本記事は、2020年1月31日に再更新いたしました。

思春期や青年期のお子さんで、乱視や近視の症状があり、メガネの度数がどんどん変わる、あるいはメガネでの視力矯正が効きにくくなるなど、日常生活に支障をきたす経過をたどっている場合、角膜の隠れた病気を疑ってみる必要があります。黒目を被っている透明な角膜は、本来、きれいなドーム型をしており、目を保護すると同時にレンズの役割を果たしています。目のレンズといえば通常は水晶体をイメージしますが、角膜は水晶体よりも2倍強く光を屈折させ、網膜表面にクリアな像を結ぶために重要な役割を担っています。その角膜の形状が歪む疾患はいろいろあるのですが、角膜の中央付近が薄くなり、前方に円錐状に突出することで乱視と近視が交じるようにして視力が低下するのが円錐角膜です。特に、乱視はメガネでは矯正できない強い不正乱視をきたすことが問題で、早期に発見して進行させないことが重要です。重度に進行してしまうと角膜移植が必要になることもあります。今回はその円錐角膜について詳しくお伝えします。

どんな病気か?進行に伴う対処法とは?

いわゆる黒目は厚さ0.5ミリほどの透明なドーム形状をした角膜で覆われています。水晶体同様にカメラでいうレンズの役割があります。円錐角膜は角膜の中央がが薄くなって円錐状に突出してくる病気です。角膜は、本来は対称性の高いドーム形状にできているのですが、円錐角膜になると歪みを生じて不正乱視が強まっていき視力が低下していきます。初期では遠くが見えにくいなどがあるものの、メガネで十分視力が矯正できますが、進行するとメガネでは視力が出なくなりハードコンタクトレンズが必要となります。それらで矯正が効かなくなり日常生活に支障をきたすほど重症化したら角膜移植という流れがありました。が、最近、新しい治療法が登場しました。高率で病気の進行を止めることが可能な角膜クロスリンキングという画期的な治療法で、治療のパラダイムシフトが起こりつつあります。

【角膜のドームがどれだけ急な形になっているかがわかる、トポグラフィーの検査画像です。地図の等高線のようにゆるやかであれば、緑のグラデーションで示した間隔はひとつひとつが広くなります。赤くなるほど、急な角度を表しています。ドーム状の角膜のカーブが突出して急峻化しているということです。】

【円錐角膜の前眼部OCT画像】角膜中央部分が薄くなっているのがわかる

【3次元前眼部OCTによる角膜形状解析】

Axial Power (Posterior)とAxial Power (Keratometric)を比較すると角膜後面のひずみの方が大きいことがわかる。Pacymetryは角膜の厚みを測定した結果で中央部分が薄くなっている(赤表示)ことがわかる。

思春期から青年期に発症

円錐角膜は、思春期から青年期に発症・進行することがほとんどですが、まれに30代以降で診断され進行する人もいます。男女比は3対1ほどで、男性に多く発症しています。円錐角膜は、およそ2000人に1人の発症率ですが、網膜剥離の5倍の頻度があります。それなのに、網膜剥離よりもはるかに知られていない病気ですので、それも発見が遅れてしまう理由の一つです。短期間の間にメガネの度数が変わる、メガネでの視力矯正が効きにくくなってきた、左右の視力差が大きい、などに該当する思春期~青年期のお子さんがいらっしゃる場合は、専門医への受診が勧められます。

病気の経過

見るものが幾重にも重なって見えたり、遠くが見えにくくなったりします。乱視や近視が進行し、視力も低下していきます。初期ではメガネやソフトコンタクトレンズで矯正できるのですが、次第に矯正が効きにくくなっていき、矯正視力も低下していきます。視力に左右差がある、乱視が進んで程度が強くなる、といった症状も出てきます。30歳を過ぎる頃にこれらの症状の進行はほとんど停止します。重症になると、デスメ膜破裂による急性水腫になることがあります。デスメ膜は角膜の水分量を調節する働きがありますが、破裂すると角膜に水分が入りすぎて白く濁ります。突然、角膜が白くなり、視力が低下する症状で、病気が急激に進行する時期に発生しやすいとされています。通常は2~3ヶ月で自然に退縮しますが、強い混濁が残って視力不良になることもあります。

どんな人がなりやすいか

原因は明確には解明されていませんが、先天的な体質などの内因と後天的な環境要因が重なって発症すると考えられています。内因的には思春期に発症することから、性ホルモンとの関係も考えられています。外因的にはアトピー性皮膚炎を始めとしたアレルギー疾患を合併していることが多いことから、目をよくこするなどの刺激が関係しているとの説もあります。また睡眠時無呼吸症候群、ダウン症候群などがある人に多いともいわれています。

