季節の移り変わりは、季節ごとのイベントや景色の変化を楽しむ分にはいいものですが、健康にとってはいいことばかりではありません。今回は、とくに冬に気をつけたい目のトラブルについてのお話です。
冬場には、寒さから体を守ろうとする自律神経の働きや、空気の乾燥という環境要因によって、目の健康に悪影響が及ぶことがあります。もしもの時に正しく対処するために、ぜひ参考にしてください。

冬に気をつけたい目のトラブル①「急性緑内障発作」~冬場の眼圧上昇に注意しよう~

冬場に気をつけたい目の症状として、眼圧の上昇が挙げられます。多くの場合はただの生理現象として気にする必要はありませんが、緑内障を発症している方は眼圧が上がりやすく、病気が進行しやすくなります。また、眼圧が急激に高まることで起こる急性緑内障発作も冬場に起こりやすい傾向があります。どうしてなのでしょうか?

冬場に眼圧が上がるメカニズム

眼球は房水という液体で満たされていて、これにより眼球の内側から外側へ向かって圧力がかかり、目の球形が保たれています。この圧力を眼圧といいます。眼圧が高い状態が続くと、高い圧力に耐えられずに視神経が傷ついてしまい、視野欠損などの症状が起こります。これが緑内障です。

眼圧は一日のなかでも若干の変動がありますが、季節によっても変わり、冬は眼圧が高くなりやすいことがわかっています。冬場に眼圧が高くなる傾向には自律神経が関与していると考えられています。冬になると体内では、寒さから体を守るために自律神経(交感神経)の働きによりアドレナリンというホルモンの分泌が活発になります。アドレナリンには心拍や血圧を上げて体温を保とうとする働きがあるのですが、その一方で、眼圧を上げる作用もあるため、低温に晒される冬になると眼圧が上がりやすくなるのです。

突然起こる急性緑内障発作

緑内障にはいくつかのタイプがありますが、なかでも原発閉塞隅角緑内障というタイプの緑内障では、ときとして急性緑内障発作が起こることがあります。原発閉塞隅角緑内障とは、角膜と虹彩の根元にある、房水の流出口である隅角とよばれる場所が狭いことで眼圧が高くなってしまう病気です。
急性緑内障発作は、急激に眼圧が著しく上がり、激しい眼痛・頭痛・吐き気・強い充血・急激な視力低下などが起こるもので、処置が遅れると失明に至ることもあります。点眼薬の投与、レーザー治療、手術などによる治療を迅速に行う必要があります。

急性緑内障発作の目

長時間うつむく姿勢での作業はやめよう!

冬場における眼圧上昇の危険を少しでも回避するためには、寒い環境で我慢をして過ごすことを避け、できるだけ暖房や衣類を工夫し、体を温かくして過ごすことが大切です。うつむく姿勢を続けることも眼圧上昇のリスクになりますので、裁縫などの緻密な作業やスマホ閲覧などで長時間うつむいている習慣のある方は、姿勢にも注意してください。

原発閉塞隅角緑内障にかぎらず、緑内障から目を守るには、定期的に眼科で検査を受けましょう。眼圧が高いと指摘されたら、視野の欠けなどの異常が現れていないか常にチェックを行い、点眼薬が処方された場合には忘れずに点眼を行って、眼圧のコントロールを心がけましょう。

冬に気をつけたい目のトラブル②「網膜静脈閉塞症」~高い血圧が血管のトラブルを引き起こす~

激しい気温の変化によって血圧が急激に乱高下することで、心臓や血管に障害が起こる症状を「ヒートショック」といいます。近年、冬に気をつけたい血管イベントとして、メディアでもよく取り上げられています。このヒートショックは、目にも影響して網膜静脈閉塞症という病気を引き起こすことがあります。では、網膜静脈閉塞症とはどんな病気なのでしょうか。

網膜上の静脈が詰まったり破れたりして起こる視覚障害

眼球の内側を覆っている膜を網膜といいます。瞳から入ってきた光が網膜で像を結ぶことで、私たちは「ものが見える」と知覚します。
網膜上に張り巡らされている静脈が何らかの原因で詰まったり塞がったりして血流が途絶えるのが、網膜静脈閉塞症です。閉塞のせいで、網膜上の、ものを見る中心機能を担う黄斑という部分にむくみが出ると、ものがゆがんで見えるようになります。

また、詰まった静脈が破れると眼底出血が起こり、突然の視野障害が生じます。特に網膜静脈の根元部分が閉塞すると、眼球全体に出血が生じて急激な視力低下が起こる可能性があります。さらに、網膜静脈閉塞症は血管新生緑内障という難治性の緑内障を合併することもあります。

網膜静脈閉塞症の治療には、レーザー光凝固術や硝子体手術があります。黄斑のむくみを取るためにステロイド剤を投与することや、血管新生を防ぐためにVEGF阻害剤(血管新生を抑制する薬)を硝子体注射する治療を行うこともあります。

