近年、子どもの近視が著しく増加しているといわれています。実際、文部科学省が公表している「学校保健統計調査」(平成29年度)によると、裸眼視力が1.0未満の割合は小学校で32.4%、中学校で56.3%と、過去最高となっています。幼稚園でさえ24.4%、高校になると62.3%と6割以上の子どもが1.0以下という結果になっています。これらの視力低下の原因の多くは、近視によるものなのです。
最新の研究では、近視は遺伝的背景に加え8〜15歳(学童期といいます)ぐらいまでに近くのものばかり見ていると、目の奥行き(眼軸長)が伸びすぎてしまい、近視が進んでしまうことがわかっています(「親なら知っておきたい子どもを「近視」や「弱視」から守る方法」の記事も参考にされてください)。
近視の予防には、スポーツや外遊びが有効であるとわかっています。1日に2時間程度の野外活動が、近視の進行を13%抑制するという研究データもあります。
お子さんの目を近視にしないために何ができるのか、最新の研究結果をまじえて詳しくご紹介します。

子どもの目が近視になるのは眼球が成長しすぎたせい!?

子どもの体は、身長や体重も日々成長していますが、実は眼球もどんどん大きく成長しています。
目の奥行き(「眼軸長;がんじくちょう」といいます)は、標準では14〜15歳で23〜24ミリ程度まで大きくなり、成人と同じサイズになるとされています。

眼軸長:角膜から眼底の網膜までの直線の長さのこと

この眼軸長が、下記の図のように標準を超えて長くなりすぎると、網膜の手前で像が結ばれてしまい、近視になってしまうのです(「親なら知っておきたい子どもを「近視」や「弱視」から守る方法」の記事で詳しくご説明しています)。

近視とは、成長期に眼軸長が伸びすぎた目のことです

8~15歳頃に近くのものばかり見ていると近視に!

人の目は、眼軸長が短い遠視の状態で生まれてきます。眼球が小さいので焦点が網膜の後ろにある状態です。そこから身体が成長していく途上で、眼軸長が伸びて後ろにあった焦点が網膜面に近づいていきます。
ところが、眼軸長が伸びすぎると焦点が網膜面を越えて前に行きすぎてしまうため近視になります。通常、近くのものを見ると焦点は遠くを見たときよりも後ろに焦点が来ます。このため、近くのものばかりを見る生活をしていると、正視(遠くの像の焦点が網膜面に合う状態)でも焦点が網膜面より後ろにあるため、そのズレた後方の焦点を追うように眼球も後ろ方向に成長してしまうのです。
特に8歳から15歳頃にかけての学童期に近くのものばかりを見ていると、眼軸長が異常に伸びて近視になりやすいことがわかっています。目が近くのものばかりを見る生活に適応しようとするからだと考えられます。

また遺伝も多少影響すると考えられていて、両親、あるいは片方の親のみが近視の場合には、両親が近視でない場合に比べて眼軸長が長くなりやすいとされています。実際、両親のうち1人が近視だと、子は2.7倍近視になりやすいことがわかっています。
しかし遺伝の影響は部分的で、次でご紹介する取り組みをしていただくことで、お子さんの近視の進行を抑制することができるのです。

【近視の予防法①】屋外活動(外遊び)を増やす!

8〜15歳頃に近くのものばかり見ている、つまり部屋の中での活動ばかりしていると近視になりやすいのですが、屋外での活動、つまり外遊びの時間を増やすことで近視になる確率がぐっと低くなることがわかっています。

外で遊ぶ時間が1週間で10時間以上になると、たとえ両親ともに近視でも、近視になる確率がかなり低下します。さらに週14時間以上になると、片方の親のみ近視の子どもが近視になる確率と、ほぼ同じになります。
つまり、1日2時間程度外遊びをすることで、親が近視という遺伝的背景があっても、近視の進行が抑制できる可能性があります。
一度伸びてしまった眼軸長はもとに戻ることはありません。しかし外遊びを積極的にすることで眼軸長の過剰な成長を抑制することができ、お子さんの目を近視から守ることができるのです!
(※データは「Parental history of myopia, sports and outdoor activities, and future myopia.」(PubMed.2007 Aug;48(8):3524-32.)より引用)

屋外で遊ぶことで子どもの近視を防ぐことができます

【近視の予防法②】太陽光を浴びることが大切!

