化粧の付けまつ毛やコンタクトレンズなど、現代は角膜に負担をかけがちな時代です。付けまつ毛や逆さまつ毛の先端で、あるいはコンタクトレンズに付着した小さなゴミなどの刺激で、角膜を傷つける可能性があります。また、まつ毛エクステも、それ自体が目を傷つけることはありませんが、付けたまつ毛が落ちて目に入ることも多くなります。

また、コンタクトレンズで角膜を覆うと、角膜に供給される酸素が減り、角膜が酸素不足に陥る可能性もあります。その角膜の表面にあって外気にさらされている部分が角膜上皮です。目の保護や酸素の取り入れという重要な役割を果たしている角膜上皮が損傷を受けると、場合によっては角膜混濁、すなわち透明な角膜が濁ってしまう後遺症が残ることもあります。今回は角膜上皮障害について解説します。

外界から目を守り、外界から酸素を取り入れる角膜上皮

角膜は黒目の表面を覆う透明な膜で、光を取り入れる窓口の役割、カメラのレンズの役割、虹彩や水晶体など目の内部を保護する役割を果たしています。角膜は大きく上皮、実質、内皮という三つの層から成っており、そのうち最も外側にあるのが上皮、すなわち角膜上皮です。目の表面にある角膜の、さらにその表面にあるのが角膜上皮なのです。
角膜上皮の細胞は涙も通さないほど互いにしっかりと組み合わさっており、そのため角膜上皮には手足の爪に匹敵するほどの硬度があります。一方で、角膜上皮は絶えず新しい細胞に生まれ変わっているので、傷がついてもすぐに修復する回復力があり、通常は放置しても数日で治癒します。また、角膜上皮は神経がたくさん通っているため非常に敏感で、わずかに傷ついただけで激しく痛み、まぶたを閉じるなどの防御反応を促します。これらの特徴を持つことで、角膜上皮は角膜の表面で、外界から目を守るバリアとしての機能を果たしています。一方で、角膜上皮のもう一つの機能として忘れてならないのは「呼吸機能」です。角膜には血管がなく血液によって酸素が供給されることがないため、角膜上皮が涙液を介して空気中から酸素を取り入れています。

【角膜の組織】

まつ毛が目に入ったり、コンタクトレンズの間違った使用で障害が発生

まつ毛に化粧をしたり、付けまつ毛をされる方も多いと思いますが、目に化粧用の液体やまつ毛が入ったりしないよう注意しましょう。繰り返していると次第に角膜の傷が治りにくくなっていき、角膜上皮障害を起こすようになってしまいます。

【まつ毛エクステは、それ自体が目を傷つけることはありませんが、付けたまつ毛が落ちて目に入ることも多くなります。そのたびに目を傷つけていることを忘れず、目のケアには十分に注意してください。】

また、コンタクトレンズを長時間連続して使用することによって角膜上皮に傷ができ、それが広範囲に及ぶと、角膜上皮の呼吸機能が低下して、さまざまな障害が起こることは眼科領域でも大きな問題となっています。コンタクトレンズにより角膜の表面が覆われると、涙液中の酸素が不足して、角膜が酸素不足に陥るのです。たとえばコンタクトレンズ使用者は日本では約1700万人いて、そのうち3割になんらかの障害があると言われています。コンタクトレンズの使用を一時的に中断しなければならないケースも年間で約100万件あるともいわれています。コンタクトレンズ使用に伴う障害の中でももっとも多いのが、レンズに付着したごみや汚れなどで角膜上皮が傷つくケースです。

進行すると、角膜上皮の奥まで障害が及ぶことも

コンタクトレンズの使用や付けまつ毛の使用により角膜上皮が連日のように傷を受け続けると、角膜に炎症が起こり、進行すると角膜がただれる「びらん」が生じ、角膜上皮だけでなく、その奥まで障害が及ぶことがあります。とくにバリア機能が低下したときに起きやすい感染症は要注意で、細菌、真菌、アカントアメーバなどが角膜の奥の層に感染して角膜潰瘍をつくると、角膜の混濁や失明につながることもあります。

角膜上皮障害のいろいろ

角膜上皮障害には、さまざまなものがあります。発症原因の点から見ても、外傷によるもの、感染によるもの、薬剤の影響によるものなど、さまざまですし、症状や重症度もさまざまです。ここでは、角膜上皮障害の主なものとして、「角膜炎」「点状表層角膜症」「角膜血管新生」「角膜上皮びらん」について、それぞれ解説します。

角膜上皮に炎症が起こった状態「角膜炎」

原因

角膜に起きる炎症は、外傷によるもの、光線刺激によるもの、感染によるものが代表的です。外傷はコンタクトレンズに付着したゴミや汚れによるものがもっとも多く、光線刺激はスキー場や雪山、海岸などで紫外線の多い反射光を長時間浴びたときなどに起こりやすいです。感染症は不潔な手で眼をこすったときなどに感染します。とくに角膜上皮に傷がある場合、細菌や真菌(カビ)、河川や沼、土壌などに広く存在するアカントアメーバ、口唇ヘルペスなどを発症するヘルペスウイルスなどが侵入してきて感染しやすいので、注意が必要です。

