紫外線は、体内時計を正常に保つとか、体内でのビタミンDの合成を助けるなど、私たち人間にとって大切な役割を果たしてくれる存在ですが、過度に紫外線を浴びることは、皮膚だけでなく目にも悪い影響を与える可能性があります。
今回は、紫外線が目にもたらす障害と、その予防法について解説します。

目に入った紫外線は、角膜と水晶体で吸収される

もしも太陽の紫外線が、そのまますべて眼底まで届いてしまうと、網膜に大きなダメージを与えてしまいます。それを防ぐために、私たちの体には、目に入った紫外線のおよそ8割が角膜で吸収され、残りの2割近くが水晶体で吸収される仕組みが備わっています。
網膜まで到達するのは、通常、わずか1〜2%であり、このくらいの量の紫外線であれば、眼底に与える影響について心配する必要はほとんどありません。

しかし、紫外線を過度に浴びると、目に異変が生じます。紫外線を過度に浴びることによって生じる目の障害の主なものに次の3つがあります。

紫外線の影響で起こりやすい代表的な3つの理由

紫外線角膜炎(雪眼炎・電気性眼炎)

強い紫外線を浴びると、角膜の表面にある角膜上皮がダメージを受け、一時的に急性の炎症を起こすことがあります。症状としては、まぶしさ、白目の充血、目の異物感、涙が流れるなどがあります。重症になると痛みも生じます。

紫外線角膜炎は、雪に反射した強い紫外線によって生じることがよく知られており、「雪眼炎(雪目)」とも呼ばれます。また、溶接作業などで強い紫外線が発生して起こったときには「電気性眼炎」と呼ばれます。
症状が軽い場合は、1〜2日で自然に治ります。ただし、紫外線を受けてから数時間後、夜間に急に眼痛が出て救急病院に駆け込むことになるケースがしばしばあるので、注意が必要です。治療は点眼薬と冷湿布で炎症と痛みを抑えます。

溶接作業などで強い紫外線を浴びると角膜炎を発症することがあります

翼状片(よくじょうへん)

漁業や農業など、戸外での活動時間が長い方に多発します。「白目の一部が黒目に伸びてきた!」と訴える方が多いのですが、これは、白目の表面を覆っている結膜の組織が増殖して、目頭の方から黒目の方へ三角形に入り込んでくるからです。患者には高齢者が多いため、原因として、紫外線などを含めた外的刺激の蓄積が関係するのではないかと考えられています。目頭側の結膜に起こるのも、鼻梁によって照り返された紫外線がその部位に当たるためではないかと考えられています。

自覚症状としては、白目の充血や異物感が挙げられ、ほとんどの場合、両目に起こります。進行はそれほど早くありません。
自覚症状がなければ放置しておいても問題はありませんが、違和感や充血などが気になるのであれば点眼での治療を行います。大きくなり瞳の縁に迫ってきたり、乱視の原因になっていると考えられるときは、手術で切除する必要があります。


翼状片

白内障

冒頭でもご説明しましたが、水晶体は、目に入った紫外線を吸収します。こうして紫外線を受け止めつづけることや加齢の影響を受けて、やがて水晶体は少しずつ濁っていきます。濁りが高じると、目がかすむとか、まぶしさを強く感じるといった症状が現れます。これが白内障です。

白内障にはいろいろなタイプがありますが、日本人に一番多いタイプの「皮質白内障」や、水晶体の中央が硬くなるとともに黄色みを帯びて濁ってくる「核白内障」は、紫外線との因果関係が強いとされています。
白内障は、古くなった水晶体を取りのぞき、人工の眼内レンズに置き換えることで治療します。この治療法では、白内障を克服して視力を取り戻すことができるだけでなく、トーリックレンズという特殊な眼内レンズを入れることで乱視を矯正することもできます。多焦点眼内レンズを用いると老眼も治療できます。ちなみに、最近のほとんどの眼内レンズは紫外線カット機能がありますので心配いりません。


白内障

紫外線は人体に悪影響ばかりではない!紫外線を適度に浴びるべき3つの真実

紫外線についての情報は人体への有害な影響ばかりが広まっており、悪いイメージが強いのですが、実は生活する上で欠かせない役割を持っています。生命は太古から降り注ぐ紫外線を生命現象に利用してきたからです。特に、次にご紹介する紫外線の3つの役割は、人体に良い影響を与える代表的なものです。
もし紫外線を過度に避けているなら、適度に日光を浴びることを心掛けましょう。

体内でビタミンDを合成するのに必要!

