気をつけていても、目にボールが当たったり、先のとがった針やクギのようなものが目に刺さったりしてしまうことがあります。一見すると鋭利なものによるけがのほうが症状が酷い気がしますが、ボールのような鈍的なものの外傷でも重症度が高いことがあります。

今回は目の外傷はどのように対処したらいいのか、どのような症状が起こるのかなどを詳しくご紹介していきます。

目にものがぶつかったり、鋭利なものが刺さったときのセルフチェックと応急処置!

目にものをぶつけてしまったとき、そのまま様子をみればいいのか、眼科を受診した方が良いのか迷うことがあります。以下のポイントに注意してセルフチェックしてみましょう。

目を開けられるか

目にものをぶつけた瞬間は、痛くて目が開かないかも知れません。痛みが治まってきた頃に、目が開けられるか確認します。もし目が開けられれば、角膜などへのダメージは比較的軽いといえるかもしれません。
なかなか目が開けられないようでしたら、すぐに眼科を受診しましょう。

目がちゃんと見えるか


目が開けられても、視力に異常が出ていることがあります。ものがぼやける、視野が欠けている、目を動かすとゴミや蚊のようなものがちらつく、白目に出血があるなどの症状があればすぐに眼科を受診することが大切です。

鋭利なものが刺さったときはすぐに眼科へ

針やクギ、鉛筆の芯など、鋭利なものが刺さったときには、決して自分で引き抜いたりせず、頭部を動かないように固定して眼科を受診してください。
また、木の枝や稲穂のような植物が目に入ってしまったら、刺さっていなくとも角膜を傷つけて細菌が入り込み、角膜感染症を起こすことがあります。念のため眼科を受診して目に傷がついていないか確認してもらいましょう。

目にものがぶつかったり、鋭利なものが刺さったときに起きる症状・障害

ボールなど、“鈍的なもの”が当たったとき

目にボールが当たった、殴られた、スポーツをしていて他の選手と接触したりした、といったとき、多くの場合はまぶたの腫れや、目の周りのあざなどで症状がすみます。なぜなら目は眼窩と呼ばれる骨に囲まれて守られているからです。
しかし眼球まで食い込んでくる場合は深刻な障害に至ることもあります。打撃のあたり方によって次のようなことが起こります。

「裂ける」

打撲は弱いところを破壊します。目の一番前にあって打撃をうけやすい角膜は強いので裂けにくく、角膜の近くの強膜が裂けることがあります。打撲で目が裂けることを眼球破裂と言います。
裂けると目の中身が外へ出ますので緊急手術が必要です。

「出血する」

目の構造図
目で最も血管が張り巡らされているのが「ぶどう膜」と呼ばれる茶色い色をした組織です。皆さんがご存じの黒目に当たる「虹彩」もぶどう膜の一部です。
柔らかい組織ですので打撲に弱く、すぐ出血します。出血は自然に引けば問題はありませんが、眼底に問題がありそうなときは手術が必要です。

「網膜が壊れる」

網膜は脳の一部で脂質でできていますので弱い組織です。打撲による振動で網膜は整然とした構築を失い透明性が無くなり白くなります。網膜振盪症といいます。
赤ちゃんは強く揺すっただけでも網膜振盪症が起き”Shaken baby sindrome” といいます。軽度だと自然軽快しますが、重症だと網膜の中心部部分に孔が開いて「黄斑円孔」という病気になったり、網膜が土台とともに萎縮して傷んでしまったりします。
外傷による黄斑円孔は、自然に閉じる場合があるため様子をみますが、治りが悪ければ手術で治します。

眼病については、こちらのコラムでもご紹介しております

目の仕組みがわかれば目の病気がわかる

「骨が折れて眼球が落ち込む」

打撲の当たりようによっては、びんの口をたたいて底が抜けるように、目を守っている眼窩骨の一番薄い部分が折れて、そこに眼球が落ち込むことがあります。目の動きが制限されてものが2重にみえたりします。手術で治します。

