目がかすむ、視界に小さな虫やゴミのようなものが見える、強い光をまぶしく感じる、視力が落ちたように感じる、目が充血している――。

そのような症状を自覚したとき、中高年世代であれば老眼や白内障を疑うことが多いのではないでしょうか。若い世代であれば「眼精疲労かな」と考えて、やり過ごす方も多いかもしれません。

しかし、決して珍しいものではないこれらの症状の陰に、ときとして非常にやっかいな病気が隠れていることがあります。その一つが「ぶどう膜炎」です。

ぶどう膜炎とは、目のぶどう膜という組織に炎症が起こる病気の総称で、その中にはいくつかの種類があります。20~30代の若い世代に発症のピークがあるものもありますし、高齢になって発症するものもあります。治療のタイミングを逃すと視力障害が進んでしまうケースもあるので、気になる症状が続くときは眼科を受診していただきたいと思います。

今回は「ぶどう膜炎」の症状や原因、治療法について解説します。

目の中に炎症性細胞が広がり、目のかすみなどが発生する

ぶどう膜炎の症状

ぶとう膜とは、眼球の網膜と強膜の間にある組織で、脈絡膜、毛様体、虹彩の三つの部分で構成されており、眼球全体を覆っています。かたちが球形であることに加え、血管が豊富に走っている脈絡膜の色がぶどうの実の色に似ていることから、「ぶどう膜」と呼ばれます。このぶどう膜になんらかの原因で炎症が起こるのが、ぶどう膜炎です。

ぶどう膜炎が発症すると、ぶどう膜で生じた炎症性細胞が、眼球内部の硝子体の中や、角膜と水晶体の間の前房という領域へ浸潤していき、目のかすみ、羞明感、充血、目の痛みなどの症状を引き起こします。炎症が網膜におよぶと、視野のゆがみや視力低下が生じることもあります。

症状は片目だけに生じることもあれば、両目に起こることもあります。また、症状が徐々に進んでいく例もあれば、良くなったり悪化したりを繰り返す例もあるなど、人によって症状の現れ方が異なるところに特徴があります。
また、あとで述べますように、ぶどう膜炎の原因が全身疾患にある例では、発熱、関節痛、口内炎、皮膚炎、下痢など、目の症状以外にも全身にさまざまな症状が現れます。

慢性の全身疾患が原因であることが多い

ぶどう膜炎は、全身性の疾患が原因となって発症することの多い病気です。
ぶどう膜炎の原因としては、サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病という三つの全身疾患が代表的なものとされ、これらによって発症するぶどう膜炎は「三大ぶどう膜炎」と呼ばれてきました。しかし近年は、ベーチェット病によるぶどう膜炎は減少傾向にあり、三大疾患以外の原因で発症する例が多くなってきています。ただし、原因疾患が特定できないぶどう膜炎もあり、全体の約3割を占めています。

ぶどう膜炎の原因疾患と頻度

順位 疾患 %
1 サルコイドーシス 10.6
2 フォークト‐小柳‐原田病 7.0
3 急性前部ぶどう膜炎 6.5
4 強膜炎 6.1
5 ヘルペス虹彩毛様体炎 4.2
6 ベーチェット病 3.9
分類不能 33.5

(資料/日本眼炎症学会による調査結果、2009年)

以下、ぶどう膜炎の原因となる疾患について、一つひとつ解説します。

サルコイドーシス

目や肺、皮膚、心臓など全身の至るところに小さな腫れ物(肉芽腫;にくがしゅ)ができる疾患です。患者数は約2万人で、20~30代と60代に緩やかな発症のピークがあり、50代以降では女性に多い傾向が認められます。咳や息切れなどの肺の症状や、結節などの皮膚症状が特徴です。

目には、虹彩の肉芽腫を伴うぶどう膜炎が生じます。慢性化することが多く、炎症が続くことによって、網膜が障害されたり緑内障や白内障を合併したりして視力が大きく低下することもあります。

ぶどう膜炎の治療は、ステロイド薬の点眼や内服によって炎症を抑えるのが基本です。場合によっては、虹彩が癒着することもあり、これを防ぐために局所療法として散瞳薬を処方することもあります。また、硝子体の濁りが強い場合や網膜剥離を起こしているときは、硝子体手術を行うこともあります。きちんと治療をしていれば視力は比較的よく保たれ、重い合併症が生じることもほとんどありません。ただし、サルコイドーシスは、症状が安定しているからと安易に治療を中断すると再発しやすいため、根気よく検査や治療を続ける必要があります。

原田病(フォークト‐小柳‐原田病)

