本記事は、2020年2月6日に再更新いたしました。

最近、すぐに涙がこぼれるようになった、涙腺がゆるくなったのかな? と感じる方の中に、病気のせいでそうなっている方がいるかもしれません。その病気とは結膜弛緩症です。受診しても「歳のせいですよ」「疲れ目ですね」と片付けられて、点眼薬を出されるケースも多いのではないかと思われます。しかし、近年、ドライアイとの関連も指摘され、専門家にも注目されている疾患でもあります。

たるんだ白目の結膜でできる「涙のすべり台」

結膜は、いわゆる白目の部分からまぶたの裏側を覆っている透明な膜です。この結膜には適度なゆるみがあります。このゆるみがあるからこそ、私たちは眼球を上下左右へ動かすことができますし、スムーズなまばたきができるのです。しかし、この結膜のゆるみが加齢により過剰になってしまうと、さまざまな問題が起こります。これが結膜弛緩症です。結膜が弛緩してカーテンのドレープのようなヒダができ、下まぶたの外へはみ出してくると、「涙のすべり台」というべき状態になってしまい、涙は目の外へ溢れ出てしまうのです。「すぐ涙が出るようになった」という実感をもつようになった高齢者の方には、「歳のせいで涙もろくなってしまったのだ」とメンタル面の影響を考えてしまう傾向があるようですが、じつは、その「涙もろさ」は、結膜弛緩症のせいで起こっている物理的現象なのかもしれません。

涙は出るのに目は乾く

実は、下まぶたと白目の間にはメニスカスと呼ばれるスペースがあり、ここに涙液が溜められるようになっています。まばたきをするたびに、上まぶたは、このメニスカスに溜められた涙液を車のワイパーよろしく角膜表面に塗りつけて涙液層を作っているのです。ところが、結膜が弛緩してはみ出てくると、このメニスカスが無くなり、涙液の貯蔵ができなくなり、涙液を角膜へ供給できなくなり、ドライアイになってしまうのです。ドライアイの原因は複数ありますが、最近ドライアイの原因の一つとして注目されているのが結膜弛緩症なのです。涙が出るのに角膜は乾いてしまうやっかいな病気です。

眼球断面図における結膜と結膜弛緩

結膜は眼球の白目とまぶたの裏側を覆っている。白目の結膜がたるむとまぶたの外へはみだして、涙液のすべり台になる。

高齢のコンタクトレンズ装用者に多い?

結膜弛緩症の原因はよくわかっていません。しかし、コンタクトレンズ(特にハードレンズ)装用歴のある高齢者に結膜弛緩症の発生と重症化が高率で見られる、とする報告もあります。コンタクトレンズを装用すると、低酸素症、機械的摩擦、脱水、レンズ素材との不適合などによって慢性的な結膜炎症が誘発され、それが結膜弛緩症を引き起こすのではないか、という推察が行われています。

 

他にもある結膜弛緩症の問題

結膜弛緩症で「涙のすべり台」ができてしまうと、ドライアイの点眼薬を点眼しても、すぐに目の外へあふれ出てしまい効果が減ってしまいかねません。たるみが強いとまばたきをしたときに、まぶたと結膜のシワとが強く擦れあうため異物感や痛みを感じたり、充血が起こったりします。また、たるんだヒダはよく動いてしまうので、それが結膜の毛細血管を引っ張ってしまい、結果的に結膜下出血を起こすこともあります。

初期では眼精疲労などと混同されることも

下まぶたに沿ってたるんだヒダが存在するので、眼科医が診ればすぐに診断がつきます。ただし、このヒダが目立たないときには、眼精疲労などに間違われ、見逃されることもあります。

点眼薬が効かなければ手術を

ドライアイに対しては、点眼薬による薬物治療を行いますが、点眼薬も涙と同様に目の外へ流れ出てしまいやすいため、効果は限定的になります。よって、結膜弛緩症の根本治療は、手術による治療になります。

点眼治療

人工の涙「人工涙液」で眼の乾きをうるおす、ヒアルロン酸を含有する点眼薬で涙が目の表面全体に行き渡るようにする、抗炎症剤を含有する点眼薬で眼の炎症を抑える、といった治療を行います。

手術

手術によりゆるんだ結膜を引き締めます。緩んだ結膜を切除して引き締める術式や、熱凝固して引き締める方法して手術時間は片目で約5~10分ほどです。点眼麻酔で行います。手術後に痛み、出血、充血などが起こることがありますが、たいてい数日で治まります。また、縫合糸による異物感が現れることがありますが、たいがいは1週間程度で消失します。手術後の傷跡はほとんど残らず、見た目には分からないくらいになります。

板谷理事長のひとことアドバイス

結膜弛緩症は、下まぶたに隠れているはずの白目の結膜がたるんで下まぶたをはみ出して起こります。はみだした結膜は、すべり台になり角膜のために必要な涙液が目の外へ流れます。不必要に涙が出るのに角膜は乾くという困った状態です。重症な場合は手術で治しましょう。

まとめ

  • 高齢の方で「目が乾く」「目が疲れる」「涙が出やすい」といった症状が治らないときには、結膜弛緩症かもしれません
  • 結膜弛緩症になると、本来は涙液の貯蔵庫である下まぶたと白目の接触部分のスペース(メニスカス)をはみ出した結膜が占めてしまうため、涙が垂れるのに目は乾くという問題が起こります
  • 結膜弛緩症の治療は、たるんで余った結膜を手術で短縮し引き締めます

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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