「いくら目をこらしてもピントが合わず視界がぼやけることがある」
こうした目のぼやけについての悩みは、子どもから老人まで感じる代表的な目の悩みといえるでしょう。

じつはこの“目のぼやけ”の症状には、大きく2つの原因があります。
1つは、ピントを調節する水晶体や毛様体筋(もうようたいきん)の働きが衰えることで生じる調節異常(調節緊張や老視[老眼])です。
もう1つは、目に入ってくる光の屈折がうまくいかず、網膜上にピントが合わなくなって視界がぼやける屈折異常(近視、遠視、乱視)です。

調節異常と屈折異常は、どちらもぼやけるという症状ですが、なぜぼやけて見えるのかという理由は全く違います。
そこで今回は目のぼやけの原因や矯正方法、ぼやけとかすみの違いなどを詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

ぼやけの原因の1つ、調節異常とは

ぼやけるという症状の原因の1つは、目のピントを調節する機能が衰えることです。これは調節異常と呼ばれ、加齢によって調節力を失う老視と学童期に多い近見作業のしすぎによる一時的な調節異常(仮性近視)に分けられます。

加齢によって症状が強くなります。また、若い方でもパソコンやスマホなどで目を長時間酷使することで、目のピント調節機能が一時的に弱まり、ぼやけることもあります。

ピント調節機能とは

人の目は、網膜に像を結ぶために光を曲げる働き(屈折力)があり、その3分の2を角膜が担い、残る3分の1は水晶体が担います。カメラでいうところのレンズの役割と同じです。
その中で水晶体は、単に屈折力を持つだけではなく、水晶体の周囲を囲んでいる毛様体筋(もうようたいきん)の働きで厚みを変えて、ピントを合わせています。
毛様体筋が緊張すると水晶体が厚くなって近くのものにピントが合い、逆に緩まると水晶体が扁平になって遠くのものにピントが合うようになります。この水晶体のピント調節機能は、カメラのオートフォーカスと同じように、自動的にピントを合わせてくれています。

学童期の調整異常

学童期(8~15歳)に読書やスマホなどの近くを見る作業を長時間続けていると、毛様体筋が常に緊張した状態が続き、過度な収縮が起きて遠くを見ようとして毛様体筋を緩めようとしてもうまく緩まない状態になり遠くがぼやけて見えるようになります。
昔でいう「仮性近視」の状態です。「調節緊張(調節痙攣)」と呼ばれています。
学校の視力検査で視力の低下が認められ眼科を受診すると、この働き過ぎている毛様体筋を麻痺させ過度の緊張から解放するための点眼薬が処方されることがあります。

「調節緊張」は治せる近視です。近くばかりを見る作業の合間にスポーツや野外活動を行いバランス良く目を使う習慣が重要です。
学童期に近くを見る作業ばかりやっていますと、目の前後の長さ(眼軸長〔がんじくちょう〕と言います)が伸びて本当の近視になっていきます。眼軸長は縮めることができませんので本当の近視は治りません。近視が強くならないように予防するのが精一杯です。

目の奥行きの長さを眼軸長(がんじくちょう)といいます

老視(老眼)は治らない調整異常

最も代表的な調節異常である老視(老眼)は治りません。
水晶体がピントを合わせることができるのは、柔らかくて厚みを自在に変えることができるからです。
加齢によって水晶体が固くなることと、毛様体筋が衰えて収縮力が落ちることが相まって、うまく水晶体の厚みを変えられなくなってしまいます。このためピントが合う幅が狭くなってしまうのです。

老視は40代前半から始まります。遠視や正視の方ほど、老視を早く自覚するようになります。なぜなら、遠視や正視の方は、もともと遠くにピントが合っていて、近くのものを見る場合は水晶体を厚くしてピントを調節しているからです。
老視が始まると、この調節力が衰えるため一気に手元がぼやけてしまうのです。手元にピントが合っている近視の方は、ピント調節で頑張らずとも近くのものにピントが合っている状態なので、調節力の低下を感じるのはかなり遅れる傾向があります。
ただし、メガネをかければ正視の方と同じように手元が見えにくくなります。

老視は治りませんが、遠近両用のメガネやコンタクトレンズである程度不便さを解消することができます。
最も便利なのは白内障手術で用いる多焦点眼内レンズです。3焦点のものを選べば遠くも手元も中間距離もメガネ無しでよく見えます。

一時的に調整異常が起こる“疲れ目老眼”