お子さんによっては、室内でするスポーツなどをしている方も多いと思います。もちろん室内スポーツでも、特に球技の場合は、ボールを追って遠くを見たり、近くを見たりしますから、近視を予防することにつながります。
しかし近視を予防するために良いのは、太陽光を浴びて外遊びをすることなのです。まだ正確にはわかっていませんが、どうやら太陽の光を浴びることでドーパミン(神経伝達物質)がたくさん産生されたり、EGFR1という受容体が活性化されたりして、それが近視を抑制する遺伝子に働きかけるのでは?と考えられるようになってきました。
1日に2.8時間以上屋外活動をしている児童は、近見作業の長さにかかわらず、近視リスクが抑制されていたという研究報告もああります。
 
近視の抑制だけでなく、健やかな心身の発達のためにも、毎日2時間程度は外遊びをしてお日さまの光を浴びてほしいですね。

【近視の予防法③】読書や勉強は、30センチ以上離して!

近くのものを見てばかりだと、眼軸長が伸びすぎてしまい近視が進むことを繰り返しお話ししてきましたが、では読書や勉強の際には、どういった点に気をつけたらいいのでしょうか。
読書する際、30センチ以内の距離に本を近づけて読むと2.5倍、30分以上継続して読書をすると1.5倍、近視になりやすいとされています。
本を読んだり勉強したりする際には30センチ以上離す、30~60分読んだら10分程度は休憩するなどを心がけてください。

近視は目の万病の元?失明や眼底疾患のリスクも高める

親御さんの中にも近視の方は少なくないと思われますが、「近視はメガネやコンタクトレンズで矯正すれば、日常生活は問題ないんじゃない? 多少不便だけど……」と考える方はいらっしゃるかもしれません。でもそう考えるのは早計です。実は近視は、近視の度数が強くなればなるほど、失明原因になる緑内障や黄斑疾患や網膜剥離のリスクを高める要因になってしまうのです。
レンズの度数は、D(ディオプター)という単位で表します。近視の方が装用するレンズは-4.5D(マイナス4.5ディオプター)などと表しますが、この数字が大きくなるほど、近視が強いということになります。
最近の研究では、近視が1D進むごとに、網膜剥離(もうまくはくり)や緑内障、黄斑変性などの発症リスクが増えるとされています。
そのためお子さんが近視になることは、遠くのものが見えにくい、メガネやコンタクトレンズが常に必要という不便さ以上のリスクを、未来あるお子さんに課してしまうことになるのです。
この記事を参考に、ぜひともお子さんの近視予防に取り組んでいただけたらと思います。

近視により生じるリスクなどについて、強度近視の記事で詳しくご説明していますので、よろしければご一読ください。

子どもの目を近視にしないために、家庭でできる5つのこと

子どもの目の成長の記事でもご紹介しましたが、お子さんを近視にしないために、近視をこれ以上進行させないために、以下のことに気をつけてください。

①毎日、屋外での活動をしましょう(太陽光を浴びる)。
②スポーツ、散歩、遊びなど、1日に2時間程度、遠くのものを見る機会をできるだけ作りましょう。
(ボール遊びなど、遠くと近くをバランスよく見るような活動が特におすすめです)
③テレビは、なるべく大きな画面のものを選び、1メートル以上離れて観ましょう。
④読書や勉強は、30センチ以上離してするようにしましょう。
⑤スマホやゲーム機などは、1日30分など時間を決めましょう。「子どもが泣きやむから……」などの理由で与えっ放しにしないようにしたいところです。

板谷院長のひとことアドバイス

近視は視力が落ちるだけでなく、進行して強度近視になるとさまざまな目の病気になりやすくなります。近視の進行を防ぐためにも、子どもを屋外で活動させ、身体と目が健やかに育つよう心がけましょう。

まとめ

  • 目の奥行き(眼軸長)が伸びすぎると近視になります。
  • 特に8〜15歳頃の学童期に近くのものばかり見ていると、眼軸長が必要以上に伸びて近視が進んでしまいます。
  • 近視を防ぐには、毎日2時間程度はスポーツや遊びなど、屋外での作業を意識して取り入れると効果的です。
  • 太陽光を毎日浴びることで、ドーパミンなどの脳内因子が活性化され、近視を抑制する遺伝子に働きかける可能性があるので、屋内での運動より屋外のほうが望ましいといえます。
  • 読書や勉強時には、30センチ以上離すようにしましょう。また、1時間毎に10分程度は休憩をしましょう。
  • 近視は、度数が上がるに従い緑内障、黄斑疾患、網膜剥離など失明のリスクのある目の病気のリスクが高くなります。

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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