料理で油を使っていたり、溶接など火花が出るような作業をしていたり、仕事で化学薬品を使っている際、うっかり目にやけどを負ってしまうことがあります。
目にやけどを負ってしまった際は、まずは清浄な水で洗浄後、ただちに眼科を受診することが基本になります。特に化学薬品(特にアルカリ性の薬品)のやけどはより重篤な結果を招きやすいので、早急な対処が必要になります。

今回は目のやけどを負ったときはどのように対処したらいいのか、詳しくご紹介していきます。

目を守るまぶたの「瞬目反射」

目のやけどと言っても、通常は目に異物が入りそうになると、瞬間的にまぶたを閉じる「瞬目反射」という機能があるため、眼球に異物が入ることは多くありません。普通の異物であればそれで目は守られます。
ところが、異物が熱湯や高温度の油、化学薬品の場合、眼球を守ったまぶたがダメージを負ってやけどを負ってしまいます。まぶたのやけども、早期にしっかりと対処しないと後遺症を引き起こしますので、十分に注意してください。

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「まぶた」をやけどをした!

瞬目反射によって目を閉じて眼球を守っても、飛んできた熱湯や高温度の油によって、まぶたがやけどを負ってしまうことがあります。
まぶたがやけどを負ったら、まずは清浄な水で洗い流して、冷やしましょう!

治療

まぶたのやけどは、他の部位の皮膚のやけどと同じように対処します。

まず、その場で清浄な水で洗い流し、痛みがある程度やわらぐまで冷たいタオルなどで冷やします。氷などの冷たすぎるものは血管を収縮して症状を悪化させることもありますので、避けましょう。
その後早めに眼科受診をしてください。まぶたの消毒をしたあと、感染症を防ぐため抗生剤を塗布します。痛みが強い場合には鎮痛剤を内服します。

やけどには障害を受けた皮膚の深度によって重症度が決定されます。

深度 症状
Ⅰ度 ヒリヒリとした痛み。部位が赤くなり、充血を起こしている。
浅達性Ⅱ度 ピリピリとした強い痛み。部位に水疱が形成される。
深達性Ⅱ度 見た目は浅達性Ⅱ度と同じだが、痛みが少なく鈍麻している。
Ⅲ度 白や茶色に変色。ただれ。部位の炭化。痛みはなし。

まぶたのやけどでは、浅達性Ⅱ度の状態で、目が閉じなくなる兎眼症を起こすことがありますので、眼科を受診して医師によく診てもらうようにしましょう。重症な場合は皮膚科も併診していただくことがあります。

熱湯や油で目にやけどを負った!

熱湯や油、火花などの熱で目をやけどしてしまった場合には、きれいな水で洗います。そして、ある程度痛みや刺激などが治まるまで冷たいタオルなどで患部を冷やします。
瞬目反射や涙の自浄作用のおかげで、熱による目のやけどは重症になることは少ないです。料理で油がはねた、という程度であれば、痛みが引いて目が開けられたら問題はないでしょう。

しかし、痛みが続いて目を開けられないようであれば、放置しておくと視力低下などの後遺症が残る場合がありますから、必ず眼科を受診するようにしてください。

症状の程度と治療


卵の白味が熱で変性して白くなるように熱い油が目に入ると角膜の表面はぽつんと白くなります。やけどの症状が角膜表面の上皮層に留まっている場合は、比較的軽症で、白く変性した上皮は清浄な上皮に入れ替わり後遺症を残しません。
やけどがさらに奧にあるボーマン膜(上皮細胞の土台)や角膜実質におよぶと感染のリスクが生じ、治っても濁りが残ります。

少量の場合は涙で冷やされ洗い流されてしまいます。量が多い場合は水道水で洗い流してください。治療の基本は、炎症を抑える点眼薬と、感染症を防ぐ抗生剤の点眼薬の処方になります。

溶接のアーク光(火花)が目に入った!


溶接のアーク光は、目に見える可視光線と目に見えない紫外線、赤外線を発しています。その中で目に問題となるのは、可視光線と紫外線です。溶接のアーク光が目に入った場合の障害はやけどとは少し異なりますが、ここでご紹介します。

可視光線による障害

光を遮るマスク(保護具)などを装着せずに強い可視光線を直視すると、見えにくくなったり、視界の欠損が発生することがあります。数週間から数カ月の間に自然に軽減していきますが、蓄積することで網膜の神経細胞が障害されると残ることもあります。

紫外線による障害

紫外線を浴びると、角結膜炎(紫外眼炎)を引き起こします。アーク溶接によるものを「電気性眼炎」と呼ぶ場合もあります。
これは、スキーをしていると太陽光の雪による反射で紫外線を大量に浴びてしまうために生じる「雪目」と同じです。目の日焼け、と言ってもいいかもしれません。
症状としては眼の中がごろごろする、目に痛みがある、涙が異常に流れる、非常にまぶしさを感じるなどがあります。症状は、紫外線を浴びた日の翌日には消えることがほとんどです。

