厳しい冬の寒さが一段落して春の暖かさを感じる季節になり、いよいよ年中行事のように襲ってくる花粉症のシーズンがやってきました。春の兆しが方々で芽吹きはじめるせっかくの楽しい時期ですが、毎年花粉症に悩まされている方にとっては憂鬱なことでしょう。日本眼科医会では早めの受診をすすめています。人それぞれで症状の強さや出方は違いますが、早めに対処するに越したことはないからです。なぜならば、花粉は大量飛散時期の前から少量は飛散しており、目がかゆいなどの自覚症状が出る前に、まぶたの裏側などでは、花粉に対するアレルギー反応はすでに始まっていることがあるからです。

すでに症状が出ている方も、かかりつけの眼科に相談するなどして対策を行いましょう。それでは、花粉症にまつわる目のトラブルについて詳しくご紹介します。

花粉性アレルギー性結膜炎はアレルギー性結膜炎の85%

目に起こるさまざまなアレルギー疾患を総称して、アレルギー性結膜疾患といいます。

通常、アレルギー性結膜炎は、アレルギー体質の人にアレルゲン(アレルギーの原因物質、花粉など)が付着すると起きます。そのなかで花粉症に見られる目のかゆみなどの症状を花粉性アレルギー性結膜炎といいます。アレルギー性結膜疾患のうち、花粉が原因となる結膜炎は推定で全体の約85%といわれ、わが国で約2,000万人のアレルギー性結膜炎の患者さんのうち大半は花粉症によるものと推測されています(日本眼科学会)。春に起こりやすい目のトラブルはほとんどが、花粉症が原因と言っても過言ではありません。

花粉性アレルギー性結膜炎は、その原因であるスギ花粉が飛散する2〜4月をメインに、ヒノキ花粉が飛散する3〜5月、ブタクサ花粉が飛散する6〜8月にも起こります。

目はアレルギー反応を起こしやすい

目の結膜は、直接外気に接しているため花粉が入りやすく、入ってきた花粉成分のうち、身体との反応を生じる抗原のたんぱく質が、涙液によって溶かされやすいのです。また、結膜にはアレルギー反応を起こす免疫細胞や、血管もたくさんあるため、身体から炎症を起こす細胞が入り込みやすいのです。
 

目のかゆみ、充血、涙は目の免疫反応

 アレルギー性結膜炎では、アレルゲンとIgE抗体という免疫グロブリンが抗原抗体反応を起こすと、15分程度で充血やかゆみなどの反応が出てきます。これを即時型(1型)アレルギーといいます。スギ花粉などのアレルゲンが目の表面に入ると、リンパ球からスギ花粉に反応するIgE抗体が作られ、マスト細胞(肥満細胞)と結びつきます。そしてさらにスギ花粉が入ることで、マスト細胞に結合したIgEと反応を起こし、マスト細胞のなかに情報が伝わります。そうするとマスト細胞からヒスタミンなどのケミカルメディエーターといわれるシグナル伝達物質が放出され、神経や血管に作用が及び、かゆみや充血が起こります。このようにして脳は「かゆみ」を認識します。そして、結膜や目やにのなかに好酸球という炎症細胞が出てくるのです。

アレルギー性結膜炎症例画像

自覚症状は目のかゆみ、異物感

アレルギー性結膜炎の自覚症状は、目のかゆみ、ごろごろする感じ(異物感)が主な症状で、涙や目やにが出る場合もあります。仕事や学校に通うことに支障をきたすほど強い症状が出ることもあります。眼球のかゆみは目そのもの以外にも瞼や瞼の淵などに現れやすく、かけばかくほど症状が強くなります。

目のごろごろ感は、アレルギーの反応によってまぶたの裏側の結膜に粒状の盛り上がり(乳頭)ができるためです。これが、まばたきする時に、黒目(角膜)と接触するとごろごろと不快感がおきます。ゴミが入ったような感じがして、黒目を傷つけてしまうこともあります。外から見てとれる症状には、結膜充血、結膜膨張、結膜瀘胞(なだらかなドーム上の隆起)、結膜乳頭(上皮の炎症性増殖)などがあります。
 

花粉性アレルギー性結膜炎の診断は簡単なアレルギーテストで

花粉性アレルギー性結膜炎の診断は、まず眼科医が、目のかゆみ、まぶたやまぶたの淵のかゆみ、ゴロゴロした異物感、涙などの自覚症状を問診します。その後に、アレルギーテストを行います。

アレルギーテストにはさまざま方法がありますが、近年は簡便な方法でおこなうケースが増えており、涙の採取と採血によるテストが主となります。一番シンプルなテストは、迅速診断キット『汎用検査用免疫グロブリンEキット』です。これにより涙液中の総IgE抗体を検査します。アレルギーであるかどうかのみを調べるテストで、 検査結果は10分程度でわかります。検査費用は400円(保険診療3割負担の場合)です。

『イムノファストキャップラピッド』は、花粉系とハウスダスト系のそれぞれ4種類計8種類のアレルゲンを調べる検査です。指先から少量採血して調べます。検査結果は20分程度でわかります。検査費用は3,000円(保険診療3割負担の場合)です。『MAST33』は、血液0.5mLを採取して、食物アレルゲン14種類、花粉アレルゲン9種類、環境アレルゲン4種類、その他のアレルゲン3類の計33種類のアレルゲンを調べます。検査結果は約1週間でわかります。検査費用は5,000円(保険診療3割負担の場合)です。他にもさまざまな検査があります。詳しくは、眼科に問い合わせてみてください。
 

花粉性アレルギー性結膜炎の治療法は?

