「目やに」「目のかゆみ」は、日常的にもっとも経験しやすい目に関する症状だと思います。どちらも通常であればそれほど心配することはありませんが、目やにがいつもより多い場合には、病気のサインの可能性もありますので注意が必要です。

原因として考えられるのは結膜炎や、角膜障害(角膜上皮びらん、角膜浸潤、角膜潰瘍)、涙嚢炎、眼瞼炎などによる、免疫反応です。また、細菌やウイルスによる感染症が原因である場合や、ドライアイやコンタクトレンズの長時間装用が原因の場合なども考えられます。

ここでは、「目やに」「目のかゆみ」の症状から考えられる疾患について紹介し、その治療や対処法について説明していきます。

目やには目から出る老廃物。大量に出る場合は病気の可能性

目やには、目から出る老廃物です。通常は、代謝によるものなので基本的に問題ありません。ただし、目の病気によって起こる免疫反応で目やにが増えることもあります。

目やにが増え、朝起きたら目が開けられないというような場合は、結膜炎の可能性があります。特に、ウイルスや細菌などによる感染性の結膜炎は急に症状が現れるため、びっくりしてしまうかもしれません。この時、目がかゆいからといって、決してかかないでください。かいても目を傷つけるだけで、症状は良くなりません。

治療には抗生物質など適切な薬剤の点眼が必要になります。その原因をつきとめるため、まずは眼科で受診するようにしましょう。
では、具体的な病気について紹介していきます。

目やにが増える病気として起こりやすい「結膜炎」

結膜炎とは、白目の表面とまぶたの裏側を覆っている結膜に炎症が起こる病気です。結膜には毛細血管が張り巡らされています。異物を排除する免疫反応を起こすリンパ組織があり、さらに外界と接触しているため、さまざまな病原物質にさらされやすく、炎症が起こりやすいのです。

大きく3つに分けられる結膜炎の原因

結膜炎は、その原因によってウイルス性、細菌性、アレルギー性に分けられます。

ウイルス性結膜炎や細菌性結膜炎では、白目の部分に炎症を起こし、目やに、涙が出る、目がゴロゴロして痛い、瞼が腫れるといった症状が出ます。ウイルス性結膜炎のなかでも、人への感染力が強いものを「はやり目」と呼びます。原因のウイルスであるアデノウイルス、エンテロウイルス、ヘルペスウイルスなどは、感染力が強く、喉の痛みや発熱などといった風邪のような症状が出ることもあります。

細菌性結膜炎は人の体にいつも存在している常在菌のぶどう球菌が原因で発症します。元気なときは問題ないのですが、体力が落ちて免疫力が低下していると悪さをして結膜炎を起こします。

アレルギー性結膜炎は、花粉やダニなどのアレルゲンによって結膜に炎症が起こります。目やに、目のかゆみ、充血、異物感などの症状があります。アレルゲンを除去しないと症状はなくならず、コンタクトレンズのケア用品がアレルギーの原因になることもあります。コンタクトレンズに付着した涙液中のタンパク質や脂質などの汚れは花粉などのアレルゲンと吸着しやすいため、レンズが汚れていると症状が悪化することもあるので注意が必要です

【結膜炎の目】

結膜炎の治療はまず原因を特定することから

結膜炎であることがわかっても、原因を特定しないと適切な治療はできません。まずは検査によって原因を調べ、それぞれの原因に対しての治療を選択していきます。
 
原因がウイルス性結膜炎の場合、アデノウイルスやエンテロウイルスなどに対して現時点で特効薬はありません。抗炎症薬で炎症を抑えたり、さらに細菌に感染するのを予防するために抗菌薬点眼を用いたりします。そしてウイルスに対する抵抗力が高まるのを待ちます。ヘルペスウイルスが原因の場合は抗菌薬点眼を併用し、抗ヘルペスウイルス眼軟膏を塗布することで症状の悪化を防ぐことができます。症状によっては抗ヘルペスウイルス薬の内服や点滴を行うこともあります。

細菌性結膜炎は、有効な抗生物質の点眼薬がありますので、ウイルス性と比べて早く治ります。アレルギー性結膜炎は、まずはアレルゲンから遠ざけることが重要です。アレルゲンの近くにいたら、頑張って治療をしてもすぐに再発してしまうでしょう。治療には、抗アレルギー性の点眼薬(ヒスタミンH1拮抗薬、ケミカルメディエーター遊離抑制薬)を用います。

結膜炎と同様に起こりやすい「角膜炎」

角膜炎の原因はさまざま

黒目を覆う透明なドームである角膜に起こる炎症です。結膜炎と同じく発症しやすく、同時に発症することもあるため、その場合は「角結膜炎」と呼ばれることもあります。感染性のものは、結膜炎と同じウイルスや細菌によるもののほか、真菌(カビの一種)、アカントアメーバ(微生物)なども原因となります。  