若くても、目を酷使することで老視(老眼)のような症状が現れる方もいます。スマホの使い過ぎが原因で20代の若者がかかるため、“スマホ老眼”などと呼んだりします。
ほかにも、昼間の作業の疲れが夕方になって現れる“夕方老眼”、同じく週末になって現れる“週末老眼”、これらを総称して“疲れ目老眼”などといったりします。

つまり老眼年齢でもないのに目疲れによって起きた一時的なピント調節力の低下を、老眼の症状になぞらえた言葉となっています。老眼年齢ではありませんので、水晶体の柔軟性は保たれており、毛様体筋の疲れが取れれば回復します。

目の疲れによる一時的な老眼の症状を「スマホ老眼」や「夕方老眼」などと呼ぶことがあります

もう1つのぼやけの原因、屈折異常とは

通常、目は角膜と水晶体を使って光を屈折させ、網膜にピントを結ぶようにしています。
ところが、何らかの原因によってうまく網膜にピントが合わなくなると、ものがぼやけて見えてしまいます。これを屈折異常と呼び、いわゆる近視、遠視、乱視は、この症状をさします。

ものがぼやけて見える屈折異常は、眼軸長の長さの違いや、角膜の形状の違いによって起こります

 

一般的な近視について

近視は学童期(8~15歳)に眼軸長(目の表面から眼底までの距離)が長くなって起こります。眼軸長が長いということは、スクリーンである網膜が焦点よりも後ろへ引いてしまうということです。
その結果、本来は網膜で結ぶはずだった焦点が網膜の手前で結ばれてしまうため、ピントが眼底の網膜に合いません。そのため、視界がぼやけてしまうのです。これは、一般的には8歳~15歳の学童期、すなわち身長が急に伸びる時期に、眼球が奧に伸びることで生じます。

強度近視はさまざまな眼病を併発しやすい

眼軸長が26㎜を超える強度の近視の方は、他の病気を発症する可能性が高く、注意が必要です。
まず、網膜剥離(もうまくはくり)が起きやすいことが知られています。強度近視の方は眼球の外側の組織である眼球壁の伸びに網膜の伸びがついていけず、網膜に格子状変性といわれる薄い場所ができることがあります。
これは若年または中高年が網膜剥離を起こす原因となります。もし網膜剥離の初期症状である飛蚊症(ひぶんしょう:視界に濁りが見えること)や光視症(こうししょう:光が走るのが見えること)を感じたら、すぐに眼科を受診してください。

飛蚊症・光視症については、こちらのコラムでもご紹介しております

目にもやもやしたものが見えた時に潜む怖い病気

目か脳か?目のチカチカを引き起こす2つの場所と9つの原因

さらに、強度の近視の方のなかには、40歳以降に網膜の中央がさらにへこんでいき後部ぶどう腫と呼ばれる病的な形状を形成し、視力が低下する幾つかの難病が起きます。
網膜が裂ける「強度近視網膜分離症」、網膜の中心に孔(あな)が開いて網膜剥離が起きる「黄斑円孔網膜剥離(おうはんえんこうもうまくはくり)」、土台に新しい血管が生えて出血する「強度近視脈絡膜新生血管黄斑症(きょうどきんし みゃくらくまく しんせいけっかん おうはんしょう)」などです。
これらは治療できますが、黄斑部の土台が萎縮する「黄斑部網脈絡膜萎縮(おうはんぶもうみゃくらくまくいしゅく)」は治療法がありません。これらを合わせて病的近視または変性近視といいます。近視が強い方は眼科で眼底の状態を定期的に診てもらいましょう。

眼底が変形してさらに眼軸長が伸びる「後部ぶどう腫」

 

遠視は内斜視(ないしゃし)や弱視につながる場合があるので要注意

遠視の方は近視の逆で眼軸長が短いため、網膜というスクリーンが焦点の手前にきてしまっています。
実は、人は遠視の状態で生まれてきます。成長とともに徐々に目が大きくなり眼軸長も伸びていき遠視は弱まっていくのです。丁度良いところで止まると正視、正視を越えてしまうと近視になるのです。
幼少期の強すぎる遠視は内斜視(ないしゃし)を引き起こし、片方の目の視力が発達しない弱視を引き起こしますので要注意です。

