本記事は、2020年1月28日に再更新いたしました。

白内障手術は通常、同じ時期に両目に行います。白内障の大半を占める加齢性白内障では、左右で差があっても両目とも白内障が進んでいるケースが多いためです。しかし白内障は、比較的若年でも加齢以外の原因で起こることもあり、その場合は片目だけに発症することが多いです。また、たとえ加齢性の白内障であっても、時には「片目だけ」の手術が必要になるケースもあります。

今回は「片目だけ」に白内障手術を行うケースについて解説します。
 

「片目だけ」白内障手術が
必要になるケースとは

「片目だけ」に白内障手術を行うのは次に示すようなケースです。それぞれ、年齢や目の状態、ライフスタイルなどによって治療方針を決定する際に考慮しなければならないポイントがあります。

加齢性白内障で左右差がある場合

加齢性の白内障でも、左右の目の症状の進み方が異なる場合があります。このとき特に気をつけなければならないのは、強い近視のある方や糖尿病などの基礎疾患のある方です。こうした方たちでは、急激に白内障の症状が進むことがありますので、左右の目のどちらかに強い混濁が出てきたときには、片目だけの手術を行うことになります。

外傷

目を強くぶつけた、木片が目に刺さった、ボールが目に当たったなど、外傷によって水晶体が混濁して白内障を発症することがあります。

外傷性の白内障の場合、通常の白内障手術が難しくなることがあります。目に強い力がかかることで、水晶体嚢(水晶体を覆っているふくろ)や、チン小帯(水晶体嚢を周囲に組織につなぎとめている糸状の組織)が弱くなっているケースがあるからです。

チン小帯の多くが断裂しているような場合、眼内レンズを目に直接縫い付ける「眼内レンズ縫着術」など、特殊な手術が必要になります。

先天白内障

先天白内障とは、遺伝的要因や染色体異常、妊娠中に母親が風疹に感染したことなどが原因となって、生まれながらに水晶体が濁ってしまう病気です。先天白内障の多くは両眼性ですが、まれに片目だけに白内障が生じることがあります。

先天白内障の乳児や小児に行う白内障手術は特殊な手術になりますので、小児眼科専門医を受診し、相談をしてください。

過去に片目に眼内レンズを入れている

比較的若い頃に片目に白内障手術をして眼内レンズを入れた方で、その後、高年齢になって他方の目にも白内障の症状が出てきたときには、新たに発症した目に「片目の白内障手術」を行うことになります。

基本的には、反対側の目に合わせて眼内レンズを選ぶ

若い方の場合

老眼が始まっていない、あるいは始まっても軽度の30~50歳の方で片目だけに白内障がある場合に行う手術では、白内障のないほうの目の視力に合わせて眼内レンズを選ぶのが一般的です。眼内レンズになると調節力がほとんど無くなり一気に老眼になりますが、健康な方の目は、まだ調節力がありますので、今までとそう変わりない生活が維持されます。

元々遠方がよく見えていた方は、遠方合わせの単焦点眼内レンズにすると、健康な方の目で手元が見えますので、メガネやコンタクトレンズを使わずに生活できると期待できます。

元々手元が見えていた方は、手元合わせの単焦点眼内レンズにすると、これまで通り遠方用のメガネまたはコンタクトレンズで生活することになります。メガネやコンタクトレンズの煩わしさから解放されたいという希望が強い場合は、術眼に多焦点眼内レンズを入れる選択肢もあります。この場合、健康な方の目は手元をカバーしてくれますので、多焦点眼内レンズ眼は遠方~中間をカバーできるものを選ぶと良いでしょう。

強度近視の人は、眼内レンズだけでは視力矯正が難しいことも

一般に、近視の中でも度数が-6D*を超えるものを「強度近視」と呼びます。強度近視の方は、そうで無い方よりも早く白内障が発症することが多く、40代での白内障をよく経験します。強度近視の方の1眼目は、白内障の手術では、眼内レンズを入れることによって、一般的に手元がメガネ無しでよく見える便利な中等度近視である-2Dから-3Dに調整します。強度近視の人に片目だけ白内障手術を行うと、左右の目の近視度数の差が-3D以上になってしまうことがあります。そうなると、メガネで両眼をしっかり矯正すると左右それぞれ見える像の大きさが異なってしまうため、ものが二重に見えるようになってしまいます(不同視)。コンタクトレンズを用いれば不同視は起こりません。

もちろん、健康な目の近視度数に合わせて眼内レンズの度数を選べば、不同視の心配はありません。しかし、強度近視の方は、遠くも近くもメガネやコンタクトレンズ無しではよく見えない不便さに苦しんできておられ、白内障手術を機に強度の近視を正視または便利な近視に変えたいというお気持ちが強いのです。この気持ちに応えるために、術眼は遠くまたは便利な近視に合わせ、健康な方の目はコンタクトレンズを使うという方法があります。老眼が強くなっている方は、術眼に多焦点眼内レンズ、健康な目にコンタクトレンズという方法もあります。

