鏡を見て目が濁っているのを見つけたら、悪い病気にかかったのではないかと不安に駆られる方も多いと思います。
目の濁りというのは、何かしらの病気である場合もありますが、単に老化現象によるものが原因ということも少なくありません。
ただし、原因がどこにあるのかを医療眼科医のプロではない方が自己判断をするのは、とても難しいことです。

今回は、目の濁りについて説明いたしますので、ぜひ参考にして下さい。

目の仕組みについては、こちらのコラムでもご紹介しております。

目の病気はものを見る仕組みと目を守る仕組みのどちらかの不具合で起こります

黒目が濁っているか、白目が濁っているかで大きく異なる“目の濁り”

黒目と瞳について

目の濁りが病気なのかどうか。その判断基準となるのは「白目が濁っている」のか「黒目が濁っているのか」という点です。

ここで少し、「黒目」の意味についてご説明します。
黒目という言葉は、目の黒く丸い部分全体(角膜や虹彩)を指す場合と、その中央の「瞳」を指す場合があります。虹彩が青や緑の白人さんの場合は、黒く見えるのは瞳だけです。
そういう意味で、黒目の本当の意味は「瞳」だと言えますが、昔から日本では女性の美しさを“黒目がくっきりとしている”などと形容してきましたように、日本語としての黒目は元々虹彩や角膜全体を含める場合もあるのですが多いのです。

黒目がくっきりしている女性

瞳はなぜ黒い?

では、黒目の瞳はなぜ黒いのでしょうか? 実は、瞳が黒いのは水晶体やその奧の硝子体が透明だからです。つまり、光を反射しないために瞳は何も映らずに黒く見えるのです。
実は目はぶどう膜というメラニンの多い茶色い組織が包んでいて暗箱を作っています。映画館が暗いから映像がはっきり見えるのと同様です。虹彩もぶどう膜の一部です。

目は唯一瞳孔だけがぶどう膜で覆われておらず、光を目の中に導き入れることができるのです。瞳の向こうは暗箱なので黒いのです。
ただし、瞳を見ている自分の目の方向と瞳を通して目の中に入る光が一致するとネコの目のようにオレンジ色に光って見えることがあります。人物の写真で瞳が光ることがあるのはこのためです。

目の構造

【目の構造】

瞳が黒いのは健康の証し

黒い瞳は、水晶体や硝子体の透明性が保たれているから光を反射せず黒いのであり、それはそれらが健康である証しでもあるのです。反対に、瞳が濁るのは透明な組織のどこかに異常が生じている証拠です。
例えば、白内障の症状が進行すると瞳は白く濁ってしまいます。もし黒目の「瞳」が濁っているのを見つけた場合は、何らかの眼病を疑って間違いありません。目の濁りが瞳にある方は、速やかに眼科医に相談してください。

瞳以外の黒目部分が濁る場合は、角膜が濁っている

瞳以外の黒目部分が濁るのは、目を見たときに、角膜は透明であるためみえずらく、よく見えるのは虹彩です。黒目が濁るのは、虹彩が透けて見える透明な角膜が濁って虹彩が濁りに隠されてしまうからです。
虹彩までの黒目部分全体を覆っている角膜が濁っているから、そう見えます。角膜は精緻な構造により透明性を保っていますので、何か問題が起こるとすぐに濁ってしまいます。
角膜の濁り方にはそれぞれ特徴がありますが、もし鏡を見て気になったり、誰かに指摘されたりしたときは、自覚症状がなくともひとまず眼科を受診しましょう。

角膜と白目の境界付近の濁りは老化の可能性も

一方、角膜と白目の境界付近白目が濁っている場合は、老化現象の可能性が高くなります。なぜなら、老化現象で目が濁る症状は、白目、特に角膜の周辺部のみで起こるからです。
老化で起こる濁りは、加齢とともに白目の、特に目頭側の時計の3時や9時の部分の白目に色素沈着が進む「瞼裂斑(けんれつはん)」や、角膜の周辺部が加齢とともに白く濁る「老人環」などが代表的です。瞼裂斑は茶色く濁り、老人環は白っぽく濁ることが多いのが特徴です。

ただし、稀ですが白目は腫瘍やリンパ腫が生じることがあります。また、目頭側から白目の結膜が角膜表面へ侵入していく「翼状片(よくじょうへん)」もよく見かける病気です。気になったら、すぐに眼科を受診してください。

黒目が濁る角膜の病気

角膜が濁る病気

角膜に傷や欠損があると、クリアなガラスではなくすりガラスのような状態になるため、黒目の部分が白く濁って見えるようになります。
角膜が濁る代表的な病気に、角膜感染症が挙げられます。角膜上皮の全層が欠損状態になる「角膜びらん」、角膜にできた傷が細菌感染を起こすことで発症する「細菌性角膜炎」「真菌性角膜炎」「アカントアメーバ角膜炎」「ヘルペス性角膜炎」など、様々な角膜感染症があります。
眼科医は濁りの特徴を診断の手がかりにします。

角膜の病気は、ただ単に白く濁って見えるだけでなく、強い痛みや視力の低下を引き起こすものです。必ず眼科での治療が必要になります。

目頭側の黒目が濁る

目頭側の白目から黒目にかけて、三角形状に曇ったような濁りが見られるのがの血管を豊富に含んだ白~ピンク色のできものが、先に述べた「翼状片」です。
翼状片は、白目の表面を覆っている結膜が濁り、黒目の角膜に侵食してくるものです。初期症状としては黒目に差し掛かる白い濁りのほか、異物感や充血などがあります。病状が進行すると次第に乱視や視野欠損を引き起こすようになります。

