“ウチの子にはメガネをかけさせたくない”と思っている保護者は多いのではないでしょうか。
目は生まれてから8歳ぐらいまでに視覚の発達はほぼ完成します。この時期にちゃんとものを見ることをしないと視力が発達せず弱視となります。
実はその後の8歳~15歳の学童期には、目は生活習慣に応じて奥行き方向に大きくなります。一日中勉強やスマホ、ゲームなどばかりして、近くを見続ける生活をしているとどんどん近視(近眼)に傾いてしまうのです。子どもだから起こる一種の適応なのです。保護者は意識して、お子さんに外遊びやスポーツなど遠くを見る機会を与え、“遠くを見ること”をさせることが大切です。勉強をしない方が良いというのではなく、勉強はどんどんしていただきたいが、屋外作業との両立が大事なのです!

子どもの目はどのように成長していくのか、近視や弱視にさせないためにはどんなことに気をつけたほうがいいのかなどについて、詳しくご紹介します!

子どもの目の成長

視力は、3歳頃までに急速に発達する

視覚の発達は、8歳ぐらいまでにほぼ完成するとされています。生まれたばかりの赤ちゃんは、物を見つめるようなしぐさはしますが、2カ月くらいに両目で見つめられるようになり、3カ月くらいでようやく動く物を追えるようになります。

視力は、生まれたては0.02程度、1歳頃に0.1程度、その後、3歳頃までに急速に視力は発達し、半数以上の子どもが1.0程度まで見えるようになります。この頃に注意したいのは弱視です。
のちほど詳しくご説明しますが、きちんとものを見ることができない問題があると、見る力の発達がうまくいかずに正常な視力が出なくなってしまうようになるのです。そうならないように、弱視の原因となる病気や症状は視力が発達する年齢の間に発見して治療する必要があります。
その後、6歳になる頃にはほとんどの子どもが、大人と同じくらいの視力を持つようになるとされています。

実は、目(目玉)もどんどん成長している!

子どもは日々、身長や体重が成長していますが、実は目もどんどん大きく成長しています。目玉の大きさ(目の奥行き)は、角膜から網膜までの距離で測りますが、この距離のことを「眼軸長(がんじくちょう)」といいます。

生まれた直後の眼軸長は 17ミリ 程度です。その後少しずつ成長していき、標準では14~15 歳で23~24ミリ程度まで大きくなり、ほぼ成人と同じサイズになるとされています。
実はこの眼軸長が標準を超えて長くなりすぎると、近視になってしまうのです。

子どもの目はなぜ近視になるのでしょう?

目の奥行きが長くなりすぎると、近視に!?

少しおさらいをすると、近視とは目に入ってきた光が網膜の手前で像を結んでしまい、遠くの物がはっきり見えない状態です。

眼軸長が正常より長く成長しすぎると、網膜の手前で像が結ばれてしまいます。これを「軸性近視」といいます。
子どもの近視のほとんどは、この「軸性近視」とされています。逆に眼軸長が短いと、網膜より奥に焦点が結ばれるようになり、これは遠視といいます。

 

近くのものばかり見ていると、目が長くなって近視に!

では、どうして眼軸長が長くなってしまうのでしょうか。人の目は、完成した状態で生まれてくるわけでなく、成長の余地(環境に適応する余地)を残して生まれてきます。

①生まれたとき眼軸長は短めで、網膜より少し後ろで像を結びます。つまり、遠視の状態で生まれてくるのです。そのため赤ちゃんの目は、ぼんやりとしか見えていません。

②ものを見るときにぼんやりとしているため、ちゃんとものを見ようと(像をきちんと結ぼうと)して、眼軸長が次第に伸びていきます。つまり、遠視の状態から徐々に正視に近づくのです。
また網膜の視細胞と脳も徐々に発達していき、色や奥行きなども判別できるようになっていきます。生後4カ月ほどで色覚が完成し、3歳頃には視力が1.0(大人の視力)に達する子も出てきます。6歳になる頃には、ほとんどの子が1.0に達するようになります。

③ところが、正視の状態で目の成長が止まればいいのですが、近くのものばかり見る生活をしていると、過度に眼軸長が伸びてしまいます。すると近視になります。
つまり遠くを見る機会がほとんどなく、目が近くのものばかりを見る生活に適応しようとして、眼軸長がどんどん伸びてしまったのです。特に小学校2年生(8歳)頃から中学生(14~15歳)にかけての学童期に、近くのものばかりを見ていると眼軸長がどんどん伸びて近視になりやすいことがわかっています。
また家族歴も影響するとされており、両親ともが近視の場合、片方の親のみが近視、あるいは両親が近視でない場合に比べて、子どもの眼軸長は長くなりやすいとされています。

【北京スタディ】近くのものばかり見て生活をすると近視に

近視は特にアジア圏で爆発的に増加しており、エピデミック(ある病気が特定の地域で流行すること)と呼ばれています。急速な経済発展に伴う学歴社会での受験戦争が背景にあるのではと考えられます。
2014年に、北京で興味深い研究結果が発表されました。北京の小児370名を対象とした研究で、近くを見る作業(近見作業;きんけんさぎょうといいます)が多いと、近視になるリスクを増加させることがわかりました。
さらには子どもが屋外で過ごした時間も分析し、屋外での活動が長いほど、近視になるリスクが低下することがわかりました。農村部の子どもと違って都市部の子どもは屋外で遊ぶことも少なく、勉強時間も長くなる傾向があるなど、近くのものを長時間見る生活が続くために近視になりやすくなることが明らかになりました。
逆にスポーツや野外活動など、屋外で過ごす時間が長いほど近視になりにくいこともわかりました。

