近年急増中の目の病気として、新聞やテレビなどで取り上げられることの多い加齢黄斑変性は、見るものが歪んだり(変視症)、視野の中央が見えなくなったりする(中心暗点)、網膜の病気です。失明の原因疾患として欧米では1位、日本では4位にまで上昇してきています。その原因は加齢とされていますが、詳しいことは不明な部分が多く、長い間、打つ手がない、これといった治療法がない、といった状態が続いてきました。最近になって進行を阻止する治療法がいくつか開発されましたが、損傷した網膜を回復させることはできず、依然として、治癒させることが困難な病気です。

そんななか、この疾患に対する進行抑制効果があるのではないかと期待される数種のサプリメントを長期にわたって患者に服用してもらい効果を調べる試験が、アメリカで行われました。また、ニュージーランドでは、食生活のスタイルが加齢黄斑の発症と進行に与える影響を調べる研究も行われました。いずれの研究でも、医学的・科学的に信頼できる手法によって結果が導き出されており、その報告は世界中から注目されています。

今回は、加齢黄斑の発症や進行にサプリメントや食事内容がどのように影響するかについて、ご紹介します。

加齢黄斑変性とは

世界的な研究報告を紹介する前に、加齢黄斑変性という病気について、おさらいをしておきましょう。

色や形を識別する視細胞は、カメラのフィルムに当たる網膜の中心部にある直径1.5mm~2mm程度の「黄斑」という部分にたくさん集まっています。そのため解像度は、黄斑で最も高く、そこから周辺へ離れていくほど低くなります。網膜周辺部では、モノがあることはわかりますが、モノの細部や細かい字などは判別することができません。このように「見ること」を支えている非常に重要な部位である黄斑が加齢によって損傷し、機能が失われていくのが加齢黄斑変性です。黄斑にはキサントフィルという色素が豊富にあるために黄色をしており、名称の由来となっています。

加齢黄斑変性の発症の仕組み

網膜の下には網膜色素上皮という層があり、その下には脈絡膜という血管に富んだ層があります。網膜が正しく働くためにはこれらの組織が正しく働く必要があります。年齢を重ねるとともに網膜色素上皮の下に老廃物が蓄積してきます。それにより直接あるいは間接的に黄斑部が障害される病気が加齢黄斑変性です。

徐々に進行する萎縮型 急激に視力低下する滲出型

この疾患には萎縮型と滲出型の2つのタイプがあります。萎縮型は網膜色素上皮が徐々に萎縮していき、黄斑の機能が徐々に低下していく病気です。滲出型は異常な血管(脈絡膜新生血管)が脈絡膜から網膜色素上皮の下、あるいは網膜と網膜色素上皮の間に侵入して網膜が障害される病気です。異常な血管は正常の血管と異なるため、破れて出血を起こしたり、血液成分を漏出させて網膜に浮腫を生じたりして、黄斑を含む網膜の機能を障害し、視力低下を招きます。

萎縮型は欧米人に多く、日本人には少ないと報告されています。加齢黄斑変性で失明する場合、多くは滲出型で、日本人に多いとされています。萎縮型はまだ未解明のことが多く、治療法もこれといったものがありません。滲出型は欧米では成人失明原因の1位(およそ半数)、中途失明の2位を占め、大きな問題になっています。高齢者が増えるわが国でも、今後、大きな問題になると考えられます。

サプリメントは数種を組み合わせると効果的 ~アメリカの研究から~

さて、冒頭で触れた加齢黄斑変性の予防を示唆する世界的な研究報告について紹介しましょう。
米国国立眼病研究所は、白人男性の主要な失明原因である加齢黄斑変性の危険因子が、喫煙、肥満、過度に日光を浴びることと並んで、抗酸化物質の摂取量などの栄養状態にもあるという仮説を検証するため、55~80 歳(平均年齢 69 歳)の男女患者 4757名に抗酸化サプリメントを5年以上にわたり服用してもらうという試験を行いました。1992~1998年にかけて実施されたこの試験では、患者を加齢黄斑変性の進行度によって4つのグループに分け、それぞれのグループに、「偽薬(プラセボ)」「抗酸化サプリメント」「亜鉛」「抗酸化サプリメント+亜鉛」という4パターンで投与を行い、経過を観察しました。(ここで「抗酸化サプリメント」として投与されたのは、具体的には、ビタミンC、ビタミンE、βカロテン、銅です。)