検査のカギは早期発見と進行中かどうかの見極め

眼科ではまず視力検査や乱視・近視の検査をします。円錐角膜が疑われる場合は角膜の形状を詳細に調べる検査をします。ある程度進行した病態であれば、眼科に普及している検査機器で見つけることも可能です。しかし初期では特殊な検査機器でしか捉えられません。最初は片目だけ円錐角膜と診断されて、進行によりもう片方も後に診断されるケースが多いとされています。円錐角膜ではこの1~2年の間に進行しているかどうか、つまり現在も進行しているかどうかを知ることがとても重要です。それによって対処の仕方が違ってくるからです。そこでここ数年間の診療記録、メガネやコンタクトレンズをつくったことがある場合はそのときの処方箋や視力検査の記録を持参するとよいでしょう。

この疾患については、現在はなるべく早期発見して進行を食い止めるという考え方になりつつありますが、そのためには角膜形状解析装置や3次元前眼部OCTという高価な検査機器が威力を発揮します。

【3次元前眼部OCT】

自ずと医療施設は限られてきます。早期発見・早期治療というパラダイムシフトは始まったばかりで、それに伴い、診断率も上昇し、これからもっとこの病気が知られていくようになるでしょう。

進行の有無によって異なる治療法

進行の有無によって、まず以下の二者択一になります。重度では角膜移植も必要になります。

症状の進行がある場合

角膜クロスリンキングという治療で進行を阻止します。

症状の進行がない、あるいは上記治療により進行が止まった場合

視力矯正をします。重症度に応じてさまざまな治療法があります。メガネやコンタクトレンズ、眼内コンタクトレンズ、角膜内リングなどが代表的な方法です。

以下、上記の症状に合わせた治療法についてご説明します。

<進行抑制治療>

角膜クロスリンキング
円錐角膜の進行を止めることを目的で行われている治療法です。視力を改善させる効果はありませんので、下記の屈折矯正治療と併用します。角膜にリボフラビン(ビタミンB2)を点眼して浸透させながら長波長紫外線を30分間照射します。紫外線の作用により角膜実質のコラーゲン線維を架橋させて角膜実質を強くすることで進行を予防します。角膜が薄くなりすぎていると紫外線による角膜内皮傷害の危険性があるのため、初期の円錐角膜が対象です。海外では施術を受けた患者の90%以上で進行が止まったという研究報告があります。またこの治療法の登場により、円錐角膜の最終的な治療であった角膜移植の件数が半減したという報告もあります。保険診療ではなく、自由診療となっています。

<屈折矯正治療>

メガネ・ソフトコンタクトレンズ
軽症の方は、メガネやソフトコンタクトレンズを装用して良好な視力が得られる場合があります。

ハードコンタクトレンズ
メガネやソフトコンタクトレンズで視力がでにくい場合は、近視用の通常のハードコンタクトレンズで対処できます。進行すると通常のハードコンタクトレズでは矯正視力がでにくくなったり、フィッティング不良になります。この場合は、円錐角膜専用のコンタクトレンズを用います。ハードコンタクトレンズは装着して慣れるのに1ヶ月ほどかかります。

眼内コンタクトレンズ(Implantable Contact Lens)
眼内コンタクトレンズは、眼の中にソフトコンタクトのような生体適合性の高いソフトなレンズを移植する方法です。元々は強度近視眼の矯正のために作られたレンズですが、円錐角膜の治療にも用いることができます。ただし、眼鏡やソフトコンタクトレンズで良好な矯正視力の得られる軽症の方に限られ、裸眼視力を大幅に改善する効果があります。保険適応ではありません。

角膜内リング
進行度が中程度の場合、モノが非対称性に見える見え方を改善したり、コンタクトレンズ装用感を向上させたりするために、半円弧状の2つのリングを角膜内に挿入する手術が適応になります。自由診療です。

角膜移植
円錐角膜は進行してしまい上記の治療法のどれもがあてはまらない場合に適応になります。。こうなると角膜移植による治療が適応となります。ただし、円錐角膜が進行中であれば手術後に進行する可能性があるので、進行が止まった場合しか手術は行いません。角膜移植は、海外からの輸入角膜を用いる場合は保険適応外、国内のアイバンクのドナー角膜を用いる場合は保険適応になります。

板谷理事長のひとことアドバイス

円錐角膜はあまり知られていない病気ですが、早期発見が重要となります。残念ながら、国内では未承認の保険適応外治療が含まれているため治療体制は不十分と言わざるを得ません。治療に当たっている角膜専門医を見つけましょう。(参考:円錐角膜研究会 http://keratoconus.jp/index.html

まとめ

  • 角膜形状解析用の診断機器を用いないと早期診断は困難です
  • 短期間の間にメガネの度数が変わる、左右の視力差が大きいなどの症状があるときは角膜専門医のいるクリニックへの受診をお勧めします
  • 治療は国内では未承認のため十分に普及していませんが、角膜クロスリンキングで進行を止め、程度に応じた屈折矯正方法と併用するのがベストです

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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