本来、人はビタミンを体内でつくることができないので、食事などから摂取することが必要です。しかし唯一ビタミンDのみは、体内で合成することができるのです。ビタミンDが合成される場所は皮膚であり、合成には紫外線の助けが必要です。
ではビタミンDが体内でどのような働きをしているかといえば、いちばん大きな役割はカルシウム代謝の調整です。もしカルシウムの摂取不足だけでなく、ビタミンDも不足するようになると、骨量が減少して骨粗鬆症の原因にもなります。

また最近では、ビタミンDは筋肉にも作用することがわかってきました。他にも妊娠中の女性がビタミンD不足になるとは赤ちゃんの骨の発育にも影響しますし、これから赤ちゃんを望む女性がビタミンD不足だと、不妊に関係することも最新の研究でわかっています。
では、どのくらい日光にあたればいいのでしょうか。両手の甲くらいの面積を1日15分、お日さまに当てると、食事で摂取する分と合わせて、1日に必要なビタミンDが得られるとされています。これはもちろん日焼け止めを塗っていてはだめですが。

24時間の体内時計を正すことができる

私たちの体はおよそ24時間というインターバルで「朝は起きる」「夜は眠る」などのリズムを刻んでいます。このリズムのことを、少し難しい言葉で「概日リズム」または、「サーカディアンリズム」と呼んでいます。

このサーカディアンリズムは、24〜25時間でリズム刻んでいるため、人間が定めた1日24時間という決めごとと毎日少しずつズレが生じます。このズレを解消するためには、朝起きたときに日光(紫外線)を浴びることが大切で、紫外線を浴びることで新しいリズムを刻み出すことが分かっています。

紫外線は、うつを予防するのにも有効

朝、日光を浴びると、リズムをリセットするだけでなく脳内で「セロトニン」というホルモンを分泌し始めます。そしてこの「セロトニン」は夕方になると「メラトニン」という睡眠ホルモンの合成を促し、人を睡眠へと誘います。

セロトニンは、別名「幸せホルモン」と呼ばれ、このホルモンが脳内に多く分泌されていると、うつ状態になりにくいとされています。セロトニンは朝、紫外線を浴びることで生成が始まります。前述のビタミンDは、セロトニンの合成にも必要といわれています。
質の良い睡眠と、うつの予防のためにも、朝起きたら日光(紫外線)を浴びるようにしましょう!

紫外線から目を守るには、紫外線カット効果のあるサングラスを

角膜と水晶体が紫外線を吸収してくれているとはいえ、水晶体の老化や、すでに発症している白内障の進行を早めないためにも、強い日差しを浴びるようなシーンでは、紫外線透過率の低いメガネをかけることをおすすめします。

サングラスの色とは、紫外線カット効果は関係がありません。むしろ、濃い色のサングラスをかけると瞳が開くため、紫外線カット効果のないサングラスだと、かえって大量の紫外線を目に入れてしまうことになりかねません。このため、濃いサングラスほど紫外線透過率の低いものを選ぶべきなのです。
眼科やメガネ店で相談しながら、適切なサングラスを選ぶようにしましょう。

板谷院長のひとことアドバイス

紫外線は人にとって有益な効果がある一方、過度に浴びることで起こりやすい目の病気もあります。日常生活で浴びる紫外線には過度に神経質にならず、うまくつきあっていきましょう。

まとめ

  • 通常、紫外線のほとんどは角膜と水晶体で吸収されます。
  • 強い紫外線や大量の紫外線を目が浴びると、角膜・結膜・水晶体などに障害が生じるリスクがあります。
  • 過度の紫外線から目を守るために、紫外線カット効果のあるサングラスを使いましょう。

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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