近視や乱視の人にとって毎日コンタクトレンズのケアをしたり、取り替えたり、メガネをかけたりするのは面倒な上に、結構な負担ですね。コンタクトレンズやメガネなしで矯正をする方法にはレーシック手術がありますが、角膜を削るため、強度近視やもともと角膜が薄い方には適用となりません。

角膜を削ることなく、目の中にコンタクトのような眼内レンズを入れて近視や乱視を矯正する方法に「有水晶体眼内レンズ」という治療方法があります。「フェイキックIOL」ともいい、“水晶体を取り除かずに目の中にレンズを入れる”という意味になります。有水晶体眼内レンズには、角膜と虹彩の間(前房)にレンズを入れる「前房型有水晶体眼内レンズ」と、虹彩と水晶体の間(後房)に入れる「後房型有水晶体眼内レンズ」があります。

前房型、後房型、それぞれの特性と違いなどについて詳しくご紹介します。

有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)とは?

有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)とは、素材にコラーゲンなどが含まれた生体適合性の高い人工の眼内レンズを、目の中に入れて近視や乱視などを矯正する治療方法のこと。白内障の手術では、目の中でレンズの役割を果たす水晶体を取り除きますが、フェイキックIOLは水晶体を残したまま眼内レンズを入れます。
前房型、後房型という二つのタイプがあります。

前房型・後房型は何が違うの?

図をご覧いただくとおわかりのように、眼内レンズを入れる場所が、前房型と後房型では違います。前房型は、角膜と虹彩の間の「前房」と呼ばれる場所に入れます。後房型は、虹彩と水晶体の間の「後房」と呼ばれる場所に挿入します。後房型有水晶体眼内レンズのことを「ICL」と呼ぶこともあります。

前房型有水晶体眼内レンズは、白内障治療で使われるレンズと同じ素材、ポリメチルメタクリレート、あるいはシリコンなどが使われています。一方の後房型有水晶体レンズは、コラマーという素材からできており、マイナスに帯電しているためタンパク質や細菌などを寄せ付けにくく、炎症が起こりにくいとされています。

前房型・後房型は、どちらが優れているの?

後房型眼内レンズは、虹彩の内側に入れるという特性から、瞳孔機能への影響が少なく、角膜内皮障害のリスクが少ないというメリットがあります。角膜とは黒目のことで、角膜内皮細胞は、角膜を透明に保つために存在する非常に重要な組織です。角膜内皮細胞は一度障害されると再生しないため、細胞数が極端に少なくなると、角膜が濁ってしまう危険性があります。後房型レンズは、角膜内皮を傷つけるリスクがほとんどなく、さらにはレンズを入れていても、外見上はわかりません。

デメリットとしては、水晶体に近い場所に入れるため、術後に白内障を発症するリスクが高くなります。しかし、もし白内障になってしまった場合は、白内障の手術を受けて水晶体を眼内レンズに置き換えることで、近視・乱視・老視を矯正することができます。一方の前房型眼内レンズは、角膜からの距離が近いため、角膜内皮障害のリスクが高くなるというデメリットがあります。

レンズも進化しているの?

一世代前の後房型眼内レンズ(ICL)は、水晶体と虹彩の間にレンズを挿入するため、目の中で循環している「房水」という水の流れを阻害してしまい、眼圧が高くなるケースがありました。眼圧が高くなると緑内障を発症するリスクが上がるため、眼内レンズを挿入する前に、「周辺部虹彩切開術」といって虹彩に穴を空ける手術が必要でした。この手術により眼圧が高くならないように予防をしていたのです。

しかし現在のICLはレンズの真ん中に穴が開いており、房水の流れを阻害しない仕様に改良されています。これは北里大学眼科名誉教授の清水公也先生のグループが研究・開発したもの。この穴が開いたICLが登場したことで、緑内障はもちろん、白内障にもなりにくくなっています。そのため現在の有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)は、後房型眼内レンズ(ICL)が主流となっています。

有水晶体、眼内レンズに適した人・適していない人は?

適している方

・21歳から45歳くらいまでの方(18歳以上としている医療機関も)
・近視度数が-6D以上の強度近視の方(-15Dを超える場合は慎重適応)
・乱視の度数が4.5Dくらいまでの方
・前房型の場合は、前房の深さが2.8mm以上の方
・前房型の場合は、角膜内皮細胞の密度が規定以上の方

適していない方

・目に病気(白内障、緑内障、網膜疾患など)がある方
・散瞳不良の方(瞳孔を広げる目薬を差しても、瞳孔が十分に広がらない方)
・妊娠・授乳中の方
・重篤な全身疾患(糖尿病や膠原病など)がある方
・緑内障の発症リスクが高まると考えられる方
・格闘技やサッカーなど、頭部に強い衝撃を受けるスポーツをしている方

手術の方法は?

前房型の手術の流れ

以下のステップで手術をします。手術時間は片目でおよそ20~30分程度です。

①点眼薬の麻酔をする。
②白目と黒目の境界(強角膜)をレンズの大きさに切開する。
③眼内レンズを挿入する。
④眼内レンズを虹彩に固定する。
(⑤レンズの種類によっては切開した場所を縫い合わせる)

後房型の手術の流れ

以下のステップで手術をします。手術時間は片目でおよそ20分程度です。

①点眼薬で麻酔をする。
②白目と黒目の境目の角膜を数ミリ程度切開する。
③切開した場所から眼内レンズ(ICL) を挿入する。
④ICLを虹彩と水晶体の間に入れる。
⑤ICLの位置を調整する。

板谷院長のひとことアドバイス

コンタクトレンズやメガネなしで矯正をするレーシック手術は、角膜を削るため、強度近視や角膜が薄い方には適用となりません。角膜を削らず目の中にコンタクトのような眼内レンズを入れて近視や乱視を矯正する治療方法があります。近年は改良された「後房型有水晶体眼内レンズ」が主流となっており、緑内障や白内障にもなりにくくなっています。

まとめ

  • レーシック手術は強度近視や角膜が薄い方には適用となりません。角膜を削ることなく、眼の中に眼内レンズを入れて近視や乱視を矯正する方法に「有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)」という治療方法があります。
  • 眼内レンズを置く場所によって前房型と後房型があり、前房型は角膜と虹彩の間に、一方の後房型は、虹彩と水晶体の間に眼内レンズを挿入します。
  • 現在の後房型有水晶体眼内レンズ(ICL)はレンズの中央に小さな穴が開いていて、房水の循環を妨げないため、白内障や緑内障の発症リスクを低く抑えられます。

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執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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