原田病は、メラニン色素細胞を標的とする自己免疫疾患で、20~40代の、どちらかといえば女性に多い疾患です。免疫細胞が、全身のメラニン色素を作る細胞を誤って異物とみなして攻撃してしまうことで、全身のさまざまな組織で強い炎症反応が起こります。

原田病の症状は、メラニン色素の多い目や耳、髄膜、皮膚、毛髪などの組織に現れます。目では、ぶどう膜炎が起こるほか、急に両目に網膜剥離が生じて視力低下を引き起こすことがあります。目に関するもの以外では、難聴や耳鳴り、髄膜炎、皮膚の白斑、毛髪やまつげなどが抜ける、白髪になる、といった症状が現れます。

初期には治療をしなくても症状が軽快することがありますが、再発・慢性化しやすいのが特徴です。ステロイド薬の全身投与などで治療を行います。

ベーチェット病

全身のさまざまな組織に発作性の炎症が繰り返し起こる慢性の病気です。トルコの医師ベーチェット(1889~1948年)が最初に報告した疾患で、地中海沿岸諸国から東アジアにかけてのシルクロード沿いに患者が多いことから、別名「シルクロード病」とも呼ばれます。日本では患者の男女比はほぼ同等、平均発症年齢は36.6歳(2002年)となっています。

目の症状としては、突然視力が低下するぶどう膜炎の発作が繰り返し起こります。症状が強く出るのは男性患者に多く、男性のほうがより重症化する傾向があります。

目のほかに起こる症状としては、口内炎や外陰部の潰瘍、皮膚症状(結節性紅斑;けっせつせいこうはん、血栓性静脈炎、毛嚢炎様皮疹;もうのうえんようひしん)が特徴的です。ほかに関節炎や消化器潰瘍、頭痛やふらつき、手足の麻痺などの中枢神経病変が現れることもあります。
ベーチェット病の治療は、ステロイド薬や免疫抑制剤などで行います。近年は生物学的製剤という効果の高い薬が登場し、失明のリスクは以前に比べて減少しています。

その他の発症原因

ぶどう膜炎の中には、硬直性脊椎炎や糖尿病が原因となり、ぶどう膜前部(虹彩・毛様体)に急性の炎症が起きて発症するものがあります。
また、感染によって発症するぶどう膜炎もあります。ヘルペスウイルスの感染からヘルペス虹彩毛様体炎が起こって発症するものがよく知られています。ほかにも、真菌の感染による真菌性眼内炎、結核菌の感染による結核性ぶどう膜炎、トキソプラズマ症の感染によるトキソプラズマ性網脈絡膜炎などがあります。

さらに、ぶどう膜炎は外傷や悪性腫瘍が原因となって発症することもあります。これらのぶどう膜炎の治療は、発症の原因となった病気や病原体に有効な治療薬(たとえば、抗結核薬や抗ウイルス薬など)やステロイド薬の投与、あるいは手術療法によって行います。

ぶどう膜炎が疑われるときは専門医を受診し、
根気よく治療を続けることが大切

ぶどう膜炎は正確な診断が難しいうえ、なかなか治りにくく慢性化することも少なくないため、目の病気のなかでも難病の一つといえます。しかし、早い段階で気づいて炎症を抑える治療を続けていけば、視力を失うような例は以前より少なくなっています。ぶどう膜炎が疑われるような症状に気付いたときは、早めに眼科の専門医を受診して検査・治療を受けることをおすすめします。

ただし、ぶどう膜炎では、治療によって目立つ症状が落ち着いてきた場合でも、からだの内部では炎症が続いていることが少なくありません。さらに重い視力低下につながる緑内障や網膜剥離などの合併症をいち早く発見するためにも、定期的な検査は不可欠です。自己判断で薬の使用や通院を止めることなく、医師の指示に従って、根気よく検査と治療を続けていきましょう。

板谷院長のひとことアドバイス

「視界に小さな虫のようなものが見える」「日差しがまぶしく感じる」「ものが見えにくくなる」といった症状は、日常のささいなできごととして、見過ごす場合があるかもしれません。けれどもこれらは、「ぶどう膜炎」の特徴で、全身性の疾患が隠れている場合があります。放置していると、失明のリスクもあるため、おかしいと感じたときはすぐに受診することをおすすめします。

まとめ

  • 眼球全体を覆っているぶどう膜に、なんらかの原因で炎症がおきるのが「ぶどう膜炎」です。
  • ぶどう膜炎のおもな症状には、目のかすみ、飛蚊症、視力低下、羞明感、充血などがあります。
  • 原因として多いのは、サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病などの慢性的な全身疾患です。医師の指示に従って、炎症を抑える治療を続けることが重要です。

目についてお悩みは、はんがい眼科へどうぞ

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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