本記事は、2020年4月21日に再更新いたしました。

強膜とは一般的に言う白目のことです。目という球体の壁は、外から 強膜、ぶどう膜、網膜と3層構造をしています。強膜は、壁のいちばん外側にある線維性組織で、最も丈夫で、眼球を守る働きをしています。読んで字のごとく“強い膜”なのです。

強膜炎は、この丈夫な目の壁に炎症が起こる病気です。表面だけに症状が現れている上強膜炎の場合には点眼薬だけで治ることもありますが、強膜炎は視力が低下したり、失明に至ることもある重篤な病気です。強膜炎の半分は未だ原因不明ですが、関節性リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE、膠原病の1種)などの自己免疫疾患に伴って起こることが知られています。自己免疫疾患とは免疫システムが、自分の組織を攻撃してしまう病気の総称です。女性に多く目の激しい痛みを伴う強膜炎を知っておきましょう。

上強膜炎は強膜炎とは異なる病気

目の壁である強膜を炎症の舞台とする病気は、上強膜炎と強膜炎(前部強膜炎)および後部強膜炎に分けて考えることができます。上強膜炎は名称も病気の場も似ていますが、異なる病気と考えられます。

上強膜炎は、強膜表面にある上強膜組織に起きる炎症で、無治療でも改善することもある予後の良い病気です。青年期に多くみられ、男性よりも女性に多く発症します。ほとんどは原因不明です。白目の局所的な充血と浮腫および眼表面の刺激感が現れます。治療としては、ステロイド点眼薬で速やかに消失します。

強膜炎は視力を脅かす

強膜の深い組織で炎症が起こるのが強膜炎です。上強膜炎と比べると、その症状は重く、さまざまな治療が必要になります。強膜炎が、さらに眼球の奥、後ろ側に広がると後部強膜炎になります。前方に留まっている場合を、特に前部強膜炎と呼ぶこともあります。

強膜炎は、30〜50代の女性に発症しやすく、全症例のうち約3分の1は両目に発生すると言われています。日本眼炎症学会が2009年におこなったぶどう膜炎※の原因疾患についての調査の結果では、強膜炎は4位となり、その治療の重要性が注目されています。
強膜炎は、視力低下のリスクがあります。強膜炎になると、1年以内に約14%、3年以内には約30%で視力の低下が顕著になるという報告があります。

※ぶどう膜炎は目のなかの虹彩、毛様体、脈絡膜に炎症を起こす病気の総称です(ぶどう膜炎のページを参照してください)。

眼の奥でうずくような痛み

強膜炎は、目の奥のうずくような強い痛みが特徴です。眼の裏側の方まで痛みがあると、目の奥や脳に何か深刻なことが起こっているのではないかと不安になるほどの痛みです。それ以外に、涙の量の増加、明るい光に過敏になる羞明感を覚えます。見た目には、眼が赤く充血する、時に白目が部分的に紫がかった色に見えることがあります。

強膜炎は「びまん性」「結節性」「壊死(えし)性」に分けられます。特に壊死性強膜炎は強膜穿孔(強膜が薄くなり孔が開くこと)が起こるおそれがあり、視力低下や失明、状態によっては眼球摘出に至ることもある重い病気です。穿孔が起こると、球状を保てなくなり目の内容物が出てきたり、感染のリスクが高まります。穿孔部を保存強膜などでの保護する治療を行います。強膜が薄くなった部分は、その奧の脈絡膜というメラニンに富んだ茶色い組織が透けて見えてきます。白目の部分が茶色くなっているのは、強膜穿孔の恐れがある要注意のシグナルです。ただし、白目が茶色く見える場合の多くは、疾患とは直接的に関係のない単なる色素沈着のこともあります。眼科で簡単に見分けは付きます。注意しなければならないのは、関節リウマチなどの自己免疫疾患や全身性炎症疾患をお持ちの方で、充血が長い間続いているといった症状がある方です。

【強膜炎の炎症「びまん性」】

【強膜炎の炎症「結節性」】

【強膜炎の炎症「壊死性」】
活動期

消退期:強膜が溶けて薄くなり向こうの脈絡膜が透けて見える

強膜炎の原因の約半数は不明 関節リウマチとの合併も

強膜炎の原因の約半数は不明です。原因が判明できるもののなかでは、先述したとおり、多くの場合は関節リウマチなど自己免疫疾患による合併です。SLE、結節性多発動脈炎(PAN)、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)、再発性多発軟骨炎(RP)などの結合組織疾患との合併が原因であり、少数に結核、梅毒、単純ヘルペス、水痘・帯状疱疹ヘルペスなどといった感染症に起因する場合もあります。

強膜炎の診断法は?

強膜炎の診断は、医師による問診と細隙灯顕微鏡という目を拡大視できる顕微鏡による観察を行います。後部強膜炎の場合はエコー(超音波検査)やCT検査(コンピュータ断層撮影検査)が有効です。強膜炎の診断については、結膜の下の上強膜血管、その奥の強膜血管を観察します。画像検査だけでなく痛み、全身状態などにより総合的に診断します。

強膜炎の治療は原因による

強膜炎の原因が菌やウイルスによる感染であることが判明した場合には、抗菌薬や抗ウイルス薬などの投与をおこないます。

自己免疫疾患を持っているなど、病態によって、経口のコルチコステロイド、免疫抑制薬の投与などをおこないます。

強膜穿孔の場合には、外科的修復や強膜移植をおこなう場合もあります。自己免疫疾患に伴う強膜炎の場合には、その病気の治療が持続されることも重要です。

コルチコステロイドの投与

自己免疫疾患を持っている場合には、コルチコステロイド(プレドニゾロン)が点眼および内服投与されます。重症例には懸濁液のステロイドをテノン嚢下に注射することもあります。

上強膜炎は、ステロイド点眼薬のみで済むことが多いです。

免疫抑制剤の投与

関節リウマチのような自己免疫疾患を持ちコルチコステロイドの効果がみられないケースで、壊死性強膜炎などの場合には、メトトレキサート、シクロフォスファミドなどの免疫抑制薬、リツキシマブなどの生物学的製剤を、眼科医とリウマチ膠原病専門医との協議して投与していく場合もあります。

外科手術

強膜に穿孔の危険性が生じている場合には、穿孔を防ぐ外科手術を行います。場合によっては保存強膜を用いた強膜移植がおこなわれます。

板谷理事長のひとことアドバイス

自己免疫疾患をお持ちの方で、急に目が充血してきたら強膜炎を疑い眼科にお越しください。なぜなら、重篤な強膜炎の可能性があるからです。

まとめ

  • 上強膜炎は強膜炎とは異なる疾患で、ステロイド点眼薬のみで速やかに治ります。
  • 強膜炎は強い目の痛みを伴いますので、ステロイドの点眼、ステロイド懸濁液のテノン嚢下注射、ステロイド内服などを行います。
  • 強膜炎の中でも重篤な穿孔性強膜炎は重度になると失明のおそれもあり、外科手術など適切な治療が必要です。
  • 関節性リウマチなど自己免疫疾患をお持ちの方は、強膜炎を合併する可能性がありますので、常に注意することが大切です。

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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