紫外線については、こちらのコラムでもご紹介しております

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目に薬品が入ってしまった!【化学眼外傷】

化学薬品が目に入ってしまった場合、角膜などにやけどを生じることがあります。これを化学眼外傷といい、目のやけどの中では最も重症化する可能性の高い、危険な症状です。特に強アルカリ性の物質は重症になりやすく、角膜に孔を開け失明に至る場合もあります。

原因

目に入りやすい化学薬品は、日常生活の中にあります。
洗剤や漂白剤、カビとり剤、接着剤、ヘアカラーなどは、日常的に触れるものですので、取り扱いに注意しましょう。工事現場や清掃業者などは、セメントや苛性ソーダ(苛性アルカリ溶液)に触れる機会がありますが、これらが目に入ると重篤な化学熱傷を引き起こすことがありますので注意しましょう。

症状

化学物質の種類、曝露時間、暴露量などにより症状は異なります。共通の症状としては、強い痛みが生じて、目を開けているのがつらい状態になります。
症状が酷い場合には、角膜に強いにごりが生じ、まぶたの裏と眼球がくっついてしまうことがあります。さらに酷い場合には、角膜に潰瘍が生じたり、角膜に孔があいて失明にいたります。

酸性の化学物質は透過性が低く眼表面を破壊するにとどまりますが、アルカリ性の化学物質は深達性が高く、角膜内皮、結膜血管、角膜上皮幹細胞などを破壊しますので危険です。特に、角膜上皮幹細胞が障害されると新しい上皮細胞が作れなくなり、徐々に角膜に結膜が侵入して白く濁ってしまいます。

対処法・治療

■受診前にすべきこと

医療機関を受診する前にまずすべきことは、その場で水道水で洗浄することです。化学物質が接触している時間が長いほど、目へのダメージが高くなりますので、真っ先に洗浄を行ってください。洗面器などに溜めた水ではなく、水道水などで持続的に洗浄を続けてください。

痛みでまぶたを開けづらくなっていますので、指でまぶたを開けて、蛇口から細く流した水で洗浄を続けてください。特にアルカリ性の化学物質の場合は、角膜や結膜の奥まで深達していることが多いため、最低でも30分、可能であれば1時間程度洗い流します。
その場での洗浄のがんばりが結果を左右します。すぐ眼科へ行きたい気持ちはわかりますが、じっと我慢して目を洗い続けましょう。

十分目を持続洗浄したら眼科受診しましょう。可能であれば使用していた化学薬品を持参するようにしてください。

■医療機関での治療

洗浄の程度を問診した後、曝露した化学物質によっては、さらに洗浄を続けます。アルカリ外傷で重症な場合は数時間持続洗浄します。
そして感染予防のために抗生剤点眼したり、炎症を抑えるためにステロイド剤を点眼および内服したりします。最終的に、角膜の混濁は強いため視力が回復しない場合は、角膜移植を行います。

目のやけどが酷かった場合の、後遺症や合併症

兎眼症

まぶたがやけどすることにより、まぶたが閉じきらなくなる状態を兎眼(とがん)といいます。兎眼になると、角膜(黒目)結膜(白目)が常に露出することになるので、目の乾燥やゴロゴロする異物感、目の痛みといった症状が生じるようになります。

放置して重症化してしまうと、角膜潰瘍や角膜混濁などを引き起こすことになり、視力の低下が生じる可能性があります。
対症療法として、人工涙液の点眼や眼軟膏、眼帯の使用、治療用コンタクトレンズの装用、テーピングなどを行いますが、根治にはなりません。根治させるにはまぶたの手術が必要になります。

角膜潰瘍

角膜に生じた傷口から細菌感染が起こり、角膜の上皮層を越えて実質に広がって潰瘍が生じた状態を指します。放置すると視力低下を招く可能性があります。
目をやけどしたあとは水道水で洗い流し、抗生剤の点眼薬や眼軟膏で感染症を予防することが重要です。

目のやけどは、応急処置が非常に重要になります。まずは患部を冷やして洗浄し、症状が重症化するのをなるべく防ぐようにしましょう。落ち着いたら眼科を受診して、本格的な治療を受けるようにしてください。

板谷院長のひとことアドバイス

目のやけどは応急処置後に眼科を受診することが大切です。特に、化学物質によるやけどは、とにかくすぐに流水で洗い流すことが重要です。アルカリ物質は角膜の奥まで深達するため抜け出してくるまで長時間洗い続ける必要があります。

まとめ

  • まぶたのやけどは、水道水で洗い流して冷たいタオルなどで冷やしましょう。
  • 油や熱湯での目のやけどは、まぶたの上から患部を冷やしましょう。少し痛みが引いたら眼科を受診しましょう。
  • 溶接アーク光の光(火花)が目に入った場合は、翌朝になっても症状が強い場合には眼科を受診しましょう。
  • 化学薬品が目に入った場合は、流水で30分以上洗い流し、その後すぐに眼科を受診しましょう。特にアルカリ性の場合は1時間を越える持続洗眼が必要です。

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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