現代では、スマホにパソコン、コンタクトレンズの装用と、知らず知らずのうちに目を酷使しています。ドライアイは、このような目の酷使やエアコンを日常的に用いるようになった現代の環境が原因で起こる症候群といってよいでしょう。ドライアイは、推定患者数800万人ともいわれる国民病です。

ドライアイは、目が乾くというだけではなく、霞んだり、痛みが出たり、腫れたり、目の症状として日常経験するような症状が、幅広く出現します。場合によっては、視力が落ちることもあります。自分にも当てはまるかもしれないと考えられる場合には、多くは涙の問題であることが多いことを知っておきましょう。ドライアイとは涙の層が安定しないことにより、様々な支障をきたす病気と理解してください。「たかがドライアイ、されどドライアイ」です。

「たかがドライアイされどドライアイ」進行すると角膜に異常も

ドライアイは、室内の空調環境が整備されるようになり、長時間労働も加わったことで、目が乾きやすい環境の中で生まれた現代病の一つです。「たかがドライアイ、されどドライアイ」とお話ししましたが、進行すると角膜上皮障害が起こることがありますので注意が必要です。重大な疾病を引き起こすことがないように、普段から注意して、人によっては長くケアしていくことが大切であることを知っておいてください。

日本ではドライアイの研究が進んでいます。ストレスの多い国、働きすぎの国であるからかもしれません。さらには、アジア人は近視が多く、コンタクトレンズ装用者が多いということも原因の一つであるといえるでしょう。

【ドライアイになると涙の膜が壊れて目を守ることができなくなります。】

涙は目という臓器の一部

かつては、目の構造物の中で、涙はあくまでも付属物と位置づけられていたのですが、近年は涙も目という臓器の一部であるという考え方に変わってきました。涙はウイルスや細菌などの感染から防ぐ役割も担っています。このことは、人類の祖先が海で生まれて、進化して、陸上に上がったことと大いに関連があります。

目は乾燥すると、光学系としての質が落ちます。眼球は乾燥するときれいな球面を保つことができなくなります。常に表面が潤っていることによって、光がまっすぐ目に入ってくるのです。

そして、涙の出る構造がとても重要です。悲しい時や、感動したときに流れる涙と、眼球の表面を保護するための涙は同じであると誤解されているかもしれません。あふれ出る涙と、涙という保護膜の違いと理解していただいたほうがよいかもしれません。涙は油層、水層、ムチン層という3層からなり、それぞれのバランスで安定性を保っている構造をしています。

ドライアイは他疾患が原因の場合とライフスタイルや加齢の場合がある

ドライアイは、他の病気が原因となる場合と、生活環境が原因となる場合に分けることができます。他の病気が原因でなるドライアイの一つに、シェーグレン症候群があります。自己免疫系の病気で、自分自身の涙腺や唾液腺を攻撃するため、涙の分泌が極端に落ちドライアイになるのです。

また、結膜弛緩症は、結膜(白目部分を覆う透明な膜)が弛み、目の表面で涙をとどめにくくなるためドライアイになりやすくなります。これは加齢により起こりやすくなる傾向があります。さらに、マイボーム腺機能不全は、目の表面に油を出し涙の蒸発を防いでいるマイボーム腺の機能が、加齢とともに弱まったり詰まったりすることで、涙が蒸発しやすくなってしまいドライアイが起こります。

これらが、ドライアイが起こる原因の主な病気です。一方、日常生活の習慣によって起こるドライアイが、近年増えています。生活環境のリスク因子は、コンタクトレンズの装用、室内の乾燥、目の酷使となどがあげられるでしょう。なかには、もともと涙液が少ないという人もいます。涙液分泌が少ない事とその他の要因がかさなるとドライアイに至ることもあります。また、喫煙や、向精神薬・抗がん剤などの薬の副作用で起こることもあります。
 