翼状片の原因は紫外線といわれています。発症が目頭側に多いのは、紫外線が鼻に反射して白目に当たるためだと考えられているのです。濁りが瞳にかぶる前に手術が必要になりますが、手術をしても再発率が高く、非常に厄介な眼病です。

黒目と白目の境が水泡状に濁る

黒目と白目の境目に、水泡状の白い点が現れるのは「フリクテン性結膜炎」の可能性が考えられます。
フリクテン性結膜炎は、何らかの細菌に感染した後に現れる遅延型アレルギー反応であるといわれていますが、アレルギー検査でも原因を突き止められないことが多いのが現状です。

ほとんどの場合は1週間程で点状の濁りが消えますが、何度も繰り返すこともあり、放置していると角膜全体が濁って視力の低下を招く危険性もあります。

黒目の周辺だけが濁る

黒目の周りがリング状に白く濁っている場合はほとんどは、眼病ではなく「老人環」という老化現象です。
コレステロールなどの脂質が角膜内に蓄積することで、透明な部分が白く濁って見えています。角膜の中心部にまで到達することはないので、この場合は何も心配することはありません。ただし、関節リウマチなどの病気をお持ちの方には、蚕蝕性角膜潰瘍という自己免疫で生じる黒目の周辺の炎症が知られており注意が必要です。

ただし、30代でこれを発症した場合は老人環ではなく「若年環(じゃくねんかん)」と呼ばれ、高脂血症や心血管異常などの病気のサインである可能性もあります。速やかに内科を受診する必要があります。

白目が濁るのは加齢による老化現象?

若い頃は白目に透明感があり、青みがかった綺麗な瞳だったのに、気がついてみれば白目が黄色く変色している……。
なぜ、白目の透明感は損なわれてしまうのでしょうか。その理由は、病気である場合と、加齢現象による場合の2つがあります。

強膜もしくは結膜の異常

一般的に白目といわれる部分は、目の壁である白い強膜を半透明な結膜とテノン嚢が覆うという、二三重の膜で構成されています。
結膜とテノン嚢は表皮と真皮の関係と同じで半透明です。つまり、白目の白い色は強膜の色なのです。そのため、強膜炎などの強膜が薄くなる病気では、強膜の後ろにある茶色い脈絡膜の色が透けて見え、濁りのように見えることがあります。

また半透明な結膜が炎症などで濁ることでも白目はくすんで見えるようになります。白目に色素沈着が起こり茶色く見えることがありますが、ほとんどはただの色素沈着で病気ではありません。悪性黒色腫のこともありますが年間5例程度と極めて稀です。

このように、白目の濁りには、強膜や結膜の病気である可能性もあるため、気になる場合は眼科への受診をおすすめします。

紫外線の影響による瞼裂斑

日々受け続ける紫外線によっても、白目は黄色く濁ってしまいます。この濁りは先にも述べた「瞼裂斑(けんれつはん)」と呼ばれるものです。角膜の左右の白目部分の結膜が厚くもろくなり、色素沈着して黄色いシミができます。

瞼裂斑は、老化現象の一種です。肌は紫外線によるダメージが蓄積すると、肌細胞に活性酸素が過剰発生し、シミとなって現れます。
白目も同じ原理で、徐々に透明感をなくしていくのです。

【瞼裂斑炎】

ブルーライトの影響は……?

パソコンやスマートフォン、タブレット端末を長時間使用している人は、機器から発生するブルーライトによって、目がダメージを受けるのではないかと心配されています。紫外線は水晶体でほとんど吸収されてしまい眼底の網膜には届きませんので、白内障の原因にはなりますが、網膜の病気を引き起こしません。
一方、ブルーライトは水晶体を通過して眼底まで届きますので白内障の原因にはなりにくいですが、ブルーライトは、紫外線の次に高いエネルギーがあるとされる光線であるため網膜を障害する可能性が考えられています。
今のところ、網膜に障害を与えるかどうか?網膜の病気を引き起こすかはエビデンスが乏しい状況ですが、人のサーカディアンリズムに影響を与えるのは間違いなく、睡眠から精神あるいは全身への影響が懸念されます。

パソコンやスマートフォン、タブレット端末などの各種ツール類は、もはや現代人には欠かせないものとなっています。
ブルーライト過多の生活が出現してまだ歴史が浅いため、まだまだわからないことが多いですが、高いブルーライト曝露を続けて高齢になったときどのような目のダメージが起こるかは注目していかねばなりません。

白目を黄色く濁らせる黄疸

飲酒や喫煙によって肝機能が低下し、白目が黄色く濁ってしまうこともあります。肝機能が低下すると、胆汁色素が肌と白目に現れ、次第に黄色く変色します。これは、黄疸と呼ばれる症状です。
内科で精密検査を受ける必要があります。

老化による濁りでは失明することはありません

白目の濁りが老化現象である場合は、残念ながらこれといった対処法がありません。しかし、見えなくなったりすることはありませんのでご安心ください。
紫外線が原因のものに関しては、強い日差しの下では紫外線をカットするサングラスをかけるなど、日常生活に工夫を取り入れましょう。

ただし、ただの加齢現象と病気とを見分けるのに、自己判断で決めつけるのは難しいものです。濁りが見つかったときは、本稿を参考に、まずは眼科で相談することをおすすめいたします。

「目の濁り」まとめ

  • 目の濁りは黒目が濁るか白目が濁るかで大きく分かれる
  • 黒目は濁り場所によって病状が異なる。周辺は老人環という加齢変化、中央が濁ると眼病とおおまかに考えてよい
  • 白目の濁りは老化現象である可能性も高いが眼病が潜んでいることもあるので注意


執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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