本記事は、2020年1月31日に再更新いたしました。

年齢を重ねるとともに、目にはさまざまな症状が現われます。まぶたにも特徴的な症状が現われます。まぶたが開きにくくなる眼瞼下垂が知られています。

上まぶたの内側には、眼球を守るように瞼板という軟骨があり、そこに挙筋腱膜(きょきんけんまく)という固い膜と、ミュラー筋という筋肉がついていて、さらにミュラー筋の先には眼瞼挙筋という筋肉がつながっています。これらの膜と筋肉が作動して上まぶたが上がるしくみになっています。うまく作動しなくなってくると、まぶたが上がりにくくなり眼瞼下垂が起こります。見た目も眠たそうに見える変化があります。本コラムでは眼科下垂を知っていただければと思います。

眼瞼下垂の一番の原因は加齢です(眼瞼下垂の原因)

眼瞼下垂には先天性のものと後天性のものがあり、それぞれで発症の原因が異なります。

先天性の眼瞼下垂の原因は、ほとんどの場合、上眼瞼挙筋の形成不良・発達不良による挙筋機能不全です。乱視、斜視、弱視を合併する症例が多く見られます。生まれたときに眼瞼下垂があって目が全く開かない状態でも、1~2ヶ月すると次第にまぶたが上がってくることが多いですが、弱視を予防するために手術をする場合もあります。手術の時期は重症度によります。

後天性の眼瞼下垂の主な原因は加齢です。加齢による眼瞼下垂は、挙筋機能は良好なことが多いのですが、眼瞼挙筋と瞼板や皮膚との間の結合が緩むことで生じます。ほかに、まぶたをこする行為や外傷が原因となって起こる後天性の眼瞼下垂もあります。アトピー性皮膚炎、さかさまつげ、花粉症のある方、化粧おとしをする方などが目をこする行為が、まぶたに影響を与えてしまうのです。ハードコンタクトレンズの付け外しが眼瞼下垂の原因になることもよく知られています。また、眼瞼下垂が特定の全身疾患から後天的に引き起こされることもあります。まぶたを上げる筋肉を支配している神経が麻痺する動眼神経麻痺や重症筋無力症のほか、高血圧や糖尿病、破裂寸前の脳動脈瘤、脳梗塞、ある種の肺がんなどです。「たかが眼瞼下垂」と考えていてはいけない場合もあるのです。

視野が狭くなり、まぶたが重く不快(眼瞼下垂の症状)

眼瞼下垂が進むと視界が狭くなります。また、まぶたが重く不快な感じがします。

ものを見ようとしたときに、眉毛を上げたり顎を上げたりするようになるため、あまり麗しくない表情になることもしばしばあります。また、顎を上げる姿勢によって、頭痛や肩こりになることもあります。

夕方になると目が開かないなどという症状もあります。目の奥が痛んだり、視野を確保する時に知らず知らずに「噛み締め」をしたりすることによって咀嚼筋(そしゃくきん)が疲れたり、それによって歯が浮いたり歯痛が生じたりすることもあります。挙筋腱膜に問題があるために起こる腱膜性眼瞼下垂症の場合は、一重まぶたが二重まぶたになるとか、二重まぶたの幅が広くなるということも起こります。ほかにも、目の上の陥没や三白眼など、見た目について気になる人にとっては、とても嫌な症状が現れてしまうこともあります。

上眼瞼挙筋の機能を測定(眼瞼下垂の診断)

加齢により上まぶたの皮膚がたるんで眼瞼下垂のように目が細くなる場合は、眼瞼皮膚弛緩症であり、眼瞼下垂ではありません。また、片側だけが眼瞼下垂の場合は見た目でわかりますが、両目に眼瞼下垂を起こしている場合は視診だけでは診断が難しいこともあります。その場合は若い頃の写真を持参いただくと比較して診断しやすくなります。また、確定診断には上眼瞼挙筋機能を測定します。眉の上を抑えて、額の力を使わずに最も下を見た時と最も上を見た時のまぶたの移動距離が15mm程度であれば正常です。さらに、症状によって神経麻痺などが疑われるケースでは、血液検査や、CT、MRIといった画像検査を行うこともあります。

症状に合わせて手術法を選びます(眼瞼下垂の治療)

眼瞼下垂は、症状に合わせた手術で治療を行います。基本的に手術は局所麻酔で行います。

施術にあたっては、眼瞼挙筋の機能の程度はどうか、眼窩内の組織(筋、腱板、隔胞)を利用するかどうか、吊り上げ術のような前頭筋を利用するかどうか、などを考慮します。仰向けに寝た姿勢で行われますが、起きたときの重力も考えて切除する範囲を慎重に決めます。

