本記事は、2020年4月20日に再更新いたしました。

最近、ものを見るときに30センチくらい離さないと見えないことはありませんか? 目の前から指を離していって、30センチ以上遠ざけないと指紋がハッキリ見えない場合は老眼が始まっているのかもしれません。

老眼は老視ともいいます。40歳前後から始まる目の老化現象の一つで、ピントを調節する力が衰えてきます。時期の遅い早いには多少の個人差があります。

最近はスマートフォン(以下、スマホ)を使いすぎて若い方でも老眼のような状態になっている方がいます。スマホ老眼と呼ばれる症状ですが、これはスマホの使い方を変えたり、目を休めたりすることで症状は緩和されます。

早くから老眼鏡をかけると老眼がさらに進むという都市伝説がありますが、これは正しくありません。

老眼はどういうメカニズムで起こるのか、どう対処したらいいのかなどを詳しくご紹介します。

こんな症状があれば老眼かも……

指の指紋、30センチ以上離さないと見えない場合は老眼かも……

「字が小さくて読めない!」と俳優さんが叫ぶCMがありますが、老眼の症状には「近くの小さな文字が読みづらい」「近くから遠くへなど、距離をかえるとピント合わせに時間がかかる」「少し暗いところでは文字が読みづらい」などの症状があります。

私って老眼? セルフチェック方法

老眼かどうかの一番簡単なセルフチェックは、自分の指の指紋を何センチ離せばハッキリ見えるか? を測る方法です。下のイラストのように目のすぐ前に指の腹をかざし、徐々に離していきます。

【老眼のセルフチェック】これで30センチ以上指を離さないと指紋が見えない場合は、老眼が始まっているかもしれません。

ピントが合う距離は、年齢とともに遠くなる

後ほど仕組みをご説明しますが、歳を取るに従い対象物を離さないとピントが合いづらくなります。近視の方は近くにピントが合っているわけですが、メガネやコンタクトレンズで遠くにピントを合わせると、同様に近くのピントが合わなくなってくるのです。だいたい5歳ごとに、ピントが合う距離が少しずつ遠くなっていくのがわかります(こちらの表はあくまで目安であり、早い方では30代後半、遅い方でも50歳前後で老眼の症状が現れ始めます)。

【老眼の進み具合】

老眼はどうして起こるの?

近くのものを見るとき、水晶体が
スムーズに厚くならないのが老眼

目では、角膜と水晶体が、カメラのレンズの役割を果たしています。角膜は目の光を曲げて網膜に集光させる働きの3分の2を行っています。残り3分の1は水晶体が担当します。水晶体が角膜と違うのは、遠くを見るときには水晶体を薄くし、近くを見るときには水晶体を厚く調整して、光を曲げる力(屈折力)を変化させてピントを合わせているところです。

この水晶体の厚さを変えているのが水晶体のまわりを土星の環のように取り巻いている「毛様体筋」というリング状の筋肉です。このリングはチン小帯という細い無数の線維で水晶体とつながっています。近くを見ようとして毛様体筋が緊張すると、このリングが小さくなりチン小帯がたるみます。水晶体は本来丸みを帯びたかたちをしており、チン小帯からの力が減ると丸くなろうとして厚くなり屈折力が高まります。逆に遠くを見ようとすると毛様体筋が緩んでリングは大きくなり、チン小帯はピーンと緊張して水晶体を引っ張り、水晶体の厚みが減り屈折力が小さくなります。このダイナミックな働きが、加齢により毛様体筋の筋力低下と水晶体の柔軟性の低下が相まって低下していく、これが老眼のメカニズムです。

【水晶体によるピント調節】近くのものを見ているとき、毛様体筋は、かなり頑張っている!

よく「1時間に10〜15分程度は遠くを見て目をリラックスさせましょう!」と言われます。これは、近くを見ているとき目の毛様体がギューッと緊張して水晶体を厚くしている状態なので、近くのものばかりを見ていると毛様体筋が疲れてしまうからなのです。

反対に遠くを見ているときは、水晶体を厚くしなくてもいい(元の厚みのままでいい)ので、毛様体はお休みできます。

スマートフォンの使いすぎはよくないの?

スマートフォンを長時間使いすぎると
若くても老眼のような症状が出ることも……

電車に乗ると、若い方達が10〜15センチという至近距離でスマホを見ている光景を見かけます。

iPhoneが登場した2008年以来、爆発的な勢いでスマホが普及しています。それに伴い、20〜30代の若い方たちに、「手元が見にくい」「夕方になるとピントが合いづらい、目がかすむ」など老眼のような症状を訴える方が増えています。

これは、スマホなどのスクリーンを長時間見続けることによるいわゆる「スマホ老眼」といわれる症状です。前述したように、近くのものを見るとき目は毛様体筋が緊張して水晶体を厚くしています。あまりにも長時間近くを見ていると毛様体筋が疲れてしまい、ピント調節がスムーズにできなくなるためと考えられています。

携帯が普及する前は、例えば電車の中でも車窓を見たり、広告を見たり、車内を見たりしていたと思います。漫画や雑誌を読む人もいましたがスマホほど毎日長時間では無かったと思います。スマホの普及は、すっかり生活の光景を変えました。それに合わせて多くの人の調節力(毛様体筋)に高い負荷がかかっているのです。

しかし加齢による本物の老眼とは異なり、目を休めたり、スマホの使い方を工夫したりすることで症状は改善します。

目を疲れにくくするスマホの使い方

  • スマホを見るときは、目から40センチ以上離して見る
  • できるだけ大きなスクリーンのものを使い、文字はできるだけ大きくして見る
  • 画面が明るすぎると目が疲れやすいので輝度は抑えめに
  • スマホを使っているときは瞬きが少なくなりがちなので、意識して瞬きをする
  • 暗いところでスマホを使うと瞳孔が開いて目が疲れやすいので、明るい場所で使用する
  • 時々スマホ画面から目を離して周りや車窓を見る。1時間に計10分程度
  • 家では、スクリーンの大きなタブレット端末やパソコンなどを使う
  • 老眼鏡はいつから使えばいいの?

