最近は、目をより魅力的に見せるためにアイメイクは欠かせない、という女性も多く、アイラインやマスカラといった、目を大きく際立たせるアイメイクが流行しています。女性たちが美しさを追求する気持ちはわかりますが、実は眼科医の立場からすると、少々懸念もあります。それは不適切なアイメイクが原因で、目が乾く、ゴロゴロする、といった目の不調を招いているケースが少なくないからです。

とはいえ、目の健康のためにアイメイクをすべてやめなさいというのも、今の時代に非現実的な話です。それでは大切な目を傷つけることなくメイクを楽しむには、どうすればよいのでしょうか。
今回は、アイメイクによる目のトラブルと、その予防法や適切なケアの方法をまとめてみることにしました。正しい知識と日頃のケアが目を守ることにつながりますから、アイメイクをする人には知っておいていただきたいと思います。

アイメイクが原因で
ドライアイになるケースが増加中

不適切なアイメイクとしてまず挙げたいのが、まつ毛の生え際の内側までアイラインやマスカラをしているケースです。これは少し前に、「目ヂカラ」を強くするメイク法として女性誌などでさかんに紹介された時期があるようです。

このようなメイクをしていると、どうしても化粧品のカスや繊維などが目の中に入り込でしまい、不調を引き起こすことがよくあります。症状として多いのは、目がゴロゴロする(異物感)、目の痛みや充血、涙目、目やまぶたのかゆみ、目のかすみなどです。目に入った化粧品によって角膜に小さな傷がついたり粘膜が炎症を起こすことで、このような症状が現れるのです。

また、こうしたメイクをしている人は、目がショボショボする、目が乾くなど、ドライアイの症状を訴える例も少なくありません。まつ毛の生え際の内側には、マイボーム腺という脂分を分泌する小さな腺があります。上まぶたには約25個、下まぶたには約20個のマイボーム腺が並んでいて、ここから脂を分泌することで目の表面の涙の層を保護し、目のうるおいを保つ働きがあります。

【図・涙の3層】

しかし、油性のアイラインなどをまつ毛の生え際にぐるりと入れると、このマイボーム腺の出口を塞いでしまいます。結果として、涙の層を守る脂の分泌が減り、水分が蒸発しやすくなってドライアイを招くのです。

目を守るメイク対策①
「アイラインなどのメイクはまつ毛の外側まで」を守る

このようなドライアイや目の不調を防ぐには、「アイラインはまつ毛の外側に」と覚えておいてください。まつ毛の内側にまでアイラインを入れるのは避けましょう。マスカラもまつ毛の根元の皮膚から少し離し、まつ毛だけにつけるようにすると安心です。

さらに、メイク落としが不十分だと汚れが溜まりやすく、汚れが目を傷つけることもあります。特にウォータープルーフタイプの落ちにくいアイメイクは、専用のリムーバーを使い、目の周りをこすり過ぎないようにして、そっと取り除いてください。

まぶたの裏などに汚れが入ってしまったときは、人工涙液の点眼薬を指し、汚れを洗い流します。この場合、安全性の点から、防腐剤無添加のものが望ましいでしょう。

また、マイボーム腺の詰まりを改善するには、目を温めるのがおすすめです。温めることで腺の中で固まっていた脂が溶け、分泌がスムーズになりますし、目の周りの血行が促進され眼精疲労の改善にも役立ちます。温める方法は、ホットタオルをまぶたの上に当てるほか、市販されているホットアイマスクなどを使うのも手軽です。入浴時や就寝前などに10分ほど、一日がんばってくれた目を労わるつもりでケアするのを習慣にされるとよいのではないかと思います。
【図・目を温める】

「まつ毛エクステ」でまぶたが腫れるなどの健康被害が多発

注意が必要なアイメイクとして、二つ目に挙げたいのは「まつ毛エクステンション」です。これは自前のまつ毛1本1本に接着材で人工まつ毛を装着し、まつ毛を長く濃く見せる効果がある美容法です。つけまつ毛のように自分でつけるのではなく、美容院や美容サロンで施術を受けるのが一般的です。

まつ毛エクステンションは、かつて、人工まつ毛が目に刺さり角膜が傷つく、接着材によってまぶたが腫れる、アレルギー症状が起こる、といった健康被害が相次いだため、2008年に東京都が消費者危害情報を発表しました。厚生労働省でも、都道府県に対して注意換気の通知を出したことがあります。

その後は、一時期に比べれば健康被害は減る傾向にあるようですが、国民生活センターが2015年に公表した調査結果によりますと、まつ毛エクステンションの施術後に目に何らかの異常を感じたという人が、調査対象の1000人中、4人に1人に上っています。

やはり、敏感な目の周囲に施術を行うまつ毛エクステンションは、今でも十分に注意して行う必要があることに変わりはないようです。
【国民生活センター・グラフ】

目を守るメイク対策②
まつ毛エクステンションは信頼のおける施設・技術者を選ぶ

まつ毛エクステンションによる健康被害の主な原因は、接着剤の成分が粗悪なことや、技術水準の低い施術者が施術を行うことにある、とされています。厚生労働省では、まつ毛エクステンションは美容師法に定められる「美容行為」であり、これを行えるのは美容師免許をもつものに限る、としていますが、実際には無免許者が施術をしている施設もまだまだ少なくないようです。

まつ毛エクステンションの施術を受けるときは、信頼のおける施設を選ぶとともに、担当の施術者が美容師免許をもっているかどうかを必ず確認しましょう。

また、まつ毛エクステンションは、自前のまつ毛とともに少しずつ抜け落ちていきます。
少しでも長持ちさせようという気持ちからか、なるべく目に触れないようにしていて、メイク落としが不十分になる人もいるようです。しかし、汚れが溜まればそれもトラブルの原因になりますから、注意してください。そして施術後に目に異常を感じたときは、早めに眼科医に相談しましょう。

板谷院長のひとことアドバイス

まちがったやり方でメイクを行うと、思わぬ目のトラブルにつながります。アイラインやマスカラをまつげの外側ではなく、生え際の内側にひいてしまうと、角膜に傷がついたり、粘膜が炎症したりします。また人工まつ毛を装着する「まつ毛エクステンション」でも接着剤によってアレルギー症状を起こすなどの健康被害が報告されています。おしゃれをする際にも十分気をつけて行いましょう。

まとめ

  • まつ毛の内側に施すアイメイクは、ドライアイなどのトラブルの原因になるので避けましょう。
  • マイボーム腺の詰まりによるドライアイの予防には、目を温めるのも効果的です。
  • まつ毛エクステンションは、信頼のおける施設で、美容師免許をもつ技術者による施術を受けるようにしましょう。

目についてお悩みは、はんがい眼科へどうぞ

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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