病気にかかったときに処方されるお薬。臨床試験を経て世に送り出された薬剤は、治療に効果的であることにはまちがいありませんが、目に悪影響を及ぼす副作用を引き起こす場合があります。

また日常生活の中で使っている洗剤や消毒薬などの中には、誤用されることによって目に障害を与える成分が入っているものがあります。
ときに「毒」にもなる薬品から目を守るために知っておいていただきたいことをご紹介します。

強力な効果と表裏一体の副作用がある「ステロイド」

結膜炎や花粉症などに使われるポピュラーな薬

ステロイド薬は、内服薬や外用薬として抗炎症や免疫抑制などに使われるポピュラーな薬です。目の病気に関しては、眼瞼炎や結膜炎、ぶどう膜炎などに対して炎症を抑えるために処方されるほか、花粉症の症状を抑えるために抗アレルギー薬として用いられるなど、治療に欠かせない薬剤です。
しかしステロイド薬は、効き目が強力で有益な一方、副作用も多様に発生してしまうという特徴も併せもっています。

白内障の発症に関係する

ステロイド薬を長期に使用した人には、水晶体の後ろ側が濁るタイプの白内障「後嚢下白内障」が発症することがあります。発症のしくみはまだよくわかっていませんが、ステロイドの高容量・長期間の使用例ほどリクスが高い、とする報告もあります。どうしても長期にステロイド薬を服用しなければならない場合は、眼科を定期的に受診することをおすすめします。患者さんによっては、点眼薬で後嚢下白内障を予防する必要がある場合もあります。

【後嚢下白内障の目】

緑内障の発症にも関係する

ステロイド薬は、緑内障の発症にも関係します。眼圧を上昇させる作用があるからです。

眼圧の上昇は、ステロイド薬の強さや量、頻度に依存するといわれており、使用してから数週間で眼圧の上昇が起こり始めます。頭痛や目の痛み、視力低下などが現れたら、眼科で眼圧検査を受けることをおすすめします。通常はステロイド薬の服用を中止すれば眼圧は低下します。ステロイド薬を中止しても眼圧が正常にならない場合は、点眼薬を投与する、レーザーを用いた手術を行うなど、個々の症例に適した方法で眼圧亢進の改善を図ります。

【緑内障の目】

網膜剥離を引き起こす

さらにステロイド薬には、「中心性漿液性脈絡網膜症」を引き起こす可能性も指摘されています。
中心性漿液性脈絡網膜症は、光を感じる神経の膜である網膜の中で最も視力に関係する部分である「黄斑」に網膜剥離が発生する病気です。脈絡膜の中にある漿液という液体が網膜内に漏れ出して黄斑付近に溜まることによって、網膜が剥離してしまうのです。

溜まった漿液が3~6ヵ月でひいて自然に治まることも多いのですが、経過が長びいたり、再発が繰り返されると、漿液がひいても視力が戻らないことがあります。このような場合には、内服薬の投与やレーザー光凝固術による治療を検討することになります。

異常を感じたらすぐに眼科医に相談を

以上のように、ステロイド薬は目に対してさまざまな影響を与える薬剤ですので、薬効と副作用のバランスに気をつけながら用いることが大切です。白内障や緑内障にかかり、すでに眼科を受診している場合に他科を受診する際は、処方薬が出される前に、眼科にかかっていることを必ず医師に伝えるようにしましょう。そうすれば医師は、ステロイド薬の投与量を調節したり、別の薬を検討したりしてくれるはずです。また、ステロイド薬を服用して目に異常を感じたときには、すぐに眼科を受診してください。

「抗コリン薬」は緑内障患者に使える?使えない?

胃腸の疾病には有効な「抗コリン薬」ですが・・・

抗コリン薬は、副交感神経を亢進させるアセチルコリンを抑える薬です。副交感神経が活発になると、胃や腸といった消化器官に痛みや痙攣が生じます。抗コリン薬は、こうした症状を改善する働きを持つ薬剤です。胃の調子が悪いときにしばしば処方される「ブスコバン」は代表的な抗コリン薬です。ところが、この抗コリン薬には、瞳孔括約筋や毛様体筋を弛緩させる作用があり、結果的に眼圧上昇を引き起こすため、ある種の目の疾患を持つ人には要注意の薬剤なのです。

隅角閉塞タイプの緑内障の人は要注意

眼圧を調節する房水(目の中の水)の排出口が狭い状態にある「閉塞隅角緑内障」の患者さんは、抗コリン剤を使用することで、急激に眼圧が上昇する可能性があります。抗コリン薬の作用により、瞳孔が過度に拡大し、さらに房水が排出されにくくなり、発作性の眼圧上昇が引き起こされてしまうのです。非常に危険な状態に陥るので、閉塞隅角緑内障の患者さんは、抗コリン剤は、けっして使用してはいけません。
一方、目の隅角が広いタイプの緑内障=開放隅角緑内障の患者さんの場合は、抗コリン薬を使用しても問題ありません。

失明や死亡事故も!取り扱い注意の薬品「消毒用アルコール」

「お酒」として飲む⁉

最後に、本来の目的以外のことに用いると大きな弊害をもたらす物質、消毒用アルコールについてふれておきます。
消毒用アルコールは、その名のとおり、医療機器を消毒する際などに使用されるアルコールです。ところが驚くことに、この消毒用アルコールを「お酒」として飲用する人たちがいるのです。

視神経を障害する

日本では第二次世界大戦の終戦直後、メチルアルコール(メタノール)入りの密造酒「カストリ」が出回り、これを飲用して多くの人が失明しました。最近では、2016年12月にロシアでメタノール入りの入浴剤をお酒の代わりにして飲んだ住民49人が死亡する、という事故が発生しています。

メチルアルコールは、体内に取り込まれるとホルムアルデヒドとなり、それから蟻酸(ぎさん)という毒性の高い物質に変化します。蟻酸(ぎさん)は神経線維の髄鞘(ずいしょう)を破壊したり、たんぱく質分子を阻害したりするため、視神経が障害されて失明に至ることになります。

メチルアルコールによる中毒には、解毒剤「ホメピゾール」の点滴や「血液透析」などによる治療が行われます。
一時的な慰みを求めた代償として、とてつもなく大きな苦しみを背負うことになる消毒用アルコールの誤用。厳重に警戒する必要があります。

板谷院長のひとことアドバイス

内服薬や外用薬として有効なステロイド薬や、胃腸の持病に有効な抗コリン剤。
疾患のある部位には有効でも、目への重大な副作用があります。既に緑内障や白内障にかかっている方は、薬が処方される前に眼科にかかっていることを医師に伝えましょう。

まとめ

  • ステロイド薬は疾患に対して絶大な効果を発揮するお薬ですが、その一方で多様な副作用のリスクを併せ持つ薬剤でもあります。目に関しては、白内障や緑内障や網膜剥離の発症に関係します。
  • 眼圧上昇作用を持つ抗コリン薬は、「閉塞隅角緑内障」の患者さんの場合、急激な眼圧上昇を引き起こす可能性が高いため、抗コリン薬の使用は厳禁となります。
  • 消毒用アルコールを飲用することで失明や死亡に至る事故が起きています。本来の目的とは異なる使用は絶対にしないでください。

目についてお悩みは、はんがい眼科へどうぞ

執筆者プロフィール

はんがい眼科院長 板谷正紀

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

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