思春期や青年期のお子さんで、乱視や近視の症状があり、メガネの度数がどんどん変わる、あるいはメガネでの視力矯正が効きにくくなるなど、日常生活に支障をきたす経過をたどっている場合、角膜の隠れた病気を疑ってみる必要があります。

黒目を被っている透明な角膜は、本来、きれいなドーム型をしており、目を保護すると同時にレンズの役割を果たしています。目のレンズといえば通常は水晶体をイメージしますが、角膜は水晶体よりも光を屈折させ、網膜表面にクリアな像を結ぶために重要な役割を担っています。その角膜の形状が歪む疾患はいろいろあるのですが、角膜の中央付近が薄くなり、前方に円錐状に突出することで乱視と近視が交じるようにして視力が低下するのが円錐角膜です。重度に進行してしまうと角膜移植が必要になることもあります。

今回はその円錐角膜について詳しくお伝えします。

どんな病気か?進行に伴う対処法とは?

いわゆる黒目は角膜という厚さ0.5ミリほどの透明の薄い膜で覆われています。水晶体同様にカメラでいうレンズの役割がありますが、光を眼の中に導く窓の役割もあります。円錐角膜はこの窓が薄くなって突出してくることで角膜に歪み生じて視力が低下していきます。初期では遠くが見えにくいなどがあるものの、メガネで十分視力が矯正できますが、進行するとハードコンタクトレンズが必要となります。それらで矯正が効かなくなり日常生活に支障をきたすほど重症化したら角膜移植という流れがありました。が、最近、新しい治療法が登場しました。高率で病気の進行を止めることが可能な角膜クロスリンキングという画期的な治療法で、治療のパラダイムシフトが起こりつつあります。

【角膜のドームがどれだけ急な形になっているかがわかる、トポグラフィーの検査画像です。地図の等高線のようにゆるやかであれば、緑のグラデーションで示した間隔はひとつひとつが広くなります。赤くなるほど、急な角度を表しています。ドーム状の角膜のカーブが突出して急峻化しているということです。】

思春期から青年期に発症

円錐角膜は、思春期から青年期に発症・進行することがほとんどですが、まれに30代以降で診断される人もいないではありません。男女比は3対1ほどで、男性に多く発症しています。円錐角膜は、およそ2000人に1人の発症率ですが、網膜剥離の5倍の頻度があります。それなのに、網膜剥離よりもはるかに知られていない病気ですので、それも発見が遅れてしまう理由の一つです。短期間の間にメガネの度数が変わる、メガネでの視力矯正が効きにくくなってきた、左右の視力差が大きい、などに該当する思春期~青年期のお子さんがいらっしゃる場合は、専門医への受診がすすめられます。 

病気の経過

見るものが幾重にも重なって見えたり、遠くが見えにくくなったりします。乱視や近視が進行し、視力も低下していきます。初期ではメガネやソフトコンタクトレンズで矯正できるのですが、次第に矯正が効きにくくなっていき、矯正視力も低下していきます。視力に左右差がある、乱視が進んで程度が強くなる、といった症状も出てきます。30歳を過ぎる頃にこれらの症状の進行はほとんど停止します。重症になると、デスメ膜破裂による急性水腫になることがあります。突然、角膜が白く濁り、視力が低下する症状で、病気が急激に進行する時期に発生しやすいとされています。通常は2~3カ月で自然に退縮しますが、強い混濁が残って視力不良になることもあります。

どんな人がなりやすいか

要因は明確には解明されていませんが、先天的な体質などの内因と後天的な環境要因が重なって発症すると考えられています。内因的には思春期に発症することから、性ホルモンとの関係も考えられています。外因的にはアトピー性皮膚炎を始めとしたアレルギー疾患を合併していることが多いことから、目をよくこするなどの刺激が関係しているとの説もあります。また睡眠時無呼吸症候群、ダウン症候群などがある人に多いともいわれています。