網膜静脈閉塞症によって、眼底に出血が起きた様子

冬場に起こりやすい血圧の急上昇が発症の要因に

網膜静脈閉塞症を発症する最大の要因は、高血圧です。血圧が高い方は、血管が障害され、動脈硬化を起こしやすくなっています。この動脈硬化が網膜の静脈で起こると、血管が詰まってしまって網膜静脈閉塞症になります。

とくに冬場は、寒さを感じると自律神経(交感神経)の働きによって血管が収縮し、血圧が上昇します。特に暖かい室内から寒い廊下やトイレに移動したときなどには、急激な温度差によって血圧が急上昇し、血管に大きな負担がかかってヒートショックの症状を起こしてしまうことがあります。この症状が目の中で起こると、網膜の静脈が詰まって出血などを引き起こす、網膜静脈閉塞症になってしまいます。

網膜の静脈が詰まると血管が破れて出血を起こします。詰まった場所により、網膜静脈分枝閉塞症と網膜中心静脈閉塞症の2種類があります

冬の網膜静脈閉塞症を予防するには

冬場の急激な気温差によって起こる網膜静脈閉塞症の発症を予防するには、急激に血圧を上昇させるような温度変化が生活の中で起こらないように注意する必要があります。寒いトイレや脱衣所は暖房器具で温めておきましょう。浴室内を温水シャワーで温めてから入浴するのも効果的です。外出するときは、室内でコートやマフラーをしっかり身に着けてから戸外に出るようにするとよいでしょう。とくに高血圧症の方は、生活改善や薬物療法によって血圧の正常化を図るよう心がけましょう。

冬に気をつけたい目のトラブル③「ドライアイ」~空気の乾燥で悪化する~

日本の冬は、空気が乾燥します。そのため火事には要注意ですが、目の乾燥にも注意してほしいと思います。空気が乾燥することで、ドライアイになりやすくなる季節です。

冬は、目の表面を潤す働きが低下する季節

私たちの目の表面は涙の層で覆われています。涙の層は、表面から順に、油層、水層、ムチン層と、3つの層が重なってできています。ドライアイとは、この涙の層のバランスが崩れたり涙の量が減少したりすることで目の表面を潤す働きが低下した状態をいいます。

ドライアイの原因にはさまざまなものがあります。加齢、空気の乾燥、ディスプレイを見続けることによるまばたき回数の減少、内服薬の影響、涙の分泌が少なくなる疾患(シェーグレン症候群ほか)などです。空気が乾燥する冬場は、戸外はもとより、暖房によって室内の湿度も低下するので、ドライアイに陥るリスクが高まります。ドライアイになると、目に乾燥感や痒みや痛みが生じたり、目がゴロゴロしたり、かすみや眩しさを感じたり、やたらと涙が出たりするようになります。このような症状を放置しておくと、目の表面の角膜が傷ついて症状がさらに悪化することがありますので、早めに眼科を受診しましょう。

加湿と点眼薬の投与で対応する

ドライアイには、症状の軽い場合は人工涙液やヒアルロン酸の点眼薬が処方されます。涙の成分の一つで保水力の高いムチンの分泌を促すタイプの点眼薬もあります。

点眼薬のほかには、まぶたの目頭側にある「涙点」という、涙を排出する穴に栓をして、目に留まる涙の量を増やす「涙点プラグ挿入術」という治療法が選択されることもあります。

ドライアイになるのを防ぐには、乾燥から目を保護する必要があります。乾燥が強い時期には加湿器で室内の湿度を調整しましょう。エアコンなどの風が直に顔に当たらないように環境を整えることも大切です。ホットタオルや市販のホットアイマスクなどで目を温めるのもおすすめです。目の周りの血流がよくなり、涙の分泌も改善します。最近は市販のドライアイ用の目薬も増えているようですが、誤った使い方が原因となって症状の悪化をみるケースもあるようです。市販薬で症状が改善しないときは、一度、眼科で相談してみてください。

板谷院長のひとことアドバイス

冬は眼圧が高まることが知られています。急性緑内障発作だけでなく、ゆっくり進行する緑内障も眼圧の上昇を通常以上に気をつけてコントロールしていく必要があります。

まとめ

  • 冬場は自律神経の働きで眼圧が高くなりやすく、原発閉塞隅角緑内障の方には「急性緑内障発作」のリスクが高まります。
  • 暖かい所と寒い所の温度差によって血圧の急上昇が起こりがちな冬場は、「網膜静脈閉塞症」のリスクが高まります。
  • 冬場は空気の乾燥が目の表面の潤いを低下させ、「ドライアイ」を引き起こしやすくなります。

目についてお悩みは、はんがい眼科へどうぞ

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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