暑さの厳しい夏は、さまざまな面で体に負担がかかる季節です。冷房の効いた室内と酷暑の戸外との温度差が大きく、ぐったり疲れてしまうという方も多いでしょう。
さらに暑さで食欲が落ちる、夜も寝苦しく睡眠不足気味……という声もよく聞きます。お子さんのいる家庭では、夏のレジャーに出かける機会も増え、さらに疲労が溜まるという方も少なくないかもしれません。

実は夏が過酷な季節だというのは、私たちの「目」にとっても同じです。
目が真っ赤に充血する、目やにがたくさん出る、目がゴロゴロする、目が痛い、目が乾く、目がかすむ、光をまぶしく感じる……。そんな不快な症状が数日以上続くときは、目にトラブルが発生している可能性があります。
なかには、そのままにしていると症状が悪化するものや、家族など周りの人にも影響が及ぶケースもあるので注意が必要です。

今回はそうした「夏に起こりやすい目のトラブル」について、解説したいと思います。

夏に起こりやすい目のトラブル①
「ウイルス性結膜炎」と呼ばれる3つの感染症

夏に起こりやすい目のトラブルの1つ目としては、「ウイルス性結膜炎」があります。ウイルス性結膜炎とは、ウイルスに感染することによって、目の結膜(白目の表面やまぶたの裏側にある膜)に炎症が起こる感染症です。
夏は暑さや食欲低下などによって免疫力が落ちやすいため、感染症にもかかりやすくなります。また子どもの場合、夏場はプールのように他の子どもと接触する活動が増え、さらに感染の機会が多くなります。

ウイルス性結膜炎は感染力がとても強いという特徴があります。感染すると目の充血、目やに、涙目、目がゴロゴロして痛むといった症状が現れます。
2017年夏には、ウイルス性結膜炎の一つである「咽頭結膜熱(プール熱)」が、ここ10年でもっとも患者数が多くなり、7月から8月にかけて大きな流行になりました。
子どもの感染だけでなく、病児を看病した大人にも感染が広がることがあるので、年齢を問わず、注意していただきたいと思います。

夏に流行しやすい主なウイルス性結膜炎の種類は、以下の3つが挙げられます。

流行性角結膜炎(はやり目)

アデノウイルス(8型、19型、37型、54型など)に感染することで起こります。感染力が非常に強いことから、どんどん患者が増えてしまうため、一般に「はやり目」とも呼ばれます。
感染者が目を触った手で触れたものを、別の人が触ることなどで感染し、感染から1週間ほどで発症します。おもな症状は以下のようなものです。

  • 結膜が真っ赤に充血する
  • 目やにがたくさん出る(ひどいときは目が開かないこともある)
  • 涙目になる
  • (黒目が傷つくと)目が痛い、異物感、光がまぶしい
  • 咽頭結膜熱(プール熱)

    原因ウイルスは、アデノウイルス(3型、4型、7型など)です。昔はプールの水の消毒が不完全なために子どもの間に流行したことから「プール熱」ともよばれますが、最近では感染者の手やタオルなどに別の人が触れることで、感染するケースが多くなっています。
    症状としては、流行性角結膜炎に似た目の症状のほかに、のど(咽頭)の痛みや炎症、発熱が起こるのが特徴です。

  • 結膜が充血する
  • 目やにが増える
  • のどの痛みがある
  • 38度以上の高熱が出る
  • 急性出血結膜炎

    エンテロウイルス(70型)やその仲間のウイルスによって起こる結膜炎です。感染して1~2日で、急に結膜炎の症状が現れます。特徴的な症状として、白目に出血がよくみられることから、この名称がついています。
    発症は幼い子どもに多いですが、20~30代にも発症することがあります。近年は、沖縄県や九州で流行したことがありますが、全国的な流行は起きていません。おもな症状は次のようになります。

  • 結膜が充血する
  • 目やにが増える
  • 白目に出血が起こる
  • 目の違和感(ゴロゴロする)
  • ウイルス性結膜炎にかかったら、学校を休んで安静にすること

    これらのウイルス性結膜炎は、特に治療をしなくても1~2週間ほどで回復することがほとんどです。症状が強いときは、ステロイド薬の点眼薬を使うこともありますので、眼科を受診してください。
    新生児や乳幼児では偽膜性結膜炎を起こし、細菌の混合感染で角膜穿孔を起こすことがありますので要注意です。

    最大の問題点は、感染しやすく集団発生してしまうことです。ここに挙げたウイルス性結膜炎は、いずれも学校保健法で指定された感染症です。
    咽頭結膜熱は「主な症状が消失して2日経過するまで」、流行性角結膜炎と急性出血性結膜炎は「医師が感染の恐れがないと判断するまで」、学校や幼稚園、保育所などは出席停止になります。
    大人が感染したときは、特に飲食関係や医療機関、介護施設などで働く人は注意が必要ですから、職場の規定を確認するようにしてください。

