みなさまは“目の手術”がどんな目的でするかご存知でしょうか。目の手術に関しては、まだまだ一般的に知られていないことが多く、それゆえまだまだ怖いと誤解されていることが多いのではないかと思います。

それでは、今回は単に“恐いイメージの目の手術”から、“役に立つ目の手術”へとイメージを変えていただけるように目の手術のお話をお伝えしたいと思います。ぜひ参考にしてください。

目の手術を考えるうえでのポイント

これから目の手術についてお伝えしていきますが、実は目の手術と言っても、眼球の手術、まぶたの手術、涙道の手術、斜視の手術、眼球の後ろの眼窩(がんか)の手術など多岐にわたります。ここではみなさまに最も関係が深い視力に関係する眼球の手術にフォーカスしましょう。

視力に関係する手術には、3つの目的があります。

目の手術をする3つの目的

1.近視を治して裸眼視力を回復させることを目的とした手術
ひとつは、レーシック手術やICL(Implantable Collamer Lens)の手術のように、病気を治すのが目的ではなく、メガネやコンタクトレンズなしで快適にものを見る生活を得るために行う手術です。メガネやコンタクトレンズと同様に自費診療になります。

 

2.眼病を治して低下した見る力(矯正視力)を改善するための手術
メガネやコンタクトレンズで光の屈折率を矯正し、視力を回復することができるなら、その方の生来持っている“見る力”というのは、まだまだ健在だと言えます。はんがい眼科では、そうした矯正視力のことを“見る力”と呼んでいます。

この見る力(矯正視力)は、眼病によって低下してしまうことがあります。それを回復するために、手術を行うことがあります。
例えば白内障で落ちた矯正視力は白内障手術で回復します。目の奧の病気にはいろいろありますが、黄斑円孔(おうはんえんこう)、網膜剥離(もうまくはくり)、硝子体出血などの眼病は急に視力が下がり、黄斑前膜は徐々に視力が下がります。これらの病気の場合、硝子体手術により視力を低下させている原因を取り除くことで、視力の回復を図ります。

 

3.眼病を治して失明を防ぐための手術
2にも挙げた網膜剥離や増殖糖尿病網膜症は放置すると失明するリスクの高い眼病です。手術により治して失明を防ぎます。緑内障もゆっくりですが進行して失明するリスクがあります。
手術により眼圧をコントロールして失明を防ぎます。残念ながら緑内障は見る力を回復することはできないので、見る力を残すために手術をします。

手術をしないほうがいい場合もある

しかし、手術が代表的な治療法の眼病でも、実はお薬などの治療法で対処したほうがいい場合もあります。緑内障では眼圧が上昇した原因が明らかな場合は、まずその原因を解除するための治療が第一選択となります。

原因が不明の緑内障の方が多く、この場合は眼圧を下げる点眼薬が第一選択となります。原因を解除しても、あるいは点眼薬を目一杯使っても、眼圧が十分に下がらなかったり、視野障害がはやく進む場合に手術を決断するのです。

ほかにも、網膜の中心の黄斑(おうはん)がむくむ病気を黄斑浮腫(おうはんふしゅ)と言いますが、こちらも手術をしない治療が第一選択です。この病気は、糖尿病黄斑浮腫や網膜静脈閉塞症で起こりますが、どちらも新生血管という破れやすい血管から成分が漏れることで大事に至りますので、VEGF阻害剤という新生血管の成長を妨げるお薬を目の中に注射して、むくみを取る治療が第一選択です。
VEGF阻害剤の効果が乏しい理由があったり、続けられない理由がある場合硝子体手術を行うことがあります。

視力はとても大切な五感のひとつです。人が目から得ている情報がとても多いことは、既にご存知の方も多いでしょう。80%とも言われています。

だからこそ、いざ目の手術をしなければならなくなった場合には、“良い医師”に手術をしてもらいたいと思うはずです。

良い医師とは

私は、“良い医師”というのはあなたにとってのベストな方法を考えてくれる医師のことだと思っています。手術ファーストではなく、あらゆる選択肢の中からベストな治療法を選択し、その理由を説明してくれる医師です。ベストな治療が手術であると納得したら手術を受けましょう。

また、手術の内容や効果、そして起こりうる合併症のリスクとその解決法などの説明がしっかりしていることが大切です。合併症のリスクは耳に痛い説明ですが、聞いていただく必要があります。

その説明が、医師が自分を守るためにではなく、あなたの目を守る観点からの説明でなければなりません。手術前に不安や疑問をぬぐってくれるかどうかというのもポイントになってくると言えます。

視力回復(近視を治して裸眼視力を回復)のための手術とは?

