本記事は、2020年4月20日に再更新いたしました。

今回は、結膜炎の中でも若年者に特に多く見られる「フリクテン性結膜炎」という病気について取り上げます。

「フリクテン」とは「水泡」を指します。一言で言うと、白目の部分である結膜や黒目の部分である角膜の縁に、アレルギー反応による丸い隆起ができる病気です。「結膜炎」という病名から、感染リスクを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、フリクテン性結膜炎はアレルギー反応ですから感染しません。充血や異物感、痛みなどを伴うため、自覚しやすい目の病気の1つです。

フリクテン性結膜炎には3つの種類ある

フリクテン性結膜炎とは、主に「結膜」、時に「角膜」にまで、水泡様の隆起物ができる眼病です。結節とも表現されます。どこにできるかによって、「結膜フリクテン」「輪部フリクテン」「角膜フリクテン」などという病名に細かく分類されます。これらの総称が「フリクテン性結膜炎」というわけです。結膜フリクテンと輪部フリクテン」は点眼薬で改善に向かうため、さほどやっかいな病気ではありませんが、角膜フリクテンは、重度の流涙,羞明,霧視,疼痛,および異物感など症状が強く、重症化すると視力障害を伴う角膜混濁および血管新生に至ることがあります。

アレルギー性ゆえ、再発することも

フリクテン性結膜炎は、菌体に対する過剰なアレルギー反応で、若年者に多く見られるとされています。もちろんどんな年代の方でも発症する可能性はあります。点眼薬の投与で治るのが通常ですが、アレルギーの一種であるため、再発を繰り返すこともあります。症状が長期化するときは、こまめに点眼し、治療も臨機応変に見直す必要があります。

目で見てわかる症状は、水疱と充血

結膜フリクテンは、➀黒目や白目に小さな水泡様の隆起が現われる、➁その周辺が充血する、というのが見てすぐわかる特徴的な病変です。

それに付随して、ゴロゴロするような異物感を伴ったり、涙、痛みなどの症状が強く現れるようになります。また、「まぶしさを感じる」という訴えもあります。症状が進行すると、水疱が潰瘍へと深刻化することもあるので、放置しないことが重要です。

【結膜フリクテンの細隙灯写真】

現代では、フリクテン性結膜炎は遅延型アレルギー反応とされている

以前は結核菌が原因と考えられていましたが、現在では「ブドウ球菌やアクネ菌、真菌(カビ)など、身近な細菌、カビに対するアレルギー反応ではないか」という説が一般的になってきました。アレルギー反応とは、細菌等に対する体の過剰反応のことです。専門的には「遅延型のアレルギー反応」となります。「遅延型のアレルギー」とは、かなりの日数が経過してから反応を起こす「隠れアレルギー」という意味です。とはいえ、アレルギーの原因は個人によってそれぞれ異なるので、詳しい検査をしても、原因を突き止めることは困難です。また、アレルギーの原因は他にもあると考えられており、研究が進められています。

アレルギーとは

フリクテン性結膜炎は、アレルギー性の目の病気の1つ

日本では、「アレルギー」と診断される人が増えています。「国民の3割が、何らかのアレルギー性の病気をもっている」というデータもあるほどです。当然、目に症状が現れるアレルギーが多く存在します。そもそも眼球は、ものを見るために、外界に露出しています。そのため常にアレルゲン(アレルギーの原因物質)にさらされていることになります。

「異物を撃退しよう」という体の防衛反応が、アレルギーです

アレルギーの原因である「アレルゲン」が体に侵入すると、それに対する自然な防衛反応「アレルギー症状」が現れることになります。人の体には、外界から細菌やウイルスなどが入ってきたとき、自分を守る「免疫」という機能が備わっているからです。免疫は、細菌やウイルスなどが体に入り込むと、「体に有害な異物」だと認識します。そして自分を守るための「抗体」という物質をつくって、それらを撃退しようとするのです。

体の過剰な免疫反応。フリクテン性結膜炎の原因

免疫のシステムは、ミスをすることがあります。アレルゲンに体が過剰に反応しすぎて、強すぎる免疫反応を起こしてしまい、本来は身体を守るための機能が身体を傷つけてしまうのです。それがアレルギー症状の正体です。

フリクテン性結膜炎は、何らかのアレルゲンに対する過剰な防衛反応の1つなのです。

細隙灯検査ですぐわかる

フリクテン性結膜炎は、細隙灯顕微鏡検査により容易に診断できる病気の1つです。細隙灯顕微鏡は、「前眼部(角膜や水晶体)」を、詳しく検査する特殊な顕微鏡です。角膜の傷や角膜・水晶体の混濁の有無の場所や程度が詳細にわかります。特殊な染色液で目の表面を染めて表面の傷や潰瘍を観察することもあります。

【細隙灯検査をしている様子】

抗生物質とステロイド薬でたいていは撃退できる

フリクテン性結膜炎は、軽症であれば、1~2週間で自然治癒することもありますが、基本、抗生物質と「コレチコステロイド」などステロイド系の点眼薬での治療が必要です。通常は、数日で症状が治まり充血や痛みがとれます。ステロイド点眼薬には、炎症やアレルギー反応を抑えてくれる作用があるからです。抗生物質を使う理由は、常在菌であるブドウ球菌に対するアレルギー反応であることが多いからです。病巣に角膜を含む場合は、1%のアトロピン眼軟膏を使用することがあります。

結核や扁桃腺炎などを根本的に治療することも大事

眼科での治療以外に、アレルギー反応を引き起こす原因として疑われる結核や扁桃腺炎があれば、それらの治療を根本的に行うことが重要です。

他の病気を併発することも

フリクテン性結膜炎は、「マイボーム腺炎」を併発していることもあります。まぶたに存在する皮脂腺「マイボーム腺」に炎症が生じている場合は、抗菌薬の内服や眼瞼縁の清拭といった治療を追加することになります。他に、フリクテン性結膜炎に結核性結膜炎を伴う場合は、抗生物質で結核性結膜炎の治療を行ってから、コルチコステロイドを点眼します。

重症化、長期化するケースも珍しくない

問題は、フリクテン性結膜炎が重症化したり、症状が長引くケースです。特に、黒目に水泡ができた場合は、重症化することが少なくありません。決して軽く見ず、「しっかり治す」という姿勢が重要です。症状が進むと「免疫抑制剤」の点眼が有効なときもあります。症状によって薬の種類や点眼回数の変更が必要になるので、医師にこまめに相談してください。

再発したときは通院が大事

フリクテン性結膜炎の特徴として、「いったん治った」と思った後に、再発を何度も繰り返すことがあります。再発を自覚したら必ず通院して診断を受け、適切な治療を受けてください。眼科を再受診せず、「手元にある、残っている点眼薬を使っておこう」という考え方は危険です。点眼薬が、再発の症状に合っていない可能性があるからです。特にステロイド系の点眼薬を継続する場合は、眼圧が上がる副作用に注意する必要もあります。

板谷理事長のひとことアドバイス

白目や黒目に小さな水泡様隆起物ができるフリクテン性結膜炎は、菌体に対する遅延型アレルギー反応が原因と考えられています。アレルギー性ゆえに再発することも多く、一度治ったからといって油断はできません。目と目の周囲を清潔に保つケアも大切です。

まとめ

  • フリクテン性結膜炎は、現代では身近な細菌(常在菌:ブドウ球菌など)に対する遅延型のアレルギー反応とされています。
  • たいていのフリクテン性結膜炎は、抗生物質やステロイド系の点眼薬で完治します。
  • フリクテン性結膜炎は、アレルギー性ゆえ、長期化したり、再発することもあります。

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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