最近では、「遠くも近くもメガネなしでよく見える」多焦点眼内レンズにも、優れた製品が続々と登場しています。
日本で認可されていない海外の多焦点眼内レンズは、眼科医が個人の責任で輸入し、使用するかたちになりますが、それらは海外各国が認可をしている眼内レンズであり、欧米では徐々に多焦点眼内レンズが白内障治療の標準になってきています。

日本でも、白内障治療はもちろんですが、老眼の改善のために多焦点眼内レンズを入れるという選択肢も、今後は増えていくと予想されます。患者さん自身に「自分に合った多焦点眼内レンズはどれなのか」を確認していただくためにも、はんがい眼科で扱っている多焦点眼内レンズの個々の製品の特長を、このブログで何回かにわたって紹介していきたいと思います。

今回は、海外の多焦点眼内レンズのなかでいち早く「3焦点」を実現した眼内レンズである「ファインビジョン」について説明します。

「ファインビジョン」は遠くも近くも中間もよく見える3焦点眼内レンズ

ファインビジョンは、ベルギーのPhyIOL社が2011年に発売した眼内レンズです。材質は親水性アクリルで、紫外線をカットする薄い黄色の着色レンズです。眼内レンズを固定するための2つの足(支持部)を二股にすることで、レンズの偏位(傾き)を防ぐ形状になっています。

ファインビジョン(PhyIOLより)

光学的な技術を駆使して、水晶体のある若い目に近い生理学的軸方向色収差を実現することで、若き日の肉眼での見え方に近づくように設計されています。PhyIOL社の公式発表では、使用者の97%が、もし次に眼内レンズを選ぶ機会があったとしても、ファインビジョンを選ぶと回答しています。このように、使用者の高い満足度を実現した多焦点眼内レンズとして知られ、日本でもよく選ばれています。

「遠方」「中間」「近方」の3焦点にピントが合う

ファインビジョンの最大の特長は「遠方」「中間」「近方」の3つの距離に焦点があることです。日本でもっとも多く使われている多焦点眼内レンズは「遠方‐近方」の2焦点の眼内レンズですが、このレンズは近距離と3m以上の遠方が良く見える反面、1mほどの中間距離がぼやけて見えづらいという特性がありました。
この欠点を補うべく、中間距離にも焦点を作ったのが「ファインビジョン」です。遠方‐近方と、遠方‐中間の2種類の2焦点眼内レンズの光学デザインを組み合わせることで、3つの焦点を実現しています。これにより、遠くも近くも中間も、メガネを使わずに見ることができます。

単焦点眼内レンズはピントが合う距離が1つ。多焦点眼内レンズなら複数の距離にピントが合うため、強くぼやける距離がなくなります

中間距離も、視力やコントラストが良好

通常は、焦点を増やせばそれだけ光学的エネルギーロスが出て、コントラスト感度が低下し、くっきりと見えないなどの不具合が出やすくなります。しかし、ファインビジョンは回折型多焦点眼レンズのうちでもっともエネルギーロスが少なく(およそ14%ほど)、光量の配分も近く30%、中間15%、遠く40%とバランスが良く、中間距離でもクリアに、コントラスト感度もよく見えるのが特長です。
また、手元も30cmほどの距離までよく見え、書類を書く仕事や手元で細かい作業をするときにも、老眼鏡のようなメガネにほとんど頼らずに済みます。
乱視がある方では、乱視矯正機能があるトーリックタイプのレンズも選べます。

中間距離にも焦点のピークがあるのが特徴です(PhyIOLより)

最新の多焦点レンズのなかではハロー・グレアが出やすい

ややハロー・グレアが出やすい

ファインビジョンのデメリットとしては、ハロー(夜間のライトなどがにじんで見える)、グレア(光が伸びてギラギラしてい見える)が出やすいことです。従来の2焦点眼内レンズに比べれば軽減されていますが、それでも最新の多焦点眼内レンズのなかでは、ややハロー・グレアが強めです。運送業の方や夜間に車をよく運転するという方は、避けたほうが無難です。

ハロー・グレアの見え方は、慣れれば気にならない方もいます。もし症状が出てもしばらく様子を見てから対処しましょう

強い近視では、対応するレンズがないことも

強い近視がある方では、対応するレンズがないこともあります。

また、これは認可されていない海外の多焦点レンズすべてに共通することですが、注文をしてから届くまでに4~6週間ほどかかります。ときおり、免許更新が1か月後に迫っているから白内障手術をしたい、と駆け込んでくる方がいますが、その場合は海外の多焦点眼内レンズを使えないことになります。医療機関にもよりますが、一般には眼内レンズを決めてから手術をするまで、2か月以上の時間をみておくと安心です。

「ファインビジョン」の特徴一覧

名称 ファインビジョン(Fine Vision)
メーカー(生産国) PsyIOL(ベルギー)
焦点数と光学部デザイン 3焦点アポダイズド回折型
ピントの合う距離 遠方、中間、近方
メガネなしでの得意、不得意 遠方から近方まで連続してスムーズに見えるため、車の運転をしながらカーナビを見る、テニスやゴルフなどの小さいボールを目で追うといったシーンで、非常に優れた視機能を発揮します。
運転時では、夕暮れや夜間でも優れた視力が得られます。一方、パソコンを見る、読書をするときなどの、中間~近方の視界も良好です。
ハロー・グレア ほぼなし
薄暮視(薄暗い場所での視力) とても良い
乱視矯正 あり
先進医療 なし

現役世代の白内障治療のほか、老眼改善にも向く

こうした特徴をもつファインビジョンは、仕事をしている現役世代で「遠くから手元まですべての距離をメガネなしで見たい」という方には、最適な眼内レンズです。若い頃には目がよく、老眼鏡などのメガネがわずらわしい、遠近両用のコンタクトレンズを使ってきたという方で、夜間は車の運転をしない方であれば、3焦点のファインビジョンをおすすめします。
 さらに、白内障は手術をするほど症状は進んでいないけれど、老眼を改善したいというときにも、ファインビジョンは向きます。この眼内レンズを使用すると、30~40代頃の視力を取り戻せるケースが多くあります。 
 はんがい眼科の最近の症例では、50代で編み物が好きという女性がファインビジョンを選択され、「遠くはもちろん、室内も、編み物をする手元もメガネを使わずによく見える」と大感激されていました。自由診療ですから費用は高くなりますが、興味のある方は眼科医に相談をしてみてください。

板谷院長のひとことアドバイス

ものを見るには、遠く・中間・近くの距離でなめらかに焦点を合わせられることが理想です。3焦点レンズは、この理想に近づいたレンズの一つです。

まとめ

  • 「ファインビジョン」は、遠方、中間、近方の3つの距離すべてにピントが合います。
  • 遠くと近くだけでなく、従来の2焦点眼内レンズで見えにくかった中間距離も、メガネをなしでよく見えるのが特長です。
  • ハロー・グレアがやや出やすいため、夜間の運転には向きません。強い近視の場合は対応するレンズがないことがあります。

目についてお悩みは、はんがい眼科へどうぞ

執筆者プロフィール

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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