では、まずは近視を治して裸眼視力回復を目的とした手術の代表的なものをご紹介していきます。

レーシック

角膜をレーザーで削り、近視を矯正します。メガネやコンタクトレンズを使わなくても物をはっきりと見えるようにするための裸眼視力回復手術です。角膜は光を曲げる働き(屈折力)が水晶体の2倍もあるのです。角膜を削って薄くすると屈折力が減少して近視が治ります。

ICL(Implantable Collamer Lens)

眼内永久コンタクトレンズとも言われます。水晶体の前面、眼内の虹彩(こうさい)の後ろの部分に眼内レンズを入れることで、屈折異常を矯正し裸眼視力を矯正します。目的はレーシックと同じですが、決定的な違いは、角膜を削らずに視力を矯正することです。AKB48の指原さんが受けた手術としても有名です。

眼病を治すための手術とは?

眼病の中には、失明のリスクは低いが矯正視力が低下するため、手術により矯正視力の回復を図るものと、放置すると失明のリスクが高いため、手術により失明を防ぐものがあります。それぞれ一例を載せておきましょう。

失明のリスクは低いが矯正視力が低下するため、手術により矯正視力の回復を図る眼病

白内障

白内障のなかで最も一般的な加齢性白内障は、加齢が原因で水晶体が濁ってしまう眼病です。早い方だと40代で発症し、80歳以上ではほぼ100%の確率で発症します。ですから、どんな人でも若い頃のようにクリアな視界ではなくなってしまいます。

再びクリアな視界を手に入れるには濁った水晶体の代わりに眼内レンズを入れるほかに手段はありません。眼底に病気が無ければ、手術によりクリアな視界が戻ります。

放置していると、緑内障やぶどう膜炎などを併発して失明に至るケースもあります。生活に便利な視界を取り戻すために人生のどこかのタイミングで、手術を検討すべき眼病の代表です。

黄斑円孔

網膜の中心の黄斑の真ん中に孔(あな)が開いて中心が見えなくなる(中心暗点といいます)眼病です。目の中の加齢変化として誰にでも起きる後部硝子体剥離が一部の人に起こす病気のひとつです(他に黄斑前膜、網膜剥離など)。

お薬では治らないので、硝子体手術を行って孔を閉じます。視力の回復は孔の大きさなどに左右されます。

黄斑前膜(黄斑上膜ともいいます)

黄斑の表面に膜が張ってしまう病気です。その膜が収縮して黄斑が腫れてしまったり、皺が寄って視力が落ちたりゆがんで見えたりします。黄斑円孔同様に後部硝子体剥離後に起きることが多い眼病です。

やはり、お薬では治らないので硝子体手術を行って膜を剥がします。早期に手術をするほど術後の視力は良く、ゆがみも治りやすくなります。

黄斑の表面を膜が覆ってしまい、視力低下を起こす「黄斑前膜」

 

硝子体出血

さまざまな原因で目の中に出血して急に見えなくなります。原因となる眼病はたくさんあります(増殖糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、急性後部硝子体剥離、網膜裂孔形成、眼球打撲など)。まずは硝子体手術で出血を取り除き、出血の原因を明らかにして、原因を解決します。

網膜の中心の黄斑が傷つかない場合は術後の視力回復は良好ですが、網膜裂孔は網膜剥離を起こしますし、増殖糖尿病網膜症は時に黄斑を傷めますので、早めに手術を行い、視力を守ることが必要となります。

目の中で起きた出血は、何らかの眼病が原因です。まずは硝子体手術で出血を取り除き、その後に原因疾患を治療します

 

放置すると失明のリスクが高く手術により失明を防ぐ眼病

網膜剝離(もうまくはくり)

網膜が土台から剥がれてしまう眼病です。剥がれた網膜は土台から栄養や酸素をもらえなくなりどんどん傷んでいきます。硝子体手術や強膜内陥術という方法で網膜を土台にくっつけ直します。網膜が土台にくっつけば、それ以上網膜は傷みません。

どれだけ視力が回復するかは、網膜の中心の黄斑が剥がれてからどれくらいの時間が経ったか、黄斑部の剥離の高さ、年齢などに左右されます。点眼治療は効かないので、発見次第、緊急で手術をします。

増殖糖尿病網膜症

網膜の毛細血管に血液が流れなくなると、減少した血液の流れを増やそうとして、新しい血管が網膜や虹彩に生えます。この新生血管はもろくて破れやすいため、そこから出血をきたします。

