目というのは、人体の中で唯一の透明な組織の集まりです。

他の大部分の組織には血液が流れていて色がついているのに対し、目の角膜や水晶体には一切の色がありません。
透明であることによって、光を目の奥まで届けることができるのです。

皮膚などの色のある組織では、このようなはたらきはできませんし、自然界の動植物のなかに、目以外で透明な生体組織を持っているものはほとんどおりません。
そう考えると、目というのはまさしく“奇跡の組織”であると言ってもいいかもしれませんね。

しかし様々な理由から、目は透明でなくなることがあります。

そうなることにより、“目がかすむ”という症状に悩まされるようになります。

“かすむ”と“ぼやける”は違います!

ところで、皆様は“目がかすむ”状態と“視界がぼやける”状態の違いをご存知でしょうか?

どちらも似たようなものと思う方もいらっしゃるかもしれません。
また、同じ症状に対して“かすむ”と言ったり“ぼやける”と表現したり、両方の表現をごちゃまぜに使ってしまいがちです。

ところが、正確には両者は全く違うものなのです。
光が網膜に届くまでに、角膜や水晶体などの透明な組織の障害物となり得る濁りや曇りなど、“すりガラスのようなもの”があれば目は“かすみ”ますが。一方で、組織が透明であるにもかかわらずピントが合わないために見えにくくなっているのは視界が“ぼやけ”ている状態です。

かすみ目はどこを見てもかすんで見えます。
ぼやけて見える場合は、遠くか近くのどこかにはっきり見える距離があればピントの問題、無ければ目の奧に問題がある可能性があります。

通常の見え方・かすみ目の症状・ぼやけ目の症状

目がかすむのは病気です

イメージしてみていただきたいのですが、メガネをかけたまま熱々のラーメンやうどんを食べると、メガネは白く曇りますね。
あるいは、冬の寒い日に部屋や車の中を暖房で暖めると次第に窓ガラスが白く曇ってきます。
それこそが“目がかすんでいる”のと同じような状態だと言えます。
また、視界がぼやけるというのは、近視や老眼の人がメガネやコンタクトレンズを外して物を見ている状況に似ています。

かすんで見えるのは病気があることを意味しますので眼科を受診しましょう。
ぼやける場合は、近視や乱視で対象物にピントが合っていなかったり、長時間のデスクワークでピントを合わせる機能が低下したり、老眼が進んだりしている場合が多いです。

これらは、メガネやコンタクトレンズで解決することが多いですが、そうでない場合は、やはり眼科を受診する必要があります。

目の乾きがかすみを引き起こす

さて、目がかすむのは、さまざまな原因が考えられます。

ドライアイ、コンタクトの長時間使用、はやり目(流行性角結膜炎‐りゅうこうせいかくけつまくえん)などですが、どれも角膜の問題として考えていいでしょう。

長時間のコンタクトレンズの使用や、エアコンなどによる空気の乾燥でドライアイになってしまうと、角膜が傷つきやすくなり、目のかすみを引き起こすのです。
角膜に細かい傷ができて、透明な部分がすりガラスのように曇ってしまい、視界がかすんで見えるというわけですね。

また、はやり目はアデノウイルスというウイルスの感染が原因となる病気で、角膜に点状の濁りが現れます。
3週間ほどで自然に治る病気ではありますが、目をこすると余計に角膜を傷つけてしまうので、目はこすらずに眼科医の指導に従いましょう。

これらの症状は軽ければ、一時的な目のかすみとして認識していただいて構いませんが、重症化しないよう注意が必要です。

ドライアイの目薬をさす女性

涙は臓器!涙の膜が壊れれば目はかすむ

ちなみに余談ですが、陸上動物になって以来、角膜は空気と触れ合うようになりました。
この角膜を乾燥から保護する役割として涙が生まれたのです。
涙は、目にとって機能を維持するための大切な液体組織なのです。

目の重要な臓器のひとつと認識してもいいくらいです。
「血も涙もない」という慣用句がありますが、言いえて妙な表現で、実は涙は角膜の血液なのです。

血液が身体中に酸素や栄養を届けているように、涙は角膜表面の細胞へ、酸素や栄養、免疫機能を届けているのです。

ドライアイなどは、この涙の機能が損なわれた病気と言えます。
涙の膜がまばたきの直後から壊れてしまうために、角膜表面の細胞が早死にして傷ついたり、感染症を防げなくなって、さまざま眼病を誘発することになるのです。

