自分の目に何らかの違和感を感じたとき、原因がわからないと不安でたまらなくなってしまいます。目の健康を守るためにはまず、自身の目の状態を知ることが必要です。
目の状態を知るために、眼科ではさまざまな検査を行っています。それらの検査によって、病気の状態だけでなく、目の機能や形、運動性など、目に関するあらゆる状態を明らかにすることができます。

今回は、目の検査を7つに分類してご説明いたします。それで何がわかるのかお教えしますので、ぜひ参考にしてください。

目の状態を調べつくす7種類の検査

目は常にものを見ているため、見え方に異常があると自分で何かおかしいなと感じることができます。しかし、往々にして鏡で自分の目を見ても何も異常を見つけることができません。
目は身体の表面にある臓器なのに、目の中は暗箱になっているため、外から見ても目の中は見えないのです。すぐそこにあるのに!
ですので、検査機器で目の中に光を当てて、検査をする必要があるのです。

失明の原因になる病気の多くは目の中に起こります。例えば外から見てもすぐわかる白目の出血(結膜下出血)は、見た目に反してあまり害を与えることはありません。見ただけではわからない問題を知るために、検査がとても重要になるのです。

視力検査などの視機能や、眼圧、眼球の形、透明性、眼底の様子、両目の向き(眼位)、目の運動性などを調べつくして、自身の目の状態や抱えている眼病の状態を詳しく知り、的確な治療計画を立てたり、治療そのものに役立てます。

では、それぞれの検査についてご紹介しましょう。

目の機能を調べる「視機能検査」

目の機能を調べる検査のことを「視機能検査」と言います。

人は目から得られる情報が全体の8割以上を占めているとも言われるほど、視覚情報は大切な情報になります。自分の目がどれだけ視力を持っているか、視野は十分にあるか、色覚は正常かなど、現在の能力を知っておくことは、生活にも役立てることができる大切な情報だと言えます。

視力(屈折)検査

主に、ランドルト環というアルファベットのCのような文字指標を使用して視力を測っていきます。指標の切れ目が見えるかどうかをヒアリングしながら、徐々に小さい指標を識別できるかを試し、視力を計測します。

【ランドルト環は国際的な視標となっている】

眼圧検査

眼球を外から押して、目の圧力(眼圧)を計測します。目は眼内液(房水や硝子体液などの総称です)という液体で満たされていて、内側からの圧力によってその形を保っています。
しかし何らかの理由で眼内液がたまりすぎ、圧力が高まると、か弱い視神経を傷めてしまい視野障害が起こります。これが緑内障です。

眼圧測定は、内科での血圧測定のように常に行い、目の健康を把握する大切な検査です。

【眼圧検査の様子】

 

視野検査

視野とは見える範囲のこと。視神経が障害されることで視野が欠けたり狭くなったりします。眼圧が高かったり視神経乳頭に異常を見つけたら、緑内障や視神経の障害などを疑い、視野異常の有無や程度を調べるために行われる検査です。

視野検査には、動的視野静的視野があり目的により使い分けます。動的視野はゴールドマン視野計を用います。主に視神経や脳の病気で視野が障害される場合に用います。静的視野はハンフリー視野計やオクトパス視野計を用います。緑内障の診断と治療に不可欠な検査です。

【静的視野検査。黒くなっている部分が視野欠損。】

 

色覚検査

色覚検査表を用いて色が識別できるかどうか、色覚異常の有無をテストします。色覚異常には先天性と後天性のものがあり、後天性のものは誰でも起こる可能性があります。

特に加齢によって誰もがかかる白内障は、視界をかすませるだけでなく黄色がかって見える色覚異常を起こすこともあるので、それで生活に支障をきたすこともあります。
特定の色について見えにくさを感じたら、色覚検査を受けてみましょう。

【色覚異常の検査表では、異常があることで数字や文字が見えなかったり、逆に見えるようになる】

両眼視機能検査

利き目の検出や、素早い速度の点を追う衝撃性眼球運動検査、対象物を両目でゆっくりととらえることができるかを検出する追従性眼球運動検査などが両眼視機能検査です。

左右に映る図形映像のズレを感知して奥行きをとらえられるのかを判断する立体視テストや、左右に映る画像の大きさが同じかどうかを判断するコの字テストなどもあります。
左右の目の向く方向がずれる斜位や斜視、目を動かす筋肉である外眼筋の異常の有無などが疑われる場合に行われる検査です。

目のかたちを調べるさまざまな検査

人の目のかたちが目の病気と関係することはご存じですか?
目のかたちの大きな特徴としては、角膜の直径やカーブ、前房の深さ、目の長さ(眼軸長)などがあり、人によりさまざまです。

