今や街にあるメガネショップで手軽に入手できるメガネ。ご自身やご家族の視力が低下したら、近くのメガネショップへ行きメガネをつくる方がとても多いようです。
この消費者行動は一見するとごく普通です。実際、ほとんどの場合、目の屈折異常がメガネで改善されることでしょう。
ところがある日、視力低下が一段と顕著になり、メガネをつくり直しても視力が出ず、メガネショップの店員にすすめられて眼科医へ行くと、思ってもみなかった病気が進行した状態で見つかる、というケースがあります。そして、回復が困難な視力障害が残ってしまった、という不幸な事例も、稀にではありますが起きています。これは、メガネをつくったときに現れていた視力低下は病気のせいであって、メガネがその病気をマスキング(隠す)してしまい、病気の発見が結果的に遅くなってしまったのが原因です。
これは病気を見逃したメガネショップの問題でしょうか?いえ、そうではありません。メガネをつくるときは、単にメガネをつくるためだけの検眼だけではなく、今現れている異常が病気のせいかどうかを調べる検眼も人によっては必要なのです。後者の医療行為である検眼を省略してしまった行動にこそ、またそれが当たり前のようになっている現状にこそ問題がある、といえるかと思います。今回はメガネをつくるうえで、メガネショップと眼科医との役割について、ご紹介いたします。お子さんやご家族、そしてご自身が初めてメガネをつくるとき、あるいはつくり直しのとき、お役に立つかと思います。

緑内障のような病気は、メガネショップの検査では見つからない

視力が落ちてきたとき、多くの方は「メガネをつくれば見えるようになるだろう」と思うはずです。そのとき上記で紹介した不幸な事例のようにならないようにするには、メガネショップに直接行くのではなく、その前に眼科へ行き、視力低下を招いている病気がないかどうかを調べる検査をすることです。
メガネショップへ直接行って、そのままメガネをつくっても問題がないのは、視力低下の原因が単純な近視や遠視、乱視などの屈折異常の場合だけでしょう。しかしその判断ができるのは、やはり眼科医しかいません。
緑内障のような失明のリスクのある疾患でも、メガネによる矯正視力は1.0以上になることは多く、この病気の発見が遅れがちになる理由の一つとみなされています。つまり、目が悪くなってきたと思ってメガネを新調しようとメガネショップへ行って検査をしても、際立った異常が見つからないため、少し度を強めたメガネをつくって済ませてしまう、といったことが起こりがちなのです。そのため、眼科医の間では、緑内障患者の全体の2割しか眼科を受診していない、とよく言われます。
緑内障は徐々に視神経がダメージを受けて視野が欠けていき、やがて失明へと至る病気です。もし初期の状態で発見して治療を開始することができれば、高い確率で失明を防ぐことができます。しかし、ものが見えにくくなっている理由が分からないまま、メガネショップでメガネを新調して安心してしまうと、その分発見が遅れることになるのです。
メガネをつくる前に眼科で検査をしておけば、思わぬ病気の早期発見につながることもあり、早期治療で自分の目を守ることもできるでしょう。むしろ、自分の目を守るチャンスと考えていただいて、眼科に来ていただければと思います。

メガネショップでもちゃんと検査をしているのでは?

確かにメガネショップでメガネをつくるとき、おなじみの視力検査を筆頭にいくつかの検査をしています。しかし、多くの場合、その検査は、近視、遠視、乱視の屈折異常があるかないか、三つの屈折異常のうちのどれか、その度合はどれほどか、といったもので、メガネをつくるための検査です。現在現れている視力低下が病気のせいではないか、という検査はいっさい行っていません。病気の存在を疑って行う検査は医療行為であって、眼科医にしかできません。

【メガネショップには目の検査を行う機器がありますが、それらは視力を測ってメガネの度数を割り出すためのもので、病気を見つけるためのものではありません。(写真はニデック社の「省スペース自動検眼システムTS-310」)】