いくつかの術式がありますが、基本は眼瞼挙筋の腱膜またはミュラー筋を瞼板の本来の付着位置よりも前方に縫い付けて眼瞼挙筋やミュラー筋が瞼板に十分作用できるようにする考え方です。移動量の程度が重要です。移動が足りないと眼瞼下垂が残ったり、後で再発することがあります。逆に、移動し過ぎると、まぶたが閉じなくなる「兎眼」という重い合併症を起こす可能性があります。術者は、兎眼は困る合併症であるため、たとえ再手術の可能性が増えても、移動しすぎないよう心がけています。

手術後はまぶたが腫れます。1週間程度でかなり引いてきますが、目立たなくなる程度になるのに1カ月程度かかります。ただし、個人差があり、術式にもよります。完全に回復するには数ヶ月かかると考えてください。

挙筋腱膜タッキング

眼瞼挙筋の腱膜を縫いちぢめる方法です。軽度から中等度まで適応範囲の広い術式です。

挙筋腱膜前転法

眼瞼挙筋の腱膜を本来の瞼板の付着部より前方へ縫い付けます。ミュラー筋は、そのままの状態です。軽度から中等度に向いている術式です。

ミュラー筋タッキング

ミュラー筋のみ瞼板の前方に縫い付けます。開瞼ラインが自然な形になりやすい特徴があります。軽度から中等度に向いている術式です。

挙筋短縮術

挙筋腱膜とミュラー筋を一緒に瞼板の本来の付着部よりも前方に縫い付けます。挙筋群の脂肪変性が強い重度の症例に選択します。

前頭筋吊り上げ術

眼瞼挙筋の筋力がなく挙筋短縮術が無効な場合に行われます。額にある前頭筋(眉を上げる筋肉)の力を借りて眼瞼下垂を治す手術です。前頭筋と上まぶたの間に「ひも」を移植して、前頭筋の力を上まぶたへ伝えます。人工の「ひも」(縫合糸)を使う場合と、生体から移植した「ひも」(前腕の腱や太ももの筋膜)を使う場合があります。 

上眼瞼切開法

眼瞼皮膚弛緩症による下垂に対して行います。瞼を切開し、たるんだ皮膚や組織を切除します。美容的に形成外科や美容外科で行われる場合も多い手術です。眼瞼挙筋の筋力に問題がない場合に選択されます。

医療施設を選ぶときに注意したいこと

視野障害が起こるような場合は、治療が必要です。また、眼瞼下垂があると、額の筋肉を使って視野を確保しようとするため、交感神経優位になり、それに伴って頭痛や肩こりが起こる場合があります。眼瞼下垂の程度によっても、あるいは個々人によっても、実にとらえ方が異なる病気だと思います。視野障害をそれほど感じなくても、日々鏡に向かう時に、ご自分の表情が気になって仕方がない、という人もいることでしょう。まぶたの脂肪をどうするかによって見た目が変わることは確かです。日々の生活におけるQOL(生活の質)を重要視する時代であり、年を重ねても若々しくいたいと思う方も多い昨今ですから、美容面から治療を考えることもけっして悪いことではありません。

しかし、ここで機能障害を解消することを目的とする保険診療がと見た目を自分の思うように良くしたいという、美容面での効果を期待する自費診療をしっかり区別することが重要です。その点もよく考慮して検討しましょう。

現在、眼瞼下垂の治療は、眼科のみならず、形成外科、美容外科、皮膚科などでも行っています。機能回復に関する専門医は眼科医になりますが、もちろん、他科の医師にも眼瞼下垂について詳しく治療の経験が豊富な医師がいます。機能面と美容面の両方を考慮して治療にあたってくれる医師もいると思います。このように、眼瞼下垂は境界領域の病気ですので、医療施設を選ぶときには、よく調べて検討しましょう。

板谷理事長のひとことアドバイス

眼瞼下垂は外見にも機能面でも問題が出ます。機能障害解消のための治療は保険が適用されますが、美容面での効果を担保する治療は適用外になります。ご自分が機能面と美容面のどこまでを望むかを伝え専門医とよく相談しましょう。

まとめ

  • 眼瞼下垂の多くの原因は加齢によるものです
  • ただし、全身疾患から後天的に引き起こされることもありますので診断が重要です
  • 手術の方法はいくつかあり、症状の強さによって選びます
  • 機能面(保険診療)と美容面(自費診療)の双方をよく考慮して医療機関を選びましょう

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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