目のかたちが病気として現れる例としては、例えば眼軸長が長いほど近視が強くなる、というのがあります。眼軸長が26.5mmより長い目を強度近視といい、緑内障になりやすかったり、40歳以降になると強度近視特有のいくつかの黄斑の病気が起こりやすくなります。

逆に、眼軸長が短い目は前房も浅い(=隅角が狭い)ことが多く急性緑内障発作や閉塞隅角緑内障になりやすいのです。眼軸長が長すぎたり、短すぎたりは、白内障手術において眼内レンズの度数ズレの原因になることがあり、執刀医の悩みの種になります。

目の細部の構造を目に見えるようにしたのが光干渉断層計(OCT)という画期的な検査技術です。高い分解能(5~7um[ミクロン])のおかげで、10層構造の網膜の一層一層が見え、黄斑のむくみによる厚みの変化を捉えたり、微細な網膜の障害を捉えることができるのです。

前眼部OCTでは、房水の出口の隅角が狭くなっていることを捉えることができます。急性緑内障発作のリスクを知ることができるのです。不正乱視の原因になる角膜の微細なゆがみも捉えることができます。これらの検査はすべて光の技術を応用したものです。

角膜曲率半径検査

ドーム状をした角膜のカーブの強さを測る検査です。コンタクトレンズの処方には必須です。白内障手術における眼内レンズの度数計算にも必須です。
角膜のカーブの強さが部位により異なると乱視になります。メガネ、コンタクトレンズ、眼内レンズなどによる乱視の矯正にも必須の検査なのです。

眼軸長検査

目の奥行きのことを眼軸長と言います。正視の人は球形に近い形をしていますが、近視の目は眼軸長が長いフットボールのようなかたちをしています。
目に入った光は角膜と水晶体で屈折し、網膜にピントを合わせるのですが、眼軸長が長いと網膜に届く前の地点でピントを結んでしまいます。そのため視界がぼやけてしまうのが、近視の仕組みです。

また、白内障の手術をする際には、眼軸長を測る検査を必ず行います。眼科医は、この検査結果と前述の角膜曲率半径を用いて挿入する眼内レンズの度数を決めるのです。

【角膜の頂点から眼底までの長さを眼軸長といいます】

眼底OCT検査

OCTとは、光の性質を利用して眼球の断面図を調べることができる検査機器です。脳や内臓の検査で用いるCTやMRIの分解能がミリ単位であるのに対して、OCTは5~7um(ミクロン)と高い分解能をほこり、眼底の微細な異常を見逃しません。

例えば、黄斑前膜という病気では、黄斑を覆う薄い膜、網膜の細かい皺、視細胞の障害などを見逃すことなく発見できます。
緑内障や加齢黄斑変性、網膜中心静脈閉塞症などの眼底疾患の診断には無くてはならない検査機器となりました。

【OCTにより撮影された、正常な黄斑】

前眼部検査(前眼部OCT)

水晶体までの断面図を撮影して、角膜のカーブや隅角の広さなど、目の形状を計測する検査です。
角膜疾患や、閉塞隅角緑内障などの病気が疑われる人の検査で使われるほか、レーシック手術のために角膜の形状を正確に計りたい場合にも使用されます。

前眼部OCTによる隅角検査。左は隅角が狭くなっている画像。
右は同じ目で白内障手術により隅角が広くなっている画像。
前眼部OCTにより、隅角の広さがはっきりわかるようになり閉塞隅角緑内障の診断がわかりやすくなりました

眼の透明性を調べる「細隙灯(さいげきとう)検査」

目は人体の中で、唯一“無色透明な組織”です。奇跡の組織とも言えますが、目は光を通す(ものを見る)ために透明であり続けなければなりません。つまり、目の透明性が失われてしまえば、それはもう病気ということになります。

細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を使用した検査では、患者の目に斜めから光をあてて拡大して観察することができるため、水晶体や角膜の濁りを調べることができます。濁りが存在する深さもよくわかります。他にもまぶたや虹彩、結膜などを詳細に診察する際にも使用されます。
特殊なレンズを用いると隅角や眼底を立体的に観察することまでできるのです。いわば眼科の手足のような万能の検査機器なのです。

【細隙灯検査の様子】

 

目の位置を調べる「眼位検査」

両目の向く方向を測って調べる検査です。両眼視機能の検査と同じく、“斜位”“斜視”がないかを調べるための検査です。人の顔というのは完全な左右シンメトリーではないのと同様に、両目の向きのごくわずかなズレは誰にでもあるものです。

