はんがい眼科では、2017年を「多焦点眼内レンズ元年」と位置付けています。それはこの数年で、非常に優れた機能の多焦点眼内レンズ、「これならば患者さんに満足していただける」と自信をもっておすすめできる眼内レンズが登場してきたからです。2017年5月から、多焦点眼内レンズを使った白内障手術をスタートしています。

以来、白内障で濁った水晶体を多焦点眼内レンズに置き換えることで、「遠くも近くもよく見える」「見たいものが瞬時に見える」幸せを、多くの患者さんが体験されています。

この多焦点眼内レンズ導入の判断を後押ししたのが、焦点が合う範囲を広げたEDOF(イードフ:Expanded Depth of Field:焦点深度拡張)技術の登場です。2016年には、眼内レンズに初めてEDOF技術を用いたイタリアの眼内レンズ「ミニウェル」が登場。2017年には、アメリカのAMO社のEDOFレンズ「シンフォニー」が、国内で先進医療に認定されました。

さらに2017年10月、欧州で発売になったのが、オランダ製の3焦点EDOFレンズ「アクリバ トリノバ」です。日本で取り扱っている眼科はまだ限られますが、はんがい眼科ではミニウェル、シンフォニーに続く第3のEDOFレンズとして、多焦点眼内レンズのラインナップに揃えています。

今回は、このアクリバ トリノバの詳細を紹介します。

光学部の回折エッジが正弦曲線を描くことで
ハロー・グレアをほぼ無くした「アクリバ トリノバ」

アクリバ トリノバは、オランダのVSY Biotechnology社が2017年10月に発売した多焦点眼内レンズです。材質はアクリルで、薄い黄色の着色レンズです。レンズの形状は、丸い光学部の周りを四角い支持部が囲んでいる、4点支持スタイルです。

アクリバ トリノバ

アクリバ トリノバ(VSY Biotechnologyより)

遠くから40cm前後まで、連続して見える

アクリバ トリノバは遠方、中間、近方の3焦点眼内レンズです。なおかつピントの合う範囲を広げるEDOF技術により、遠方から40cm前後の近方まで、連続して優れた視界が得られます。読書などのごく近い近見は30cmの距離といわれますが、遠方から40cmくらいまでが見えれば、生活でも仕事でもほぼメガネなしで困ることは少ないはずです。

コントラスト感度も高く、明るいところでも薄暗いところでも良好な視力を得られます。特に車や電車の車中から外の表示を見る、ゴルフボールの軌跡を目で追う、買い物で並んでいる商品と値札を交互に見るなど、動的な目の使い方をするときには、特にこの眼内レンズの優れた機能が実感できると思います。

光を屈折するための溝がなだらかで、徐々に浅くなっていくことで焦点深度が深くなるEDOFの技術を採用。(VSY Biotechnologyより)

ハロー、グレアがほとんどない

通常の回折型の多焦点眼内レンズは、回折構造のエッジが直線的で、断面を拡大して見るとトゲのような形の溝が幾重にも重なっています。これが光を乱反射し、ハロー(夜間の光や強い光がにじんで見える)やグレア(光が伸びてギラギラして見える)を生んでいました。

それに対して、アクリバ トリノバは、溝の形が滑らかな正弦曲線(シヌソイダル)を描いているため、光の乱反射がなく、ハロー・グレアがほとんど起こらない設計になっています。夜間に車の運転をよくする方も、安心して使用できます。

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夜間の光がにじんで見える「ハロー」や、ぎらついて見える「グレア」が現れてしまうのは多焦点眼内レンズの欠点とされてきましたが、アクリバ トリノバはその欠点を克服した多焦点眼内レンズの一つです。

強度の近視、遠視、乱視にも適応が可能

レンズの適応範囲が広いことも、アクリバ トリノバの特徴です。そのため、これまでの3焦点眼内レンズは使用できなかった強度近視、強度遠視、強度乱視の方でも適応しやすくなりました。メガネなどでの視力矯正が欠かせなかった強度近視や強度遠視の方も、この眼内レンズを使用すれば、メガネから解放される確率が高くなります。

先進医療の対象外で手術費は自費。
手術のスケジュールも確認を

先進医療の対象外のため、手術費は全額自費

オランダ製のアクリバ トリノバは、先進医療の認定はありません。眼内レンズ費用を含む手術費用は、全額が自己負担になります。

また、眼科医が海外から取り寄せて使用することになるので、注文からレンズ到着までに4~6週間ほどかかります。それを踏まえて手術のスケジュールを考えておきましょう。

手術費用が自費のため高額になりますが、それ以外は、欠点らしい欠点は知られていない高機能の眼内レンズです。車であれば高級車でも一定期間で買い替えが必要になりますが、眼内レンズは一度入れれば半永久的に使えます。それを考えれば、決してコストパフォーマンスは悪くないのではないでしょうか。

「アクリバトリノバ」の特徴一覧

名称 アクリバ トリノバ(Acriva Trinova)
メーカー(生産国) VSY Biotechnology社(オランダ)
焦点数と光学部デザイン 3焦点シヌソイダルEDOF
ピントの合う距離 遠方、中間、近方
メガネなしでの得意、不得意 遠方から近方まで連続してスムーズに見えるため、車の運転をしながらカーナビを見る、テニスやゴルフなどの小さいボールを目で追うといったシーンで、非常に優れた視機能を発揮します。
運転時では、夕暮れや夜間でも優れた視力が得られます。一方、パソコンを見る、読書をするときなどの、中間~近方の視界も良好です。
ハロー・グレア ほぼなし
薄暮視(薄暗い場所での視力) とても良い
乱視矯正 あり
先進医療 なし

夜間運転をする方や強い近視・遠視・乱視の
ある方におすすめの最新眼内レンズ

アクリバ トリノバが向くのは、白内障の治療後にメガネを使わずに生活や仕事をしたい方、スポーツや車の運転などを楽しみたい方、「見える目」を取り戻してこれからの人生を前向きに活動したい方などです。そういう方々にとっては、自費で片目50~60万円の手術費用をかけても、それを上回るメリットを実感できることと思います。

ハロー・グレアがほとんど生じないという特性からいえば、特に夜間に運転をする方にはおすすめしたい眼内レンズです。
また近視や遠視、乱視が強いために、これまで他の多焦点眼内レンズを使えなかった方も、アクリバ トリノバであれば使用できる可能性があります。取扱いのある眼科で相談をしてみてください。

なお、30cmほどのごく近い距離で精密な作業をするような方では、単焦点眼内レンズや他の多焦点眼内レンズが相応しいケースもあります。

板谷院長のひとことアドバイス

欠点が少ない高機能の眼内レンズです。注文からレンズ到着までに時間がかかるため、手術のスケジュールを考えておきましょう。

まとめ

  • 「アクリバ トリノバ」は、3 焦点+EDOF技術をもつオランダ製の最新眼内レンズです。
  • 遠くから近くまでが連続してスムーズに見え、夜間のハロー・グレアがほとんどありません。
  • 海外のプレミアム眼内レンズで先進医療対象外のため、手術費用は全額自己負担です。

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執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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