この試験の結果、「抗酸化サプリメント+亜鉛」のパターンで投与した症例群で病気の進行抑制効果が最も高いことが明らかとなりました。「抗酸化サプリメント+亜鉛」投与の症例では、「プラセボ」投与の症例に比べて、病気の進行がおおよそ 28.6% 減少したのです。抑制評価は、網膜に蓄積して黄斑を傷める「ドルーゼン」という物質の量などを計る方法で行われました。ドルーゼンは身体の活動によって産生される酸化物質で、いわゆる身体のサビです。生命活動をすると身体のあちこちでこの種のサビが産生されます。抗酸化物質は、この身体のサビの産生を抑制する働きをもつといわれる物質で、野菜や果物などに多く含有されているβカロテンをはじめ、多くの種類があります。さらに米国国立眼病研究所は、2006~2012年にも、再び同様の試験を実施しました。

この第2回の試験では、「βカロテンは、高濃度で摂取すると喫煙者の肺がんリスクを高める」というフィンランドなどの研究試験結果があることから、代替成分としてルテインとゼアキサンチンが用いられました。その結果、βカロテンの代わりにルテインとゼアキサンチンを投与した群では酸化物質産生の抑制効果が20%上積みされることがわかりました。

※参考
「AREDS(Age-Related Eye Diseases Study)調査試験 
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/vsojkn/journal/88-11sueki.pdf
「AREDS2とその研究結果がルテインとゼアキサンチンにもたらす影響 
http://www.koyojapan.jp/pdf/TOPIX_242.pdf

以上の研究調査でわかったことは、栄養素は一つだけでは効果が薄く、組み合わせることが大事ということです。これは日本での漢方薬の考え方に似ています。日本でサプリメントというと、たとえばβカロテンという一つの成分を高濃度に含有させる考え方ですが、欧米では特定の成分をいくつか組み合わせることで高い効果を発揮できるように作られているものが多いのです。

食生活スタイルでも予防効果あり

一方、食生活の改善による加齢黄斑変性の予防効果については、ニュージーランド・オークランド大学の研究チームが報告を行っています。同チームは、栄養と眼病について過去に発表された一流科学誌掲載の質の高い研究論文18本を抽出し、その内容を精査しました。科学的妥当性を分析したわけです。

その結果、地中海型の食生活が加齢黄斑変性のリスクが低いことに影響していると結論しました。一方で加工肉や高脂肪製品、フライドポテト、精製穀物などを常食する西洋型の食生活パターンではリスクが上がるとしました。ちなみに野菜、豆類、果物、全粒穀物、魚介類などを豊富に摂る東洋型の食生活も加齢黄斑変性の低いリスクと関連が強いとしています。

予防効果のあるサプリメント その具体的な成分は?

加齢黄斑変性で障害された網膜は元の状態には戻らないので、進行を阻止する治療法と予防法についての研究が世界中で行われてきました。そのなかで、サプリメントや食事内容による効果の可能性を示唆する注目すべき報告がなされ、この考え方を導入する医療施設が増えました。今回ご紹介した海外での試験の報告の中でも、特に重要なのは、単一の抗酸化成分を含むサプリメントではなく、ビタミンA、C、Eなどのビタミン、ルテインなどのカロテノイド、亜鉛などのミネラル、オメガ3多価不飽和脂肪酸など、複数の抗酸化成分をミックスしたサプリメントがよい、としている点です。

日常生活ではそれらを多く含む食品をコンスタントに摂取することが推奨されます。また、加齢黄斑変性のリスクファクターとしては喫煙と太陽光の長時間被曝が筆頭であるため、これらを辞めることも推奨されています。

板谷院長のひとことアドバイス

栄養素は一つだけでは効果が薄く、組み合わせることが大事です。欧米のサプリメントでは、特定の成分をいくつか組み合わせることで高い効果を発揮できるように作られています。組み合わせを意識して摂取するよう心がけましょう。

まとめ

  • 加齢黄斑変性の原因は単に加齢とされることが多いとされてきましたが、近年、遺伝子により発症しやすい方がいることがわかりました。
  • 個々人の遺伝子の型(遺伝子の個人差)を調べれば、その人が将来的に加齢黄斑変性になりやすいかどうかがわかるようになってきました。
  • 遺伝子の研究と、栄養素による予防を組み合わせれば、近い将来、かなり高い精度で加齢黄斑変性を予防できるようになると考えられます。

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執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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