目に出来るがんは発症数が少ないためあまり知られていません。それゆえに見過ごして治療が遅れるケースがありますが、他の臓器に出来るがん同様、早期発見が重要です。早期の受診と適切な治療につなげるために、目のがんについての基本知識を知っていただきたいと思います。

発生部位による目のがんの名称と特徴

目のがんは、出来る部位によって以下のように分けることができます。

まぶたに出来るがん「眼瞼腫瘍」

基底細胞がん
増殖して、副鼻腔や頭蓋骨など周囲に浸潤することもあるがん。
脂腺がん
涙の蒸発を防ぐ脂肪を分泌するマイボーム腺やツァイス腺に発生。
扁平上皮がん
眼瞼腫瘍、で上記二つと、さほど変わらない頻度があります。

いずれも中高年に好発し、子供や青年には少ないがんです。まぶたに出来るがんですので目立ち、家族が先に気付くこともあります。ただし初期では、ものもらい(麦粒腫)などの炎症性のできものや良性腫瘍と間違えられやすいという側面はあります。とくに 霰粒腫(さんりょうしゅ)と呼ばれる炎症性のできものは、しばしば腫瘍と間違われます。

専門家でなくては悪性腫瘍と良性腫瘍の区別をふくめ、その判別はできません。50歳以上で、まぶたにできものが出来たら、眼科を受診するようにしましょう。がんでないことがわかったら、その分、早く安堵することができます。仮にがんの可能性があるのであれば、早期発見につながります。

診断は組織の一部を取って顕微鏡で診る病理検査などで行います。治療はがんが周囲に広がっていなければ手術で腫瘍を完全に取り除くことが基本です。ただしがんが眼球などに広がっている場合は眼瞼だけを切除して眼球を残す場合もあります。がんを切除した後は、見ることの機能を考慮した再建手術を行うこともあります。

再発した場合は、部位や大きさにもよりますが、再手術および放射線治療などが有力な選択肢となります。放射線治療では眼の機能を冒さないように照射することが必要で、経験豊富な施設での施行が推奨されます。

初期の眼瞼腫瘍(扁平上皮がん)

霰粒腫と誤って頻回に切開された眼瞼がん

眼球に出来るがん「眼内腫瘍」

神経芽細胞腫
主として3歳以下の子供に発生します。瞳の部分を中心とする部分が白くなる白色瞳孔により母親が気付くことが多いのが特徴です。他の症状としては、斜視、視力低下、角膜の混濁が見られることもあります。治療は進行している場合は眼球を摘出します。腫瘍の位置や大きさなどにより、視ることの機能保持が期待できるようであれば、化学療法(抗がん剤)などによる眼球の温存療法の選択肢があります。

左の眼球内に腫瘍があり、瞳孔が白く反射してみえる

ぶどう膜に発生するがん
虹彩、毛様体、脈絡膜などから成るぶどう膜に出来るがんです。成人に好発するがんとしては脈絡膜血管腫、脈絡膜悪性黒色腫、脈絡膜骨腫などがあります。脈絡膜同様、虹彩、毛様体も、メラニン色素を産生する細胞があるため、メラノーマ(悪性黒色腫)が発生します。初期ではあまり症状がありません。進行すると視界が欠けたりぼやけたり歪むなどするようになります。治療は、腫瘍が進行して大きい場合は眼球摘出、そうでなければ小線源治療や粒子線治療などの放射線治療による眼球温存治療が可能です。粒子線治療とは陽子線治療や重粒子線治療のことで、大型の装置が必要なこともあり、国内で行える施設は限定されています。

眼球は、強膜、ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)、網膜などの部分に分かれており、それらの部位に発生するがんの総称が眼内腫瘍です。小児に多い網膜芽細胞腫が眼内腫瘍の中ではもっとも頻度も多く、知られています。