症状

目がゴロゴロするような違和感や痛みなどの症状が現れます。コンタクトレンズなどによる外傷や光線刺激による炎症では激しく痛むことがありますが、軽症であれば放置しても数日で痛みは退き、軽快します。感染症では強い目の痛みがあり、目やにも大量に出ます。白目が充血し、角膜の一部が白く濁ることもあります。目の病気の中では緊急性が高く、放置した場合、角膜が融けて孔が空く場合もあります。また治療をして症状が収まっても、視力が低下したり、視点が合わない、モノがぼやけて見える、まぶしくなるなどの症状が出たり、角膜に濁りが残ることもあります。

治療

炎症を起こした原因を取り除くことが第一です。コンタクトレンズを装用している方であれば、清潔なレンズを使用するように心がけたり、場合によってはしばらくのあいだ使用を休止したりします。日光に長時間さらされた場合は、サングラスをかけたり、晴れた日の外出を避けたりします。外傷や日光による炎症は、点眼薬によって炎症を鎮めると、数日で治ることがほとんどです。感染症では検査で原因菌やウィルスを特定し、それに効果のある薬物療法を行います。点眼薬の他に内服薬を処方することもあり、場合によっては点滴をすることもあります。真菌やアカントアメーバによる感染では、治癒に至るまで長期間を要することが少なくありません。ヘルペスによる感染では、いったん治ったように見えても、体調が落ちたとき、免疫力も低下して再発することがあります。このように感染症は治療においてやっかいなので、なるべくかからないようにするのが大事です。

【角膜炎】

角膜表面に点状の細かい傷がたくさん付いている状態「点状表層角膜症」

原因

ドライアイで涙が不足すると、角膜の保護効果が低下して、傷が付きやすくなります。コンタクトレンズの間違った使い方、逆さまつ毛、紫外線の長時間被曝、防腐剤などの添加物が入っている目薬の使い過ぎなども原因となります。

症状

軽症であれば無症状であったり、小さい異物が入っているように感じたりします。傷が増えればチカチカしたり、軽い痛みを覚えることもあります。

治療

角膜炎と同じく、病気の原因が推測される場合、それを取り除くこと、中止することが第一です。点眼薬による薬物治療がよく行われます。逆さまつ毛では手術が必要なこともあります。角膜上皮びらんの前段階の症状と言えます。

【角膜血管新生】

膜の表面がただれ、浅く傷ついた状態「角膜上皮びらん」

原因

角膜は大きく3層から成り立っていますが、角膜炎と同様の原因により、角膜表面に傷がつくなどして炎症が広がると、下層の組織から剥離した状態になります。これを角膜上皮剥離ともいいます。

症状

目の違和感や痛み、充血などの症状を呈します。角膜表面が剥がれるとモノが見えにくくなったり、まぶしさを感ずるようになったりします。

治療

自然治癒もありますが、目が乾燥しないようにすることが大切です。乾燥を防ぐために点眼薬で治療することもありますが、原因を取り除かないと再発を繰り返す場合があります。この段階で阻止して重症化させないことが重要です。

角膜に無用の血管が延びてくる症状「角膜血管新生」

原因

角膜は本来、無色透明な組織ですが、酸素不足になると角膜に酸素を供給しようと新しい血管が生まれてきます、角膜の酸素不足のサインといえます。

症状

痛みなどの自覚症状はありません。医師が診ると延びた血管を見つけることができます。

治療

コンタクトレンズの長時間使用、連用があって角膜に酸素不足が発生しているようであれば、使用をしばらく中止する必要があります。

角膜上皮障害を予防するには

コンタクトレンズは正しく使用する

コンタクトレンズの装用者は角膜を傷つけがちです。正しい使用法を守り、なるべく装用しない時間を増やして目を休ませましょう。

まつ毛、付けまつ毛が目に入らないようにする

まつげが内側に向いて生えている方(逆まつ毛)は、知らずに角膜を傷つけてしまうこともあるので、場合によっては手術が必要な場合もあります。

目薬がまつげにかからないようにする

まつげについていた菌が、目薬に付着して角膜に感染してしまうこともあります。まつげにかからないように注意しましょう。

目をこすったり触ったりしない

目がかゆい、目がショボショボするなどでこすったり触ったりすると、角膜が傷ついたり菌に感染してしまうことがあります。

板谷院長のひとことアドバイス

女性の方は、目に化粧用の液体やまつ毛が入ったりしないよう注意しましょう。繰り返していると次第に角膜の傷が治りにくくなっていき、角膜上皮障害を起こすようになってしまいます。

まとめ

  • 外傷性の障害を防ぐために、屋外で作業やスポーツをするときゴーグルなどで目を保護することがすすめられます。
  • 日光の長時間被曝は、サングラスをかけることで予防しましょう。紫外線による影響を緩和することができます。
  • 感染性は、逆さまつ毛、付けまつ毛などで小さな傷がつき、そこから原因菌が入り込むことで引き起こされたりするので、そのケアが必要です。
  • まつ毛エクステは、それ自体が目を傷つけることはありませんが、付けたまつ毛が落ちて目に入ることが多く、目を傷つける可能性が高くなります。
  • コンタクトレンズの不適切な使用で重度の視覚障害が起こる方は、国内で年数百人にいます。長時間の連続使用、装着したままの就寝など、不適切な習慣を見直しましょう。

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執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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