“ものがダブって見える”症状を「複視」と言います。たとえ見えていてもダブって見えるのは辛いことです。スマホや車の運転も気持ちが悪くてできません。
複視を治すには、複視の原因を知ることが重要です。複視は、原因により大きく2つのパターンに分けることができます。
その見分け方は、片目だけでもダブるか、それとも片目だけならダブらないか、です。言い換えると、原因が眼球そのものにあるか、それとも両方の目の位置関係にあるのかということです。

片方の目を閉じればダブりが改善するような場合には、両方の目の向きがずれている眼位異常(がんいいじょう)により、左右の目が見ている像が違いすぎている状態になっています。そのため、脳に送られた左右の目の情報がうまく1つにならず、2つにダブって見えるのです。
代表的なものは「斜視」ですが、ある方向を向いたときだけ2重に見える眼球運動障害の場合もあります。一方、片目になっても変わらずダブって見えるという場合は「乱視」です。
乱視には、角膜が原因の場合と、水晶体が原因の場合があります。角膜乱視はメガネやコンタクトレンズなどで矯正できますが、水晶体乱視は矯正では治せません。水晶体に眼内レンズを入れる白内障手術が必要になります。

“ものがダブって見える”とひと言で表してみても、それが片目でも起こるのか、それとも両目の時に起こる症状なのかということによって、それぞれ考えられる原因と治療が異なってくるのです。

詳しくご説明しますので、もし症状にお悩みの方がいたら、ぜひ参考にしてください。

乱視の原因は2つある

目の構造図
片目でもものがダブって見える複視は、乱視によって引き起こされます。その乱視を引き起こす原因は、必ず角膜か水晶体のどちらかにあるのです。
というのも、もの見る仕組みのなかで、網膜にピントを結ぶために光の屈折を行う場所は、角膜と水晶体のみだからです。つまり角膜と水晶体が、光が進む方向を決めているのです。

光が進む方向を変えることを屈折といいますが、本来角膜や水晶体は、網膜にピントを結ぶように光を屈折させます。ところが何らかの異常で網膜にピントを結ぶことができなくなると、ものがぼやけて見えるようになってしまいます。この状態を屈折異常といいます。
近視や遠視、そして乱視が屈折異常にあたります。ではなぜ屈折異常が起こるでしょうか?まず、角膜乱視から説明しましょう。

角膜が原因の「角膜乱視」とは?

「角膜乱視」のメカニズム


乱視のない角膜はきれいなドーム形状をしています。虫メガネと思ってください。円形のドーム形状はどの直径のカーブも同じですので、光は1点にフォーカスします。
このドーム形状を上から少し押しつぶして、横に楕円形のドームにすると、縦軸はカーブがきつくなり光は強く屈折します。反対に横軸はカーブが緩やかになり屈折は弱くなります。このため、焦点が2つに分かれてしまうのです。これが2重に見える正体です。
この乱視は直乱視と言いますが、押しつぶされる方向はいろいろで縦に楕円なら倒乱視、斜めなら斜乱視と言います。いずれも単純な円形ドームの楕円化によるものですので、総称して正乱視と言います。
それに対して、角膜の不規則な変形による乱視を不正乱視と言います。

「角膜乱視」の治療は?

一般的に、乱視と呼ばれる症状のほとんどが、この角膜乱視によるものです。ほとんどの人は、多少の乱視を持っていますが、軽度の場合は気がついていないことも多く治療は必要ありません。
軽度の場合は水晶体や脳がぶれを修正してクリアな像にすると考えられています。しかし、ある程度乱視が大きいと脳による修正ができなくなりますので矯正が必要です。
正乱視の方は、メガネやコンタクトレンズで矯正可能です。不正乱視の場合は、メガネやソフトコンタクトレンズによる矯正は難しいですが、ハードコンタクトレンズなら矯正できます。

「角膜乱視」の検査は?

乱視の検査は、まずは屈折率を詳しく測定する自動屈折度測定装置(オートレフラクトメーター)で行います。その他に、角膜の形状を詳しく測定する角膜形状解析装置を用いて検査します。
最近では角膜や水晶体がある前眼部を3次元で撮影できる前眼部OCTが公的保険で可能となり、角膜の前面だけでは無く後面の形状も計測して、リアルな角膜乱視を求めることが可能となりました。角膜乱視の治療は、正確に角膜の形状を把握することが重要です。

水晶体が原因の「水晶体乱視」とは?