眼球の鈍的外傷で起きやすい障害をまとめておきます。

眼窩底骨折、眼位異常、外傷性緑内障、外傷性白内障、ぶどう膜炎、飛蚊症、網膜剥離、水晶体脱臼、前房出血、角膜上皮剥離、眼球破裂

クギなど、“鋭利なもの”が当たったとき

目はボールのように閉じた空間を持つゆえに存在し、ものを見る機能をはたせるのです。これに孔が開くのは最悪のできごとです。目の圧が失われ、目の中に出血が起こり、網膜剥離が起きることもあります。
目には、年齢や職業により、クギや鉛筆、針金、竹、小枝など鋭利なものが刺さることがあります。刺さったものを自分で引き抜くのは厳禁です。そのまま眼科を受診してください。
穿孔している場合は緊急手術を行います。穿孔創を縫合し、目の中の出血を取り除き、網膜剥離が起きていたら網膜剥離の手術を行います。

(起きやすい障害や合併症など)

視力低下、角膜上皮剥離、角膜穿孔外傷、角膜潰瘍、外傷性白内障、水晶体脱臼、細菌感染、網膜剥離、外傷性緑内障などの障害や合併症

目にものがぶつかった際の代表的な14の障害・合併症について

目にものが当たってけがをすると、当たったものや当たり方、当たった場所によって、目に起こる障害は多様です。既に述べてきましたが、一挙にまとめてみたいと思います。

結膜裂傷

結膜とは白目の表面にある粘膜のこと。結膜が裂けることをいいます。

治療

患部を洗浄・消毒し、裂傷の範囲が広いときには縫い合わせる処置をします。白目が真っ赤になるので重症度は高くみえますが、時間が経つと出血は収まり、きれいな白目に戻ります。

水晶体脱臼

チン小帯
衝撃などで水晶体を支えるチン小帯という線維がちぎれ、水晶体が本来の位置からはずれて、脱臼した状態をいいます(完全には脱臼していないけれど、位置がずれている場合は亜脱臼といいます)。
当然、ものは見えにくくなります。また、多くの場合眼圧が上昇し、放置すると続発性緑内障を発症します。

治療

水晶体が完全に脱臼している場合や緑内障、ぶどう膜炎などの合併症を起こしている場合は、とにかく手術で水晶体を取り除く必要があります。
通常の白内障手術では水晶体のふくろは残して、そこに眼内レンズを固定するのですが、脱臼した水晶体はふくろごと取り除かなくてはなりません。
そのため、ふくろの中に眼内レンズを固定する方法は用いることができず、眼内レンズを目の壁に差し込んで固定したり(強膜内固定術)、目の壁に縫い付ける手術を行う必要があります。

角膜上皮剥離

角膜の表面に傷がつくと、角膜上皮の部分が剥がれてしまうことがあります。木の枝や人の爪などで起こることが多いです。角膜はとても敏感で、強い痛みを伴い、涙も流れます。
やっかいなのは、再発性角膜上皮びらんです。剥がれた角膜上皮が再生して治っても、剥がれやすくなっていて繰り返し剥がれてしまう状態をいいます。朝起きると剥がれていることが多いことで知られています。

治療

抗生物質の点眼や軟膏で感染を予防しておけば、角膜上皮は再生能力が高いので、早ければ2〜3日で治ります。痛みを伴う事が多いため軟膏の方が用いられます。
再発性角膜上皮びらんの治療として、寝ている間涙が出ず角膜と眼瞼がくっつきやすい状態になり、起床とともに角膜上皮が剥がれてしまうため、就寝前に軟膏を角膜に塗布し摩擦を減らします。
これだけでは治りにくいことも多く、治療用ソフトコンタクトレンズを用いたり、角膜表層穿刺を行います。角膜表層穿刺は、角膜の表面に針で細かい傷をつけて角膜上皮が実質にしっかりとくっつくようにする治療です。

角膜穿孔外傷

針金や竹などの異物によって角膜に孔(あな)があいてしまうことをいいます。鉄片などの異物が目の奥に入り込んでしまったことが疑われる場合は、まずはレントゲンで位置を確認します。
異物が鉄製の場合は、特に角膜鉄片異物といい、放っておくと鉄錆症を起こしてしまいます。目の中に入り込んだ異物が、水晶体や網膜などの目の中の重要な組織をどの程度傷つけたかで治療や経過、そして後遺症が異なります。

