本記事は、2020年2月7日に再更新いたしました。

突然、38℃の以上の高熱が出て、全身の皮膚、目などの粘膜に、やけどのようなひどい水ぶくれなどの症状が現れる薬の副作用(薬疹)をご存知ですか?多くは服用から2週間以内に発症します。それらの症状がなかなか退かず持続する、あるいは一段とひどくなるようであれば、スティーブンス・ジョンソン症候群の可能性が考えられます。発生頻度は人口100万人当たり年間1~6人と少ないのですが、原因と考えられる医薬品は、抗生物質、解熱消炎鎮痛薬、総合感冒薬(かぜ薬)など多岐にわたり、私たちが普段から使う身近な薬も多く含まれています。治療が遅れると重症化し、失明など重篤な後遺症が残ったり、死に至ったりする場合があります。万が一のときに備えて、初期症状を頭に置いておくと、早期の受診につながり、医師とのやり取りがスムーズになります。視力低下を防ぐために必要なスティーブンス・ジョンソン症候群についての基礎知識をお伝えします。

薬のアレルギーが原因? 広範囲にわたる薬の種類

激しい症状は医薬品の成分に対する免疫・アレルギー反応によるものと考えられていますが、よくわかっていません。医薬品の副作用が原因の場合だけでなく、マイコプラズマやウィルスなどの感染が原因の場合もあります。医薬品は上記の薬以外でも抗てんかん薬、痛風治療薬、サルファ剤、消化性潰瘍薬、催眠鎮静薬・抗不安薬、精神神経用薬、緑内障治療薬、筋弛緩薬、高血圧治療薬など広範囲にわたりますが、抗菌薬と解熱鎮痛消炎薬が発症事例全体の約1/3を占めるとの報告があります。

【処方された薬でスティーブンス・ジョンソンズ症候群は発症するものの、どのような方がどの薬で発症するかといった病気の仕組みはまだわかっていません。】

主要な3大症状と初期症状

・38℃以上の発熱
・粘膜症状…結膜充血、口唇びらん、咽頭痛、陰部びらん、排尿排便時痛
・全身の紅斑…進行すると水疱・びらんを形成
この3つが主要徴候です。

初期は38℃以上の発熱、発疹、発赤、粘膜や皮膚に水ぶくれの症状、目の充血、目やに、まぶたの腫れ、くちびるのただれ、のどの痛みなどがあり、全身の発疹が増えるにつれて、目の炎症も高度となり、角膜や結膜などの目の表面に膜のようなものができます。全身の発疹や粘膜などのびらんが急激に出る急性期には、70%程度が目の病気を合併します。残り30%程度は目の合併症はなく、その場合には眼科治療は必要ありません。ただし目に合併症があるかどうかの判断は眼科医の診察が必要です。急性期に目に症状が出た場合は、全身の発疹などの症状が改善しても、視力障害や重症ドライアイが後遺症として残ることがあります。スティーブンス・ジョンソン症候群の専門外来診察を受け付けている京都府立医科大学附属病院眼科では、ホームページに目の合併症がある場合のセルフチェックを載せています。

・全身の皮膚に発疹が生じて、数時間で広がった
・40℃近い高熱
・両眼が充血して、痛みを感じる
・くちびる、口の中に水疱や出血がある

 上記すべてに該当する場合はすみやかに医療機関を受診し、皮膚科、眼科医の診察を受けるように呼びかけています。

目の症状だけでなく全身症状を考慮して診断

稀な病気であるため、眼科に初診で来られた場合、一般的な結膜炎との鑑別は難しい面があります。しかし一見してただの結膜炎ではないので、眼科医の経験で「普通ではない」を感じることができれば、目に現れている症状以外の全身症状も考慮し、スティーブンス・ジョンソン症候群の可能性に思い至ることができるでしょう。

正しい診断においては、全身に現れている臨床症状が有力な手がかりになります。検査としては、びらんした組織などを採って、顕微鏡で見る病理検査や、自己免疫疾患、心筋梗塞などの炎症あるいは組織壊死がある病態で血液中に増加する蛋白質(急性期蛋白)であるCRPの値、その他、白血球の値、肝機能、腎機能などを測ることもあります。

目では、細隙灯顕微鏡検査により結膜充血、眼脂、偽膜、角結膜上皮障害・上皮欠損などの所見を認めます。

治療は、服用している薬の中断とステロイド投与から

まず原因と考えられる薬を中断します。飲んでいる薬およびその説明書きなどを病院に持っていくとよい手がかりになります。診断がついたら入院が必要です。

ステロイド薬全身投与や、免疫グロブリン製剤大量静注療法、血漿交換療法などを症状に合わせて行います。また、感染症を抑えるため、抗生物質を投与します。

眼科での治療は、症状をコントロールして視機能の低下を防ぐ

軽症例ではドライアイの症状でとどまっているため、人工涙液の点眼や、涙を目にとどめるために涙の排出口を塞ぐ涙点プラグなどの治療を行います。

しかし症状がどんどん進行する場合は、眼表面の炎症が繰り返され、瞼球癒着や結膜の角膜への侵入が進むため、大量のステロイド療法やステロイドパルス療法を行います。免疫グロブリン製剤大量静注療法や血漿交換療法を併用することもあります。目標は、炎症を抑えて眼表面上皮を温存し、眼表面の二次感染を防止します。

それでも角膜の混濁をきたした場合は、角膜移植などを行って失明を防ぎます。

【重症を免れることができれば、少しの瘢痕(白い濁り)が残る程度で済みます。】

板谷理事長のひとことアドバイス

何気なく使用するお薬によって引き起こされるスティーブンス・ジョンソン症候群。予測ができないのが難点です。目の症状も異様ですが、目の症状だけで一般的な結膜炎との鑑別は難しいので、全身症状も考慮して疑いたいところです。診断がついたら、徹底的に炎症を抑える治療に専念します。

まとめ

  • スティーブンス・ジョンソン症候群は、治療が遅れると重症化し、失明など重篤な後遺症が残る場合があります
  • 初期の症状としては、38℃以上の発熱、発疹、発赤、粘膜や皮膚に水ぶくれの症状、目の充血、目やに、まぶたの腫れ、くちびるのただれ、のどの痛みなどがあります
  • 進行すると失明や命に関わるため、診断がついたら原因と思われるお薬を中止するとともに、大量のステロイド全身投与を行い、免疫グロブリン製剤大量静注療法や血漿交換療法を併用することもあります

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

公式サイト

目についてのお悩みは、はんがい眼科へどうぞ