健康な目にコンタクトレンズを用いる方法は、コンタクトレンズトラブルが起こりやすくなったり、健康だった方の目に白内障が進んできた場合に、2眼目の白内障手術を行い、1眼目に合わせてやれば良いわけです。この2眼目の手術のことも念頭に置いた上で1眼目の眼内レンズの選択を行うことが重要です。

D (ディオプター)

D(ディオプター)とは、目の屈折力を表す単位です。遠視の度数はプラス(+)で、近視の度数はマイナス(−)で表し、「+6D」とか「-6D」というように表記します。

ともに数値が大きいほど遠視や近視の度合いが強いことを意味します。つまり、D(ディオプター)の数値が「±0」の状態が「正視」ということになります。

【図版・ディオプター説明の図】

60歳以上の方であれば、両目を手術する選択肢も

60代以上では、老眼がほぼ完成していますことと、近い将来2眼目の手術が必要になることを考え合わせますと、両目に手術を行い好きな度数の眼内レンズを入れるという選択肢もあります。両目を同時に手術すると屈折の調整が行いやすくなります。乱視が大きい場合は、乱視矯正もできます。

それでも良い方の目はまだよく見えているから、片眼だけの手術を希望される場合でも、手術をした目の見え方が予想以上に鮮明で、良いと思っていた方の目が意外と見え方がよくないことに気がつかれ、2眼目も手術を希望されることが多いです。
60歳以上の方の片眼白内障手術の場合は、良い方の目には老眼で調節力があまり無いことを考慮して度数を選ぶ必要があります。

白内障のないほうの目の視力が良い方には、多焦点眼内レンズを入れる選択肢も

白内障のないほうの目の視力が良く、運転やスポーツを楽しみたいとか、仕事などで遠くも近くもメガネなしで見たいとう希望のある人には、多焦点眼内レンズを用いる選択肢もあります。

日本で白内障治療に多焦点眼内レンズが使われるようになったのは2009年頃で、それ以降、高機能の多焦点眼内レンズが次々と開発され、治療の選択肢が広がってきています。

多焦点眼内レンズには保険が適用されないため、手術費用は自費(2019年度までは先進医療もあり)になります。一度入れれば眼内レンズは半永久的に使用できますので、希望のある方は選択しに入れてはいかがでしょうか。

過去に片目に単焦点眼内レンズを入れた方が
新たに他方の目にも手術を行うときには

過去に片目に白内障手術をして単焦点眼内レンズを入れた方に、その後、もう一方の目にも白内障が進んできたときには、新たに発症したほうの目に「片目の白内障手術」を行うことになります。このような場合、眼内レンズの選び方には次のような3つの選択肢があります。

➀最初に入れた眼内レンズに度数を合わせ、他方の目にも単焦点眼内レンズを入れる

近視の方やメガネを使うことに抵抗のない方は、両目とも単焦点眼内レンズにして、見えにくい距離はメガネで補う形をとります。

②片目は単焦点眼内レンズのまま、新たに手術するほうの目に多焦点眼内レンズを入れる

もともと目が良かった方で、「なるべくメガネを使いたくない」「メガネなしで遠くも近くも見たい」と望む場合は、多焦点眼内レンズの利用を検討してみるとよいでしょう。単焦点と多焦点の組み合わせは、ほとんどの場合、時間とともに慣れて問題になりません。特に、老眼が始まっていないか、始まっても軽度の30~50歳の方は、残る目の白内障手術で単焦点眼内レンズを入れると、両眼ともに完全な老眼になることに留意する必要あります。

③新しく手術をする目に多焦点眼内レンズを入れ、過去に手術した目には「多焦点アドオンレンズ」を入れる

両目の老眼を治したいときは、過去に単焦点眼内レンズを入れた目の多焦点のアドオンレンズを入れ、新たに手術をする目には多焦点眼内レンズを入れるという方法があります。アドオンレンズとは、既に入っている眼内レンズの上に重ねるように入れることができる眼内レンズのことです。(アドオンレンズの手術費用は自費になります)。

以上でご紹介した選択肢の中から、ご自分に合った方法を選んで白内障手術を受けていただければと思います。

板谷理事長のひとことアドバイス

白内障の手術は、左右の目の状態により、片目だけ手術する場合があります。年齢と老眼の程度、近視の程度、反対側が眼内レンズか否かなどにより、いくつかの選択肢があります。今だけではなく、2眼目の手術のことを考慮した上で、自分のベストを選択しましょう。

まとめ

  • 片目だけが白内障の場合、基本的には、白内障のないほうの目の視力に合わせた単焦点眼内レンズを入れます。
  • 若い方は健康な方の目に調節力があることを考慮して、眼内レンズを選びます。
  • 強度の近視は眼内レンズにより治せるますが、健康な目にコンタクトレンズを用いる必要があります。
  • 白内障のないほうの目の視力が良く、メガネなしの生活を望む方には、多焦点眼内レンズの装着がおすすめです。
  • 過去に片目に眼内レンズを入れた方が新たに他方の目にも眼内レンズを入れるときには、眼内レンズの選び方にいくつかの選択肢があります。

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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