そして、涙の膜が早く壊れてしまうとなんとなくかすんだ感じになりますし、角膜表面の細胞が広く早死にするとかすんで見える原因になります。

目がかすんできたと思ったら、眼科で検査をしましょう

白内障もまた、透明な組織が濁る眼病です。
白内障の場合は、角膜ではなく水晶体が濁ることによってさまざまな症状が現れます。
その一つが、“目がかすむ”というものです。
水晶体が濁ることにより光がうまく透過せず、網膜にはっきりとした像を結べないために視野全体がかすんでしまうのです。

角膜と水晶体のほか、前房(ぜんぼう)、硝子体(しょうしたい)を加えた4つの組織が、目を構成する透明体です。

目がかすむ原因はこれら4つの組織のどこかが濁ることにありますが、どこに濁りが生じているのかは眼科で検査を受けなければわかりません。
「最近、目がかすむような気がするな」という方は、一度眼科で検査を受けましょう。

目の検査を受ける女性

危険な病気のサインを見逃さないでください

白内障による眼のかすみはゆっくり進みます。

ところが、かすみ目だと思っていたら急に視力が下がる場合、白内障以外に緑内障(りょくないしょう)、網膜剥離(もうまくはくり)、加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)、硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)、網膜静脈閉塞症(もうまくじょうみゃくへいそくしょう)、網膜動脈閉塞症(もうまくどうみゃくへいそくしょう)などの目の奧の病気の可能性を考えなければなりません。

これらの眼病は白内障と同様に高齢者に多い病気であるため白内障のある目に起きることが多いのです。
失明を引き起こすリスクのある、決して侮ってはいけない病気です。
ご自身の目に何が起きているのかを判断するため、“目がかすむ”という症状を引き起こす眼病について、指標となる症状の例を挙げておくことにします。

緑内障

緑内障はどんどん視野が狭くなっていき視力が低下してしまう病気です。
視神経に傷がついて視野が狭くなる状態を、かすむと感じる場合があります。
急性緑内障発作の場合は急激に眼圧が上昇するため、目のかすみの他に目の痛み、頭痛、充血、吐き気などを伴います。

加齢黄斑変性

加齢黄斑変性は、網膜の中心にある黄斑が、加齢などによりダメージを受け変形することにより光の信号を正確に脳に送れなくなってしまいます。
そのため、視野の中心部が見えない(暗い)、ものが歪んで見えるなどの症状とともに急激な視力の低下を引き起こします。

網膜剥離

網膜剥離では、黄斑部まで網膜剥離が広がると視界がぼやけたり、ゆがんだり、かすんだりして、視力が失われていきます。

ぶどう膜炎

また、目のかすみで注意しなければならない病気の中にはぶどう膜炎というものもあります。
これは目に入る光を調節する働きをしている虹彩やぶどう膜に、さまざまな原因で炎症が起きる病気です。
炎症が起きると体内の余計な成分を目の中に通さない役割を持つ血液眼関門が壊れ、ほとんどが水分からなる前房と硝子体に、炎症した細胞や血液の成分が入り込んで濁らせてしまいます。
これがぶどう膜炎における目のかすみの原因です。飛蚊症(ひぶんしょう)や視力低下、充血、目の痛みなど様々な別の症状を併発することも少なくありません。

目薬で治るタイプから、ステロイドの全身投与や特殊な薬物治療などが必要な重症例のものまでさまざまです。

糖尿病

糖尿病を患っている方の場合は、網膜の毛細血管が変形したりつまったりして黄斑がむくんだり、目の中で出血したりして視力が低下する、糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)になる場合もあります。

このような目の奧の変化をかすむと感じることがあります。
糖尿病の方は白内障が比較的早く進みますので、かすみの原因が白内障である場合もあります。

ここまでみてきたように、うったえている症状としては、どれも「目がかすむ」に違いはなくとも、その症状の進行速度やその他に併発している症状により、考えられる病名は全く違ってきます。
単に疲れによる症状の場合ならば点眼や目を休めることで治ります。
しかし、重大な目の病気である場合、対処法を誤ると失明に繋がる危険のあるものもたくさんあります。
少しでもおかしいと感じたら、自己判断ではなく必ず眼科で相談してください。

「目のかすみ」まとめ

  • かすみが一時的な場合、疲れ目やドライアイの可能性が考えられます
  • 徐々に見えにくくなってきた場合は、老眼や白内障の疑いがあります
  • 急激に視力が低下する場合は緑内障、加齢黄斑変性、網膜剥離など、重大な目の病気かもしれません