強膜とは一般的にいう白目のことです。強膜は、目のなかで一番強い繊維で、外部から目を守る“眼の壁”と表現してもよい部位であるため、読んで字のごとく“強い膜”といわれるようになったのでしょう。眼球がみかんの房だとすると強膜は、それを被っているみかんの皮みたいなものであるといってもいいかもしれません。

強膜炎は、この頑丈な目の壁に炎症が起こる病気です。表面だけに症状が現れている上強膜炎の場合には、点眼薬だけで治ることもありますが、時には視力が低下したり、失明に至ることもあります。強膜炎の多くは未だ原因不明ですが、自己免疫が自分の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患との関連が疑われている病気です。そのため、関節性リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE、膠原病の1種)などの自己免疫疾患を有している方は要注意です。また、サルコイドーシス、結核などといった全身性炎症疾患に罹っている方も注意が必要でしょう。

強膜炎とは?

強膜にできる炎症である強膜炎は、上強膜炎・強膜炎(前部強膜炎)・後部強膜炎の3種類に分類されます。上強膜炎は強膜の上部組織の炎症です。結膜のすぐ下部に起こる炎症で、無治療でも改善することもあります。治療する場合は点眼薬などで改善されることがあります。

強膜のより深い組織で炎症が起こるのが強膜炎(前部強膜炎)です。上強膜炎と比べると、その症状に応じてさまざまな治療が必要になります。後部強膜炎は、さらに眼球の奥、後ろ側に炎症が広がった状態の強膜炎です。強膜炎(前部強膜炎)は、視力の低下が見られることがあります。強膜炎(前部強膜炎)になると、1年以内に薬14%、3年以内には薬30%で視力の低下が顕著になるという報告があります。

30〜50代の女性に発症しやすく、全症例のうち約3分の1は両目に発生するといわれています。日本眼炎症学会が2009年におこなったぶどう膜炎※の原因疾患についての調査の結果では、強膜炎は4位となり、その治療の必要性が注目されています。

※ぶどう膜炎は目のなかの虹彩、毛様体、脈絡膜に炎症を起こす病気の総称です。
かすむ、まぶしい!の症状に隠れた厄介な全身疾患「ぶどう膜炎」

眼の奥でうずくような痛み

強膜炎は、目の奥のうずくような痛みが特徴です。眼の裏側の方まで痛みがあると、目の奥や脳に何か深刻なことが起こっているのではないかと不安になるほどの痛みです。痛みが激しいと食欲が落ちることもあります。このように症状があまりにも強くなると、脳腫瘍など脳と関係のある重篤な病気なのではないか思ってしまうこともあります。

また、目の奥の痛み以外に、涙の量の増加、明るい光に敏感になる、眼が赤く充血する、紫がかった色になるといった症状が出ることもあります。以上のような症状に現れたら、早めに眼科を受診して調べてもらうことをおすすめします。

強膜炎の炎症には「びまん性」「結節性」「壊死性」の3種類があり、特に「壊死性」は強膜穿孔(穴が開く)が起こるおそれがあり、視力低下や失明、状態によっては眼球摘出に至ることもあります。

強膜の奥の方の炎症では、重篤化すると、強膜が薄くなって溶け出して、穿孔が起こることもあります。強膜が溶け出してくると、脈絡膜という茶色い組織の部分が透けて見えてきます。白目の部分が茶色くなっているのは、要注意のシグナルと言えます。ただし、白目が茶色く見える場合の多くは、疾患とは直接的に関係のない単なる色素沈着のこともあり、過度に心配する必要はありません。注意しなければならないのは、関節リウマチなどの自己免疫疾患や全身性炎症疾患をお持ちの方で、充血が長い間続いているといった症状がある方です。その場合は、眼科に相談してください。

【強膜炎の炎症「びまん性」】

【強膜炎の炎症「結節性」】

【強膜炎の炎症「壊死性」】

強膜炎の原因の約半数は不明 関節リウマチとの合併も

強膜炎の原因の約半数は不明です(MSDマニュアルプロフェッショナル版 強膜炎)。原因が判明できるもののなかでは、先述したとおり、多くの場合は関節リウマチなど自己免疫疾患による合併です。SLE、結節性多発動脈炎(PAN)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、再発性多発軟骨炎(RP)などの結合組織疾患との合併が原因であり、少数に結核、梅毒、単純ヘルペス、水痘・帯状疱疹ヘルペスなどといった感染症に起因する場合もあります。

関節リウマチを起因とする場合は自己免疫の攻撃によって強膜に穿孔が起こることがあります。穿孔が起こると、本来球状でなくてはならない眼球内が溶け出して球状でなくなってしまいます。保存強膜などでの保護が必要となります。

強膜炎の診断法は?

強膜炎の診断は、医師による問診と細隙灯顕微鏡という目を拡大視できる顕微鏡による観察を行います。後部強膜炎の場合はエコー(超音波検査)やCT検査(コンピュータ断層撮影検査)により全身を診断する場合もあります。強膜炎の診断については、結膜の下の上強膜血管、その奥の強膜血管を調べます。画像検査だけでなく痛み、全身状態などにより総合的に診断します。

強膜炎の治療は?

強膜炎の原因が菌やウイルスによる感染であることが判明した場合には、抗菌薬や抗ウイルス薬などの投与を行います。上強膜炎の場合は、点眼薬のみで良くなり、自然に治ることもあります。

自己免疫疾患を持っているなど、病態によって、経口のコルチコステロイド、免疫抑制薬の投与などを行います。
重症の場合には、外科的修復や強膜移植を行う場合もあります。自己免疫疾患に伴う強膜炎の場合には、その病気の治療が持続されることも重要です。

コルチコステロイドの投与

自己免疫疾患を持っている場合には、コルチコステロイド(プレドニゾロン)という薬を投与します。上強膜炎など軽症の場合では、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の内服や点眼薬のみで済むこともあります。

免疫抑制剤の投与

関節リウマチのような自己免疫疾患を持ちコルチコステロイドの効果がみられないケースで、壊死性強膜炎などの場合には、メトトレキサート、シクロフォスファミドなどの免疫抑制薬、リツキシマブなどの生物学的製剤を、眼科医とリウマチ膠原病専門医との協議により投与していく場合もあります。

外科手術

強膜に穿孔の危険性が生じている場合には、穿孔を防ぐ外科手術を行います。場合によっては強膜移植がおこなわれます。

板谷院長のひとことアドバイス

強膜とは、一般的に言う白目の部分。この目の壁とも言うべき部分に炎症が起こるのが強膜炎です。表面だけに症状が現れている上強膜炎の場合には、点眼薬だけで治ることもありますが、時には視力が低下したり、失明に至ることもあります。自己免疫疾患をお持ちの方は、胸膜炎を合併する可能性がありますから、特に注意が必要です。

まとめ

  • 関節性リウマチなど自己免疫疾患をお持ちの方は、強膜炎という病気を合併する可能性がありますので、常に注意することが大切です。
  • 上強膜炎など軽度であれば、点眼薬のみで寛解に導ける可能性があります。
  • 重度になると失明のおそれもあり、外科手術など適切な治療が必要です。

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執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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