年齢を重ねると、目にはさまざまな病気が発症しやすくなります。また、見た目の変化も起きるようになります。その変化が病気によるものか、それとも単なる老化現象なのか、判断に困ることもあるかと思います。
単なる老化現象であるならば、それは心配しなくていいものですが、もし病気であるならば、治療しなければなりません。治療には手術が必要になることもあり、患者さんの負担は決して軽くはありません。しかし現在の眼科医療では、白内障手術のように、手術によって元の見え方以上の見え方、若いころの健康な見え方が得られるような治療も可能になっています。病気になったことで若返りの手術ができる……そう考えると、白内障はハッピーな病気なのかもしれません。
今回は、老化によって起こるさまざまな目の変化について、病気とそうでないもの、さらに現在の眼科医療で可能となっている最新の治療についてご紹介します。

老化で起こるさまざまな目の症状には、治療が必要なものとそうでないものがあります

加齢による目の病気や症状として、老視(老眼)、白内障、緑内障、加齢黄斑変性が有名です。しかし、白目が濁ったり、まぶたが上がりにくくなったりするなど、見た目でわかる変化の中には、単なる皮膚のシミと同じように、治療が必要とまでは言えない症状もあります。

治療によって若いころの見え方を取り戻すことができる「老視」と「白内障」

老視

目の中でカメラのレンズの役割をしている水晶体は加齢とともに硬くなります。すると厚さを変えにくくなり、近くのものにピントが合いにくくなります。このように目のレンズの調節機能の低下をきたすのが老眼、いわゆる老視です。老視は老眼鏡で矯正できますが、見るものの距離によって、つけたり外したりせねばなりません。また年齢を重ねるごとに度が進むので、たびたびメガネを作り変える必要があり、煩わしいと思われる方もあるようです。そんな中、2007年に多焦点眼内レンズ(遠近両用眼内レンズ)が厚生労働省に認可され、日本でも眼内レンズによる老視治療を受けることができるようになりました。白内障の治療では濁った水晶体を吸い出し、代わりに人工の眼内レンズを挿入しますが、近年は遠くと近くの2点、あるいは、それに中間距離を加えた3点にピントが合うようになっている多焦点眼内レンズを使うのが主流となっています。人工レンズによる老視の治療は、それとまったく同じ術式です。仮に白内障の方がこの治療を受けるとすれば、白内障と老視の両方が一度の手術で治ることになります。術後は新聞が裸眼で読めるようになります、ただし、多焦点レンズの見え方に慣れるまでには数週間~数ヶ月かかります。なお、挿入した眼内レンズは交換したりメンテナンスを行う必要はありません。


白内障

目の中でカメラのレンズに相当する水晶体が、主として加齢により濁りを増していく疾患です。モノがぼやけたりかすんだりして見えるようなります。40代頃から発症する方が右肩上がりに増えていき、80歳以上では、程度の差はあれ、ほぼ100%が罹患します。濁った水晶体を吸い出して人工眼内レンズを挿入する手術で治ります。生活上、不便を感ずるようになったときに受けるとよいでしょう。人工眼内レンズの中でも近年よく選ばれているのは、「遠く」と「近く」の2ヶ所、または「遠く」「中間」「近く」の3ヶ所に焦点が合うように設計されている多焦点眼内レンズです。最近は、従来の多焦点眼内レンズにあった「夜間に光の周りにリングが見える」「まぶしく見える」といった現象が軽減された、夜間でもより自然に見えるEDOF(イードフ)レンズや、白内障と同時に近視や乱視も改善できるレンズなども登場しています。白内障の手術を受ける方は、このように選択肢の増えた眼内レンズの中から、何をよく見たいのか考え、個々人の生活のスタイルや仕事に合わせて選ぶことをおすすめします。

【白内障の目】

治療は可能であるものの、ずっと闘い続けなければならない「緑内障」と「加齢黄斑変性」

緑内障

日本人の失明原因の1位です。40歳以上では20人に1人が罹っているとされています。眼圧が高くなるなどして視神経が徐々に冒され、視野が欠けるなどの症状が現れます。しかし、多くは進行がゆっくりであることから、異常を自覚できないことが少なくなく、自覚症状が顕著になって受診し、進行した状態で見つかるというケースが多いのです。正しく緑内障の診断を受けている方は患者さん全体の1割ほどに過ぎないのではないかと推測されています。現時点では、欠けてしまった視野を回復する方法はなく、現状の視野を保つことを目的として治療を行います。多くの場合、点眼薬を用いた薬物療法によって疾患を管理し進行を阻止することで失明を免れることができます。早期に発見し、早期に治療を開始することが大事な疾患です。