水晶体乱視は白内障の初期から見られることがある白内障の症状のひとつです。2重とは限らず何重にもダブって見えることがあります。
水晶体の強い濁りの部位と弱い濁りの部位ができると、光が小さい穴を通ると後方で広範囲に広がってしまう回折現象が生じて、複視の症状が発生すると考えられています。
水晶体乱視はランダムで規則性が無いことと、水晶体乱視を測定する方法が無いため、メガネやコンタクトレンズで矯正することはできません。ただし、水晶体乱視は白内障手術で治すことができます。

白内障による乱視、不正乱視はメガネによる矯正はできない

くりかえしになりますが、メガネで矯正できるのは角膜乱視の中でも正乱視だけです。角膜が不規則な曲面形状になることで起こる不正乱視の場合は、メガネやソフトコンタクトでの矯正は難しいですがハードコンタクトレンズで矯正することは可能です。

白内障の症状である水晶体乱視は白内障手術以外に治す方法はありません。

また、角膜に濁りができる角膜混濁などによって、ものがダブって見えることもあります。この場合もメガネやコンタクトレンズで矯正できません。慣れることができないものであれば角膜の移植治療を検討することになります。

眼位異常による複視:脳神経か筋肉に原因があることも!急な複視は要注意

眼位異常とは?

眼位とは左右の目が向いている方向をいいます。正常では、その向いている方向は同じなのですが、方向にズレが出ることを眼位異常といい、複視の原因となることがあるのです。
この場合は、必ず2重で3重に見えることはありません。眼位異常には、「斜位」と「斜視」があります。

斜位とは?

斜位は、普段は眼位のズレが無いのですが、両方の目で見ている状態(融像と言います)を邪魔すると、左右の眼位がズレてしまうことを言います。もともと人の目は多少眼位のズレが潜在しているのですが、ものを見ようとするとズレが矯正されて眼位は正常になるのです。
ところが、疲れたり、考えごとをしたりして、ものを見るための集中がなくなるとズレてしまい、ものが2重に見えることがあります。大人ではどちらかの目が外を向く外斜位が多いです。治療の必要はありません。

斜視とは?

常に眼位がズレている状態を斜視といいます。元々ある斜視の場合は、脳がどちらかの目の像を抑制をかけて見えなくしてしまいますので、2重に見えることはありません。問題は急に出てきたときです。
年齢とともに外斜位の眼位のズレが大きくなって矯正しきれずに斜視になってしまう場合があり、そうなる途中で2重に見えて困ることがあります。斜視手術の適応になります。

眼球運動の異常:急に起こる複視は要注意!

目の動きがおかしくなって起こる複視は問題です。目のまわりにある眼球を動かしている6つの外眼筋のどれかが動きにくくなって斜視になったり、動きにくくなった方を見たときだけ2重に見えるのです。

外眼筋そのものか筋肉と神経の接合部分に異常が起きる場合と、外眼筋を動かす中枢神経に異常がある場合があります。

前者で有名なのは、体を動かすとすぐに疲れてしまう重症筋無力症で、午後になると症状が悪化する特徴があります。一般的には、糖尿病や高血圧がある方で外眼筋への血流が滞って起こることが多いのです。
後者の場合、神経の麻痺で起こることが多く、眼球運動に関わる神経が麻痺する動眼神経麻痺や、眼球を外側に動かす神経が麻痺する外転神経麻痺、目を下に動かす神経が麻痺する滑車神経麻痺が有名です。特に、動眼神経麻痺は、目は外斜視となりまぶたが垂れますので気がつきやすいのですが、動脈瘤の圧迫による場合があり、破裂のリスクがあるため緊急性を要する状態です。

いずれにせよ急に起こる複視は、脳や身体の異常と関係がある場合が多く、速やかに眼科を受診し、詳しく検査を受けその日のうちに適切な専門の診療科へ紹介を受けましょう。

まとめ

  • 片方の目でダブるのは乱視、両目で見たときだけダブって見えるのは眼位異常
  • 乱視には、角膜乱視と水晶体乱視がある
  • 急に2重に見えるようになったら要注意:脳や身体の病気の可能性も

目についてのお悩みは、はんがい眼科へどうぞ