本記事は、2020年2月6日に再更新いたしました。

近年急増中の目の病気として、新聞やTVなどで取り上げられることの多い加齢黄斑変性は、見るものが歪んだり(変視症)、視野の中央が見えなくなったりする(中心暗点)、黄斑の病気です。失明の原因疾患として欧米では1位、日本では4位にまで上昇してきています。その原因は加齢と喫煙が関係すること以外、打つ手がなく、わからないことが多い病気でしたが、研究が急速に進み、抗VEGF薬というお薬を硝子体の中に注射する治療が開発され、激しい病状を抑えることができるようになりました。しかし、いったん損傷した黄斑を回復させることはできず、予防する方法が模索されてきました。

そんななか、この疾患に対する進行抑制効果があるのではないかと期待される数種の抗酸化作用のあるサプリメントを長期にわたって患者に服用してもらい効果を調べる大規模多施設研究が、アメリカで行われました。また、ニュージーランドでは、食生活のスタイルが加齢黄斑の発症と進行に与える影響を調べる研究も行われました。いずれの研究でも、医学的・科学的に信頼できる手法によって結果が導き出されており、その報告は世界中から注目されています。

今回は、加齢黄斑の発症や進行にサプリメントや食事内容がどのように影響するかについて、ご紹介します。

黄斑とは

世界的な研究報告を紹介する前に、黄斑と加齢黄斑変性という病気について、おさらいをしておきましょう。

人間には、網膜の中心に黄斑という特別な場所があり、色や形を識別する錐体細胞が集中して存在するため解像度が極めて高いところです。黄斑はカメラのフィルムに当たる網膜の中心部にある直径1.5mm~2mm程度のエリアで、そこから周辺へ離れていくほど解像度は低くなります。網膜周辺部では、モノがあることはわかりますが、モノの細部や細かい字などは判別することができません。このように黄斑は人の「見ること」を支えているのです。黄斑にはキサントフィルという色素が豊富にあるために黄色をしており、名称の由来となっています。

眼球断面図と眼底写真で黄斑の位置を示す

黄斑を酸化ストレスから守る守護神

網膜の下には網膜色素上皮という層があり、その下には脈絡膜という血管に富んだ層があります。網膜色素上皮と脈絡膜は連携して網膜の視細胞に酸素や栄養を供給したり、老廃物を回収する働きを行っています。それとともに網膜色素上皮と脈絡膜は黄斑にかかる高い酸化ストレスから黄斑を守る働きをしています。黄斑は人体で最も酸素を消費して「よく見える」を実現しています。このため、黄斑には常に強い酸化ストレスが発生しているのです。しかし、網膜色素上皮と脈絡膜が強力に酸化ストレスの解消を行ってくれるので、黄斑は健康に働けるのです。網膜色素上皮と脈絡膜は、いわば黄斑の守護神なのです。

黄斑を守る網膜色素上皮と脈絡膜

黄斑を守る網膜色素上皮と脈絡膜

加齢黄斑変性は守護神が弱って起こる

年齢を重ねるとともに誰しも黄斑の守護神である網膜色素上皮と脈絡膜の働きが低下していきます。この低下には遺伝子多型による個人差があることが明らかになっています。一方、人共通のこととして喫煙などの危険因子がこの機能低下を促進します。後述する食生活も深く関係します。網膜色素上皮と脈絡膜の働きが低下して酸化ストレスを解消しきれなくなると網膜色素上皮の下にドルーゼンと呼ばれる老廃物が蓄積してきます。加齢黄斑変性になる一歩手前の前駆段階です。そこから次の2つのタイプの加齢黄斑変性が発症していくのです。

徐々に進行する萎縮型 急激に視力低下する滲出型

加齢黄斑変性には萎縮型と滲出型の2つのタイプがあります。萎縮型は網膜色素上皮が徐々に萎縮していき、黄斑の機能が徐々に低下ししていく病気です。滲出型は新しい幼若な血管(脈絡膜新生血管)が脈絡膜から網膜色素上皮の下、あるいは網膜と網膜色素上皮の間に侵入して網膜が障害される病気です。異常な血管は正常の血管と異なりもろいため、破れて出血を起こしたり、血液成分を漏出させて網膜に浮腫を生じたり、黄斑剥離を生じたりして、黄斑の機能を障害し、視力低下を招きます。萎縮型は欧米人に多く、日本人には少ないと報告されています。萎縮型はまだ未解明のことが多く、治療法もこれといったものがありません。滲出型は欧米では成人失明原因の1位(およそ半数)を占め、大きな問題になっています。我が国では現在失明原因の4位ですが、今後さらに高齢者が増えるにつれ、大きな問題になると考えられます。

萎縮型加齢黄斑変性のOCT画像
黄斑部の網膜外層が薄くなっている

浸出型加齢黄斑変性のOCT画像
網膜と網膜色素上皮の間に新生血管と出血を認める。脈絡膜が薄くなっている

サプリメントは数種を組み合わせると効果的 ~アメリカの研究から~

さて、冒頭で触れた加齢黄斑変性の予防を示唆する世界的な研究報告について紹介しましょう。

米国国立眼病研究所は、白人男性の主要な失明原因である加齢黄斑変性の危険因子が、喫煙、肥満、過度に日光を浴びることと並んで、抗酸化物質の摂取量などの栄養状態にもあるという仮説を検証するため、55~80 歳(平均年齢 69 歳)の男女患者 4757 名に抗酸化サプリメントを5年以上にわたり服用してもらうという試験を行いました。1992~1998年にかけて実施されたこの試験では、患者を加齢黄斑変性の進行度によって4つのグループに分け、それぞれのグループに、「偽薬(プラセボ)」「抗酸化サプリメント」「亜鉛」「抗酸化サプリメント+亜鉛」という4パターンで投与を行い、経過を観察しました。(ここで「抗酸化サプリメント」として投与されたのは、具体的には、ビタミンC、ビタミンE、βカロテン、銅です。)

