症状が進むことがありますので、左右の目のどちらかに強い混濁が出てきたときには、片目だけの手術を行うことになります。

外傷

目を強くぶつけた、木片が目に刺さった、ボールが目に当たったなど、外傷によって水晶体が混濁して白内障を発症することがあります。

外傷性の白内障の場合、通常の白内障手術が難しくなることがあります。目に強い力がかかることで、水晶体嚢(水晶体を覆っているふくろ)や、チン小帯(水晶体嚢を周囲に組織につなぎとめている糸状の組織)が弱くなっているケースがあるからです。

チン小帯の多くが断裂しているような場合、眼内レンズを目に直接縫い付ける「眼内レンズ縫着術」など、特殊な手術が必要になります。

先天白内障

先天白内障とは、遺伝的要因や染色体異常、妊娠中に母親が風疹に感染したことなどが原因となって、生まれながらに水晶体が濁ってしまう病気です。先天白内障の多くは両眼性ですが、まれに片目だけに白内障が生じることがあります。

先天白内障の乳児や小児に行う白内障手術は特殊な手術になりますので、小児眼科専門医を受診し、相談をしてください。

過去に片目に眼内レンズを入れている

比較的若い頃に片目に白内障手術をして眼内レンズを入れた方で、その後、高年齢になって他方の目にも白内障の症状が出てきたときには、新たに発症した目に「片目の白内障手術」を行うことになります。

基本的には、白内障のないほうの目に
合わせて眼内レンズを選ぶ

若い世代の方で片目だけに白内障がある場合に行う手術では、白内障のないほうの目の視力に合わせて眼内レンズを選ぶのが一般的です。

保険診療の範囲で眼内レンズを入れるのであれば、白内障のないほうの目に近視がある方では「近く」に焦点のある単焦点眼内レンズを入れ、遠視や正視の方は「遠く」にピントがある単焦点眼内レンズを入れます。

強度近視の人は、眼内レンズだけでは視力矯正が難しいことも

一般に、近視の中でも度数が-6D*を超えるものを「強度近視」と呼びます。白内障の手術では、眼内レンズを入れることによって、一般的に近視の度数を-2Dから-3Dに調整します。強度近視の人に片目だけ白内障手術を行うと、左右の目の近視度数の差が-3D以上になってしまうことがあります。そうなると、左右それぞれの目で認識する像の大きさが異なってしまうため、ものが二重に見えるようになってしまいます。このように、強い近視のある方では、片方の目に眼内レンズを入れただけでは、満足のいく見え方を実現するのが難しいことがあるのです。

そこで強度近視の方では、白内障のないほうの目にコンタクトレンズを入れるかメガネをかけるかして矯正を行い、眼内レンズを入れたほうの目の度数とのバランスを整えることがあります。

D (ディオプター)

D(ディオプター)とは、目の屈折力を表す単位です。遠視の度数はプラス(+)で、近視の度数はマイナス(−)で表し、「+6D」とか「-6D」というように表記します。
ともに数値が大きいほど遠視や近視の度合いが強いことを意味します。つまり、D(ディオプター)の数値が「±0」の状態が「正視」ということになります。
【図版・ディオプター説明の図】

白内障のないほうの目の視力が良い方には、多焦点眼内レンズを入れる選択肢も

白内障のないほうの目の視力が良く、運転やスポーツを楽しみたいとか、仕事などで遠くも近くもメガネなしで見たいといった希望のある人には、多焦点眼内レンズを用いる選択肢もあります。

日本で白内障治療に多焦点眼内レンズが使われるようになったのは2009年頃で、それ以降、高機能の多焦点眼内レンズが次々と開発され、治療の選択肢が広がってきています。

多焦点眼内レンズには保険が適用されないため、手術費用は片目でも50~60万円になりますが、一度入れれば眼内レンズは半永久的に使用できます。30代の方なら、その後に50年、60年と使い続けられますから、1年あたりのコストは1 万円ほどとなります。決して「高い買い物」ではないと思いますので、検討してみるとよいでしょう。

