視界にもやもやとしたものが見えるけどなんだろう・・・視界にもやもやが見えてしまうと、目の病気ではないかと不安になるかと思います。

目の前に浮かぶ“もやもや”としたものの正体、多くの場合それは生理的飛蚊症です。飛蚊症の原因はさまざまですが、ほとんどの心配がありません。しかし、まれに病的な症状として現れることもありますので注意は必要です。

ここでは、飛蚊症についてお話しして、飛蚊症に潜むリスクをお伝えしたいと思います。ぜひ参考にしてください。

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飛蚊症はとはどんな症状


飛蚊症とは、モノを見ているときに蚊のようなものが動いて見える状態のことです。実際には飛蚊症の見え方は人それぞれで、「小さな蚊のようなもの」と感じる方もいますし、「埃やゴミのような、もやもやしたもの」と例える方もおります。というのも飛蚊症は、目のなかの透明な硝子体に何らかの透明でないものができて、それが網膜に影を映す症状だからです。

健康な人にも“もやもやしたもの”が見える場合

健康な目でも飛蚊症の症状が現れることはよくあります。生理的な要素が原因で起こる飛蚊症は、目の構造とその加齢変化に密接な関わりがあります。
主役は硝子体です。硝子体が加齢とともに変化することで飛蚊症が起きるのです。

飛蚊症の原因となる硝子体の変化は、

  1. 硝子体の中身の加齢変化
  2. 硝子体が網膜から離れる変化(後部硝子体剥離といいます)

の2つのパターンです。
特に後部硝子体剥離が原因の時は、一部の方で網膜が破れてしまう網膜裂孔や網膜が剥がれてしまう網膜剥離といった別の眼病が生じることがあります。

どちらも誰にでも起こりえます。
また、近視が強いほど若い年齢で起こります。まずは硝子体について、それから1と2の変化についてご説明しましょう。

硝子体とは?

目の構造
そもそも硝子体とは何でしょうか?
目には角膜、前房(ぜんぼう)、水晶体、硝子体(しょうしたい)と4つの透明な部分がありますが、このうち硝子体は水晶体と網膜の間の大きな眼球内の空間を占める組織です。卵の白身に似た透明なゼリー状のもので、目の中身と言ってよいほどです。
正確にはコラーゲンでできた線維のなかに、たくさんの水分を含んだヒアルロン酸が充満して透明性を保っています。いつも目の動きに合わせて揺れ動いています。

硝子体の2つの加齢変化

1.硝子体の中身の加齢変化
生まれつききれいに配列したコラーゲン線維は透明ですが、年齢とともに不規則に結合して集まり、不透明なものが生じてきます。

瞳から入った光の通り道にこの混濁した硝子体線維があると網膜に影を落とし、実際には目の前にないのに、もやもやしたものや小さな点々などが見えるのです。特に、白い壁や明るい青空を見た時などに気がつきやすいのです。

硝子体は目の動きに合わせて揺れ動いていますので、この濁りもゆらゆらと動きます。それがまるで蚊が飛んでいるかのように見えるのです。
この場合の飛蚊症は単なる加齢現象であり、目の病気とは全く関係がありませんのでご安心ください。

2.硝子体が網膜から離れる変化(後部硝子体剥離)
ある年齢で起こる生理的な加齢変化です。近視の方ほど若い年齢で起こります。年齢とともに、硝子体を形作っているコラーゲン線維が収縮して小さくなっていきます。

同時に大量の水分を含んだ硝子体のヒアルロン酸が徐々に水分を保持できなくなり、硝子体の容積が減り始めます。そしてコラーゲン線維の無い空洞(液化腔と呼ばれます)が大きくなっていき、硝子体が網膜にくっつく力を失っていきます。

そして、接着の弱いところから硝子体を包む薄い膜(後部硝子体皮質といいます)が網膜から離れていき、ついには一番強くくっついていた神経線維の出口であるドーナッツのかたちをした視神経乳頭という部分から離れます。これを後部硝子体剥離といいます。

このとき、今まで視神経乳頭の周囲にあったリング状の線維組織が後部硝子体皮質とともに剥離して、リング状の濁りが網膜の前に浮かぶのです。これが、輪状のものや塊状のものが飛んでいるように見える正体です。

同様に血管や黄斑の中心部分も硝子体との接着が強いため、その部分に線維性の濁りが生じて見えることがあります。

このタイプの飛蚊症は、硝子体の収縮につれて混濁した部分がが網膜から遠ざかったり、中心から外れることが多く、次第に気がつかなくなることが多いです。

後部硝子体剥離は、急に起こることがあり、この場合後述したように網膜裂孔や網膜剥離を引き起こすリスクがありますので要注意です。

生まれつきの飛蚊症も

また、まれな例ではありますが生まれつきの飛蚊症というのもあります。別の記事でも、目は人の身体の中で唯一透明であり、まさに“奇跡の組織”と言えるとご説明いたしましたが、実は胎児の眼球がつくられる途中の段階では、硝子体には血管があります。

通常であれば、完成した時点で自然と硝子体の血管はなくなるのですが、何らかの理由で硝子体内に血管の名残りが残ったままになることがあります。
この血管の名残りが、濁りとなってもやもやしたものが見える飛蚊症の症状を引き起こすというわけです。

飛蚊症は、そのほとんどが病的はものではありませんのでご安心いただきたいのですが、ごく一部に飛蚊症が出たときに目の病気も起きます。
それを自分で見分けるのはほとんど無理ですので、まずは眼科で眼底の精密検査を受けていただきたいのです。では、ここから飛蚊症にかかわる目の病気の説明に移ります。

飛蚊症の第2の原因である後部硝子体剥離が引き起こす目の中の病気!