ドライアイは目の不快感全般が症状

ドライアイは目の乾燥だけでなく、目が疲れやすい、かすむ、痛みがある、重く感じる、赤くなる、かゆみがある、ごろごろする、視力が低下するなど、目の不快感全般の症状がみられます。目全般の不快感は他の疾患の場合もありますので、眼科医の診断をうけましょう。

ドライアイの診断には自覚症状のほか、涙液量と角結膜上皮障害の有無を検査

ドライアイの診断基準として、自覚症状と涙液異常と角結膜上皮障害の有無で評価をする方法があります。三つともありであればドライアイと診断し、三つのなかでいずれか二つが当てはまればドライアイの疑いがあることになります(ドライアイの定義と診断基準/2006年 ドライアイ研究会)検査では、まばたきをせずに10秒間目を開けていられるかのチェックを行います。正常では10秒目を開けていても潤いを保ちますが、ドライアイの場合は2〜3秒で潤いが低下するため目を開けていられなくなります。その他、涙の量を調べるシルマー試験や染色液を点眼して涙の安定度を調べる涙液層破壊時間(BUT)検査などを行います。

ドライアイの治療はまず原因を除外するのが先決

涙の状態を不安定にする原因の一つひとつを除外していくということがドライアイの治療において先決すべきことになります。基本的に点眼と保温、そして生活習慣の改善といったことで、目の乾きを防ぐ方法です。これで根治を目指すというよりはコンディションを整えて、長くつき合っていく病気といえます。

点眼薬の投与

ドライアイを防ぐのに欠かせない「涙を守る、正常化する」ための薬が登場してきました。従来は涙を補うという発想でしかありませんでしたが、涙の膜を安定させるという点眼薬が使用できるようになってきました。ただし、いまだに、涙は目の組織の一部であるという考え方は広く浸透していません。現在では、人工涙液、ヒアルロン酸製剤、涙の中の免疫成分であるムチンや水分の分泌を促したり、ムチンを産生する点眼薬を投与したりします。

マイボーム腺機能不全の場合には目を温めることが一番の治療法と考えられています。そのほか、ドライアイ専用メガネをかけて蒸発を防ぎ、潤いを保持するという方法もあります。

【涙の蒸発を抑える効果のあるドライアイ専用メガネ】

涙点プラグ

重症の場合には、涙の出口をふさぐために目頭にある涙点にプラグ(栓)を入れます。
また、結膜弛緩症の場合には手術をすることもあります。

【涙の排出を抑える涙点プラグ】

生活習慣の改善

生活習慣で大切なことは「まばたき」です。まばたきは、涙の膜を作るコーティングをする役割を担っています。普段、無意識に行っているまばたきは、目を守るために大変重要な動作なのです。例えると車のワイパーのような役目です。ところが、現代の生活では、スマホやパソコンの画面を、まばたきを忘れて「凝視する」という機会が実に多くなっています。しかもテレビであれば離れてみるからまだよいのですが、スマホやパソコンは至近距離でみるためにどうしても凝視度が高くなるのです。積極的に意識して「まばたき」をするようにしましょう。

コンタクトレンズを使用している方も注意が必要です。長時間装着していると、目が乾く原因になります。違和感がある場合は、眼科に相談しましょう。
さらに室内環境においては、加湿器など取り入れ、乾燥を防ぐことが大切です。

板谷院長のひとことアドバイス

エアコンやヒーターが効いた中で長時間過ごしていると、乾燥によってドライアイになったり、すでにドライアイを患っている方は進行したりします。空調環境長時間労働も加わったことで、目が乾きやすい環境の中で生まれた現代病の一つです。こまめに換気し、加湿器を入れるなどして乾燥を防ぎましょう。

まとめ

  • ドライアイは、スマホやパソコン、コンタクトなどを長時間使用することで生まれた現代病の一つです。
  • 乾燥をやわらげる室内環境を作ることが、ドライアイの発症もしくは進行を防ぐことになります。
  • 「まばたき」の重要性を再認識し、意識的にまばたきしましょう。

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執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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