本記事は、2020年3月28日に再更新いたしました。

ものを見るときに二重に見えたり、ぶれたりして、近くも遠くもピントが合わない、夜になると道路標式が見にくいなどの症状はありませんか?こうした症状があれば「乱視」かもしれません。

乱視は、角膜のカーブがきれいなドーム形状ではなく、歪んでいることで起こります。また加齢などの原因により水晶体に濁りが生じることで乱視になることもあります。
乱視を放っておくと、目が疲れたり、頭痛や肩こりを引き起こすことも少なくありません。

乱視により生じる症状や乱視のメカニズムについて、わかりやすくご紹介します。

乱視のしくみ

角膜乱視は角膜がラグビーボールのように歪み、焦点が一点で結ばれないこと


外から目に飛び込んできた光は、レンズの役目を果たす角膜と水晶体で屈折して、網膜の上に焦点(ピント)が合い、像を結びます。これを「正視」といいます。正視は、角膜がドーム状、水晶体が凸レンズ状の形をしているため、像が一点で結ばれています。

一方の「角膜乱視」は、図を見ていただくとわかるように角膜の形が一定方向に歪んでいることから、網膜上の一点にピントを合わせることができません。
ラグビーボールを思い浮かべてもらうとわかりやすいですが、角膜の縦と横、斜めのカーブが異なるため光の屈折が変わり、ピントが一点に合わないのです。そのため、ものがぼやけて見えたり、ぶれたりします。

角膜乱視には種類があるの?

大きく分けて「正乱視」「不正乱視」があり、正乱視は、歪みの方向により名前がついています。

前述のラグビーボールのように角膜の縦と横のカーブが異なっている乱視のことを、「正乱視」といいます。この場合の角膜の歪みは一方向に沿って生じており、対称性が保たれています。正乱視が強いとものが2重に見えます。弱いとぼやけの原因になります。

一方、炎症やケガなどによって角膜表面のカーブにムラが生じて、像がうまく一カ所に結べない乱視のことを「不正乱視」といいます。不正乱視は2重に限らず、3重、4重に見えたり、程度が強いと視力が落ちます。

正乱視の種類

正乱視は、角膜が歪む方向により、名前がつけられています。

ラグビーボールが横になっていて、角膜が縦につぶれたような形をしているものを「直(ちょく)乱視」、ラグビーボールが縦になっていて、角膜が横につぶれたような形をしているものを「倒(とう)乱視」、ラグビーボールが斜めになっていて、角膜が斜めに歪んだような形になっているものを「斜乱視」といいます。

乱視に水晶体は関係しないの?

若い頃の乱視は、ほとんどが角膜乱視。加齢により、水晶体に濁りが生じて乱視になる人も

ここまで、角膜の歪みが乱視の原因だとご説明してきましたが、実は水晶体も乱視の原因になります。

目に入った光は角膜と水晶体により屈折し、網膜上にピントをあわせます。網膜上の一点にピントが合わないのが乱視ですが、乱視には、角膜が原因の乱視(角膜乱視)と、水晶体が原因の乱視(水晶体乱視)があります。

若い頃の乱視はほとんどが角膜乱視で、歳を重ねると水晶体が老化し濁ることで乱視の原因になります。水晶体に白内障の兆候が現れると、光の屈折に変化が生じてムラができ複数のピントが生じてしまうのです(若くても加齢以外の要因で白内障になる場合もあります)。角膜はきれいなのに、ものが3重、4重に見えたら水晶体乱視を疑います。

すなわち、乱視とは、角膜乱視と水晶体乱視が合わさったものなのです。不思議と良く出来たもので、角膜乱視が進み強くなっても、水晶体乱視が進み角膜乱視を打ち消して乱視がほとんど生じないというケースもかなりみかけます。
こういう目に、白内障手術を行うと隠れていた角膜乱視が表に現れますので要注意です。トーリック眼内レンズを用いて角膜乱視を矯正しておく必要があります。