治療としては、豆まき状に網膜にレーザー光凝固を施すとかなり病状を抑えることができますが、悪性のものは網膜の上に膜を張ってしまう血管増殖膜形成や、その膜が網膜を引っ張って剥がそうとする牽引性網膜剥離を起こして網膜が傷んでしまいます。

また血管新生緑内障(けっかんしんせいりょくないしょう)が続けて発症して視神経を傷めてしまったりと、失明の淵に立たされます。早めに硝子体手術を行い、硝子体や増殖膜を十分に取り除き、網膜の端までレーザー光凝固を行い失明を防ぎます。

緑内障

網膜に入った視界の光は、電気信号に変わって神経線維を伝わり、視神経に集まります。それから視神経を通って、脳へ伝達されます。これが、ものを見る仕組みです。

緑内障は、ゆっくりと神経線維が減っていき脳へ伝わる視覚情報も減ってしまうため視野が狭くなり失明するリスクのある眼病です。先述したように、眼圧が上昇する原因があれば取り除きますが、場合によってはレーザー治療や手術をします。

原因が不明の緑内障の方が圧倒的に多く、その場合は眼圧を下げる点眼薬で眼圧を下げて、視野障害の進行を抑えますが、目一杯の点眼薬を使っても十分に眼圧が下がらなかったり、視野障害が速く進む場合は手術が必要になります。
正常眼圧でも症状が進行する場合がありますので手術が必要になることがあります。緑内障手術は眼圧を下げるための手術です。手術によりいったん傷んだ視野や低下した視力は元にもどりません。

むしろ手術により一時的に見えにくくなることが多く、それでも生涯の間生活に有用な視機能を守り抜くために緑内障手術を行うのです。

手術以外の治療方法がある眼病や治療方針の決め方は?

重い眼病だからといって、手術が必ずしもベストな方法とは限りません。
例えば加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)は、特別なお薬(先述したVEGF阻害剤です)を定期的に目の中に注射(硝子体注射)して治します。手術は基本行いませんが、黄斑の下に大出血を起こした場合に限り硝子体手術を行って黄斑下の出血を取り除きます。

糖尿病からくる血管新生緑内障の場合は、まずは原因である網膜症を治す必要がありますのでレーザーによる汎網膜光凝固術を行います。早めに行えたらレーザーと点眼薬との併用で眼圧が下がり、治る場合もありますが、眼圧がコントロールしきれない場合は、緑内障手術を行います。

ここまで見てきたように、眼病によって選択すべき治療が、お薬、レーザー治療、手術とさまざまです。最初にどの治療を行うべきかの見極めが大切です。また、同じ病気でもタイプや重症度に応じて最適な治療が異なります。手術ファーストではないのです。

医師が、その頭の中でどのようにあなたの病気を捉え、どのような理屈で最初の治療を選ぶのか? そして最初の治療の効果が不十分なとき、次の手立ては何か? などを十分に説明してもらって(頭の中の治療の道筋を見せてもらって)、納得して治療を受けていただくことが何より重要なのです。

実際の手術の流れは?

では次に、目の手術がどのように行われるのかについてお話していくことにしましょう。
ちょっと怖い光景を想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、普通の症例は、実はあっという間に終わってしまうので、恐怖をうったえる患者さんはほとんどいません。目の手術は出血も少量です。

手術の流れ

手術直前に、まず、白内障手術と硝子体手術では瞳孔が開く目薬を、緑内障なら瞳孔が閉じる目薬を点眼します。それと交互に麻酔薬の点眼を行います。その後、目の周りの皮膚と眼球表面を消毒します。

その後、手術用のドレープをかけ、まぶたは開瞼器(かいけんき)という器具で開けっぱなしにします。そして、麻酔を打ちます。
通常の白内障手術は点眼麻酔、硝子体手術や緑内障手術は、目の奧の麻酔(テノン嚢下麻酔または球後麻酔)を行って準備OKとなります。病気によって手術方法は違うものの、一般的な流れとしてはこのような感じでしょう。

手術が終わったら、開瞼器をはずして、化膿止めの注射、抗生物質の塗り薬をつけ、消毒薬をきれいに拭いとって眼帯をしたら終了です。

手術は怖くない

患者さんの中には、目を取りだして手術をするのですか? と恐ろしそうに質問する方もおられます。お気づきになられたと思いますが、目はそのままの位置で、すべての手術を行いますので、ご心配はありません。

手術中の状態としては、手術用顕微鏡の光が当たりますのでまぶしさは感じます。特に白内障手術は短時間ですのでまぶしいと思っているうちに終わりますし、通常痛みもありません。

眼科の手術場で働くか、家族の手術を見学でもしない限り、手術の流れを頭に中でイメージすることは難しく、頭で想像して恐くなってしまう方もおられます。よほどの重症ではない限り、目の手術は辛くはありません。ご安心ください。

ちょっと待って!治療の方法をしっかりと聞きましたか?