(左)通常の目。(右)内斜視の目。内斜視は弱視につながることがあるので注意が必要です

乱視の仕組みと症状
乱視の原因は、角膜と水晶体にあります。

若い頃から乱視があるなら、それは角膜乱視です。光を屈折させる役割の3分の2を担う角膜のドーム形状が歪むことで起きます。角膜乱視は年齢とともに変化します。
例えば、角膜の縦のカーブが横のカーブよりも強いと、光の屈折も縦軸のほうが強くなって、横軸よりも手前にピントを結んでしまいます。
ピントを結ぶ場所が2つできてしまうため、ものが二重に見えるようになります。これはよくある一般的な乱視で、正乱視と呼ばれます。正乱視の場合は、メガネやコンタクトレンズで矯正することができます。

そのほかにも、角膜乱視には不正乱視という複雑なものもあり、こうなるとものが何重にも見えてしまいメガネによる矯正が難しくなります。コンタクトもソフトタイプでは矯正できず、ハードタイプで矯正します。
さらに、白内障を発症しやすくなる年齢になると、水晶体で乱視が生じて何重にも見えるようになることがあります。これもメガネやコンタクトレンズでは矯正できず、白内障手術により解決します。

水晶体の濁りによる不正乱視では、月が3つ以上に見えることがあります

 

調節異常と屈折異常は矯正できる

屈折異常のほとんどは、メガネやコンタクトレンズで矯正することができます。不正乱視はメガネやソフトコンタクトレンズでは矯正できませんが、ハードコンタクトレンズなら矯正することができます。
また、角膜を削って屈折力を矯正するレーシック手術や、手術で眼内コンタクトレンズを挿入するICLで屈折力を変えて視力を矯正する治療法もあります。これらは自由診療となるのでやや高額な治療費になりますが、メガネやコンタクトレンズを使用する手間がなくなるメリットがあります。

老視はメガネなら遠近両用メガネ、コンタクトレンズなら遠近両用コンタクトレンズを用いて矯正することができますが、やや使いづらく慣れが必要です。加齢により老視が進行するので、時に近用レンズの度数を強くしていく必要があります。
根本的な治療は難しいのですが、同じく加齢で発症する白内障の手術において、多焦点眼内レンズを選ぶことで、多くの悩みを解決することができます。

視界が白いなら、それは“目がかすんで”いる状態

かすみ目や目のぼやけの違い

“ぼやけている”と思っていた症状が、実は“かすんでいる”症状である場合があります。“かすみ”を“ぼやけ”と勘違いしてしまうことはよくあるので注意が必要です。“かすみ”の場合、メガネやコンタクトレンズによる矯正では回復しません。

“ぼやける”と“かすむ”は一緒ではない

目に映るものがはっきり見えないということでは、“ぼやけ”と“かすむ”症状は似ています。そのため「目のぼやけ・かすみ」などと、ひとまとめに扱われがちです。
しかし、かすみ目は目の透明な部分が曇ったり傷ついたりして、すりガラスを通したように見えてしまう状態のことです。まったく違う症状といっていいでしょう。

目のかすみには要注意

もし視界が白くかすんで見えるのであれば、それは目の大切な透明な部分である角膜や水晶体が濁ってしまっている状態です。最もポピュラーな眼病として、水晶体が濁ってしまう白内障の可能性があります。
白内障になると、視界が白くかすむ以外にも、光がまぶしく感じたり、暗いときと明るいときで見え方が違ってきたりします。

見えにくいと感じたら、すぐに眼科を受診

ぼやけにせよ、かすみにせよ、ものが見えにくい状態のままの目では、通常以上に目を酷使することになります。目を酷使することで、眼精疲労やドライアイを引き起こしてしまうというような負の連鎖も起こりえます。
見えにくさを感じたら、すみやかに眼科を受診してください。

板谷院長のひとことアドバイス

ピントが合わない原因として遠視、近視、直乱視などの屈折異常やピントを合わせる力の低下である老視があります。それらは、メガネ、ICL、手術で解決可能です。複雑な乱視である不正乱視の矯正は難しく、角膜が原因ならハードコンタクトで、水晶体乱視なら白内障手術で治療します。

まとめ

  • 目がぼやける原因は、調節異常(老視)と屈折異常(近視、遠視、乱視)があります。
  • 強度近視の方は、網膜剥離などのほかの病気を起こすリスクが高いので注意が必要です。
  • “ぼやけ”と“かすみ”は混同されがちです。目の前が白っぽくなる“目のかすみ”は、白内障によるものである可能性もあるので、早期の受診が必要です。

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

公式サイト

目についてのお悩みは、はんがい眼科へどうぞ