眼球を被っている粘膜に出来るがん「結膜腫瘍」

扁平上皮がん
黒目と白目の境からの発生が多いのが特徴的です。薄い白色で半透明の膜が角膜表面に広がり、徐々に盛り上がることもあります。治療は切除後、冷凍凝固を加えることで再発防止をします。がんが薄く広がるケースでは、抗がん剤治療も有効です。

悪性黒色腫
皮膚がんの一種、メラノーマが発生することもあります。他の治療とのかねあいで、話題の新薬の分子標的薬オプジーボが選択できる場合もあります。

結膜悪性リンパ腫
症状としてサーモンピンク色の腫瘍が直接肉眼で観察することが可能です。眼内リンパ腫と違って、大部分は悪性度はそう高くありません。腫瘍が眼部だけに限定している場合は、放射線治療を選択することが多く、治癒率も高いです。

眼球が納まっている目のくぼみ内に出来るがん「眼窩腫瘍」

涙腺がん
悪性度の高いがんです。治療は放射線や抗がん剤治療を試みることが多いのですが、どちらも決め手に欠けます。再発したら放射線治療の一種の重粒子線治療を行うこともありますが、施設は限定されます。費用も高額です。

横紋筋肉腫
少ないがんですが、発生するとすれば小児期に多いがんです。抗がん剤や放射線によく反応するため、これらの治療を行うことがほとんどです。

悪性リンパ腫
この部位では良性のリンパ腫のほうがずっと多いのですが、高齢者では悪性リンパ腫が増えます。

眼窩とは目のくぼみの骨に囲まれたスペースのことで、眼を動かすための筋肉の外眼筋、涙を作っている涙腺などがあります。症状としては腫瘍が小さい場合は視力低下が主な症状です。腫瘍が大きくなると、周囲が骨で囲まれているので眼球突出などが現れることもあります。この部位では悪性リンパ腫がもっとも多いのですが、血管腫、末梢神経系腫瘍、デルモイド、涙腺の多形腺種や腺様嚢胞がん、視神経腫瘍など、様々な種類の腫瘍があります。

小児に多い視神経のがん「視神経腫瘍」

視神経膠腫(ししんけいこうしゅ)
グリオーマの別称があります。小児に多いがんです。以前は視神経ごと腫瘍を摘出することが多かったのですが、放射線治療、抗がん剤治療による温存療法も試みられるようになっています。

髄膜腫
視神経を包む鞘(さや)から発生する成人に多いがんです。腫瘍を取り除くとき神経にダメージを与えて失明することが少なくないため、放射線治療を行うことが多くなっています。

全身の他の部位のがんと関連して、目のどこへもできる可能性があるがん

男性では肺がん、女性では乳がんからの転移が多い「眼部転移性腫瘍」

診断
眼底検査のほか、CT、MRIなどの画像検査を用いることが多いでしょう。全身の他の部位のがんと関連が疑われる場合は、全身の検査が必要になることもあります。

治療
目のがんの多くは、手術中心の治療でしたが、小線源療法、重粒子線治療など放射線を使う治療も大きく進歩して、治療後の良好なQOLも期待できます。網膜やぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)には悪性黒色腫(メラノーマ)が出来る可能性があります。メラノーマは、眼にできることは少ないのですが、出来た場合はノーベル賞発表時に話題となったオプジーボなどの新薬が使える場合もあります。目のがんの治療は一昔前と比べて躍進しています。

板谷院長のひとことアドバイス

目のがんの治療法は進歩しています。従来までは手術が中心でしたが、汚染源療法・重粒子線治療や放射線を使う治療が進歩しており、治療後の生活への復帰も可能になってきています。

まとめ

  • 眼部腫瘍は、他のがんと同様に早期診断と適切な治療が必要です。
  • 特に瞼の腫瘍は最も目立つ部分に生じるので、発見しやすいという特徴があります。
  • 治りにくいできものなどがあった場合には、眼科を受診することが大切です。

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執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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