【急性緑内障発作の目】

加齢黄斑変性

近年急増しており、日本人の失明原因の4位になっています。目のスクリーンに当たる網膜の中心部にある黄斑という部分が加齢によって機能低下をきたし、ものが歪んで見えたり、一部が欠けて見えたりする病気です。網膜と周辺器官が萎縮していく萎縮型と、異常な血管が延びてきて網膜を損傷する滲出型とがあります。治療法としては、薬物で異常な血管を退縮させる方法や、レーザーで病変を凝固させる方法などがあります。また最近、ルテインとゼアキサンチンなど複数の抗酸化物質を含有するサプリメントが病気の進行を阻止することがわかり、治療に取り入れられるようになっています。

【加齢黄斑変性の眼底写真】

治療ができるものの、見た目を気にする方には美容整形での施術がおすすめの「眼瞼下垂」と「結膜弛緩症」

眼瞼下垂

まぶたを持ち上げる筋肉である「上眼瞼挙筋腱膜」や「ミュラー筋」が弱って伸びてしまい、まぶたが上がらなくなる疾患です。加齢によって起こりますが、最近はコンタクトレンズの長期装用によって起こる症例があることも指摘されています。
これらのタイプであれば皮膚を切開し、伸びてしまった上眼瞼挙筋腱膜とミュラー筋を手術で縫い縮めることにより、適切な位置に戻します。手術をすることにより、まぶたがきれいにあがり、視界も広がります。きれいに縫いますので傷は目立ちません。

【眼瞼下垂の症状】

結膜弛緩症

結膜にヒダができて、すぐに涙があふれるなどする病気です。病名どおり、結膜が弛緩してシワができるのですが、原因はよくわかっておらず、年齢とともに増えることから加齢性のものだと考えられています。眼をうるおして保護する涙がこぼれてしまうので、ドライアイと似た症状が出ます。ドライアイの方が結膜弛緩症になると、さらに眼の乾きがひどくなり、ドライアイが重症化します。ヒアルロン酸を含有する点眼薬を挿して涙を目の表面全体に行き渡るようにする点眼療法を行い、それで効果がなければ手術を行ってヒダを除去します。

【結膜弛緩症の目】

病気ではないので治す必要がない「瞼裂斑」と「老人環」

瞼裂斑(けんれつはん)

白目を覆っている結膜に黄色い斑点や隆起が生じる病気です。とくに悪さをするものではありません。太陽光などの刺激が影響して生じると考えられています。瞼裂斑を中心として白目に扇形の充血があるときは、点眼薬を用いて炎症を抑えます。翼状片と違い、黒目に斑点や隆起がのびてくることはありません。まばたきに支障がなければ手術は必要ありません。

【瞼裂斑】

老人環

老人環は、白目と黒目の境目が白く環状に濁ってくる現象です。 最初は時計盤でいう12時あるいは6時のあたりから濁りはじめることが多く、年齢とともに環状に濁りが進んできます。60歳くらいになると鏡を見てわかるほどになり、80歳くらいになるとほとんどの方にみられるようになります。老化現象の一つであり、病気として心配する必要はありません。

【老人環】

板谷院長のひとことアドバイス

老化による症状のなかには「瞼裂斑」や「老人環」など治療の必要が無いものもありますが、生活に支障をきたし治療が必要なものもあります。白内障は、80歳以上であればほぼ100%が罹患します。目の不調を感じたら早めに眼科で受診し、治療を行いましょう。早くに治療を受けることで、クリアな視界で快適な生活を送ることができ、老後の楽しみも増えるはずです。

まとめ

  • 老化は目に大きな変化をもたらします。ただし、単なる外見の変化だけで病気ではないものもあります。
  • しかし、見え方に変化が生じている場合は、怖い病気が潜んでいることがあります。見え方に違和感があるようでしたら、眼科で詳しい検査を受けるようにしましょう。
  • 白内障は80歳以上であればほぼ100%の人が罹患しますので、眼科での早めの治療が大切です。

目についてお悩みは、はんがい眼科へどうぞ

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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