子どもの目を近視にしないために重要なのが野外活動

屋外での活動を積極的にさせましょう

近年の研究が示すように、野外活動が近視を防ぐカギになります。また、近見作業を長時間しないことも大切です。

  • 毎日、屋外での活動をする。スポーツ、散歩、遊びなど、遠くのものを見る機会をできるだけ作る

(ボール遊びなど、遠くと近くをバランスよく見るような活動が特におすすめ)

  • テレビは、なるべく大きな画面のものを選び、1メートル以上離れて見る
  • 読書は、30センチほど離してする
  • スマホやゲーム機などは、1日30分など時間を決めて。「子どもが泣きやむから・・・」などの理由で与えっぱなしにしない

けっして勉強がダメなわけでは無いことを明記します。屋外活動とのバランスが大事なのです。

弱視を防ぐには

子どもの目の発達において、近視と同じくらい注意したいのが弱視です。弱視になってしまうとメガネなどで視力を矯正できず、低視力のまま一生を過ごさなくてはならなくなります。近視が進むよりもっと低年齢に注意が必要です。弱視を防ぐためには何に注意すればいいのか、ご説明します。

視力の発達には、ちゃんとものを見ることが大切

子どもの視力が発達するためには、毎日ちゃんと両目で物を見ることが必要です。
一見当たり前のことを書いているかもしれませんが、目から入った刺激をすべて脳が正しく理解するには訓練が必要なのです。考えてみてください。目の前の世界の視覚情報は極めて膨大です。それを捉えるには、世界が見えない母胎の中では難しく、生後いろいろなものを見て発達させる必要があるのです。我々は脳でものを見ているのです。

視力は、目から入った刺激を脳が正しく理解することで発達していきます。そのため、視力が発達する段階でものを見る訓練ができないと視力の発達が止まってしまいます。これを「弱視」といいます。(弱視とは、メガネなどで矯正しても1.0の視力が出ない状態をいいます)

弱視は早期発見が重要です!3歳児検診で異常があるなら必ず治療を受けましょう

特に1歳までの時期に、目と脳が見たものの像をうまく認識できるように調整し、その過程で目の神経細胞や脳の連携が形成されていき視力が発達していきます。この頃に何らかの理由でうまくものが見えない状態でいると、視力の発達がうまくいかなくなる恐れが出てきます。

弱視は早く発見できれば、その目を使うトレーニングをすることで視力の発達を取り戻すことができます。しかし、視力の発達を期待できるのは8歳くらいまでが限界です。
それゆえ、早期に弱視を発見することが必要で、3歳児検診が重要になります。この時の健診で異常を見つけることができれば、適切な治療を施すことで、多くの場合は弱視を防ぐことができます。

弱視の原因には何がある?

物をちゃんと見ることができないと弱視になりますが、物を見ることが出来ない状態には次のようなものがあります。

網膜に光が届かない原因がある(形態覚遮断弱視=けいたいかくしゃだんじゃくし)

光が瞳に入るのを妨げる生まれつきの病気が原因になります。先天白内障、うまれつきまぶたが下がっている先天性眼瞼下垂などがあります。治療は、それぞれ白内障手術や眼瞼下垂手術で原因を取り除きます。

目の向きのズレ(斜視弱視)

斜視とは、物を見ようとする時に、片方の目は正面を向いていても、もう片方の目が違う方向を向いてしまっている状態をいいます。このため斜視になっている方の目を使わないようになり、使わない方の目が弱視になるのです。
斜視の原因によりメガネによる治療と手術による治療があります。

片方の目が違う方向を向いてしまっている「斜視」

遠視や乱視が強い(屈折異常弱視)

両方の目に強い遠視や乱視があるとピントの合わないぼやけた状態で過ごすことになり、弱視になります。遠視は調節性内斜視と呼ばれる斜視も引き起こすことがあり、ズレたほうの目が弱視になります。
早期に発見して屈折異常をメガネで矯正し弱視を防ぐことが重要です。

左右のピントの位置が大きく差がある(不同視弱視)

近視、遠視、乱視を屈折異常と言いますが、左右の屈折異常に差がありすぎると屈折異常の強い方の目がピントが合わず弱視になります。例えば、片方の目だけ近視が強い場合などです。
メガネによる屈折異常の矯正により治療します。差が大きすぎてメガネで矯正しきれない場合はコンタクトレンズを用います。

弱視を早期発見するために大切なこと

一番大切なことは、子どもと目を合わせて見守ることです。目のトラブルを抱えている子どもは、しぐさや目の動きで気づくことができます。
ただし、不同視弱視など外見ではわからない弱視もありますので、3歳児検診と就学時健診をしっかり受診させましょう。

板谷院長のひとことアドバイス

子どもの目の発達では、3歳までに弱視の傾向があるかをしっかり見抜くことが重要です。また、現代社会では勉強やスマホなどで近くばかりを見すぎる子どもが増えていますので、適度な野外活動を行うようにして、近視の進行を防ぎましょう。

まとめ

  • 視力の発達は8歳ぐらいまでに完成します。
  • 生まれた時は遠視、その後、正視、近視と進んでいきます。
  • 8〜15歳ぐらいの時期に、近くのものばかり見ていると眼軸長が伸びすぎて近視が進んでしまいます。
  • 近視を防ぐには、スポーツや遊びなど、屋外での作業を意識して取り入れましょう。
  • 視力が発達する時期にさまざまな原因でピントが合わないと弱視になります。
  • 弱視は早期に発見して原因を取り除く治療が必要となります。

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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