硝子体と網膜が強くくっついている場所があり、硝子体が網膜から急に剥がれる時、そこへ強い衝撃が加わり問題が起きることがあります。

網膜裂孔(もうまくれっこう)から網膜剥離(もうまくはくり)へと進行すると深刻に

硝子体は網膜に接していますが、場所によって接着に強弱があります。地球でいう赤道部付近(角膜を北極、網膜の中心部分である黄斑を南極としたときの縦軸に対して、横軸中心の周回を眼球の赤道と言います)で一番強く網膜にくっついています。

特に近視の方は、網膜が帯状に薄くなっている格子状変性という場所があり、特に硝子体はここに強く癒着しています。後部硝子体剥離の時、ここが強く引っ張られてしまうことで、もろい組織が裂けてしまうのが網膜裂孔です。

暗いところで無いはずの光が見える「光視症」

網膜裂孔になる前に、パッパッという光が見えることがあります(光視症)。これは網膜が引っ張られていることにより起こる現象です。網膜裂孔の予兆かもしれないので、症状を自覚したら注意してください。

また、網膜が破れたところに血管が走っていると出血して硝子体の中に血が入ることがあります。量が少ないと多量の飛蚊症が見え、量が多いと視界が血でふさがれて見えなくなります。硝子体手術で血を取り除けば見えるようになるので、硝子体出血自体は失明原因になりませんが、網膜裂孔だけでなく網膜剥離を引き起こすと失明のリスクがあります。

網膜裂孔は、そのほとんどが網膜剥離を引き起こします。網膜剥離は手術をしないと治りません。放置すると失明するリスクが極めて高いのです。

また、網膜の中心の黄斑が剥がれてしまうと、手術で剥離が治っても視力障害が起きたり、ゆがんで見える症状が残ります。注意が必要な飛蚊症の見え方は、飛蚊症の症状に加えて視野に歪みや視野欠損が起こった時です。この時は、すでに網膜剥離が起きています。

網膜裂孔のあいだに病気を発見できれば、多くの場合レーザー治療で網膜剥離になるのを防ぐことができます。しかし網膜剥離となってしまい、そのための手術が必要になると、レーザー治療の数倍の身体的・経済的ストレスがかかりますし、後遺症がのこる可能性があります。ぜひお早めに受診してください。

黄斑円孔は網膜の中心に穴が開いてしまう病気

硝子体が網膜と強くくっついている場所のひとつが、網膜の中心である黄斑のそのまた中心にある中心窩です。硝子体が網膜から離れていく途中で、中心窩は最後の方まで離れずくっついています。その時に、中心窩が引っ張られて強い力がかかり続け、孔が開いてしまうのです。

中心窩はくぼみがあり薄いため、孔が開きやすいのです。中心窩に孔が開くと、視界の真ん中が見えなくなります(中心暗点と言います)。
薬は無く、硝子体手術で孔を閉じます。

硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)は出血の原因が重要

硝子体が網膜と強くくっついている場所は血管です。脳につながる視神経の出入り口となっている視神経乳頭は、硝子体が2番目に強くっついている場所。
後部硝子体剥離の時、視神経乳頭の血管が強く引っ張られ、血管が傷ついて硝子体出血を引き起こすことがあります。軽い出血の場合は数多くの飛蚊症、出血が多いとほとんど見えなくなり硝子体手術が必要になります。網膜裂孔と同じですね。

この場合は単なる硝子体出血で失明のリスクはありませんが、先述した網膜裂孔ができるときにも硝子体出血が起きて放置すると失明のリスクがあります。
出血量が多いと区別は容易ではなく、手術で出血を取り除いて確かめる必要があります。硝子体出血だけなら視力は元に戻ります。

「目の前に何かがある」と訴える患者さんに対して、眼科医の多くは飛蚊症の奥にある眼病を疑います。なぜなら、飛蚊症は“その他の眼病の併発症状のひとつであることもある”からです。単に加齢などで現れることも多いのですが、その裏に深刻な病気が隠れている可能性を頭において眼科医はすぐに眼底の検査を行います。

その他の注意すべき飛蚊症

ぶどう膜炎は炎症しやすいぶどう膜の症状

目の中は映画館です。目に入ってきた光を網膜で映像化するために、余計な光を入れないように眼球の中を暗くする必要があります。その、目の中を暗くして映像がはっきり見えるようにしているのが、ぶどう膜という茶色い組織です。