この試験の結果、「抗酸化サプリメント+亜鉛」のパターンで投与した症例群で病気の進行抑制効果が最も高いことが明らかとなりました。「抗酸化サプリメント+亜鉛」投与の症例では、「プラセボ」投与の症例に比べて、病気の進行がおおよそ 28.6% 減少したのです。抑制評価は、網膜色素上皮下に蓄積する「ドルーゼン」という病変のサイズなどを計る方法で行われました。ドルーゼンは身体の活動によって産生される酸化物質で、いわゆる身体のサビです。生命活動をすると身体のあちこちでこの種のサビが産生されます。抗酸化物質は、この身体のサビの産生を抑制する働きをもつといわれる物質で、野菜や果物などに多く含有されているβカロテンをはじめ、多くの種類があります。さらに米国国立眼病研究所は、2006~2012年にも、再び同様の試験を実施しました。この第2回の試験では、「βカロテンは、高濃度で摂取すると喫煙者の肺がんリスクを高める」というフィンランドなどの研究試験結果があることから、代替成分としてルテインとゼアキサンチンが用いられました。その結果、βカロテンの代わりにルテインとゼアキサンチンを投与した群では酸化物質産生の抑制効果が20%上積みされることがわかりました。

※参考
「AREDS(Age-Related Eye Diseases Study)調査試験 
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/vsojkn/journal/88-11sueki.pdf
「AREDS2とその研究結果がルテインとゼアキサンチンにもたらす影響 
http://www.koyojapan.jp/pdf/TOPIX_242.pdf

以上の研究調査でわかったことは、栄養素は一つだけでは効果が薄く、組み合わせることで効果がはっきり現れるということです。これは漢方薬の考え方に似ています。日本でサプリメントというと、たとえばβカロテンという一つの成分を高濃度に含有させる考え方ですが、欧米では特定の成分をいくつか組み合わせることで高い効果を発揮できるように作られているものが多いのです。

食生活スタイルでも予防効果あり

一方、食生活の改善による加齢黄斑変性の予防効果については、ニュージーランド・オークランド大学の研究チームが報告を行っています。同チームは、栄養と眼病について過去に発表された一流科学誌掲載の質の高い研究論文18本を抽出し、その内容を精査しました。科学的妥当性を分析したわけです。その結果、地中海型の食生活が加齢黄斑変性のリスクが低いことに影響していると結論しました。一方で加工肉や高脂肪製品、フライドポテト、精製穀物などを常食する西洋型の食生活パターンではリスクが上がるとしました。ちなみに野菜、豆類、果物、全粒穀物、魚介類などを豊富に摂る東洋型の食生活も加齢黄斑変性の低いリスクと関連が強いとしています。

予防効果のあるサプリメント その具体的な成分は?

加齢黄斑変性で障害された黄斑は元の状態には戻らないので、進行を阻止する治療法と予防法についての研究が世界中で行われてきました。そのなかで、サプリメントや食事内容による進行抑制効果や予防効果の可能性を示唆する注目すべき報告がなされ、この考え方を導入する医療施設が増えました。今回ご紹介した海外での試験の報告の中でも、特に重要なのは、単一の抗酸化成分を含むサプリメントではなく、ビタミンA、C、Eなどのビタミン、ルテインなどのカロテノイド、亜鉛などのミネラル、オメガ3多価不飽和脂肪酸など、複数の抗酸化成分をミックスしたサプリメントがよい、としている点です。日常生活ではそれらを多く含む食品をコンスタントに摂取することが推奨されますが、現実完全に摂取することは難しいので、サプリメントでカバーします。加齢黄斑変性は、サプリメントの効用が高いエビデンスレベルの研究により実証された、最もサプリメントが成功した疾患と言えるでしょう。

板谷理事長のひとことアドバイス

加齢黄斑変性を予防するためには、抗酸化ライフを送ることに尽きます。加齢と共に抗酸化力は弱っていきますので、ますます抗酸化ライフの必要性が高まります。日々の食事、サプリメントの活用、適度なエクササイズで抗酸化ライフを送り、加齢黄斑変性予防に留まらず健康な長寿を実現したいものです。
詳しくは、拙書『目の悩みは眼底を疑いなさい 「見える」を支える“黄斑”のチカラ』(幻冬舎)をお読みください。

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まとめ

  • 加齢黄斑変性は、黄斑を守る網膜色素上皮と脈絡膜の加齢による機能低下により起こる病気です
  • 網膜色素上皮と脈絡膜は、黄斑にかかる強い酸化ストレズから黄斑を守っています
  • 抗酸化作用のある複数のビタミン、ミネラル、カロテノイド、オメガ3多価不飽和脂肪酸を組み合わせて服用すると加齢黄斑変性の進行を有意に抑制できます
  • 加齢黄斑変性の予防には、食事、サプリメント、禁煙などを組み合わせた抗酸化生活が重要です

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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