    40歳前後で老眼を感じ始めたら
    すぐに老眼鏡を使おう!

    40歳を超えると近くのものが見にくい、小さな文字が読みづらいなど、老眼の症状を感じ始める方が多くなります。 「老眼鏡をすぐに使うと老眼の進みが早くなる」「老眼鏡はできるだけがまんした方が目が鍛えられる」などと都市伝説のように言われていますが、これらは間違っています。

    目は歳を取ると、毛様体筋の筋力が低下し、水晶体も硬くなってきます。この状態でがまんしてものを見ていると、目には大きな負担がかかることで目がさらに疲れやすくなり、肩こりや頭痛などの症状が併発しやすくなります。

    老眼鏡は、海外では読書や書類などを読むときのメガネという意味で“リーディンググラス”と呼ばれています。老眼鏡というネーミングからネガティブなイメージを抱くのかもしれませんが、老眼の症状を感じる際には我慢せず老眼鏡を使うようにしましょう。

    【年齢別】一般的な老眼度数の目安(正視の場合、参考値)

    40〜48歳 ・・・ +1.00
    45〜53歳 ・・・ +1.50
    50〜58歳 ・・・ +2.00
    55〜63歳 ・・・ +2.50
    60歳以上 ・・・ +3.00

    近視の方は老眼にならないの?

    近視の方も老眼になります
    自分にあった方法で矯正を

    老眼は、調節力の低下が起こす症状ですから、近視の方も老眼になります。ただ、中等度の近視の方は、もともと近くにピントが合っていますので、メガネをかけない裸眼では近くはよく見えます。しかし、裸眼では遠くがぼやけますので、メガネやコンタクトレンズで近視矯正して遠くが見えるようにしています。近視矯正しているとき、やはり老眼で近くが見えにくくなっていくのです。では近視の方が老眼になったら、どう対処したらいいのでしょうか。

    近視でメガネをかけている方

    ・メガネの度数を落とす(初期限定)
     老眼が軽い間は、メガネの度数を弱めにして遠くの視力を0.8程度にすれば、手元にまで調節が働き見やすくなります。
    ・遠近両用のメガネにする

    近視でコンタクトを使っている方

    ・度数がぴったりのコンタクトレンズに老眼鏡をかける
    ・コンタクトレンズの度数を落とす
    (度数を落とすと手元を見るのが楽になります)
    ・遠近両用のコンタクトレンズを使用する

    白内障が出てきたら多焦点眼内レンズで老眼を治す

    老眼は加齢とともに強くなっていきます。一般に、40歳頃から始まり、ゆっくりと進んで60歳頃になると老眼は完成します。ちょうどその頃には、白内障の症状も出始める方が多いのです。白内障も、ある日突然始まるのではなく、やはり40歳頃から徐々に水晶体の変化が進み濁り始めます。軽度の濁りは視力には影響しません。白内障が進むとまぶしく感じたり、かすんだり、薄暗いところで見えにくくなったりと症状が現れます。症状が自覚され始める年齢が一般的に60歳~70歳あたりが多いのです。つまり、老眼も白内障も、ともに水晶体の老化による機能の劣化なのです。しかし、気を落とす必要はありません。白内障手術と眼内レンズの進歩により、安全・短時間の手術で白内障だけではなく老眼まで治せる時代に入ったのです。すなわち、多焦点眼内レンズを用いる白内障手術です。多焦点眼内レンズは適応やレンズの選択や手術手技に気をつけないといけないところが多々ありますが、正確な手術とマッチングにより、快適な見え方を取り戻すことができるのです。

    【多焦点眼内レンズの一例】

    板谷理事長のひとことアドバイス

    老眼は誰しも訪れるピントを合わせる力の低下です。徐々に進んでいきますので、不便ながらも程度に応じてメガネやコンタクトレンズで調節力の低下を補います。老眼も白内障も40歳以降にゆっくり進む水晶体の機能低下と捉えることができます。症状が進み生活や仕事に支障がでてきたら白内障手術で水晶体を透明に戻すことができます。多焦点眼内レンズを用いれば老眼もかなり解消します。

    まとめ

    • 老眼は、加齢に伴い進む目の調節機能の低下です。早い方で30代後半、遅くとも50前後で全員に起こります。
    • 老眼は、目のレンズである水晶体を支える毛様体筋の筋力低下と水晶体が硬くなることで生じる調節力(調節機能)の低下により起こります。
    • 物を見るときに30センチ以上離さないと焦点が合わない場合は老眼かもしれません。
    • 小さい文字が読みにくい、暗いところで見にくいなどの症状が現れます。
    • スマホを長時間使うなどして調節力が低下すると、若くても老眼のような症状が出ることもあります(スマホ老眼)が、十分目を休ませると改善します。
    • 老眼を感じたら早めに老眼鏡を使いましょう。
    • 老眼も白内障も、ともに水晶体の加齢による機能低下です。白内障手術により透明性が回復し、多焦点眼内レンズを選べば「調節力」が取り戻せます。

    執筆者プロフィール

    医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

    京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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