検査のカギは早期発見と進行中かどうかの見極め

眼科ではまず視力検査や乱視・近視の検査をします。円錐角膜が疑われる場合は角膜の形状を詳細に調べる検査をします。ある程度進行した病態であれば、眼科に普及している検査機器で見つけることも可能です。しかし初期では特殊な検査機器でしか捉えられません。最初は片目だけ円錐角膜と診断されて、進行によりもう片方も後に診断されるケースが多いとされています。円錐角膜ではこの1~2年の間に進行しているかどうか、つまり現在も進行しているかどうかを知ることがとても重要です。それによって対処の仕方が違ってくるからです。そこでここ数年間の診療記録、メガネやコンタクトレンズをつくったことがある場合はそのときの処方箋や視力検査の記録を持参するとよいでしょう。

この疾患については、現在はなるべく早期発見して進行を食い止めるというふうになりつつありますが、そのためには角膜形状解析装置や3次元OCTという高価な検査機器が必要です。

自ずと医療施設は限られてきます。早期発見・早期治療というパラダイムシフトは始まったばかりで、それに伴い、診断率も上昇し、これからこの病気が知られていくようになるでしょう。

進行の有無によって異なる治療法

進行の有無によって、まず以下の二者択一になります。重度では角膜移植も。

・症状の進行がある場合
角膜クロスリンキングという治療で進行を阻止します。

・症状の進行がない、あるいは上記治療により進行が止まった場合
視力矯正をします。重症度に応じてさまざまな治療法があります。メガネやコンタクトレンズ、有水晶体眼内レンズ、角膜内リングなどが代表的な方法です。
以下、上記の症状に合わせた治療法についてご説明します。

・角膜クロスリンキング
近年、進行中の症例では、角膜にコラーゲンを塗って架橋して硬化させ、歪みを補正することで進行を緩やかにする進行予防治療が開発されています。外国では施術を受けた患者の90%以上で進行が止まったという研究報告があります。またこの治療法の登場により、円錐角膜の最終的な治療であった角膜移植の件数が半減したという報告もあります。わが国では未承認の治療法でしたが、やっと承認に至りました。現在は保険診療ではなく、自由診療となっております。

・コンタクトレンズ
軽症では、近視用の通常のソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズで対処できます。進行すると専用の特殊なハードコンタクトレンズが処方されます。ハードコンタクトレンズは装着して慣れるのに1カ月ほどかかります。

・有水晶体眼内レンズ
進行しておらず、矯正視力が良好の場合には有力な選択肢です。白内障の手術のように眼内に人工レンズをいれて視力を矯正する方法です。ただし白内障ではないのですから、濁った水晶体を取り除く必要はありません。角膜を削らないので、レーシックで指摘される夜間に光がにじむ、まぶしい、という現象は起きにくい、見え方が自然でコントラスト感度などが良好で、質の良い視力が得られる、というメリットがあります。

・角膜内リング
進行度が中程度の場合、モノが非対称性に見える見え方を改善したり、コンタクトレンズ装用感を向上させたりするために、半円弧状の二つのリングを角膜内に挿入する手術が適応になります

・角膜移植
円錐角膜は進行してしまうと、急激に矯正視力が低下するようになります。こうなると角膜移植による治療が適応となります。ただし、円錐角膜が進行中であれば手術後に進行する可能性があるので、進行が止まった場合しか手術は行いません。

板谷院長のひとことアドバイス

円錐角膜はあまり知られていない病気ですが、早期発見が重要となります。検査できる医療機関が限られていますので、短期間の間にメガネの度数が変わる、左右の視力差が大きいなどの症状があるお子さんがいらっしゃる場合は専門医へ相談してみてください。

まとめ

  • 専門医の診察なしには早期診断は困難です。
  • 初めてのメガネをつくるとき、あるいは作り変えの時などに、円錐角膜をよく見ている専門医への受診をお勧めします。
  • 円錐角膜研究会という専門医の組織もできていますので、ホームページで調べるとよいでしょう。

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執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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