治療

目に孔が開くと感染による眼内炎を起こすリスクがあり、緊急で異物を取り出し孔を塞ぐ必要があります。鉄錆症は、網膜を浸潤することで夜盲症や失明に至ることもある進行性の病状です。
やはり、素早く異物を取り除くことが大切です。眼底に入った異物片は硝子体手術で取り除きます。異物が硝子体出血や網膜剥離を引き起こしている場合は、その治療も行います。
水晶体が傷ついていたら、水晶体を除去して眼内レンズを目の壁に固定します(強膜内固定術または眼内レンズ縫着術)。角膜が強く濁ってしまうなど、著しい視力低下が避けられない場合には、後日角膜移植を行うこともあります。

角膜潰瘍

角膜の傷から細菌やアカントアメーバが入り込んだりして、感染症を起こすことで生じる合併症です。感染症だけでなく、異物を除去せずに入ったままにした場合や、重度のドライアイなどでも起こることがあります。
角膜の表面の細胞だけではなく、内部の角膜実質を溶かして、角膜に孔をあけたり、重症の場合は失明に至る病気です。

治療

細菌感染症であれば、抗生物質の点眼や眼軟膏、結膜下注射、内服を行います。真菌が疑われたら抗真菌薬を用います。アカントアメーバによる角膜潰瘍は特効薬が無く治りくい問題があります。
原因が感染症でなければ、抗炎症作用などを用いて症状の緩和を試みます。角膜潰瘍が治っても、角膜混濁が残ると視力低下を起こしてしまいます。

外傷性網膜剥離

眼球への強い衝撃を受けることで、網膜に孔があいたり裂けたりして、網膜が剥がれてしまう(網膜剥離)ことがあります。
鈍的外傷でも穿孔性外傷でも起こりえます。外傷性網膜剥離は、炎症や出血が強く、こじれて増殖硝子体網膜症になりやすい問題があります。通常の網膜剥離よりも治療に手間がかかるリスクがあります。

治療

緊急手術を行います。眼球に孔が開いたり、裂けたりしていることが多く、まず縫い合わせて閉じます。
その後、目の中に溜まった出血があれば取り除き、眼底の状態を観察して、作戦を立て網膜を復位させます。

外傷性緑内障(続発性緑内障)

目の構造
目を打撲すると前房出血と言いまして黒目(虹彩)と角膜の間のスペースに出血が溜まり、これにより房水の出口である隅角が目詰まりを起こして眼圧が急激に上昇することがあります。
このような場合はもちろん、自覚症状がない場合でも、虹彩の付け根が目の壁からはずれて隅角後退という障害を起こしていることがあり、数年〜10数年後に眼圧が上昇して外傷性緑内障を発症するケースもありますので、定期的に眼科で検診を受けるなど注意が必要です。

治療

出血による眼圧上昇は、出血が吸収されれば治まります。それまで眼圧を下げる効果のあるお薬を処方します。前房出血で高い眼圧が続くと角膜が出血で染まってしまうことがありますので、薬物的に眼圧の下がりが悪い場合は、出血を洗い流します(前房洗浄)。
外傷性緑内障の治療は、通常の開放隅角緑内障の治療に準じます。すなわち、まず緑内障点眼による眼圧コントロールを行い、それでも不十分な場合緑内障手術を行います。

外傷性白内障

ものが当たった衝撃や、異物が刺さって水晶体を傷つけることで、水晶体に濁りが生じる白内障を発症することがあります。

治療

白内障手術によって、水晶体の中身を取り除いて眼内レンズと入れ替えます。水晶体のふくろや支えている線維(チン小帯)が傷ついていたり、弱っていたりしますので、ハイリスク白内障として準備をして手術に臨みます。

前房出血

角膜と虹彩の間(前房といいます)を循環している房水の中に血液が溜まっている状態をいいます。
ひどい場合は眼圧が上昇し、吐き気や視力低下を起こすことがあります。ほとんどの場合、数日で血液は組織に吸収されますが、打撲後1週間くらいは再出血の危険性がありますので、激しい運動などは控えます。

治療

前房出血で高い眼圧が続くと角膜が出血で染まってしまうことがありますので、薬物的に眼圧の下がりが悪い場合は、出血を洗い流します(前房洗浄)。

隅角解離/虹彩離断

ボールが当たるなど、眼球を前から押すような力が加わると、虹彩(目の茶い部分)と水晶体が後ろに押され、虹彩が角膜との間で裂けてしまうことがあります(虹彩離断)。
すると虹彩と角膜のつなぎ目である隅角が離れてしまいます(隅角解離または隅角後退)。そのせいで房水の排出に異常が生じて外傷性緑内障(続発性緑内障)などを発症することがあります。
時に10年以上経ってから発症することもあり長期的に経過観察が必要です。