若い頃の乱視はほとんどが角膜の歪みが原因ですが、若い頃に乱視がなくても水晶体に濁りが生じると乱視がでてくることをご存じおきください

乱視の症状

月がダブって見えたり、夜の景色がにじんで見えたら乱視かも

以下でご紹介するような症状があれば乱視かもしれません。一度、眼科でご相談されることをおすすめします。
・ものが見にくいので目を細めてピントを合わせてしまう
・月を見上げると、二重、三重などダブって見える(正乱視は2重に見えます。不正乱視か水晶体乱視は3重、4重のように多重に見えることが多いです)
・夜、車を運転していると、昼間に比べて標識や信号がぼんやりとしか見えない
・夜、ビルの灯りや対向車のヘッドライトがまぶしい
・3と8、Eと3などの文字の区別がつかないことがある
・目が疲れやすく、頭痛や肩こりを感じることがある
・パソコンの文字を読むのがつらい

乱視の治療

正乱視はメガネやコンタクトレンズで、
不正乱視はハードコンタクトレンズで矯正する

正乱視は、メガネやコンタクトレンズで矯正できます。目のひずみと逆方向にひずませる「円柱レンズ」という特定の方向の光のみを屈折できるレンズ機能を付加して、一点に焦点が合うようにします。角膜が歪んでいる方向と反対の歪みを持ったレンズ機能を合わせることで、互いに打ち消し合って歪みをなくすことができるのです。

コンタクトレンズの場合は、瞬きをするたびにレンズが眼球の上で回転するので、レンズの回転を抑え、正しい位置に安定させることのできるタイプを選ぶことが大切です。最近は使い捨ての乱視矯正レンズも登場していますので、眼科でご相談ください。

不正乱視は、角膜の表面のカーブにムラができて起きる複雑な乱視であるためメガネでの矯正はできません。そのためハードコンタクトレンズで矯正します。ハードコンタクトレンズと角膜の間の涙液層が角膜の代わりをして角膜のカーブのムラを埋めて不正乱視を矯正できます。ハードコンタクトレンズでの矯正が難しい重症例は、レーザーを用いた屈折矯正手術を行います。

水晶体乱視は、人工眼内レンズに置き換える
白内障の手術で治療をする

水晶体に濁りが生じる病気を「白内障」といいますが、白内障が原因となっている乱視(水晶体乱視)は、白内障の治療を行うことで消失します。水晶体に濁りがそれほど無くても水晶体乱視が生じて見えにくくなる比較的若い方もおられます。
どこにも病気が見つからないのに視力が出ない方に小さな孔から覗いてもらぅて視力を測る(ピンホール視力)と視力がでる場合は、水晶体乱視が視力を妨げている可能性が高いです。
ウエイブフロントアナライザーという検査機器で検査をすると、視力検査のランドルト環が何重にも重なって見える様子が見えるようになります。

水晶体乱視は、白内障手術でしか治せません。このとき、角膜の正乱視もある場合は、トーリックレンズという乱視も矯正できる眼内レンズ用いて矯正します。すなわち、角膜正乱視も水晶体乱視も、白内障手術により矯正可能なのです。

詳しくはこちらの記事もご参照ください。

板谷理事長のひとことアドバイス

乱視に角膜が原因のものと水晶体が原因のものがあり、区別することが重要です。角膜乱視は、メガネやコンタクトレンズで矯正できる正乱視とハードコンタクトレンズでしか矯正できない不正乱視があります。乱視の原因を突き止め適切な矯正を行っていただきたいと思います。

まとめ

  • 乱視を生み出す原因は角膜と水晶体にあります。
  • 乱視の症状で多いのは、ものがダブって見える、ぼんやり見える、夜はさらにぶれて見えるなどが多いです。
  • 角膜乱視には、正乱視と不正乱視があります。
  • 角膜の正乱視は、角膜の歪んでいる方向により直乱視、倒乱視、斜乱視にわけることができます。メガネによる矯正が可能です。
  • 角膜の不正乱視は、メガネでは矯正できず、コンタクトもハードコンタクトでしか矯正できません。
  • 水晶体が不均一な濁りがでると乱視を引き起こします。白内障手術でしか治せません。
  • 角膜が原因の乱視と、水晶体が原因の乱視は、互いに関係し合っています。

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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