さて、それでは目の手術を検討する際の、最大のポイントに行きましょう。

手術はオーダーメイドと同じ

オーダーメイドのスーツを作るときに、たいしてちゃんとした採寸もされず、スーツの型や色味も雑に説明されただけでは、満足のいく一品に仕上がることはありません。目の手術も、それと同じです。
治療というのは、保険適用のものであれ、自由診療であれ、一人ひとりのライフスタイルや病状に応じて全てオーダーメイドで行うものなのです。

納得のいく説明を受けましょう

手術というのは、患者さんの立場からしてみればどうしても身構えてしまうものです。目の手術では、特にそれが顕著だと言ってもいいかもしれません。

眼病を治して視力を良くしたり失明を防ぐ必要性を頭ではわかっていても、人によってはネガティブなイメージを払拭するのはなかなか大変なことです。しかし、眼病そのものもあなたの視力を奪い快適な生活を損なう辛いものです。
リスク―ベネフィット バランス(risk-benefit balance)という言葉があります。手術だけではなく、お薬を含めあらゆる治療にはリスク(副作用・合併症)とベネフィット(効果)があります。この2つを秤(はかり)にかけてリスクの方が大きい治療は消えていきます。

つまり、今現在臨床で行っている治療は、すべてベネフィットがリスクよりも大きいのです。医師は、あなたにリスクとベネフィットを説明します。ベネフィットは嬉しいですが、リスクを聞くのは嫌なものです。特に手術の場合は。
リスクの説明は、単に患者説明という義務で行っているだけではなく、目の前の医師がその合併症リスクを減らそうと努力していることが伝わってくること、合併症が起きた場合に眼を守るために事前に説明するというスタンスが感じられることが重要ではないでしょうか。

例えば、白内障の術後眼内炎(手術後に目の中に感染が起こること)は0.05%と頻度は極めて低いですが説明を行います。ここで、「0.05%の可能性がある」とだけ言われるのと、「頻度が低くても発見が遅れると問題を生じるので早期発見が重要です。
術後3日~1週間の目の痛み、白目の充血の悪化、視界がぼやけを感じたらすぐ受診を」と説明されるのでは全く異なりますね。後者の方が、あなたの眼を守るための説明になっています。

さらには、手術ファーストでの説明ではなく、あなたの病気を治すための手術以外の方法があるなら、そのすべてについての説明や、そのなかで手術があなたにとってベストな方法である理由の説明があると、もっと安心することができるのではないでしょうか。

医療は患者さんの“得”が第一

第一に考えるべきは、医師が得る“得”ではなく患者さんにとっての“得”。医師は患者さんが得して初めて得をいただく仕事です。

だからこそ、治療の順序(シークエンス)を説明してくれる、自分のライフスタイルにとってのベストな方法を考えてくれる、数種類の治療方法がある場合はそれら全ての説明をして選択肢を与えてくれる、これらのことをしっかりと行ってくれるかどうかというのは、とても大切なことです。

もしもその医師が患者さんに対する誠意がないように感じるようなことがあれば、そのときは迷わずセカンドオピニオンを受けることをおすすめします。

板谷院長のひとことアドバイス

眼科手術の進歩はめざましく、目のさまざまな病気が手術で治療できるようになってきました。いたずらに怖いと思わず手術のメリットを理解し進歩の恩恵を享受しましょう。それと同時に、手術以外の選択肢を知ること、手術のデメリットも知ったうえで決めることも大切です。

まとめ

  • レーシック、ICLなど裸眼視力回復を目的とした手術は自費診療、眼病を治療して矯正視力を守る(失明を防ぐ)ために行う手術は保険診療です。
  • 白内障、網膜剝離、黄斑円孔、黄斑前膜など手術でしか治せない眼病も多数存在しますが、緑内障、糖尿病黄斑浮腫など必ずしも手術ファーストではなく、お薬やレーザーなどがファーストの眼病もあります。
  • 患者さんにとってリスクと負担の少ない治療法から試し、効果が薄ければ手術を検討する――これが医者の目です。
  • 手術のリスクの説明は、あくまで万が一合併症が起きたときに問題を最小限にとどめるために行うという姿勢が大切です。誠意が無いと感じるような場合にはセカンドオピニオンも視野に入れましょう!

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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