ぶどう膜は炎症が起きやすいことで知られ、硝子体の中に炎症性細胞が広がると硝子体が濁り飛蚊症の原因になります。

眼内炎は目の中の感染症

白内障などによる目の手術後や、目に異物が刺さったなどの怪我の後に目の中の感染症にかかることがあります。眼内炎と言います。外傷以外での感染症とすれば、もともと体内に潜んでいた真菌が眼球まで回り込んで炎症を起こしている可能性もあります。

このような場合も菌塊が硝子体中に浮かんで飛蚊症が生じることがあります。レアケースではあるものの、放置しておくと失明する可能性のあるものなので、不安を感じたらすぐに眼科医に診てもらいましょう。

病的な飛蚊症の中には、一刻を争うものも含まれていますので、できるだけ早い段階で眼科に行ってください。

目を見て相手の気持ちはわかるが、眼底の様子はわからない!

“目は口ほどに物を言う”ということわざがあります。目が表す感情は、時に、口から出る言葉よりも真実を表していることを意味しています。素敵なことわざだと思います。

このように、相手の目を見つめると、その人の気持ちを感じることはできますが、しかし眼底を見ることはできないのです。眼底は角膜から2~3センチの近くにあるのにです。眼球は映画館。先述したぶどう膜という茶色い組織が光をさえぎって暗箱にしています。

真っ暗な眼球の中で、その一番奥にある眼底を見るためには、瞳から目の中に光を入れて、跳ね返る反射光をうまく捉える必要があります。眼科には、これをうまくできる道具がいろいろあります。直像鏡、倒像鏡、細隙灯、眼底カメラ、OCTなどです。
眼科に来ていただきさえすれば、眼底は明るく見ることができるのです。

最近では、眼球内に光を入れるために薬で瞳孔を広げる散瞳をしなくても、一発で網膜の80%を撮影できる眼底カメラもあります。目の奧の病気の心配があっても、その正体が明るい光の下にさらされれば無用の恐ろしさは無くなります。

暗闇のお化けほど恐いものです。眼科で眼底に光を当てて心配の原因を明らかにしましょう。

光るもやもやの原因は目ではない!?

また、黒いもやもやではなく、光るもやもやが見えるのであれば、その原因は目ではなく脳にある可能性があります。先にも触れましたが網膜が引っ張られると視野の中にパッパッと稲妻のような光が瞬間的に見ることがあり、光視症(こうししょう)と言われています。

しかし、もっと長く続き、とはいっても15分程度で終わる光の模様が見えることがあり、これは閃輝暗点(せんきあんてん)といいます。

閃輝暗点は、突然、視野のまんなかあたりにキラキラした光の点が現れます。視界の一部がゆらゆら動きだし、物がゆがんで見えたり、視界が暗くなったりすることもあります。

光の点はみるみる拡大し、人によりさまざまなかたちになります。らせん状に連なるガラス片のようなキラキラした光、ノコギリのふちのような光の模様、あるいはジグザグ光線のような幾何学模様、無数の光り輝く歯車のような点が集合し回転している、などいろいろな表現がされます。

このような光の模様が視界に広がり、視界の大部分が覆われてしまうこともあります。この閃光と暗点は5分~40分ぐらいで広がって、視野の外に出て消えていきます。

この症状は目を閉じていても起きます。頭の中の現象だからです。閃輝暗点が起こる原因は、脳の視覚野の血管が何らかの誘因で収縮し、その後異常に拡張して血管の壁に炎症と浮腫をおこすためと言われています。

閃輝暗点は、偏頭痛の前兆として現れることがほとんどですが、頭痛を伴わず閃輝暗点だけを見ることもあります。その場合、まれに脳への血液の一部が何らかの理由で止まってしまう脳梗塞、先天的に脳の動脈と静脈の一部が直接つながってしまっている脳動静脈奇形、脳にできものができる脳腫瘍や、血管を詰まらせる血栓による、一過性の脳循環障害が原因である可能性があります。

閃輝暗点は、多くの場合心配いりませんが、繰り返す場合は神経内科などで重大な脳の病気が無いことを確認しておきましょう。偏頭痛に伴う場合は、偏頭痛の治療を受けましょう。

いずれにせよ、視界上に目の前には無い光が見えた場合は、眼科を受診しましょう。あなたの症状を詳しく聞き取って神経内科などへの受診が必要かどうか眼科医がアドバイスします。

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まとめ

  • 飛蚊症はほとんどの場合は生理的な加齢変化が原因で起きます。
  • しかし、網膜剥離など一刻を争う眼病の前触れであることもあるため、できるだけ早めに眼科で眼底検査を受けて確かめましょう。
  • 眼底検査を受けて異常が無ければ、たとえ消えなくても飛蚊症は気にしないようにしましょう。いずれ目立たなくなることが多いのです。

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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