目や脳をいくら検査しても何も異常がみつからないのに、目に不調が現れるという経験をされたことはないでしょうか。多く見られる症状としては、視力低下、視界が歪んで見える、まぶたが垂れ下がるなどがあります。
実はこれらの症状は、ストレスなど心因性のものが原因の場合があります。ストレスなどで体にさまざまな症状が現れるのと同じように、目にも心因的な症状が出ることがあるのです。これを「目の心身症」や「眼心身症」などと呼びます。
また大人だけでなく、子どもにも目の心身症はよく見られるので、脳や目に異常は見られないのに視力低下などの訴えがある場合には、目の心身症が疑われます。では、目の心身症について詳しく見ていきます。

心身症とは、ストレスなどが原因で体に症状が起きてくる病気のこと

東洋医学では心の働きと体の働きは一体であり、つながっているということを表現するのに、「心身一如(しんしんいちにょ)」という言葉があります。
大きなストレスが体にかかると、心臓がドキドキしたり、汗をかいたり、喉に何かがつまっている感じがしたり、といった経験をされたことがある方は多いかもしれません。その他にも、胃潰瘍や蕁麻疹(じんましん)、耳鳴り、片頭痛といった症状もよく見られます。このように、心理的あるいは社会的なストレスにより、体のどこかに症状が起きてくる病気のことを心身症と呼びます。

多いのは視力の低下。メガネをかけても視力が矯正できない

目も同じで、ストレスが原因で目に何らかの症状が現れるものを「目の心身症」と呼びます。
主な症状には、まぶたのけいれん(眼瞼痙攣:がんけんけいれん)、眼精疲労、チック、心因性の夜盲(暗いところでものが見えにくい)、心因性の斜視、心因性の視覚障害などがあります。
なかでもいちばん多いのは視力の低下です。メガネやコンタクトレンズの度数をあげても視力の矯正が行えません。
その他、色が見分けにくい、ものが歪んで見える、大きさが違って見える、視野の中心部しか見えなくなるという症状を訴える方もいます。
私たちは目でものを見ていると思っていますが、実は目から入った像は電気信号として脳に伝わり、脳で信号の処理をしてものを見ているのです。脳にストレスがかかると、目にものは見えているのに、ものが認識できないことがあります。これが心因性の視力障害の原因です。

【ストレスで眼精疲労になりやすくなります】

実は、子どもにも生じる目の心身症。8〜12歳の女の子に多い

最近は、メガネをかけても視力が良くならない小学生や中学生が増えています。学校の定期健康診断(視力測定)で視力が低下していることで発見されることが多くなっています。発症年齢は8〜12歳ごろがピークで、女子は男子の3〜4倍多く見られます。
視力障害の度合いは0.4〜0.6と比較的軽いことが多く、半数以上の子どもは自分の視力が低下していることに気づいていないことが多いかもしれません。
学校から健診結果の通知をもらい、慌ててメガネを作りに行ってもメガネでは十分な視力矯正ができず、眼科受診を勧められることが大半です。しかし視神経や網膜などの検査をしても、異常がみつかりません。

【横目で見るなど、変わったものの見方をする子は、心身症が原因のこともあります。】

自分では処理できない葛藤やストレス。欲求不満などを訴えていることも

原因となるストレスは、受験、お友達とのトラブル、クラス替え、両親の不仲、虐待、過度な塾通いや習い事などさまざまです。
お子さんのタイプとしては、自己主張をあまりせず、我慢強く、親の期待に応えようとがんばってしまうような、生真面目な性格が多いかもしれません。
目にトラブルが現れ、目や脳の検査をしても原因がわからない場合には、心の不調やストレスが原因かもしれないと考えてみることが大切です。特に、教科書を読もうとすると字が見づらくなる、試験になると視力が低下する、月曜日の朝はものがかすんで見えるなどの症状があれば、心の不調を疑ってみる必要があります。
心の不調につながっている原因を解決すれば、ほとんどのケースでは、3カ月程度で視力が回復します。しかし子どもの心の問題に向き合わずに放置してしまうと、目だけではなく他の症状を生じさせてしまうことになりかねません。

板谷院長のひとことアドバイス

心身症の発症は、大人だけでなく子どもも増えています。お子さんが原因不明の目のトラブルに悩んでいたら、心療内科医や精神科医、スクールカウンセラーなどに相談してみましょう。

まとめ

  • 心理的・社会的なストレスにより、目に症状が現れるものを「目の心身症」といいます。
  • 目や脳の検査をしてみても、原因が見つかりません。
  • 多く見られる症状としては、視力低下、まぶたのけいれん、チック、暗いところでものが見えにくい、色が見分けにくい、歪んで見えるなどです。
  • 子どもの目の心身症が最近、増えています。
  • お子さんがメガネをかけても視力の矯正ができない場合、検査をしても目や脳に異常が見られない場合には心の不調からきているかもしれないと考えてみることが大切です。

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執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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