花粉症は、基本的には対症療法で対処するしかありません。理想的なのは本格的な花粉の季節がやって来て、つらい症状が出る前に眼科を受診し、早めに予防的治療を行うことです。できれば花粉飛散予測日の2週間前、あるいは症状が少しでも現れたら抗アレルギー点眼薬の投与を開始しましょう。そうすれば花粉飛散ピーク時の症状を軽減できる可能性があります。とはいえ、時はすでに花粉症シーズン真っ只中。症状に苦しんでいる方は、今からでも遅くありません。早めにお近くの眼科で診察を受けてください。

抗アレルギー薬の投与

抗アレルギー薬は、かゆみなどを引き起こす指令を伝えるケミカルメディエーターが細胞から血液に出てこないように抑える薬で、眼科では主に点眼薬として処方されます。

抗アレルギー薬には、マスト細胞のなかにあるケミカルメディエーター(シグナル伝達物質)が結膜に散らばることを防ぐ、ケミカルメディエーター遊離抑制薬やヒスタミンが結膜の神経や血管と結びつくことを抑え、目のかゆみや充血を阻止するヒスタミンH1受容体拮抗薬があります。

抗アレルギー点眼薬は副作用が比較的少ないとされています。しかし、花粉の飛ぶ量が多い時や目の状態によっては、症状が治まらない場合もありますので、その時は、抗アレルギー薬を飲み薬として服用したり、ステロイド点眼薬を併用することもあります。

症状が強ければステロイド点眼薬を投与

症状が強ければ、ステロイド点眼薬を用います。ステロイド薬は適切に使用すれば効果がよく出る薬です。ステロイド薬には点眼薬、内服薬、眼軟膏、ステロイド懸濁液の瞼結膜下注射などがあります。

ただし、眼圧が高くなることがあり、緑内障などの副作用が現れる場合があります。したがって、使用する時には充分に注意する必要があります。2週間以上点眼薬を続けたい場合は定期的に眼科を受診して、眼圧の検査を受けると良いでしょう。眼圧が上昇している場合は、ただちに点眼を中止し、眼科医の指示にしたがってください。
 

減感作療法とは

抗アレルギー薬やステロイド薬の投与はアレルギー反応に対する対症療法といえますが、アレルギー反応そのものを抑えるという治療法もあり、これを減感作療法といいます。原因である抗原がアレルギーテストなどで判明した人に対して行われることがあります。抗原を低い濃度から少しずつ高い濃度まで時間をかけて皮下注射していく皮下免疫療法、毎日舌下に薬液や錠剤を置く舌下免疫療法、アレルギーのある食物を少しずつ摂っていく経口免疫療法があります。ただし、最低半年間、毎週通院しなければならないなど手間と時間のかかる治療法です。

花粉性アレルギー性結膜炎への対処法は?

花粉性アレルギー性結膜炎は、眼科での治療以外にも、日常生活でのセルフケアも重要となります。ここでは自己管理による対処法をご説明します。

花粉を洗い流すために目を洗ってもいい?

水道水などでごしごしと手で目を洗うことはおすすめできません。花粉を流す点では効果が期待できますが、目を傷つけてしまうことがあるためです。目を直接洗う場合は、防腐剤の入っていない人工涙液がおすすめです。目に入ってきたアレルゲンを洗い流すことができます。

防腐剤の入っていない点眼薬をおすすめする理由は、1日何回でも点眼できるからです。5cc以上の点眼薬は、容器のなかに雑菌が入ってしまうおそれがあるため低い濃度の防腐剤が入っています。1日何度も点眼する場合、防腐剤が眼の表面の細胞を傷つける可能性がありますが、防腐剤の入っていない使い捨てタイプの人工涙液が数種類あります。1本でも5〜6滴分は使えるため使い切ってしまうのがいいでしょう。

濡れタオルでまぶたを冷やすことや、目の周囲を洗うことは問題ありません。

花粉情報を積極的に入手してセルフケアを

日常におけるセルフケアでは、まず、花粉飛散予測などの情報を入手しましょう。インターネットで簡単に調べることができます。代表的なサイトは全国花粉情報(NPO花粉情報協会) 全国花粉飛散状況(環境省)があります。

次に、予防としてはできるだけ花粉と接しないようにすることです。ゴーグル型のメガネや花粉防止用のマスクでシャットアウトします。コンタクトレンズはかゆみで目をこすってしまうなど、症状を悪化させることがありますので装用せずに、この時期はメガネをかけた方がいいでしょう。

花粉が飛びやすい日は不用な外出を避け、洗濯物を外に干さないことも大切です。外出時は、ウールなど表面が毛羽立った服は花粉が付きやすいので、表面がすべりやすいツルツルした生地のものを着るようにするのがおすすめです。外出から帰ってきたら服や髪についた花粉を払い落としてから室内に入り、洗顔、うがい、鼻をかむことは忘れずにおこないましょう。

板谷院長のひとことアドバイス

花粉症は、基本的には対症療法で対処するしかありません。理想的なのは本格的な花粉シーズンがやってくる前に眼科を受診し、早めに予防的治療を行うことです。すでに花粉症の症状が出ている方も、できるだけ早くお近くの眼科で診察を受けてください。また、日常的なセルフケアも大切です。花粉飛散情報もこまめに収集して行きましょう。

まとめ

  • 目はアレルギーの影響を受けやすいため、花粉飛散の時期には症状が現れる前に早めの受診がおすすめです。
  • 予防的治療はもちろんですが、悪化したら眼科を受診して治療を受けましょう。
  • 日常におけるセルフケアも重要です。花粉情報を積極的に入手して対策を行いましょう。

目についてお悩みは、はんがい眼科へどうぞ

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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