    夏に起こりやすい目のトラブル②
    「ドライアイ」

    夏でもドライアイが発症する理由とは

    夏に起こりやすい目のトラブルの2つ目は、「ドライアイ」です。
    ドライアイとは、涙の量が少なくなったり涙の成分のバランスが崩れて涙の膜が不安定になり流れ落ちてしまうことで、目の表面を潤す働きが低下し、目が乾きやすくなる症状をいいます。

    ドライアイは、さまざまな要因が関係して起こります。例えば年齢が高くなると、涙の分泌量が減ったり、涙の膜を安定化させる成分が減ったり、蒸発を防ぐ油分が少なくなり、ドライアイが起こりやすくなります。
    また乾燥した環境に長時間いることもドライアイにかかるリスクを高めます。ほかにも、まばたき回数の減少、コンタクトレンズの装用、内服薬や点眼薬の影響、シェーグレン症候群のような病気が、ドライアイを引き起こすこともあります。

    乾燥した冬場に症状が現れることが多いドライアイですが、夏季にも発症が多くなる傾向があります。その理由として、エアコンの乾燥した空気が直接目に当たり続けることが、大きな要因と考えられています。

    ドライアイの症状

    ドライアイになると目の乾燥だけでなく、さまざまな不快症状が起こります。失明など重い症状に至ることはありませんが、放置していると目の表面が傷つき、さらに痛みやかすみが強くなることもあります。

    また視力が不安定になり、目が疲れやすいなど、日常生活の質(QOL)が大きく低下するのも問題です。次のような症状が続くときは、眼科を受診しましょう。

  • 目が乾いた感じがする
  • 目の疲れが強い
  • ものがかすんで見える
  • 目が痛い
  • 涙が出る
  • 目がかゆい
  • 目がゴロゴロする
  • 光をまぶしく感じる
  • ドライアイの検査と治療

    眼科では、涙の量を調べるシルマー試験(専門のろ紙を下まぶたにはさみ、5 分間で濡れる長さを調べる)や、黄色い染色液を少量点眼し、目の表面の傷や涙の層の状態を調べる検査などを行います。

    診察の結果、ドライアイと判明したときは治療を行います。症状が軽いときは、人工涙液やヒアルロン酸の点眼薬が処方されます。涙の成分の一つで、保水力の高いムチンという成分の分泌を促すタイプの点眼薬もあります。ムチンはサラサラした水分を糊のようにする成分です。

    点眼薬で効果が十分でない場合は、涙が排出される「涙点」という小さな穴に栓をして、目に留まる涙の量を増やす「涙点プラグ」という治療法を行います。

    ウイルス性結膜炎は感染予防に注意し、
    ドライアイは生活環境を見直しましょう

    今回、ここに挙げた「ウイルス性結膜炎」や「ドライアイ」といった夏の目のトラブルは、生活の中で意識して対策をすることで、予防することができます。

    ドライアイに関わる病気については、こちらのコラムでもご紹介しております

    白目がブヨブヨに腫れる結膜浮腫、原因はいろいろ

    目の疲れが取れない時は要注意!その時に潜んでいる怖い病気とは

    ウイルス性結膜炎では、感染者との接触を避けることがいちばんの予防法です。
    もし家族のなかに感染者が出たときは、タオルや寝具を共用しない、感染者の入浴は最後にする、感染者を世話した後は石鹸と流水でしっかり手を洗う、ドアノブなどを塩素系漂白剤溶液で濡らした布で拭く、といったことに気を付けてください。
    発症から10日ほどは、こうした対策を続けると安心です。

    一方、ドライアイでは、エアコンの効いた環境で長時間パソコンやスマホのディスプレイを見続けると、まばたき回数が減り、ドライアイ症状が強くなります。1時間に1回は休憩をして、目を休めるようにしましょう。
    さらに目の保湿のためには、エアコンの風が直接体に当たらないようにするほか、必要ならば加湿器を使うのも一案です。またホットタオルなどで目を温めると、目の周りの血液循環がよくなり、質のいい涙を増やすことにもつながります。

    このような対策をしても目の不快症状が続くときは、市販の点眼薬を使い続けるのではなく、やはり一度、眼科で相談をされることをおすすめします。

    まとめ

    • 夏に起きやすい目のトラブルとして代表的なのは、ウイルス性結膜炎とドライアイである
    • 夏にかかりやすいウイルス性結膜炎は3種類あり、プールなどで感染しやすい
    • ドライアイはエアコンの風が直接当たる生活をすることでかかりやすくなる
    • 感染症は予防に注意を払い、ドライアイは生活習慣を見直すことでリスクを減らせる

    執筆者プロフィール

    はんがい眼科院長 板谷正紀

    京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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