皆さんは、ぶどう膜炎という病気をご存知ですか? ぶどう膜炎とは、硝子体をはじめ眼内の透明な部分に炎症性細胞が入り込むことで、目のかすみや黒い虫、ゴミのようなものが視界に現れる病気です。飛蚊症の症状が出て、悪化すると約3%は失明する恐れがあるといわれています。このぶどう膜炎のいくつかある原因疾患のうち、最も多いのが「サルコイドーシス」です。男女とも20代と50代以降に発症のピークがありますが、女性は男性の約2倍発症しやすく、特に50代の女性に多く発症するといわれています。サルコイドーシスについてご説明していきましょう。

ぶどう膜とは?

ぶどう膜とは、目の中のいわゆる茶色い部分です。眼内に入る光を調節する「虹彩」、目のピント合わせて目の内圧を一定に保つ房水を作る「毛様体」、血管が豊富で網膜を通じて目に栄養を補給し、暗室効果を果たす「脈絡膜」、それらに隣接する組織の総称になります。ぶどう膜は血管が豊富にあって、メラニンがあるため紫色になっており、ぶどうの実を被う皮のようであるためこの名称で呼ばれています。

ぶどう膜炎とは、これらの部位に炎症が起こる病気です。目は血管が豊富な組織であり、血管は炎症を起こしやすいのです。そして、このぶどう膜炎を発症する原因の多くを占めるのがサルコイドーシスという病気です。

サルコイドーシスは全身病。目に発症する頻度が高い

サルコイドーシスとは、そもそもどういう病気なのでしょうか。「サルコイド」とは、ラテン語で「肉のようなもの」という意味が示す通り、肉芽腫(結節)が全身にできる多臓器(目、肺、皮膚、心臓、リンパ節、唾液腺、神経、肝臓、脾臓、筋肉、腎臓、胃など)疾患です。日本人の発症率は10万人対に1.7人(組織診断では1.01人:難病情報センター)という希少な難病です。
 
ぶどう膜炎の原因1位の疾患がサルコイドーシスで、2009年の日本眼炎症学会による調査結果では10.6%を占めています。日本人の場合、サルコイドーシスの60〜70%はぶどう膜炎が見られます。

軽症の場合は自覚症状がなく、発見できないことも多いため、実際には潜在的な患者はもっと多いと思われます。多くの場合は自然寛解する病気なのですが、重症化すると治療が困難になるため、特定疾患(難病)に指定されています。人種の違い、症状が出る部位などによってさまざまな経過をたどります。日本では先述したとおり、ぶどう膜炎という目の病気が現れることが多いのです。

サルコイドーシスの原因はニキビの原因となる菌(!?)

原因については、いろいろな説が議論されてきましたが、現在では、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科教授の江石義信先生らの研究で、プロピオニバクテリア(アクネ菌)というニキビの原因となる菌によって発症するという説が発表されています。海外では結核菌の感染が原因とする説もあります。
 

目の症状から発見されることが多いサルコイドーシス

サルコイドーシスは、全身に肉芽腫が現れますが、特定の臓器に現れるものを「臓器特異的症状」といい、全身に現れるものを「非特異的全身症状」と呼びます。
ぶどう膜炎は、目に現れる臓器特異的症状です。

ぶどう膜が炎症を起こすことで、ものがかすんで見えたり、まぶしくなったり(羞明)、虫が飛んだり、ゴミが見える飛蚊症が現れます。また、黄斑に浮腫が出ると、目が充血したり、ものが歪んで見えたり、視力が低下するなどの症状が現れます。症状によってぶどう膜炎が判明したことで、サルコイドーシスが発見されることが多いのです。

眼底検査と内科的検査で診断する

目の症状を自覚した場合には、まず、目の検査を受けましょう。検査は、蛍光眼底造影検査で炎症の有無を確認します。また、眼底OCTによって黄斑のむくみを観察します。サルコイドーシスによるぶどう膜炎はぶどう膜全体に炎症が現れる汎ぶどう膜炎となることが多いです。これらの検査でサルコイドーシスが疑われたら、さらに内科的に血液検査やツベルクリン検査などを行います。目の炎症部位から組織を摂取して病理検査をすることもあります。

日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会の「眼病変を強く示唆する臨床所見」では、
1)肉芽腫性全部ぶどう膜炎(豚脂様角膜後面沈着物、虹彩結節)
2)隅角結節またはテント状周辺虹彩前癒着
3)塊状硝子体混濁(雪玉状、数珠状)
4)網膜血管周囲炎(主に静脈)および血管周囲結節
5)多発するろう様網脈絡膜滲出斑または光凝固斑の網脈絡膜萎縮病巣
6)視神経乳頭肉芽腫または脈絡膜肉芽腫
のうち2項目を満たすとサルコイドーシス眼病変を強く疑うべきとしています。
目の症状からぶどう膜炎と診断された場合、サルコイドーシスを疑い、内科を受診して、全身の検査を行うべきです。

副腎皮質ステロイド薬と免疫抑制薬が一般的

サルコイドーシスによりぶどう膜炎を発症した場合は、まずぶどう膜炎の炎症を抑える治療を行い、その後、サルコイドーシス自体の治療を実施します。同時に他の臓器に症状がある場合には、それらの症状を抑える治療を行うべきです。

副腎皮質ステロイド薬(以下、ステロイド薬)と免疫抑制薬(メソトレキセートなど)で治療するのが一般的です。血管の炎症が軽度の場合には、ステロイド薬を点眼したり、虹彩が水晶体に癒着するのを防ぐための散瞳薬を点眼します。

ただし、隅角に結節ができると眼圧が上昇する場合があります。この場合ステロイド薬点眼で眼圧上昇と炎症は治まるのですが、ステロイド薬が原因で緑内障になる恐れもあります。ステロイド薬は、続発緑内障の有名な原因の一つなのです。ただし、ステロイド薬を止めると炎症が起こり、再び眼圧が上がってしまうことがあります。そのため治療には緻密な薬物の調整が必要になります。

黄斑浮腫がある場合には、結膜と胸膜の間のテノン嚢にステロイド薬注射をするテノン嚢下注射を行います。炎症が強い場合は、ステロイド薬や免疫抑制薬を全身投与します。水晶体のなかに炎症細胞が充満してしまった場合や、網膜に増殖膜ができた場合は、硝子体手術を行うこともあります。白内障、緑内障といった、他の合併症がある場合にも手術が必要です。治療後も、慢性化したサルコイドーシスの状態を把握するために、年に数回は全身状態の検査をおすすめします。

板谷院長のひとことアドバイス

ぶどう膜炎の原因疾患のうち、最も多いのが「サルコイドーシス」です。女性は男性の約2倍発症しやすく、特に50代の女性に多いといわれています。サルコイドーシスの多くは自然寛解しますが、重症化すると治療が困難になるため、早期発見が非常に重要です。ものがかすんで見える、まぶしくなる、虫が飛んだり、ゴミが見えたりする飛蚊症など、ぶどう膜炎の症状が現れたらサルコイドーシスを疑い、速やかに眼科を受診してください。

まとめ

  • ぶどう膜炎と診断されたらサルコイドーシスを疑うべきです。
  • 目の炎症を抑える治療とサルコイドーシスの症状が強ければ全身治療や手術を行う必要があります。
  • 治療後の経過観察も重要です。

目についてお悩みは、はんがい眼科へどうぞ

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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