検眼には2つの意味があって混同のもとになっている

辞書を調べてみるとわかるのですが、検眼には二つの意味があります。『百科事典マイペディア』によると「近視,遠視などの目の屈折異常に対し,メガネやコンタクトレンズの処方に必要な諸検査を行うこと、あるいは眼底を検査することで,一般には前者をいう」とあります。メガネショップで行う検眼はあくまでも前者の意味であり、後者は含まれていません。目に病気のない方は前者の検査のみでも問題ありませんが、もし病気が隠れているような方では後者の検査が不可欠なのです。病気が隠れているかどうかを調べるための眼底検査や、そのほかの専門的な検査は、眼科でしか行うことはできません。後者の検眼はあくまでも医療行為であり、この検査もないまま、メガネをつくることは危険なことであることがおわかりいただけたのではないでしょうか。全国の眼科医が参加する日本眼科医会によると、会員医師から寄せられた調査票で、「医師の処方なしで作製されたメガネの問題点」をみると、最も多いものが「目に病気があるにもかかわらず、メガネをつくってしまったケース」です。これが全体の3分の1以上を占めています
もしメガネをつくろうと思って眼科で検査をした場合、特に病気がなければ、眼科医が検査結果に基づいた処方せんを記入します。その内容は、近視もしくは遠視の度数、乱視の度数、乱視軸度、斜位の程度、左右の瞳孔の距離などです。この処方せんを基にメガネショップでメガネをつくってもらえば、世界に一つしかない自分にぴったりのメガネができあがります。

【細隙灯顕微鏡検査の様子。この検査では角膜、虹彩、水晶体などの異常が分かります。】

【眼圧検査の様子。この検査で眼圧が高いことが分かれば、緑内障になっている可能性があります。これらの検査のほかにも、眼科では疑いのある病気に合わせたさまざまな検査方法があります。】

メガネショップの役割

メガネショップはメガネづくりにおいてどんな役割を持っているのでしょう。大事な役目として、眼科医が検査した目の状態の処方せんに基づき、適正な度数のメガネを作製することが挙げられるでしょう。処方せんの度数や左右のレンズの距離が少しでもずれると、思ったように視力が上がらなかったり、眼精疲労になったりしてしまいます。
また、かけやすいようにフィッティング調整することも大切です。このフィッティングはとても重要で、これを軽視したメガネを装用している方は、眼精疲労や慢性頭痛が起こりやすくなってしまうのです。この部分は眼科医ではどうすることもできず、メガネショップの腕に頼るほかないでしょう。
ところが、メガネが合わないと眼科にやってくる方のメガネをみると、できあがってきたメガネの度が強すぎたり弱すぎたりすることがときどきあります。あるいは、フレーム選びがうまくいかなかったのか、かけ心地がいま一つで、長時間かけていると疲れる、こめかみが痛くなる、といった訴えを聞くこともあります。
これらの症状がメガネショップの質によるものとは限りませんが、メガネの度数かフィッティングが合っていないことが理由ですので、その場合は再調整をしてもらうことになるでしょう。少なくとも、メガネを購入する際には、再調整をしてくれるメガネショップかどうか確認して選ぶことをおすすめします。

板谷院長のひとことアドバイス

インターネットでのメガネの購入は、メガネをかけて確かめることができないこと、再調整や交換などのアフターサービスに対応しているかどうか不確かなこともあり、選択肢としては難しいのではないかと思います。もし購入するのではあれば、そういった点をよく確認することをおすすめします。

まとめ

  • 目が悪くなってメガネを新調する際に、眼科より先にメガネショップを訪れることが、緑内障などの発見が遅れる理由の一つと考えられています。
  • 本来の検眼は医療行為です。メガネショップでの検査では病気を発見するための検査はできないため、視力低下が病気によるものかどうかを調べるには眼科を受診する必要があります。
  • メガネショップを選ぶ際は、フィッティングに力を入れているところを選びたいですが、分からない場合は少なくとも再調整に対応しているショップを選ぶようにしましょう。

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執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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