また、逆さまつ毛やコンタクトレンズによる外傷などによっても発症します。溶接の作業をしていて強い光を浴びてしまったり、スキーなどの雪上スポーツをしていて雪の照り返しと直射日光を浴びたりすることで起こることもあります。
発症すると、目のゴロゴロ感、違和感、充血などの症状があります。

【角膜炎の目】

角膜炎の治療も原因を特定して対処

結膜炎と同じく、角膜炎もまずは原因を特定して、それに合わせて治療をします。ウイルス性と細菌性についての対処は結膜炎と同様です。真菌性角膜炎に対してはカビに効果のある抗真菌薬の点眼をしていただき、場合によっては内服薬を処方しますが、治療は長期になることもあります。

アカントアメーバが原因の場合、効果のある治療薬がないため重症化しやすい傾向があります。少しでも症状をやわらげるため、消毒薬などを点眼して対処します。

コンタクトレンズの長期間にわたる装用などで起こる外傷性の角膜炎は、それ自体はすぐに治るものですが、そこから細菌などに感染して重症化することがあります。くれぐれも、コンタクトレンズは使用法を守って装用するようにしてください。

角膜炎が重症化すると失明することも!?

角膜炎は、放置してしまったり、治っても再発を繰り返してしまったりすることで、重症化することがあります。角膜の障害の度合いで「点状表層角膜炎(角膜の表面に点状の小さな傷ができる)」や「角膜上皮びらん・角膜上皮剥離(角膜の表面が少し剥がれてしまう)」などと呼ばれますが、やがて「角膜浸潤(角膜の内部までダメージを受けてしまっている状態)」、「角膜潰瘍(角膜が濁ってしまう状態)」へと進行し、視力低下を引き起こし、角膜移植が必要になることもあります。場合によっては失明の恐れもある病気でもあります。ただの炎症だと楽観視せず、軽症のうちにしっかり治療しておかなければなりません。

【角膜潰瘍の目】

涙と目やにが止まらなくなる涙嚢炎

目と鼻をつなぐ涙の排出路にある涙嚢で炎症が起こる病気です。涙はさまざまな病原体から目を守る役割を果たしていますが、鼻涙管閉塞などで涙嚢が狭くなると、涙が停滞し、常在菌であるぶどう球菌や連鎖球菌などに感染しやすくなり、感染すると炎症が起こります。目やにが増え、涙嚢に膿がたまることもあります。急性涙嚢炎では目頭に痛みが起こり、腫れることもあります。

【涙の通り道のどこかが閉塞すると、涙嚢に涙がたまり、そこで細菌などが感染して炎症を起こすのが涙嚢炎です。】

涙嚢炎の治療はまず抗菌薬の投与で症状を抑える

細菌感染による痛みや腫れがある急性期には、抗菌薬点眼を投与します。これで多くの場合は発熱などの症状が治まります。
慢性的な症状が残ってしまった場合は、涙嚢鼻腔吻合術という閉塞部分を迂回するバイパスを作る外科的処置をすることもあります。

まぶたが腫れる眼瞼炎も目やにが大量発生

眼瞼とはまぶたのことで、眼瞼炎はまぶたに炎症が生じる病気です。結膜炎や角膜炎と同じようにアレルギー、ウイルス、細菌が原因になる場合や、脂腺、汗腺などに細菌が感染するものもらい、マイボーム線の機能不全によって起こる場合などがあります。目やに、涙目、目の縁の赤み、かゆみ、熱感、目のゴロゴロ感、まぶしさを強く感じるなどの症状があります。慢性化するとまぶたやまつげに影響を及ぼす場合もあります。

眼瞼炎の治療も原因を特定して対処

ウイルス性や細菌性の場合があるので、まずは原因を特定します。原因がわかれば、それに対する点眼薬などを処方します。アレルギー性の場合は免疫抑制薬、ステロイドなどの眼軟膏を投与することもあります。マイボーム線の機能不全が原因の場合は、温かいタオルでまぶたを温める方法を行うこともあります。

板谷院長のひとことアドバイス

目やにが増えたり、目がかゆくなる原因には、結膜炎や角膜炎、涙嚢炎、眼瞼炎など、さまざまなものがあります。いつもより目やにが多く、それがいつまでも治らないようなら、一度眼科を受診することをおすすめします。

まとめ

  • 日頃から「目やに」「目のかゆみ」の異常をチェックしましょう。
  • 気になる場合は眼科を受診し、眼科医の指示に従い適切な治療とセルフケアを行ってください。
  • 病気以外でもセルフケアにより対処することが大切です。特にコンタクトレンズ装用者は注意してください。

目についてお悩みは、はんがい眼科へどうぞ

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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