治療

手術で裂けた虹彩を元の部位に縫い付けます。この手術を行っても数年後に緑内障が生じることは防げませんので経過観察が必要です。

網膜振盪

眼球への衝撃により、網膜の黄斑部に浮腫が生じる障害です。透明な網膜が白濁したり黄白色になります。複視や目のぼやけなどの視力障害を発症します。

治療

網膜振盪症は多くは自然軽快しますので、まずは経過観察しましょう。稀に、外傷性黄斑円孔を伴うことがありますが50%程度自然閉鎖しますので、1~3か月程度経過をみて、閉鎖しなければ硝子体手術で円孔を閉じます。
網膜振盪症も強い場合は、網膜打撲壊死となり、網膜が委縮して視力障害または視野障害が残ります。

硝子体出血

衝撃により網膜やぶどう膜から出血し、硝子体に血液が流れ込んで溜まります。

治療

少量であれば問題はなく、自然吸収を待つこともあります。大量に出血していると硝子体手術によって血液を取り除く治療が必要になります。

眼球破裂

ゴルフボールのような小さくて硬いものが眼球に直撃すると、眼球の最も硬い組織である強膜なども耐えられずに破裂してしまうことがあります。

治療

眼球破裂は、水晶体や硝子体や脈絡膜が外へ飛び出していることが多く、その修復治療が必要です。水晶体は除去して眼内レンズを目の壁に固定します。飛び出した硝子体や脈絡膜は感染のリスクがあるため切除します。
その上で、強膜の裂け目を縫合して閉じます。網膜剥離や硝子体出血を起こしていることが多く、先述したようにそれぞれの治療を行います。

眼窩底(がんかてい)骨折/眼位異常

眼球は周囲を骨に守られています。目にボールが当たるなど外から強い力が加わると、眼球の下方にある骨の壁が骨折してしまいます。これを眼窩底骨折(もしくは“吹き抜け骨折”)といいます。
眼窩底はとても薄いので、外からの力が加わると骨折してしまうのです。
骨折すると、目の位置に異常が現れる眼位異常を起こしたり、眼球を下方に向ける下直筋に障害が出て、眼球を下に向けることができなくなる眼球運動障害が起こることもあります。そうなると、ものが上下にダブって見える複視の症状も現れるようになります。

治療

CTやMRIなどで検査をし、症状の程度によって治療方針が決められます。症状が軽度であれば、眼球を動かす練習をします。顔を動かさず目だけで左右を見ます。この眼球運動で、ものがダブって見える複視の症状が軽快すれば問題ありません。
もし眼球運動を2週間程度行っても良くならなければ手術の必要があります。身体から別の骨や軟骨を移植したり、チタンプレート、生体親和性の高いプラスチックなどを用いて、眼窩底の骨の欠損部位を補います。

【眼窩底骨折】

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日本での失明率1位の眼病・緑内障についての基礎知識

以上のように、目にものがぶつかると、当たったものや当たり方によってさまざまな障害や合併症が引き起こされます。
すぐに痛みがなくなる軽度な場合でも、細菌感染症や緑内障を続発することもありますので眼科を受診して異常がないかを検査することが大切です。

板谷院長のひとことアドバイス

目の外傷は軽症から重症例までさまざまです。眼球が裂けて緊急手術が必要な場合、目の中の重要器官が壊れて補修が必要な場合、あとで目の中に感染を起こしたり、緑内障になったりもします。眼科医によるリスクの見極めが大切です。

まとめ

  • 目を開けていられるか、ちゃんと見えるかをチェックします。
  • 目を開けていられない、ちゃんと見えない場合には速やかに眼科を受診しましょう。
  • 目の外傷は、目のさまざまな組織がダメージを追い、それぞれ異なった症状が起こり、治療法も異なります。
  • 目の外傷は、緊急性の高いものが多いため、すぐに眼科でチェックを受ける必要があります。
  • なかには、自覚症状が無く数年後に緑内障が発症する場合もあり、必要に応じて経過観察を続ける必要がある場合もあります。

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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