しかし、程度が大きすぎるとものが二重に見えるなど見え方に支障をきたしてしまいます。眼位に何かしらの問題が見られ、矯正が必要なときは、必要に応じてプリズム眼鏡を使い矯正します。プリズム眼鏡で対応できないほど大きなズレは斜視手術による治療が必要になります。

視神経や脳の状態を調べる検査

目でものを見る仕組みのなかで、フィルムの役割を果たすのが網膜です。網膜に投影された光は、電気信号に変換されて脳へと届けられます。信号を受け取った脳が見ている物を現像することにより、私たちは初めて「見える」ことを実感するのです。

つまり、目だけでなく脳や視神経に異常があっても、ものを見ることはできなくなります。視神経や脳に異常があると疑われた場合は、以下のような検査をすすめられます。

MRI検査・CT検査

MRIは磁気の力で身体の臓器の断層像や血管を撮影することができます。CTは放射線を用いて身体の断層像や血管を撮影します。目的に応じて使い分けます。

視力低下や初夜障害の原因が眼球に認められない場合、脳梗塞や脳腫瘍により視神経やものを見る脳(後頭葉)が障害されていないかどうかを疑って行われる検査です。

【身体の内部を詳細に視覚化できるMRI】

血液検査

視神経症やぶどう膜炎など、全身の異常と関連して起きる目の病気があります。診断のため血液検査も重要になります。

髄液検査

視神経症や原田病などで髄液検査が有用です。

目の運動性を調べる検査

さまざまな原因で目の動きが悪くなり、ものが二重に見えたりすることがあります。どの向きの動きが悪いかで原因も異なります。
目の動きを司る眼筋などの動きを詳しく調べる検査です。

HESS検査

HESS検査は、目を動かしている眼筋がきちんと動くかどうかを調べる検査です。

眼筋は眼球の動きを司る随意筋で、眼球を取り囲むように計6本(4つの直筋と2つの斜筋)あるのですが、この筋肉や動かす神経に何かしらの問題が生じていると、斜視による複視を引き起こす原因となり得ます。斜視が生じなくても動きが障害されている筋肉の方を向いたときに複視を起こします。

6つの眼筋の炎症や虚血、眼筋を動かしている神経(動眼神経、外転神経、滑車神経)の麻痺による眼筋の動きが悪くなります。脳腫瘍、脳血管障害、糖尿病、頭部外傷などさまざまな原因で起こります。

眼球運動検査

指標を両眼で追い、眼球の動きをチェックするために行う検査です。眼球は眼窩内に固定されているために、変位運動はほとんどできません。眼球運動は回施点を中心とした回転運動なのですが、その動きを確かめます。

頭部外傷による影響の有無が疑われる場合、脳腫瘍や血管障害などの診断の際にも行われます。

涙の状態を調べる「涙液検査」

涙の量が十分かどうかを計測するのが涙液検査です。最も用いられているのがシルマー試験です。下まぶたに検査紙を挟み、5分間放置します。涙液量は10mm以上を正常、5~10 mmをボーダーライン、5 mm以下を異常と判定します。

通常、目は常に涙の膜によって覆われています。しかし、何らかの原因によってその膜が壊れてしまうことがあり、その状態が“ドライアイ”と呼ばれるものです。ドライアイになると、目の表面の恒常性は失われ、眼病になるリスクが上がります。

ドライアイになる原因の1つが涙液量の減少なのです。他にも、涙の膜の安定性が低下してドライアイになることも多く、フルオレセインという黄色の染色液を少量点眼して涙の膜を可視化して涙の膜の安定性を調べる検査を行います。

涙液層破壊時間(BUT)検査といいますが、目を開けたままにして涙の層がどのくらいの時間で乱れるかを調べます。5秒以下が異常です。

【涙液層破壊時間(BUT)検査】

 

目ひとつにおいても様々な検査があります

今回は目の検査を大きく7つに分けて説明しました。しかし、疑われる目や脳の病気に合わせて、他にも数多くの検査が存在します。
お化けは見えないから恐いのです。見えたらなんだということになります。同じように、目に違和感を感じたら不安を募らせるのではなく、眼科へ行き必要な検査を受け、違和感の原因を明らかにすることが大切です。

まとめ

  • 眼は小さい器官ですが視機能検査をはじめ、目のかたち、目の圧、透明性、運動性など様々な検査があり診断に必要
  • 2つの目でものを見ているため眼位検査がある
  • 眼の病気は脳や全身の病気と関連することがあり、脳の画像検査(MRI, CT)や血液検査、髄液検査を行うことがある

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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