40代以上の方であれば、両目を手術する選択肢も

40代以上で少し老眼が始まってきている方では、片方はそれほど白内障が進んでいなくても、あえて両目に眼内レンズを入れるという選択肢もあります。

まだそれほど症状が進んでいない目に手術を施すことに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、40代であれば初期の老眼が始まっている方が多いですし、やがて年齢がさらに上がっていけば、必ず老眼や白内障の症状が出てきます。早めに決断をするのも悪いことではありません。

両目を同時に手術すると屈折の調整などが行いやすくなるほか、眼圧が高い方では緑内障の発症リスクを下げられるという利点もあります。

過去に片目に単焦点眼内レンズを入れた方が
新たに他方の目にも手術を行うときには

過去に片目に白内障手術をして単焦点眼内レンズを入れた方に、その後、もう一方の目にも白内障の症状が現れてきたときには、新たに発症したほうの目に「片目の白内障手術」を行うことになります。このような場合、眼内レンズの選び方には次のような4つの選択肢があります。

➀最初に入れた眼内レンズに度数を合わせ、他方の目にも単焦点眼内レンズを入れる

近視の方やメガネを使うことに抵抗のない方は、両目とも単焦点眼内レンズにして、見えにくい距離はメガネで補う形をとります。

②片目は単焦点眼内レンズのまま、新たに手術するほうの目に多焦点眼内レンズを入れる

もともと目が良かった方で、「なるべくメガネを使いたくない」「メガネなしで遠くも近くも見たい」と望む場合は、多焦点眼内レンズの利用を検討してみるとよいでしょう。

③新しく手術をする目に多焦点眼内レンズを入れ、過去に手術した目には「2 枚目レンズ」を入れる

過去に単焦点眼内レンズを入れた目と他方の目の屈折度数に差がある場合は、すでに眼内レンズの入っている目に「2枚目レンズ(アドオンレンズ)」を追加挿入し、左右で合計3枚の眼内レンズを装着することにより、両目の見え方を調整することができます(2 枚目レンズの手術費用は自費になります)。

④過去に入れた単焦点眼内レンズを多焦点眼内レンズに入れ替え、他方の目にも新たに多焦点眼内レンズを入れる

近年の多焦点眼内レンズの進化のため過去に単焦点眼内レンズで手術をされた方がまず思い浮かべる選択肢かもしれません。しかし、眼内レンズの摘出はリスクを伴う手術となるため、この選択肢をとる医師は少ないでしょう。

以上でご紹介した選択肢の中から、ご自分に合った方法を選んで白内障手術を受けていただければと思います。ただし、2枚目レンズの挿入や、古い単焦点眼内レンズを多焦点眼内レンズに入れ替える手術には、高い技術を要します。これらの手術を希望する場合は、高度な白内障手術への対応が可能な眼科で相談されることをおすすめします。

板谷院長のひとことアドバイス

白内障の手術は、左右の目の状態により、片目だけ手術する場合があります。年齢やライフスタイルにより、個々にご希望があると思いますので、治療方針をたてるときは、患者さんとよく話し合い、考慮して決めています。片目だけ手術をするケースは幾通りもあります。今回ご紹介したケースをご参考にしながら、ご自分に適した選択をなさってください。

まとめ

  • 片目だけが白内障の場合、基本的には、白内障のないほうの目の視力に合わせた単焦点眼内レンズを入れます。
  • 白内障のないほうの目の視力が良く、メガネなしの生活を望む方には、多焦点眼内レンズの装着がおすすめです。
  • 片目だけの白内障でも、40代以上の方では、老眼治療を兼ねて両眼に眼内レンズを入れる選択肢もあります。
  • 過去に片目に眼内レンズを入れた方が新たに他方の目にも眼内レンズを入れるときには、眼内レンズの選び方に4つの選択肢があります。

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執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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