本記事は、2020年2月4日に再更新いたしました。

目や脳をいくら検査しても何も異常がみつからないのに、目に不調が現れるという経験をされたことはないでしょうか。多く見られる症状としては、視力低下、視界がゆがんで見える、まぶたが垂れ下がるなどがあります。

実はこれらの症状は、ストレスなど心因性のものが原因の場合があります。ストレスなどで体にさまざまな症状が現れるのと同じように、目にも心因的な症状が出ることがあるのです。これを「眼心身症」と呼ぶこともあります。

目の心身症は、心の発達段階にある子どもでは日常的に出会います。目の心身症について詳しく見ていきます。

心身症とは、ストレスなどが原因で体に症状が起きてくる病気のこと

東洋医学では心の働きと体の働きは一体であり、つながっているということを表現するのに、「心身一如(しんしんいちにょ)」という言葉があります。

大きなストレスが体にかかると、心臓がドキドキしたり、汗をかいたり、喉に何かがつまっている感じがしたり、といった経験をされたことがある方は多いかもしれません。その他にも、胃潰瘍や蕁麻疹(じんましん)、耳鳴り、片頭痛といった症状もよく見られます。このように、心理的あるいは社会的なストレスにより、体のどこかに症状が起きてくる病気のことを心身症と呼びます。

多いのは視力の低下。メガネをかけても視力が矯正できない

目も同じで、ストレスが原因で目になんらかの症状が現れるものを「目の心身症」と呼びます。

主な症状には、まぶたのけいれん(眼瞼痙攣:がんけんけいれん)、眼精疲労、チック、心因性の夜盲(暗いところでものが見えにくい)、心因性の斜視、心因性の視覚障害などがあります。

なかでもいちばん多いのは視力の低下です。メガネやコンタクトレンズの度数をあげても視力の矯正が行えません。

その他、色が見分けにくい、視界がゆがんで見える、大きさが違って見える、視野の中心部しか見えなくなるという症状を訴える方もいます。

私たちは目でものを見ていると思っていますが、実は目から入った像は電気信号として脳に伝わり、脳で信号の処理をしてものを見ているのです。脳にストレスがかかると、目にものは見えているのに、ものが認識できないことがあります。これが心因性の視力障害の原因です。

【ストレスで眼精疲労になりやすくなります】

実は、子どもにも生じる目の心身症。8〜12歳の女の子に多い

最近は、視力検査で矯正をしても視力が良くならない小学生や中学生が増えています。学校の定期健康診断(視力測定)で視力が低下していることで発見されることが多くなっています。発症年齢は8〜12歳ごろがピークで、女子は男子の3〜4倍多く見られます。

視力障害の度合いは0.4〜0.6と比較的軽いことが多く、半数以上の子どもは自分の視力が低下していることに気づいていないことが多いかもしれません。

学校から健診結果の通知をもらい、慌ててメガネを作りに行ってもメガネでは十分な視力矯正ができず、眼科受診を勧められることが大半です。しかし視神経や網膜などの検査をしても、異常がみつかりません。慣れた視能訓練士が、プラスとマイナスのレンズを組み合わせて、メガネの度数を0にして視力を測定するトリック検査を行うと視力がでることがあります。この場合も心因性視力障害を疑います。

自分では処理できない葛藤やストレス。欲求不満などを訴えていることも

原因となるストレスは、受験、お友達とのトラブル、クラス替え、両親の不仲、虐待、過度な塾通いや習い事などさまざまです。具体的な問題が見当たらないこともあります。

お子さんのタイプとしては、自己主張をあまりせず、我慢強く、親の期待に応えようとがんばってしまうような、生真面目な性格が多いかもしれません。

目にトラブルが現れ、目や脳の検査をしても原因がわからない場合には、心の不調やストレスが原因かもしれないと考えてみることが大切です。特に、教科書を読もうとすると字が見づらくなる、試験になると視力が低下する、月曜日の朝はものがかすんで見えるなどの症状があれば、心の不調を疑ってみる必要があります。

心の不調につながっている原因を解決すれば、ほとんどのケースでは、3カ月程度で視力が回復します。しかし、子供の場合は、簡単には解決できないことも多く、学校の担任の先生などと連絡をとりながら、長期的に経過をみることも必要です。視力が悪くなる原因となる病気が目には無いわけですので、心配しすぎないことも大切です。子どものある時期におこる一時的な現象と考えましょう。

心因性視力障害には、点眼薬が効果のあるときもあります。治療を受けている安心感がプラスに働くものと考えられます。またメガネ願望の子どもには、”度のないメガネ”を一時的にかけてもらうこともあります。

心因性視力障害で本当に視力が悪くなることは無く、診断されてから1年以内に視力が改善することがほとんどです。中学生など年齢が高くなると、心因が複雑になり、治療が困難な場合もときにはあり、小児科専門医や精神神経科医の治療が必要なこともあります。

目以外の症状が合併するときは、ほかの科の検査や治療が必要となることもあります。

板谷理事長のひとことアドバイス

目の心身症は、大人でも起こりますが、特に子どもに増えています。お子さんの場合は、学童検診で矯正視力が出ないことで発見されます。網膜や視神経に異常が無く心因性のものと診断されたら、なんらかのストレスがあるサインと理解し、担任や主治医と相談しながら、心配しすぎずに成長を見守りましょう。

まとめ

  • 心理的・社会的なストレスにより、目に症状が現れるものを「目の心身症」といいます
  • 目や脳の検査をしてみても、原因が見つかりません
  • 多く見られる症状としては、視力低下、まぶたのけいれん、チック、暗いところでものが見えにくい、色が見分けにくい、視野が狭いなどです
  • 子どもの目の心身症が最近、増えています
  • お子さんがメガネをかけても視力の矯正ができないときは、心身症を疑ってみる必要があります
  • 親はあせらず、お子さんにストレスがあることを理解して、学校や小児科医と連携して見守りましょう

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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